Skip to content

ROGM回顧録16 そして敵はいなくなった

 今思い返しても、ACCAは特異な組織であった。

 まず24時間、いつ繋いでも誰かがいて、何か相談をすればすぐに反応があった。毎日、ゲームの仕様が解析され、新しい戦術が話し合われていた。人数で圧倒的不利にある教国では、組織力と戦術で対抗しなければ勝ち目がない。
 メンバーには「対人は初めてです」という人から、別のゲームで対人ギルドに所属している人まで様々で、中には日本代表チームの練習相手として駆り出されるような、本物のトッププレーヤーもいた。

 彼らと一緒に行動している内に、気づいたことがひとつある。彼らは決して味方を責めないのだ。誰かが手ひどいミスをしても、それを糾弾しない。また、作戦行動中に「議論」をしない。「多数決で」というような悠長な意思決定手順を踏まない。
 誰かが「こうしよう」と言えば全員がそれに従い、その方針がまちがっていたとしても、決定した人間を責めない。粛々と「次」に備えるのである。もちろん、内心では反駁があったかもしれない。見えないところで抗議していたかも分からない。しかし、少なくともそうした対立を表に出したり、他人に気づかせることは一切なかった。

 ACCAには、明らかに「戦場で勝つために戦うこと」に慣れた、リーダーシップの何たるかを理解したプレーヤーが何人もいた。彼らのそうした理念は、あえて言葉に出さずとも僕らに伝わっていた。僕らはそうして、勝つために純粋に特化した集団になっていった。

 2012年2月初旬、教国は中央ラスダンキャンプの西側と南側を制圧下におき、北側と東側を共和国のキャンプが押さえていた。北側には年末に僕のラスダン隣接キャンプを攻撃した強力な対人同盟がコロニーを築いており、援軍を入れるスピードも速く、僕らとしても「容易ならざる相手」と認識していた。
 しかし、南西側には次第に教国のキャンプが集まり、コロニーを形成するにつれて、僕らは自分の前線キャンプを防衛することよりも、共和国のキャンプを攻撃することに専念できるようになっていた。

 ここに至って、僕らは中央部の共和国最大の同盟と雌雄を決する決意をし、ついに戦端を開いた。彼らを中央ラスダンから叩きだし、ここを教国の支配下に置くのだ。
 乾坤一擲の大勝負。ACCAはそれまでで最大の攻撃隊を用意し、ついに突入の指示を下した。続いて高速魔導士隊も突入する。やがて、攻撃隊の戦闘結果報告が上がり、僕らは愕然とした。

 共和国のキャンプは、もぬけの殻だった。
 最初のキャンプを陥落させ、2つ目、3つ目に手をかけても、反撃らしい動きは何もなかった。狐につままれた気分で、僕らはむしろ敵を求めて進撃した。しかし、最後まで組織だった抵抗はなかった。

 敵はいなかった。
 僕らが決戦を挑んだ相手は、既に中央ラスダンを諦め、南東ラスダンに主戦場を移していたのだった。

 僕らはその時、本当の真実に気づいていなかった。
 北側にはまだ共和国の分厚いコロニーがあり、また別の強力な同盟が居座っている。彼らを排除するのは一筋縄ではいかない、と分かっていた。だから気づかなかったのだ。

 僕らがサーバー最強の組織力とドクトリンを手中に収めていた、という事実に。

Post a Comment

Your email is never published nor shared. Required fields are marked *
*
*
*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)