●期間限定海域マップ3「湾内突入」
 ひたすら任務をこなし、遠征を繰り返して資源を貯めることしばし。
 ある程度の資源が蓄積された。

 石油:8000+
 弾薬:8000+
 鋼鉄:4000
 ボーキサイト:8000+
 高速修復材(バケツ):26

 まずまずの、物資備蓄である。
 同時に湾内に突入する、第1殴り込み艦隊も編成される。

旗艦:空母〈赤城〉改 紫電改2×20、零戦52型×10、彗星艦爆×20、流星艦攻×32 
航空戦艦〈扶桑〉46cm三連装砲、35.6cm連装砲、21号対空電探、瑞雲偵察機×10
航空戦艦〈山城〉35.6cm連装砲×2、21号対空電探、瑞雲偵察機×10
戦艦〈霧島〉改 41cm連装砲、35.6cm連装砲、15.5cm三連装副砲、零式水上偵察機×3
軽空母〈祥鳳〉改 零戦52型×18、彗星艦爆×12、天山艦攻×12、応急修理女神
軽巡洋艦〈名取〉改 20.3cm連装砲、12.7cm連装高角砲、61cm四連装(酸素)魚雷

 予備艦(損傷時交代艦)
航空戦艦〈伊勢〉35.6cm連装砲×2、12.7cm連装高角砲、瑞雲偵察機×11
軽空母〈隼鷹〉改 零戦52型×18、彗星艦爆×18、天山艦攻×18、応急修理要員
軽空母〈飛鷹〉改 零戦52型×18、彗星艦爆×36、応急修理要員
軽巡洋艦〈五十鈴〉改 20.3cm連装砲、12.7cm連装高角砲、61cm四連装(酸素)魚雷

 轟沈で艦娘が失われるときついが、そうでなければ、ある程度の目算を立てての攻略が可能である。
 何より、期間限定マップは、6月5日まで。これを逃せば、敵泊地に捕らえられている正規空母〈翔鶴〉を救出する機会が失われるのだ。

〈赤城〉「え、そんな話、初めて聞きましたよ?」
〈祥鳳〉「どこにも書いてないわよ。そんなこと」
〈電〉「でっちあげなのです!」

 ええいうるさい。ゲームというのは、こうやって脳内ドラマを妄想して楽しむのだ。
 期間限定海域マップは、通常のマップと違い、1回ボス戦に勝利してもクリアとならない。連続した攻勢を仕掛けなくてはクリアできない上、時間の経過と共に敵戦力が回復してしまうのだ。
 それゆえに、攻略をかける時には、修理のためのバケツ(高速修復材)と資材の備蓄が必須となる。

 さらに、「湾内突入」マップは特別なボス敵として泊地棲鬼と空母フラグシップ、エリート艦隊が最奥にいる。万全の状態で挑んでも、かなりの強敵だ。加えて、潜水艦の攻撃もしのがなくてはいけない。
 潜水艦相手は諦めて、空母と戦艦ばかりの艦隊編成も考えなくもなかったが、その場合、途中で潜水艦の雷撃で損害を被れば帰還せざるをえない上、現時点での艦隊のボトルネックは、資材とバケツである。無駄に損害を受ける危険は冒せない。
 そこで、艦隊最後尾の1隻は、対潜戦能力に優れた軽巡洋艦に守ってもらうこととした。レベル30の〈名取〉改は対潜41、レベル21の〈五十鈴〉改は54もの対潜能力がある。空母の爆撃と合わせれば、十分な護衛だ。

 作戦開始!

 いきなり3連続で、敵ボスにたどりつけないというアクシデントに見舞われる。
 最初の敵前衛艦隊を排除するところで空母や軽巡洋艦が大破して引き返したり、最後の湾の手前で、ルーレットによって道を変更させられたり。

 ボスにたどりついてからも、苦戦は続いた。
 今度は2連続で敗北と戦術的敗北。ボスの泊地棲鬼のヒットポイントを削りきることができないまま、その周囲の護衛艦隊に艦隊がぼこぼこにされてしまったのだ。

〈霧島〉「うう……私の完璧な計算が……」

 不甲斐ないのが眼鏡な知的美人〈霧島〉さんである。やたら敵の弾が当たる。そして誘爆するのか、すぐに中破、大破の判定を受ける。高速戦艦〈金剛〉4姉妹は、高い機動性の代わりに防御力に難があるのだが、これでは困る。それこそ“計算が立たない”。

〈霧島〉「提督? なんだか目が怖いですよ……いやっ! いやああっ!」

 〈霧島〉から41cm砲をはぎとり、航空戦艦〈伊勢〉に回す。

〈伊勢〉「ええっ? いいのかい? 正直、パラメタで言えばあたしが一番、装甲は薄いぜ? あたしは80だけど、〈扶桑〉〈山城〉姉妹は89。〈霧島〉だって84だ」

 こういうのは、数字じゃない。どういうわけか、お前は敵の砲撃を受けてもダメージがあまり通らない。その幸運(確率の偏り)に賭ける。

〈伊勢〉「分かった。ごめん〈霧島〉、後で返すから」
〈霧島〉「大事に使ってくださいね?」

 すでにこの時点で、バケツ(高速修復材)は10個以上消耗していた。負けてるわけだから、損害が大きいのは道理だが、だとしてもこの流れはよくない。

 そして、この流れを変えたのが、やはりあの艦娘であった。

〈名取〉「あ、あ、あ……当たってくださ~~~いっ!」
〈泊地棲鬼〉「ギャアアアッ!!」

 夜戦で酸素魚雷を敵ボスにたたきこんでトドメを刺したのである。
 雷装パラメタ99(酸素魚雷込み)は伊達ではない。ここぞという時に頼りになるヤンデレである。
 酸素魚雷は、魚雷のエンジンを回すのに圧搾空気ではなく、純酸素を利用している。そのため、他の魚雷であれば発生する空気の白い泡が航跡として発生せ ず、敵に発見されることなく、その脇腹に突き刺さるのである。撃たれた側の艦の水兵の目撃証言から酸素魚雷が『青い死神』と呼ばれたという、まことしやか な噂もあるほどだ。

 〈名取〉の一撃で初勝利が得られると、その後、流れは一気にこちらに傾いた。
 とはいえ、ルーレットで追い払われることもあるし、今ひとつダメージがふるわないこともある。そしてたとえ勝利しても、ボス戦をくぐり抜ければ無傷とはいかない。
 修理に使う鋼鉄の在庫はみるみるうちになくなっていき、バケツもまた、消える。

 そしてついに。
 最後のバケツ(高速修復材)が、〈赤城〉に渡される日がやってきた。

〈赤城〉「あの……」

 早く食え。そして、ドッグをあけろ。他の娘が入れないだろうが。

〈赤城〉「そうではなくて、私が食べてもいいんでしょうか?」

 お前な、自分の修理にかかる時間を見てみろ。12時間だぞ! 12時間と46分! お前がそこで12時間粘ったら、この作戦はパーだろうが!
 いつもは遠慮なくバクバクバクバクバク食ってるくせに、なんでこの大事な時だけ、遠慮するんだ!

〈赤城〉「む」

 なんだ、文句あるのか。

〈赤城〉「あります。それこそ、この大事な時だからこそ、私でなくて他の艦娘にバケツと資材を回した方が、いいんじゃないですか? きっと、私より強くて――」

 だから、お前なんだよ。

〈赤城〉「私より、活躍できる艦娘が――え?」

 お前が、この艦隊で、一番強い。

〈赤城〉「冗談……じゃないですよね?」

 この資源がなくて苦しい時に、冗談なんか言うか。
 お前の艦載機を見てみろ。紫電改2×20、零戦52型×10、彗星艦爆×20、流星艦攻×32。数も機体も、この艦隊で最高だ。今回、姉妹艦の〈加賀〉 を湾で解放したが、まだレベル1。お前はなんだかんだでレベル41。これは〈祥鳳〉のレベル44に次ぐ数字だ。そして、こと戦闘力に関して言えば、お前は 〈祥鳳〉より上なんだ。
 その代わり――

〈赤城〉「その代わり、コストパフォーマンスは悪い、ですね?」

 分かってるじゃないか。お前さんは、ヤクザ映画でいえば用心棒の先生だ。食客として普段は食っちゃ寝してても、ここぞというところでは活躍してもらわないと。

〈赤城〉(ぐびっ、ぐびっ、ぐびっ)「……ぷはあっ」

 行けるな?

〈赤城〉「はい! 一航艦!〈赤城〉行きます!」

 そして。
 ついに。

〈翔鶴〉「助けていただいて、ありがとうございます!」

 期間限定海域マップ3「湾内突入」の攻略は完了したのである。

〈翔鶴〉「本当に、皆さんにはどうお礼を……えーと……聞いてますか?」

〈扶桑〉「大丈夫、山城?」(残hp53、小破)
〈山城〉「姉様の方こそ、大丈夫ですか?」(残hp13、大破)
〈伊勢〉「うわあ、最後の最後ででかいのもらっちゃったよ」(残hp4、大破)
〈祥鳳〉「敵のエリート艦艇に粘られましたね」(残hp8、大破)
〈五十鈴〉「五十鈴が夜戦で酸素魚雷でトドメでしたし! 当然ですし!」(無傷)

 マップ攻略にふさわしい激戦の結果、艦隊はボロボロになっていた。

〈赤城〉「でも、良かったですね。作戦成功して」(残hp24、中破)

 まったくだ。あそこまでお膳立てして、負けたらしゃれにならん。
 だが、勝利と引き替えに鋼鉄資材は200しか残っていない。
 バケツもなく、全員を回復させるのは当分先となるだろう。
 しばらくは休養の日々(ネイバルホリデー)となりそうである。

〈名取〉「ううう~~みんな、どこに行ったの~~?」(残hp2、攻略完了の1回前の戦いで大破)