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ROGM回顧録44 War is over forever

 文字通り「最後の」戦いを前に、僕らにはひとつだけ決断をしなければならないことがあった。

 ラストダンジョン「アッシュ・パレス」の攻略の前には、3つの「ストーリー・クエスト」というボス戦がある。ゲームの勝敗に直接関わるものではないが、前期の流れから「ストーリー・クエストの結果によってラスボスのHPが調整されているのではないか」という意見があった。
 単純に異世界支配率で調整されているという見解もあるが、前期はここまで異世界支配率に大差のつく展開にならなかったため、前期通りの仕様になっているのかどうかも分からない。僕らには、ここであえて「ストーリー・クエストには本気を出さないよう、教国プレーヤーに通達する」という選択肢があった。ACCAでは、その方が教国に有利な調整をされる可能性が高いと踏んでいた。

ラスボス、プルミエール完全体。

ラスボス、プルミエール完全体。


 しかし、僕らは動かなかった。ここまで来たのだから、今更不自然なプレーをして国内の雰囲気を悪くすることもない。
 するべきことは、ただひとつ。教皇聖下に勝利を献上する、それだけだ。

 教皇聖下万歳!

 僕らはすべてのストーリー・クエストを最速でクリアした。世界の終焉を間近に控えてさえ、教国の結束は揺るぎはしないということを世界に見せつけた。

 そして迎えた4月24日、「アッシュ・パレス」開放。
 メンテナンス開けを僕らは「アマテラス」の上で迎えた。僕らの努力、そして何よりアマテラスのプレーヤーの、5ヶ月に及ぶ献身的な努力はついに実を結んだ。11月末頃のあの惨憺たる状況から、誰が今日この日を予想していただろうか。

 だが、油断は許されない。この期に及んでアマテラスを失陥する訳にはいかない。細心の注意を払いながら、ラスダン攻略にかかる。翌25日、僕らをかつてない衝撃が襲った。

 共和国がラスダン第一ボス、ハミエルを一番乗りで撃破した。

 最後の最後に、ラスダンからの「距離」が僕らに牙を剥いた。分かっていたことだが、アマテラスに防衛キャラクターを置きながら戦う僕らは、移動速度増加スキルの恩恵を受けられない。今期途中からダンジョン派遣回数が1日15回に増えていたことも災いした。教国プレーヤーには、15回の派遣回数を使い切れないのだ。

 あるいは、ストーリー・クエストで手を抜かなかったことが慢心だったのか。

 それでも、言葉にできないほどの苦難を乗り越えてきたはずの、アマテラスのプレーヤーの言葉は冷静だった。

「まだ、わからない。粛々と攻略しよう」

 ACCAの主力攻撃隊ですら、15回の派遣をこなすのが精一杯という状況で、他国の妨害などできるはずもない。
 最後の瞬間まで諦めない――僕らにできることは、それだけだった。

 26日、金曜日。その思いが教国プレーヤーに伝わったのか、第二ボス「サリエル」を先に倒したのは教国だった。
 行けるのか――いやまだ分からない。僕は深夜ギリギリまでかかって、わずかに2回だけ残していた派遣回数追加のチケットを使う。あとはもう、何も起こせない。
 27日、土曜日。ラスボス「プルミエール」に到達。共和国よりも先着したが、おそらく差はごく僅か。
 僕らは最後の手を打つ。みんなで守り抜いたアマテラスから防衛キャラクターを抜き、移動速度増加スキルを使用する。王国が攻撃してくる可能性は低いと見ていたが、万が一アマテラスを守り切れない場合は指令破壊して12時間の保護期間中に対人主力組の派遣を終わらせる。あとは死ぬ気で地雷をすることになるだろう。

 これが、僕らのラストプレー。

 土曜深夜にボス最終形態「プルミエール完全体」出現。そのまま攻撃を続け、僕は午前4時にすべての派兵を終える。移動速度増加スキルは最後まで偉大だった。もう、何もできない。これまでの攻撃から完全体撃破は23時頃と予想して、仮眠を取る。
 仮眠のつもりがぐっすり寝てしまい、昼前に起きてきた僕を、驚く知らせが待っていた。

「攻撃が加速してる」

 何が起こったのか分からなかった。移動速度増加スキルを使った深夜の対人主力組よりも、朝起きてきた非対人層の攻撃の方が完全体のHPを削る速度が速いというのだ。
 仮に勝利したところで、名誉の他に得られるものなど何もない。それでもなお、勝ちたいと思ってくれた仲間たちのなんと心強いことか。
「最後までラスダン隣接キャンプを死守した対人組の努力に報いたい」と言ってくれたプレーヤーもいた。
「ここまで来たのだから、最後は勝ちたい」と口々にそう言った。

 ただ勝利するためだけに集う戦友たちがそこにいた。

 正確な時刻を、もう憶えていない。確認する余裕もなかった。2013年4月28日、16時30分頃。
 正真正銘の最後の敵、プルミエール完全体は撃破された。

 勝者は――。

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