艦これ

アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(17)

2013年7月4日 雑記, アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌 No comments ,

  • 新型艦娘、大募集

 キス島撤退作戦(3-2)をクリアしたことで、3-3へと行けるようになったが、そろそろ、先に進むよりは新しい艦娘をゲットしたいものである。

▼優先度「高」:戦艦〈長門〉〈陸奥〉
 〈長門〉と〈陸奥〉は言うまでもなく、世界のビッグ7である。
 〈大和〉〈武蔵〉が建造されるまでは長く連合艦隊の旗艦は〈長門〉が務め、国民の間の知名度は高かった。
 この2艦を望む最大の理由は、貫通力の不足を感じることが多くなったからである。
 艦これにおいては、砲撃戦に内部でいろいろ処理をしているっぽく、当たってもダメージがろくに通らない場合と、コレは弾薬庫を誘爆したろ、と思われる大ダメージが出る場合がある。
 この時代の戦艦というのは、実に堅牢に作ってあると同時に、どうしても脆いところが残されている。というのも、巨大な艦のすべてを分厚い装甲で覆うわけには、いかないからだ。あまりに重くなりすぎてしまう。
 そこで、守らねばならない部分を堅牢に作り、そうでないところは壊れても問題ないような設計にする。いわゆるバイタルパート(VitalPart=重要区画)という概念である。
 主砲や艦橋、機関などをバイタルパートとして装甲で囲めば、一発や二発、直撃を受けても戦闘力は低下しない、という設計思想である。
 しかし、古い戦艦には、このバイタルパートの設計に欠陥があった。高速戦艦の〈金剛〉型も、超弩級戦艦である〈扶桑〉型〈伊勢〉型も同様の欠陥がある。

〈金剛〉「それはもしかして、改装工事で強化されたところデスカ?」

 その通り。甲板部分の装甲だ。

〈金剛〉「Oh…確かに、上からの攻撃には弱いデス」
〈扶桑〉「私もそうですわね。上から責められると、ちょっと・・・」
〈伊勢〉「私と〈日向〉は、装甲をちょっと増量してみたけど、やっぱり甲板は薄いね」

 こうなったのは、キミたちの基本設計が、第一次世界大戦の経験が得られる前だったことに起因する。

〈金剛〉「第一次世界大戦の経験というと……ドッカーバンク海戦や、ユトランド沖海戦デスネ」

 そう。戦艦の砲撃力が向上した結果、砲戦距離は日露戦争の日本海海戦よりもさらに伸び、1万mを超える遠距離砲戦となった。こうなると、砲弾は艦の側面ではなく、上面に集中して命中するようになる。
 それまでのバイタルパートは、側面から命中する前提で作られていたので、上と下は死角だったのだな。

〈伊勢〉「後は弾薬庫が誘爆するとまずいんだよな。火災とかでさ」

 内側からの爆発だからね。外側がいかに堅牢でも、中で誘爆したのではひとたまりもない。そういうこともあって、第一次世界大戦以後の戦艦はやたらめたら頑丈に進化していくんだけど、そこで海軍休日(1922~1936年)が発生して、古い戦艦を代替わりできなくなっちゃった。

 海軍休日前の最後の戦艦である〈長門〉(1920年竣工)と〈陸奥〉(1921年竣工)は、だから〈大和〉が竣工する1941年まで20年もの間、最新鋭戦艦であり続けたんだ。
 艦これでは〈大和〉〈武蔵〉がまだ登場していないから、〈長門〉〈陸奥〉が砲力でも防御力でもトップクラス。敵の深海棲艦の戦艦が頑丈になってきたから、これからの戦いではこの2隻がどうしても欲しい。

〈金剛〉「ヘー」
〈扶桑〉「そう……ですか……」
〈伊勢〉「ま、いいけどさー。若い子の方がいいのは男の性ってね」

 あ、いや、もちろん皆さんにも頑張っていただきますよ!

▼優先度「中」:空母〈飛龍〉〈瑞鶴〉
 〈蒼龍〉がいて、〈飛龍〉がおらず。
 〈翔鶴〉がいて、〈瑞鶴〉がいない。
 なんとなく、バランスを欠いている感じがするので、この2隻の相方である空母にも、来ていただきたい。
 戦力的には、まあ、いなくても問題なく回るのであるが。

▼優先度「中」:軽空母〈瑞鳳〉
 軽空母〈祥鳳〉の相方である。
 戦力として見た場合、燃料と弾薬の消費が激しい正規空母よりも、軽空母の方がいろいろと扱いやすい点も大きい。特に我が艦隊の〈祥鳳〉は最初の空母ということもあって、レベルも一番高く、ここぞというところで頼りになる。〈瑞鳳〉にもぜひ頑張っていただきたい。

▼優先度「低」:駆逐艦〈雪風〉
 気が付けば、駆逐艦必須のマップ3-2「キス島撤退作戦」も終了した。〈雪風〉の必要性は下がったが、なんといっても幸運艦である。いつかは出会いたいものだ。

▼優先度「低」:軽巡〈鬼怒〉〈阿武隈〉
 このあたりになると、現状ではコレクションを揃え、図鑑を埋めることが主目的になる。

 ところで、将来は外国艦艇が参加する可能性もあるということであるが、WW2で日本の同盟国だったドイツ海軍の艦艇は〈ビスマルク〉〈ティルピッツ〉をはじめ、元は男性の政治家や軍人の名前を冠している艦が多い。ここはやはり、艦娘ならぬ艦漢(かんかん)として、男の子でやっていただくというのはどうだろうか。
 そしてもちろん、そう、中破した時には……(ろくろを回す仕草)

アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(16)

2013年7月3日 アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌 No comments

●キス島撤退作戦
 北方海域のマップ2「キス島撤退作戦」は、ちょっと特殊なマップである。
 駆逐艦のみで編成された艦隊だけが、敵ボスのいるエリアまで進撃でき、駆逐艦以外を含む艦隊は、皆、別のエリアに向かわされるのだ。

〈赤城〉「でも、レベルアップにはいいですよね、このルート」

 それには同意。最初のエリアは重巡洋艦を含む前衛艦隊で、これを突破した後は、必ず空母機動部隊との戦いになる。何と戦うかあらかじめ分かっていれば、艦隊編成にも余裕ができるし、そこにレベルアップしたい艦艇を混ぜることができる。

〈千代田〉「あたしとお姉も、ここでレベルアップしたのよねー」
〈千歳〉「最初の敵は空母がいないから、爆撃機と攻撃機だけ積み込んで戦えるものね」

 だが、先のマップにススムためには、駆逐艦の育成も合わせて行わねばならない。
 狙いをつけたのが、第6駆逐隊の艦娘たちである。

〈暁〉「やっと前線ね!ずっと遠征任務で飽き飽きしちゃったわ」
〈響〉「〈暁〉、縁の下の力持ちというのは大事な仕事だよ」
〈雷〉「せっかくの前線任務が、北にある霧の海っていうのは、残念だけどね」
〈電〉「でもでも、私達のレベルでも、突破できるのですか?」

 ずっと遠征を続けてたこともあってレベルは20オーバー。改造はしたが、確かにまだまだ危なっかしいよな。
 皆をまとめてレベルアップしようにも、実戦では危険が多い……よし。

 作戦発動を決めてから、第6駆逐隊は演習任務から外れ、第1駆逐艦隊に編成された。
 旗艦は〈島風〉である。

〈島風〉「みんな〈島風〉についてくれば大丈夫だからね!」

 ついてこれねえよ。
 残る1隻の枠は、その時点でもっともレベルが高かった〈時雨〉となった。

〈時雨〉「光栄だね。僕の出来る限りをしよう。約束する」

 この6隻で向かうのは実戦ではなく演習である。
 演習では、どれだけダメージを受けても、実際に被害は被らない。
 また、敵艦隊のレベル平均が経験値算出に使われるので、強い敵と戦ってボロ負けしても、経験値がしっかり入ってくる。
 というわけで、気にせずどんどん行け。

〈暁〉「そうは言うけど提督……相手には〈長門〉さんとか〈陸奥〉さんとか……」
〈響〉「いや、その2隻のレベルは低い。編入したばかりなんだろう。主力は90レベルの〈赤城〉〈加賀〉さんだね」
〈雷〉「冷静に分析しないでよ!それって空襲でやられちゃうってことじゃない」
〈電〉「あうあう……とても勝ち目がないのです」

 勝たなくていい。だからいってこい。

〈時雨〉「うん。行ってくるよ、提督」
〈電〉「〈時雨〉ちゃんは、怖くないのですか?」
〈時雨〉「怖いか怖くないかで言えば、怖いよ。でもね……あの時ほどは、怖くない」
〈雷〉「何よ、あの時って……あ、そうか」
〈電〉「スリガオ沖夜戦の時、なのですね」
〈時雨〉「狭い海峡の中、そこら中が敵だらけだった。〈扶桑〉も〈山城〉も、みんな勇敢に戦ったよ。でもね、その勇敢さは何の役にも立たなかった。僕たちは一矢を報いることもできず、全滅した」

 ぎゅっと。〈時雨〉は小さな拳を握りしめる。

〈時雨〉「僕はあの戦いを、共に戦った人を誇りに思う。そして、誇りだけでは勝てないことも知っている。あの時の僕たちは弱かった。弱ければ、勝てないんだ。僕は誇りを胸に抱いたまま、弱さを克服したい。それが今、僕たちがここで戦っている理由だと思うから」
〈雷〉「うん、私もその通りだと思うわ」
〈電〉「あんな悔しい思いは、もう嫌なのです」
〈響〉「今度こそ、勝利を暁の水平線に刻もう」
〈暁〉「わ、分かったわよ!私だって、ちゃんとやれるんだから!」

 演習を繰り返してレベルをあげた第1駆逐艦隊は次の陣容となった。

〈島風〉改 Lv52 61cm四連装酸素魚雷、10cm連装高角砲、強化型艦本式缶
〈暁〉改 Lv34 61cm四連装酸素魚雷、12.7cm連装砲、10cm連装高角砲
〈響〉改 Lv34 61cm四連装酸素魚雷、12.7cm連装砲、10cm連装高角砲
〈雷〉改 Lv35 61cm四連装酸素魚雷、12.7cm連装砲、10cm連装高角砲
〈電〉改 Lv35 61cm四連装酸素魚雷、12.7cm連装砲、10cm連装高角砲
〈時雨〉改 Lv32 61cm四連装酸素魚雷、12.7cm連装砲、10cm連装高角砲

 駆逐艦の中では別次元の強さを誇る〈島風〉には、さらに強化型艦本式缶を装備してもらって、回避88である。敵艦に〈島風〉を狙ってもらい、〈島風〉がそれを避けまくるというのが理想だ。
 残りの駆逐艦も、近代化改修で装甲や火力を限界まで上げてある。
 相手が重巡であっても、そうそうひけはとらない。
 が、相手が戦艦、それもエリート艦となれば話は別だ。
 戦艦の2回の砲撃が命中すれば、2隻の艦が中破か大破となる。

〈響〉「くっ……やられた……」
〈暁〉「〈響〉が被弾したわ!」
〈雷〉「きゃあーっ!」
〈電〉「〈雷〉ちゃん、しっかりするのです!」
〈島風〉「もう! そっち狙っちゃダメなのに! どうして〈島風〉を狙わないの?」
〈時雨〉「これは突入は無理だな。みんな、撤退するよ」
〈雷〉「でも、次のエリアまで行けば任務終了なのよ。運がよければ……」
〈時雨〉「運に頼ってる時点で、僕たちはまだ弱いんだ。本当の強さは、運が敵に回っても勝てることだ。違うかい?」
〈響〉「そうだね。ここは撤退しよう。撤退すれば、次にまた来ることができるさ」
〈島風〉「よーしみんな! 〈島風〉について来て! 一目散に逃げるよー!」

 その後も、ルーレットのイタズラで敵空母機動部隊に衝突する恐怖を味わったり、無理矢理反転されたものの、ついに、敵の戦艦を突破し、我が艦隊はキス島突入に成功したのである。

〈島風〉「島にいる敵は補給艦ばっかりで弱いんだね。なーんだ」
〈暁〉「なんだか、ほっとしちゃったわ」
〈響〉「まだ帰り道があるから、注意しないと」
〈雷〉「大丈夫、霧がでてきたわ。これに紛れて逃げるわよ」
〈電〉「島の人は、全員撤退成功なのです。犬が一匹、取り残されたみたいですけど」
〈時雨〉「その犬には誰かがこの島に戻った時に、出迎えてもらうことにしよう。帰って来たときに誰も出迎えてくれないのは、さみしいからね」

 〈時雨〉は霧の中に溶け込んでいく島を振り返った。そして、そっと呟いた。

〈時雨〉「みんな……今度は、突破に成功したよ」

アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(15)

2013年6月27日 アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌 No comments

●日本海軍は通商破壊が苦手
 艦これでは、毎日、あるいは毎週発生する任務がある。
 これをデイリー/ウィークリー任務と呼んでいる提督は多いだろう。

 提督の朝は、一杯のコーヒーと、デイリー開発の運試しで始まる。

 デイリー任務の多くは、ルーチンである。
 今日はちょっと奮発してレア艦の建造を狙ってみようかとか、そういうことはあるが、ほとんどは毎日同じようにやれば、同じような結果が出てくる。
 その中で、思うようには進まないものが、ひとつある。
 敵の補給船を3隻沈めろというデイリー任務だ。
 補給船を狙う場合、南西諸島海域のバシー島沖(2-2)、あるいは東部オリョール海(2-3)に艦隊を派遣する。

 が、どちらもルーレットがくるくると回る海域であり、運が悪いと補給船と遭遇しない。
 この海域でpixivであがっているヒコロウさんのイラストのような目に遭った提督は多いだろう。こちら

〈北上〉「でもさー。補給船を狙うのに戦艦や空母を持ち出すのもアレな気がすんだけど。こういうのって、潜水艦のお仕事じゃない?」

 確かに。通商破壊作戦というのは、対象が商船だから、それほどの攻撃力は必要とされない。全40門の魚雷発射管も必要ない。

〈北上〉「うわ、藪蛇。英語で言えばブッシュスネーク。まさか提督にこんな無体な仕打ちを受けるとは。無体すなわちノーボディ」

 なんでそこを英語にするんだ。そして、そこまで言われるほどのことか。
 ともかく、補給船狙いの通商破壊は、普通ならばたいした攻撃力が必要とされない。
 しかし、補給船が船団を組んで護衛艦隊を連れていれば話は別だ。

〈北上〉「艦これだと、補給船狙いでも戦艦や空母連れていくよね」

 護衛が強力だからな。けれど、実際の戦いでは護衛も、襲撃も、担当するのは巡洋艦のお仕事だ。帆船の時代にはフリゲートと呼ばれていた艦だ。

〈北上〉「フリゲートかー。どんな艦?」

 ある程度の航続距離があって外洋を航行することができ、高速で、大砲もそれなりに搭載している艦だ。なんでも出来る艦だな。

〈北上〉「器用貧乏ってことか。でも、あたしら日本の巡洋艦は船団護衛や通商破壊が苦手っぽい印象があるけど?」

 まったくもってその通り。日本海軍にとっての巡洋艦は、小型の戦艦だ。
 遅れてきた海軍国である日本は、明治に入ってからも戦艦をたくさんそろえるなんて贅沢な艦隊編成はできなかった。日清戦争の時に『三景艦』として〈松 島〉〈厳島〉〈橋立〉という三隻の巡洋艦を建造(2隻はフランスから購入)したけれど、これには、わざわざ艦の大きさに不似合いな、32cm砲を搭載して ある。艦隊決戦に備えて砲撃力をとにかく高めたかったんだ。

〈北上〉「まさかの私のご先祖様が。大きさに不似合いって、どのくらい?」

 排水量4200トン。艦これだと、軽巡洋艦だな。

〈北上〉「それに32cmは無茶だなー」

 うむ。実戦では、口径が小さくともたくさん発射できる速射砲が役に立ったくらいだ。
 しかし、国力の関係から十分な数の軍艦を揃えることができない日本では、以後も、重火力型で、砲雷撃戦に特化した巡洋艦が設計される。

〈足柄〉「私を呼んだかしら? 砲雷撃戦なら得意よ!」
〈夕張〉「小型の船体に装備を詰めるだけ詰むのはロマンよね」
〈北上〉「はー、なるほど。私と〈大井〉っちの重雷装艦だけじゃないんだ」

 武装をたくさん搭載しすぎてバランスが悪くなった日本の巡洋艦や駆逐艦は、第四艦隊事件で船体強度の不足が露呈する。
 しかし、そもそもの始まりは、近代日本が国の大きさに不似合いな海軍力を整備しようとしたことにあるんだ。

〈北上〉「それが、船体の大きさに不似合いな武装を搭載した巡洋艦になったってことね。あ、でもこれって戦艦や空母にも言えるの?」

 ある程度はね。日本の国力では海上護衛と通商破壊に重点を置いた長期戦に追い込まれたら勝ち目がないから、来寇する敵艦隊との短期決戦に絞って海軍力を整備した。
 戦艦も空母も、長期間にごりごり消耗するのではなく、短い戦いで決着をつけることを前提としていた。空母が敵の攻撃に脆かったり、航空部隊が戦いで消耗した後で再建が難しいのも、そこまで予算と人手をかけられなかったからだ。

〈北上〉「へー。でもそれって、そんなに間違ってる考えじゃないよね?両方やろうとして失敗するよりはさ」

 そう。間違っていたのは、短期決戦で勝敗が決まるという前提部分だ。

〈北上〉「前提部分で!だめすぎる!」

 ただ、長期戦になったら消耗したあげく敗北するから、そっちは捨てるという部分は正しかった。

〈北上〉「なんとかならない?」

 ならない。これはもう、日本の立地の問題だ。
 通商破壊で苦しめるにはアメリカもイギリスも遠すぎて手に負えない。
 海上護衛で守りきるには、日本が守るべきエリアは広すぎて、これまた手が回らない。
 Civilization4的にはワールドビルダーで立地を何とかしないと詰むレベルだ。

 ……あ、ひとつだけ手があった。

〈北上〉「ナニ? もったいぶらないで教えてよ」

 Hearts Of Iron2ではよくある展開だけど、明治維新あたりから政治レベルで組み直して、日清戦争も日露戦争も満州事変も日中戦争もなく、英米と敵対しないなら問題ない。太平洋戦争は起きないから、短期決戦も長期戦もない。戦わないから負けない。

〈北上〉「戦わないで勝利かー。孫子の兵法的にいいんじゃないかな」

 でもその場合、ほとんどの艦娘が必要ないので作られない。その並行世界だと、お前と〈大井〉は真っ先に消えるぞ。

〈北上〉「あうー、そういうオチかー」

 艦娘の魅力のひとつは、戦略レベルでの失敗や錯誤を軍艦の設計で何とかしようとした、必死さ、健気さにあるんだ。いいからもう一回、バシー島沖行ってこい。今度はルーレットで迷うなよ。

〈北上〉「ほーい。重雷装艦〈北上〉出動するよー」
              :
              :

 そして、しばらくの後。

〈北上〉「いやー、今度は敵の主力艦とぶつかっちゃってねー。そのかわりS判定で勝って〈最上〉んゲットしてきたから。3隻目だけど」

 あうー、そういうオチかー。

アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(14)

2013年6月24日 アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌 No comments

●高速と低速について
 艦これには、足の速い高速の艦娘と、足の遅い低速の艦娘がいる。
 足が遅い代表が、戦艦&航空戦艦だ。
 〈扶桑〉〈山城〉〈伊勢〉〈日向〉は、いずれも最高速度が22~25ノット(時速45km)ほどである。
 対して、高速戦艦の〈金剛〉〈比叡〉〈榛名〉〈霧島〉はというと、こちらは最高が30ノット(時速55km)である。
 自動車の速度でいくと、時速45kmと時速55kmには、あまり差がないように見えるが、道路に沿って走る自動車と違い、どこまでも平たい海のどこを 走ってもいい艦船では、この10kmの差が、どうしてバカにできない。赤信号も渋滞も坂道もないので、移動力のちょっとした差が位置取りの重要な差になっ て現れるようになるのだ。

 第二次世界大戦での戦艦同士の戦いというのは、1万mも2万mも離れた敵と打ち合うことになるので、百発百中とはいかない。

〈金剛〉「1分後には、あそこらへんにいる敵にファイヤー!」

 という風に、お互いの動きを読みながらの砲撃戦となる。
 だから、一発必中を狙うのではなく、何門もの主砲から同時に発射する。

〈伊勢〉「主砲、6基12門、一斉射!」

 これは12発の砲弾で敵艦を包み込み、そのうちの1発か2発かを命中させようという射法である。
 主砲は、細長い軍艦のあちこちにあるから、一番良いのは敵に側面を向けてたくさんの主砲を同時に敵に発射できるようにすることである。逆に、敵の側面をこちらに向けさせることがなければ、敵は少ない主砲で砲撃戦をせざるを得ず、砲撃力が低下する。
 そして敵味方がお互いにちょっとでも相手に有利な位置を取ろうと場所争いをしている時には、わずかな速度差がじわじわと効いてくる。遅い側は、だんだんと行動を制限され、不利な位置へ、不利な位置へと追い込まれていくのだ。

 また、各艦は火力を集中する意味もあって各艦がばらばらに行動せず、陣形を組んで艦隊行動を取る。単縦陣は一般的な砲戦用の陣形で、輪形陣は空母 を他の護衛艦で囲んで敵機を近づけないための陣形だ。陣形を維持するためには、他の艦と速度を合わせなければならず、艦隊内に低速艦がいると、それに合わ せて全体の速度が落ちてしまう。高速艦と低速艦を混ぜて運用すると、そういう問題も出るのだ。

〈扶桑〉「レイテ突入では、それで私たちだけ、別働隊だったんです。でも、スリガオ沖で……うう」
〈山城〉「夜戦の混乱の中で、姉様ともはぐれてしまって……ぐすっ」

 まずい、ふたりのトラウマスイッチが。
 えー、大砲よりもさらに発射角度や射程が限られている魚雷戦にいたっては、位置取りこそすべて、とさえ言える。駆逐艦や軽巡洋艦が、普段の巡航速度はさほどでなくとも、短距離選手のように海戦の時には高速を発揮できるよう設計されているのも、このためである。

〈夕張〉「うん……そうよね。駆逐艦の艦娘たちが、最高で35ノット出せるのに、それを率いるあたしだけ30ノットとか、何のための引率役やら……」

 しまった、今度はこっちかい。

〈島風〉「島風には誰も追いつけないよっ!」

 だから、お前ひとりが速くてもダメなんだってば!

アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(13)

2013年6月21日 アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌 No comments

●巡洋艦と駆逐艦を育成してみる

 艦隊これくしょんは、課金のない状態では保有艦数は100隻が限界だが、実際には、こんなに数は必要とされない。
 編成は4艦隊で、1艦隊6隻なので24隻あれば全艦隊が最大数で出撃できる。

 このうち、巡洋艦と駆逐艦が主力となるのが第2~第4の遠征艦隊だ。
 私は遠征艦隊を軽巡洋艦×2隻、駆逐艦×4隻で編成しているので、3個遠征艦隊で、必要とされるのは軽巡洋艦×6隻、駆逐艦×12隻である。
 〈金剛〉シスターズの高速戦艦が4隻そろったことで、遠征用の第4艦隊が使用可能となり、資源不足はかなり解消された。
 現時点では遠征任務は、海上護衛任務、タンカー護衛任務、鼠輸送作戦を中心に回している。

 一方で主力である第1艦隊であるが、海域を先へ先へと進むにつれ、どうしても戦艦と空母の出番が多くなってくる。
 いわゆる、主力艦と呼ばれる艦種だ。
 現時点での我が鎮守府艦隊は以下の主力艦を有している。(※は低速艦)

高速戦艦
〈金剛〉改 Lv49
〈比叡〉改 Lv35
〈榛名〉  Lv22
〈霧島〉改 Lv44
航空戦艦
〈扶桑〉改 Lv45※
〈山城〉改 Lv38※
〈伊勢〉改 Lv35※
〈日向〉改 Lv28※
正規空母
〈赤城〉改 Lv52
〈加賀〉改 Lv42
〈蒼龍〉改 Lv35
〈翔鶴〉改 Lv43
軽空母
〈祥鳳〉改 Lv52
〈飛鷹〉改 Lv35※
〈隼鷹〉改 Lv36※
〈鳳翔〉改 Lv28※
〈龍驤〉  Lv23
〈千代田航〉Lv17
〈千歳航〉 Lv15

 現時点で最強の戦艦である〈長門〉〈陸奥〉はまだ未加入で、これに正規空母の〈飛龍〉〈瑞鶴〉をデイリー建造とドロップで狙っている。
 ひとつの艦隊には6隻しか入らないので、これらの主力艦を第1艦隊内でローテーションするだけでも、相当な数、出撃を続けることができる。

 しかし、主力艦ばかりの艦艇は、ゲーム的に不利益がなくとも提督である私の気分が不安になってしまう。誰と競うでもない、文字通り艦隊をコレク ションするゲームである。ここは限度枠いっぱいまで駆逐艦や巡洋艦を取り入れておこうではないか。そして、主力艦隊である第1艦隊が出撃する時には、戦力 としては反映されないが、周囲を巡洋艦や駆逐艦が取り囲んでいる、という風に考えて悦にいりたいものである。

〈名取〉「いいんですよ、私。別に戦力として使えない艦でも」

 おう……聞いていたのか。

〈名取〉「私がお手伝いできたのは、まだ主力艦がそろう前の戦いですものね。主力艦がそろって、空襲や長距離砲撃戦が可能になれば、魚雷を抱えて突っ込むしかない私なんか、お役に立てませんよね」

 ああ、いやその。

〈名取〉「だから、私は気にしてませんってば。駆逐艦娘ちゃんも好きですし、一緒にのんびりと遠征任務に行くのもいいかな、って思ってます。ああでも、そうなると、提督からいただいたこの酸素魚雷とか、必要ありませんよね。取り外して、爆雷を搭載しようかな」

 わかった、わかったから。
 これからは、駆逐艦と巡洋艦も育てていきます。はい。
 実際、史実の太平洋戦争においては主力艦の出番はあまりなかったのだ。
 ハワイ真珠湾奇襲作戦や、ミッドウェイ作戦が華々しく伝えられてはいるが、ああいう主力艦がぞろぞろ出て両軍がぶつかるという戦いは、そう何度も発生していない。
 特に戦争後半になると、主力艦がでても、まるで華々しくない。日本軍がぼろぼろ沈むだけだからだ。これは別に、日本の艦娘が特別に弱いわけではない。
 現実の戦場には、1艦隊6隻制限など存在しないからなのだ。

 考えてもみてほしい。艦これの戦闘システムで、こちらに6隻主力艦がいて。
 敵側に、40隻くらい戦艦と空母がずらずら並んでいる状況を。
 戦闘が始まるや、こっちが6回砲撃するたびに、向こうは40回バカスカ撃ってくるのである。加えて、こっちはへたをすると、最初の空襲で半分くらい中破している。
 こんなクソゲーやってられるか!という気分になること請け合いである。

 戦力に差がありすぎ、ナニをやってもダメだということになると、日本人の指揮とか組織運営とか、そういうのとは無関係に無力感と虚無主義が忍び寄ることになる。誰でも『皇国の守護者』の新城直衛のようになれるわけではないのだ。
 自分の力が何の役にも立たない、という気持ちほど人と組織を腐らせることはない。

 自分にできることがある。
 自分ががんばれば、何かを良くできる。

 そういう気持ちが大事だと思うので、やはりここは巡洋艦と駆逐艦の底上げもきっちり行っていこう。
 史実では、その力を十分には発揮できなかった、彼女たちと――彼女たちと共に戦った男たちのためにも。

アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(12)

2013年6月14日 アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌 No comments

●チョークポイントとしての海峡
 南西諸島海域を落とし、北方海域と西方海域への道が開かれた。
 この、ある海域を制圧したら別の海域へ行けるようになった、という流れは戦略上重要なチョークポイントである海峡(NarrowSeas)をユーザー艦隊が制圧したから、と考えることができる。

 明治になり、近代国家となった日本にとって最初に国家戦略上重要なチョークポイントとなったのが、対馬海峡である。大陸に侵略するにせよ、大陸か ら侵略されるにせよ日本列島と大陸との距離がもっとも短くなる対馬海峡は重要なチョークポイントであり、ここを日本に敵対する勢力に制圧されれば、著しく 不利になる。日清戦争、そして日露戦争は、日本の国家防衛という視点で言えば、対馬海峡を日本が確保し、日本列島を“より安全”にすることが最大の目的で あったと言える。
 逆に言えば、日露戦争におけるロシアの目的もまた、この対馬海峡を大陸側から制圧する朝鮮半島を自国の影響力に置くことだった。当時、ロシアはウラジオ ストックと旅順の二カ所に海軍基地を建設できていたが、朝鮮半島が日本側の勢力圏にあったことでこのふたつは分断され、その力を著しく弱められていた。こ れは、当時の軍艦が石炭焚きで、太平洋側をぐるりと遠回りするだけの機動力がなかったからでもある。もし朝鮮半島、そして対馬海峡をロシアが支配したとこ ろで日本を植民地にするほどの余力はなかったろうが、本土が“より危険”になった日本がロシアの影響を無視できず、その動向に引きずられるようになったこ とは間違いない。軍事力の使い方の基本は抑止力であるが、この抑止力には

「ワシに逆らったら、どうなるか、ようよう考えた上で判断せえよ」

 という、相手がこちらの利益を無視して好き勝手な行動することを“抑止”する意味合いが強い。国家レベルでやることというのは、民間レベルで考えればヤクザの手口とあまり変わりはない。少なくとも“抑止”される側にとっては、そうだ。

 世界に冠たる大英帝国もまた、世界中にあるチョークポイントを己の勢力下に置くことで、その支配力を拡大してきた。地中海の西の出口であるジブラ ルタル海峡、東の出口であるスエズ運河は英国海軍のコントロール下にあった。北にある黒海はロシアのものだったが、黒海から地中海への出入り口であるボス フォラス海峡はトルコの勢力圏にあり、イギリスはトルコが自分の味方になることがなくとも、ロシアの味方にはならぬよう気を配っていた。
 インド洋から太平洋への出入り口にあるシンガポールもまた、長くイギリスの至宝であった。東南アジアは無数の島が存在するが、特に海に突き出るように なったマレー半島と、スマトラ島に挟まれたマラッカ海峡は、21世紀の現代においても海運の大動脈である。この太平洋側の出口を塞ぐシンガポールに、イギ リスは海軍基地を置いて一帯を勢力圏に置いたのである。

〈雷〉「はい提督! 質問があるんだけど!」

 何かね〈雷〉くん。
 ……どうでもいいけど、そうやって〈電〉たち第六駆逐隊が机並べてると、小学校っぽくなるな。

〈暁〉「一人前のレディに向かって小学生なんて、失礼しちゃうわ」
〈響〉「ま、遠征任務よりは勉強の方が気楽でいいね」
〈電〉「いつもは駆逐艦娘でローテーションしてるのです」

 そろそろ、遠征任務以外で育てる方法も考えないとなー。で、質問はなんだ?

〈雷〉「私たちが、南西諸島海域の敵艦隊を撃破したことで、南西諸島海域から北方海域、西方海域につながる海峡が制圧できたってコト?」

 うん。ゲーム的には、艦これは海軍のゲームだ。プレイヤー提督が艦隊決戦で勝利して航路を安全にした後、輸送船が陸軍部隊を上陸させて、海峡を扼する島や基地を占領したんだろう。
 ただ、これはオフィシャルではなくて、私が推測したことだからね。

〈雷〉「西の海にはカレーや紅茶があるから重要なのは分かるけど、北の海に行ってもいいことはないような気がするわ。寒いし!」

 そりゃあね。けど、これは現実の方の地球での話だけど、北極の氷が溶けて小さくなってくることで、北極海航路というのが脚光を浴びている。これま で閉ざされて航路としては使えなかった北極海が、気候の変化と、衛星などを利用した氷や海流の監視能力の強化で、経済的に見合う航路へと変化していきつつ あるんだ。
 環境とテクノロジーの変化によって、それまで重要でなかったものが、重要になることがある。北方海域も、そういう風に見ることができるかもしれないね。

 ……いかん、口調まで教師っぽくなってしまった。

アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(11)

2013年6月12日 アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌 No comments

●南西諸島海域の落日
 十分な資源も貯まり、艦娘たちのレベルも上がった。
 いよいよ南西諸島海域の最終マップを攻略すべきか。
 沖ノ島海域に集結した我が艦隊は、何度かの威力偵察によって敵根拠地の戦力を確認した。

 2-4:南西諸島の沖ノ島マップは、戦略的縦深が深い。
 マップボスの潜む最深部に至るまでに、最低でも3回の戦闘をくぐり抜ける必要がある。
 これまでも何度か、空母4隻からなる機動部隊を送り込んだが、いずれも途中で空母が損耗して、撤退を余儀なくされている。

 史実においても、空母は強力ではあるが戦力を消耗しやすい艦種として知られている。空母の戦闘力は言うまでもなく艦載機に依存している。空母そのものが無事であっても、艦載機が消耗すれば戦力は低下する。
 そして、空母の艦載機は、一回の全力出動でかなりの損耗を被る。撃墜、被弾もさることながら、生き残った場合でも機体とパイロットを限界まで酷使するた め、二度目、三度目の出撃では実力を発揮しきれなくなるのだ。戦争後半になり、空母艦載機の半数が戦闘機となって、レーダーやVT信管を使った防空体制が 整うようになると、二度目の出撃が事実上不可能になるくらい、空母艦載機は消耗するようになる。
 湾岸戦争などの現代空母戦においても、損害こそ少なくとも空母は大量の弾薬と燃料を消費するため、しょっちゅう、補給艦から弾薬と燃料を補給しなくては戦力が維持できなかったほどだ。

 艦これでは、パイロットの疲労や整備不良のような細かいデータまで再現しているわけではないだろうが、空母もまた敵の砲撃を受けることで、間接的 に空母の消耗を表現していると私は想像している。昼間の砲撃戦で駆逐艦に空母がダメージを受けているのは、あれは、駆逐艦によって空母搭載機が迎撃されて 消耗していることを表現しているのだ……という風に見ているのだ。

 空母機動部隊は、濃密な敵の迎撃網をくぐり抜けることが難しい。
 となれば、戦艦である。鋼鉄の軍神娘たちは堅牢な装甲を持ち、強力な火砲を搭載している。迎撃によって損害を受けても、戦闘力の低下は極限まで抑えられる。
 そういう計算で、打撃艦隊が編成された。

 旗艦:戦艦〈金剛〉改(Lv36) 41cm連装砲、35.6cm連装砲、15.5cm三連装副砲、21号対空電探
       戦艦〈霧島〉改(Lv36) 41cm連装砲、35.6cm連装砲、15.5cm三連装副砲、21号対空電探
       戦艦〈扶桑〉改(Lv39) 46cm三連装砲、35.6cm連装砲、21号対空電探、瑞雲偵察機
       戦艦〈山城〉改(Lv32) 35.6cm連装砲×2、21号対空電探、瑞雲偵察機
       空母〈加賀〉改(Lv36) 紫電改2型×20、彗星艦爆×20、流星艦攻×46、応急修理要員
       空母〈赤城〉改(Lv45) 紫電改2型×20、彗星艦爆×20、流星艦攻×32、応急修理要員

 燃料も弾薬も1回の出撃で400くらい吹っ飛ぶだろうし、修理の鉄鋼やボーキサイトも、相当な量になることが推測される。
 しかしそれでも、手持ちの戦力で最良の部隊を投入せねばここは突破できない、と判断し、私は彼女たちに出撃を命じた。

〈金剛〉「まっかせなサーイ! 勝利の栄光を、ユーに!」

 頼んだぞ。……あ、ちょっと待て。今の台詞、ガルマ出撃前のシャアの台詞じゃ?

〈霧島〉「お任せください、司令。私の計算では勝利の確率は98%以上です」

 うわー、不安だ。

〈扶桑〉「はぁ……空はあんなに青いのに……」

 扶桑姉さん? もしもし、もしもーし? おーい、山城。姉さん、大丈夫か?

〈山城〉「大丈夫。姉さんは私が守るから……たとえ提督の命に替えても!」

 勝手に俺の命と替えるなよ!

〈加賀〉「なるようにしかならないわ、諦めも肝心よ」

 自分の命は諦めたくないよ!

〈赤城〉「安心してください提督。私たちは、資源尽きるまで戦います!」

 命尽きるまでじゃなくて、資源尽きるまでか。お前さんだけは、平常運転だなぁ。

〈赤城〉「いつの間にやら、妖怪食っちゃ寝ですからね。いいんです! 食いしんぼキャラでもキャラ立ちしてる方が、その他大勢で埋没しちゃうより!」

 ま、ほどほどにな。

 こうして主力艦隊を送り出す一方で、資源の備蓄も続ける。第二艦隊を海上護衛任務に、そして第三艦隊は鼠輸送作戦に。鼠輸送作戦は、バケツ(高速修復材)が手に入りやすいので、大きな作戦で消耗しやすいバケツの補充にもってこいなのだ。
 どうせ、ボロボロになって帰ってくるだろうから、バケツは十分揃えておかないと。

 そうして――

〈扶桑〉「瑞雲偵察機が帰ってきたわ。敵の中核艦隊は戦艦3、重巡1、駆逐艦2。敵の旗艦は練度フラグシップで、残りもエリートよ」
〈霧島〉「ここまでの我が艦隊の損害は、〈山城〉さんが小破で来ることができました。敵に空母はいませんし、大丈夫、勝てます」
〈加賀〉「そうとも言えない。硬くて避ける敵ばかりなので、空襲の効果はむしろ下がる。私と〈赤城〉の艦載機では削ることしかできないだろう」
〈金剛〉「どちらにしても、ここは前進あるのみです! サーチ&デストロイ!  “England expects that every man will do his duty”(英国は諸君がその義務を尽くすことを期待する)なのデス!」
〈山城〉「なんですの、その台詞は?」
〈金剛〉「ナポレオン戦争の時代、トラファルガー海戦でのネルソン提督の言葉デス」
〈赤城〉「義務を尽くす、ですか。いい言葉ですね。勝敗は時の運。願えば勝てるという甘いものではありません。そして、だからこそ、私たちは、私たちの義務を――最善を尽くしましょう」

 戦いは、深夜にまで及んだ。
 昼間の戦いでは〈赤城〉が大破。残りhpが1まで追い込まれる。
 日没になった時、旗艦〈金剛〉は〈赤城〉の轟沈を恐れて撤退を考えたが、そこで満身創痍の〈赤城〉から信号旗が上がった。

“Country expects that every man will do his duty”

 〈金剛〉は夜戦を決意し、自らが先頭に立って傷ついた敵フラグシップ戦艦に突入、これを撃沈する。残りの敵艦もことごとくを沈め、〈金剛〉にとっては姉妹艦にあたる〈比叡〉が解放されて艦隊に合流する。

 こうして南西諸島海域は制圧完了し、西方と北方の海域への扉が開かれたのだ。
 そして、ドックでは。

〈赤城〉「いやー、面目ありません。えへへー」

 残りhp1。鋼材342、燃料182を消費して、修復時間は13時間43分か。
 本当にお前は……

〈赤城〉「まあ、その、ちょっと張り切りすぎちゃいまして――きゃっ?!」

 おかえり〈赤城〉。無事で良かった。

〈赤城〉「……はい。ただいま、です」

アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(10)

2013年6月11日 アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌 No comments

●水雷戦隊の憂鬱
 海軍休日(ネイバルホリデー)を始めて数日が経過した。

〈天龍〉「提督ー、暇だー、戦争しようぜ、戦争ー」

 積極的な攻勢に出ず、新たに加わった正規空母と戦艦のレベル上げと改造に専念していたせいで、しだいに資源が蓄えられてきた。

 石油:10k(1万)
 弾薬:12k(1万2千)
 鋼鉄:4k(4千)
 ボーキサイト:9k(9千)
 バケツ:30個
 司令部レベル:57(資源備蓄最大数15k)

 資源は期間限定マップ攻略以前の数字を超えるようになった。
 修理用ドックが4つになったので、バケツの消費も抑えられている。

〈天龍〉「資源余ってんじゃんかよー。殴り込みしようぜー、新しいマップでよー」

 こうしてのんびりと、鎮守府の港に釣り糸をたらしつつ資源の備蓄とレベルアップを繰り返していると、なんとなくこのゲームというものが見えてくる。

 艦これというゲームでは、資源というリソースを艦や装備(ハードウェア)に交換するか、あるいは、戦果とレベルアップ(ソフトウェア)に交換する か、提督が決めることができる。戦果の中にはドロップされる艦娘の確保もあるが、図鑑が埋まってくると、ほとんどの艦娘はだぶりであり、戦力化されること なく既存の艦娘に食われて、性能アップに使われることになる。

〈天龍〉「あれ? 俺、食わせてもらったことないぜ?」

 レベルが上がり、艦娘を改造(進化)させると、他の艦を食わせて得たボーナスはなくなる。そのため、改造した後に食わせる方が効率が良いし、無駄もない。

〈天龍〉「じゃあ、レベルアップさせろよー。空母や戦艦ばかりずるいぞー」

 いやあ、それがなぁ……お前は名前はスゴイんだけど、基本性能がなぁ……〈天龍〉って、英語にするとスカイドラゴンとかハイドラゴンとか、そんな 感じで、上級ルールブックにのってそうな名前なのに……オリエント系の古代種ドラゴンっつうたら、たいてい、魔法とか使えるんだぜ。なのにお前が使えるの は、酸素魚雷だけ。

〈天龍〉「RPG脳はやめろよ! 酸素魚雷が搭載できるんだからいいだろ!」

 うむ。魚雷攻撃は一発逆転の兵器で、酸素魚雷は夜襲では恐るべき効果を発揮する。それは認めよう。

〈天龍〉「だろ? 夜襲は艦娘のロマンだよなっ!」

 しかし、夜襲まで戦いが続くと、たいていボロボロになってんじゃん、お前。

〈天龍〉「ぐっ」

 敵に空母がいれば、空から爆弾降ってくるし、戦艦がいれば、2回砲撃&空襲がある。
 その間、無事でいられればいいが、当たれば軽巡や駆逐艦はタダではすまない。

〈天龍〉「そこを耐えるから、ロマンだろうが!」

 うん、そうなんだがな。ぶっちゃけると、そこまで敵を生かしておく方が戦い方としては、悪手なんだ。

〈天龍〉「う?」

 空母を使えば、敵に一撃も撃たせることなく沈めることができる。戦艦の砲撃で魚雷を撃つ前に仕留めるのもいい。
 人間の兵器の進化には、遠戦志向がある。より遠くから攻撃し、より我が身が安全になるようにする。我らがご先祖様は石のナイフに棒をくっつけて槍とし、さらには弓矢を作り出した。罠を仕掛けてそこに獲物を追い込む方法を考え出しもした。
 そして21世紀の現代、アメリカなどの先進国では安全な場所にいる兵士が遠隔操作で動かす無人機が、はるか彼方で敵を攻撃するようにもなっている。

 艦これにおいても、艦娘に戦艦や空母がそろいはじめると、これら強力な艦娘にリソースを集中して育てる方が、結果的に損害が少なくなって効率的なのだ。

〈天龍〉「むー……そりゃ、提督がそれでいいなら、俺が無理強いするわけにはいかないけどよ……でもよ、ゲームでまでそんな効率考えて楽しいのか?」

 効率の良いことをするのは、これはこれで楽しいのだ。
 しかし、お前の言うことにも一理はある。効率ばかり考えると、飽きがくるのが早い。
 たとえ非効率でも、ロマンを優先する時の方がドラマが生まれやすいこともある。

〈天龍〉「だろ? だろ? じゃあ、さっそく……」

 うむ、〈大井〉と〈北上〉と、ついでに拾ったばかりの〈夕張〉を育てて重雷装艦隊を作るのもいいかもしれんな。
 ……あれ、どうした〈天龍〉?

〈天龍〉「……うわーんっ、提督のバカーっ!」

 ちょっとからかいすぎたかな。
 けど、そろそろ南西諸島海域をクリアするため、沖ノ島海域攻略にかかる頃合いかもしれん。

〈龍田〉「だめですよー、提督さんー? 〈天龍〉ちゃんをいじめる時には、私の許可をとってくださらないとー?」

 はい、すみません。謝ります。私が全面的に悪うございました。

アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(9)

2013年6月7日 アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌 No comments

●海軍の休日(ネイバルホリデー)
 ネイバルホリデーとは、1922年に締結されたワシントン軍縮条約によって、各国海軍の建艦競争が抑制された日々のことを指す。
 うちの艦娘たちの運命への影響で言うと、戦艦として建造を予定されていた〈赤城〉は空母となり、条約の制限一杯に武装を詰め込んだ〈妙高〉型重巡洋艦は、〈足柄〉さんが餓えた狼と評されるようになった。

 この条約で各国は戦艦の建造を中断することになり、日本でもギリギリ間に合った(ことになっている)〈陸奥〉以後、戦艦は長らく建造されなかった。
 軍縮条約を破棄した日本が〈大和〉の建造を開始するのは、1937年。その間、日本は大正時代に建造した戦艦を、改装を続けながら主力としていたのである。

 期間限定海域のマップ3「湾内突入」攻略を成功させたとはいえ、鋼鉄資源とバケツのことごとくを使い果たした結果、我が艦隊は否応なしに海軍休日へと突入した。
 出撃した戦艦空母のほぼすべてが穴だらけになりながら煙をふきつつよたよたと帰って来た時には、居残り組の駆逐艦娘たちは青くなったが、どうやら全員が無事だということで、ほっと安堵する一幕もあった。

 また、期間限定海域の攻略によって、新たな艦艇も加わった。

 正規空母の〈加賀〉と〈翔鶴〉。
 資源の都合もあって〈赤城〉1隻だけで回していた空母機動部隊の新たな主力艦である。
 〈加賀〉は元戦艦で、やはりワシントン軍縮条約の影響で空母として誕生した。
 〈翔鶴〉は最初から航空母艦として建造された〈蒼龍〉〈飛龍〉に続く新設計の正規空母だ。ミッドウェイの戦いで〈赤城〉〈加賀〉〈蒼龍〉〈飛龍〉が一気に失われた後は、数少ない主力空母として奮戦を続けた。
 搭載機数が多いので、レベルアップすれば頼りになるはずだ。

 高速戦艦の〈金剛〉。
 かつて日本の同盟国であったイギリスで建造された戦艦である。艦娘的には、帰国子女扱いのようだ。

 資源がなくなって海軍休日になったとはいえ、遠征艦隊に資源調達を任せるばかりでは暇である。これら、新たに加わった艦娘を中心に、育成艦隊を編成してレベルアップを行っていくこととした。

艦娘育成艦隊
 旗艦:空母〈翔鶴〉 紫電改2×21、彗星艦爆×33、流星艦攻×21
          戦艦〈霧島〉改 41cm連装砲、35.6cm連装砲、15.5cm三連装副砲、12.7cm連装高角砲
          戦艦〈金剛〉 35.6cm連装砲×2、12.7cm連装高角砲
          空母〈加賀〉 零戦52型×18、彗星艦爆×18、流星艦攻×45
 ※残り2艦は、適当に重巡と軽巡を組み合わせて

 期間限定海域で、潜水艦の襲撃が多発したことから考えて、今後、どの艦種が必要になるかは分からない。これまでは攻略を考えて特定の艦娘だけレベルアップしてきたが、それでは依怙贔屓と……ではなく、戦場の変化への適応能力が下がるリスクがある。

 まんべんなく育てる……とまではいかないが、〈五十鈴〉のようにレベルが上がったら、改造して良い装備を手に入れられる艦も多い。今後は、できるだけ多くの艦娘を育てよう。

〈五十鈴〉「あたしのレーダーかえせーっ!」

 聞こえない、聞こえない。

●修理用ドック増設
 巡洋艦や駆逐艦のような打たれ弱い艦娘を安心して育てられるよう、修理用ドックを課金して2つ増設することにした。
 脳内ドラマ的には、我が根拠地艦隊が期間限定海域でそれなりの成果を上げたことへのご褒美、という風にしておく。

 それにしても、修理用ドック4つというのは、実に快適である。今まで2つしかないドックを早い者勝ちで艦娘が奪い合い、先のマップ攻略戦ではドッ クを早く空けるためにバケツがどんどん消えていったのだが、4つあればかなり柔軟に艦娘の修理を進めることができる。資源の枯渇と共に、修理ドック2つが 艦隊運用のボトルネックになっていたことを実感する日々である。

〈赤城〉「スポーツ活動でたとえると、シャワールームの増設でしょうか」
〈名取〉「それ、すごく重要ですよね。これからの時期は特に」
〈足柄〉「汚かったり、水の出が悪いシャワールームだと、やる気がすごく落ちるものね。こういう福利厚生の部分も、戦力の重要な要素よ」

 いや、その通りなんだが、居住性を犠牲にして戦闘力向上を狙った設計の〈足柄〉に言われると、なんだか釈然としないな、おい。

〈加賀〉「そこまで理解しておいて、これまで修理ドックを2つだけにしておいた提督にこそ、言われたくない……」
〈金剛〉「きっと、提督にも理由があったのデース! 人には言えない理由が!」
〈隼鷹〉「ふーん、ほんならこれまで修理ドック解放せんと意地悪しとった提督は、汚れた艦娘の匂いをくんかくんかする変態さんやったいうことやな。そら、人には言えんわなー」

 濡れ衣だっ! 人に変な性癖を追加するな!

〈祥鳳〉「その……飛行甲板さえ、清潔にしていただけるなら、私は別に……」

 お前も、耳まで真っ赤になるほど恥ずかしいなら、口にするなよ!

〈龍田〉「だめですよー、提督さんー? 女の子を泣かしたら、めっ、ですからねー」

 はい、すみません。謝ります。私が全面的に悪うございました。

アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(8)

2013年6月4日 アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌 No comments

●期間限定海域マップ3「湾内突入」
 ひたすら任務をこなし、遠征を繰り返して資源を貯めることしばし。
 ある程度の資源が蓄積された。

 石油:8000+
 弾薬:8000+
 鋼鉄:4000
 ボーキサイト:8000+
 高速修復材(バケツ):26

 まずまずの、物資備蓄である。
 同時に湾内に突入する、第1殴り込み艦隊も編成される。

旗艦:空母〈赤城〉改 紫電改2×20、零戦52型×10、彗星艦爆×20、流星艦攻×32 
航空戦艦〈扶桑〉46cm三連装砲、35.6cm連装砲、21号対空電探、瑞雲偵察機×10
航空戦艦〈山城〉35.6cm連装砲×2、21号対空電探、瑞雲偵察機×10
戦艦〈霧島〉改 41cm連装砲、35.6cm連装砲、15.5cm三連装副砲、零式水上偵察機×3
軽空母〈祥鳳〉改 零戦52型×18、彗星艦爆×12、天山艦攻×12、応急修理女神
軽巡洋艦〈名取〉改 20.3cm連装砲、12.7cm連装高角砲、61cm四連装(酸素)魚雷

 予備艦(損傷時交代艦)
航空戦艦〈伊勢〉35.6cm連装砲×2、12.7cm連装高角砲、瑞雲偵察機×11
軽空母〈隼鷹〉改 零戦52型×18、彗星艦爆×18、天山艦攻×18、応急修理要員
軽空母〈飛鷹〉改 零戦52型×18、彗星艦爆×36、応急修理要員
軽巡洋艦〈五十鈴〉改 20.3cm連装砲、12.7cm連装高角砲、61cm四連装(酸素)魚雷

 轟沈で艦娘が失われるときついが、そうでなければ、ある程度の目算を立てての攻略が可能である。
 何より、期間限定マップは、6月5日まで。これを逃せば、敵泊地に捕らえられている正規空母〈翔鶴〉を救出する機会が失われるのだ。

〈赤城〉「え、そんな話、初めて聞きましたよ?」
〈祥鳳〉「どこにも書いてないわよ。そんなこと」
〈電〉「でっちあげなのです!」

 ええいうるさい。ゲームというのは、こうやって脳内ドラマを妄想して楽しむのだ。
 期間限定海域マップは、通常のマップと違い、1回ボス戦に勝利してもクリアとならない。連続した攻勢を仕掛けなくてはクリアできない上、時間の経過と共に敵戦力が回復してしまうのだ。
 それゆえに、攻略をかける時には、修理のためのバケツ(高速修復材)と資材の備蓄が必須となる。

 さらに、「湾内突入」マップは特別なボス敵として泊地棲鬼と空母フラグシップ、エリート艦隊が最奥にいる。万全の状態で挑んでも、かなりの強敵だ。加えて、潜水艦の攻撃もしのがなくてはいけない。
 潜水艦相手は諦めて、空母と戦艦ばかりの艦隊編成も考えなくもなかったが、その場合、途中で潜水艦の雷撃で損害を被れば帰還せざるをえない上、現時点での艦隊のボトルネックは、資材とバケツである。無駄に損害を受ける危険は冒せない。
 そこで、艦隊最後尾の1隻は、対潜戦能力に優れた軽巡洋艦に守ってもらうこととした。レベル30の〈名取〉改は対潜41、レベル21の〈五十鈴〉改は54もの対潜能力がある。空母の爆撃と合わせれば、十分な護衛だ。

 作戦開始!

 いきなり3連続で、敵ボスにたどりつけないというアクシデントに見舞われる。
 最初の敵前衛艦隊を排除するところで空母や軽巡洋艦が大破して引き返したり、最後の湾の手前で、ルーレットによって道を変更させられたり。

 ボスにたどりついてからも、苦戦は続いた。
 今度は2連続で敗北と戦術的敗北。ボスの泊地棲鬼のヒットポイントを削りきることができないまま、その周囲の護衛艦隊に艦隊がぼこぼこにされてしまったのだ。

〈霧島〉「うう……私の完璧な計算が……」

 不甲斐ないのが眼鏡な知的美人〈霧島〉さんである。やたら敵の弾が当たる。そして誘爆するのか、すぐに中破、大破の判定を受ける。高速戦艦〈金剛〉4姉妹は、高い機動性の代わりに防御力に難があるのだが、これでは困る。それこそ“計算が立たない”。

〈霧島〉「提督? なんだか目が怖いですよ……いやっ! いやああっ!」

 〈霧島〉から41cm砲をはぎとり、航空戦艦〈伊勢〉に回す。

〈伊勢〉「ええっ? いいのかい? 正直、パラメタで言えばあたしが一番、装甲は薄いぜ? あたしは80だけど、〈扶桑〉〈山城〉姉妹は89。〈霧島〉だって84だ」

 こういうのは、数字じゃない。どういうわけか、お前は敵の砲撃を受けてもダメージがあまり通らない。その幸運(確率の偏り)に賭ける。

〈伊勢〉「分かった。ごめん〈霧島〉、後で返すから」
〈霧島〉「大事に使ってくださいね?」

 すでにこの時点で、バケツ(高速修復材)は10個以上消耗していた。負けてるわけだから、損害が大きいのは道理だが、だとしてもこの流れはよくない。

 そして、この流れを変えたのが、やはりあの艦娘であった。

〈名取〉「あ、あ、あ……当たってくださ~~~いっ!」
〈泊地棲鬼〉「ギャアアアッ!!」

 夜戦で酸素魚雷を敵ボスにたたきこんでトドメを刺したのである。
 雷装パラメタ99(酸素魚雷込み)は伊達ではない。ここぞという時に頼りになるヤンデレである。
 酸素魚雷は、魚雷のエンジンを回すのに圧搾空気ではなく、純酸素を利用している。そのため、他の魚雷であれば発生する空気の白い泡が航跡として発生せ ず、敵に発見されることなく、その脇腹に突き刺さるのである。撃たれた側の艦の水兵の目撃証言から酸素魚雷が『青い死神』と呼ばれたという、まことしやか な噂もあるほどだ。

 〈名取〉の一撃で初勝利が得られると、その後、流れは一気にこちらに傾いた。
 とはいえ、ルーレットで追い払われることもあるし、今ひとつダメージがふるわないこともある。そしてたとえ勝利しても、ボス戦をくぐり抜ければ無傷とはいかない。
 修理に使う鋼鉄の在庫はみるみるうちになくなっていき、バケツもまた、消える。

 そしてついに。
 最後のバケツ(高速修復材)が、〈赤城〉に渡される日がやってきた。

〈赤城〉「あの……」

 早く食え。そして、ドッグをあけろ。他の娘が入れないだろうが。

〈赤城〉「そうではなくて、私が食べてもいいんでしょうか?」

 お前な、自分の修理にかかる時間を見てみろ。12時間だぞ! 12時間と46分! お前がそこで12時間粘ったら、この作戦はパーだろうが!
 いつもは遠慮なくバクバクバクバクバク食ってるくせに、なんでこの大事な時だけ、遠慮するんだ!

〈赤城〉「む」

 なんだ、文句あるのか。

〈赤城〉「あります。それこそ、この大事な時だからこそ、私でなくて他の艦娘にバケツと資材を回した方が、いいんじゃないですか? きっと、私より強くて――」

 だから、お前なんだよ。

〈赤城〉「私より、活躍できる艦娘が――え?」

 お前が、この艦隊で、一番強い。

〈赤城〉「冗談……じゃないですよね?」

 この資源がなくて苦しい時に、冗談なんか言うか。
 お前の艦載機を見てみろ。紫電改2×20、零戦52型×10、彗星艦爆×20、流星艦攻×32。数も機体も、この艦隊で最高だ。今回、姉妹艦の〈加賀〉 を湾で解放したが、まだレベル1。お前はなんだかんだでレベル41。これは〈祥鳳〉のレベル44に次ぐ数字だ。そして、こと戦闘力に関して言えば、お前は 〈祥鳳〉より上なんだ。
 その代わり――

〈赤城〉「その代わり、コストパフォーマンスは悪い、ですね?」

 分かってるじゃないか。お前さんは、ヤクザ映画でいえば用心棒の先生だ。食客として普段は食っちゃ寝してても、ここぞというところでは活躍してもらわないと。

〈赤城〉(ぐびっ、ぐびっ、ぐびっ)「……ぷはあっ」

 行けるな?

〈赤城〉「はい! 一航艦!〈赤城〉行きます!」

 そして。
 ついに。

〈翔鶴〉「助けていただいて、ありがとうございます!」

 期間限定海域マップ3「湾内突入」の攻略は完了したのである。

〈翔鶴〉「本当に、皆さんにはどうお礼を……えーと……聞いてますか?」

〈扶桑〉「大丈夫、山城?」(残hp53、小破)
〈山城〉「姉様の方こそ、大丈夫ですか?」(残hp13、大破)
〈伊勢〉「うわあ、最後の最後ででかいのもらっちゃったよ」(残hp4、大破)
〈祥鳳〉「敵のエリート艦艇に粘られましたね」(残hp8、大破)
〈五十鈴〉「五十鈴が夜戦で酸素魚雷でトドメでしたし! 当然ですし!」(無傷)

 マップ攻略にふさわしい激戦の結果、艦隊はボロボロになっていた。

〈赤城〉「でも、良かったですね。作戦成功して」(残hp24、中破)

 まったくだ。あそこまでお膳立てして、負けたらしゃれにならん。
 だが、勝利と引き替えに鋼鉄資材は200しか残っていない。
 バケツもなく、全員を回復させるのは当分先となるだろう。
 しばらくは休養の日々(ネイバルホリデー)となりそうである。

〈名取〉「ううう~~みんな、どこに行ったの~~?」(残hp2、攻略完了の1回前の戦いで大破)