あいざわゆうのおひさるノート

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ひいくの非日常的な日常ー第一章ー書きかけ

ひいくの非日常的な日常

第一章:告白したら……、彼女は○○だった!?

「わたしには、実は秘密があるの。……わたし、実は異世界人なの」
その告白返しに、有川稔は、その二つの目を大きく丸くした。
夕暮れのふたりきりの教室は、一瞬、断ち切られたように思えた。
そしてふたたびつながり、動き出す。
グラウンドの運動部員の掛け声や、音楽室から流れる吹奏楽部のメロディーが、また稔の耳に届き始める。
え、なんだって?
そう疑問を投げかけようとする稔に、彼女──メルフィアは、追い打ちをかけた。
彼女のサラサラとした金色の長髪が左右に揺れる。
「ねえ、秘密を守ってくれる? 守ってくれるなら……、付き合ってもいいよ。
その代わり……」
そこで一度言葉を切ると、紫の瞳の彼女はいたずらっ子ぽく笑った。
彼女が稔に、自分の体を、そして顔を寄せる。
その、一見西洋人にしか見えない気品あるお姫様系美少女顔が、彼の視界を大きく占める。
彼の心臓が、一つ高鳴った。
「私達のクラブに、入ってくれるかな? 『ひいく』に」
その誘いに、
アイエエエ……!? 聞いてないよ、そんなこと!?
と、稔は内心絶叫した。
告白したはずなのに、なんで逆にわけがわからない告白返しされて、わけわかんないクラブに誘われるかな!?
こんなにミステリーな子だとは思わなかったよ!?
普通に告白したつもりだったのに!?
次の瞬間、かれはその告白の言葉にこもった「何か」に頭を殴られたように、白目をむき、大きく口を開ける。
そして、かれの体は大きく後ろへと傾き、倒れていった。
……どうして、こうなった……!?
稔の脳内で、死ぬ間際のように、走馬灯が駆け巡った……。

秋津洲学園に通う一見普通だが、厨二病でツッコミ体質の有川稔は、同じクラスの留学生のメルフィアが気になっていた。
彼女は一見お嬢様系に見えていたが、実は厨二病患者ぽい言動を留学生の友達たちと見せていた。
そのことも気になっていた稔は、思い切って放課後、誰も居ない教室にメルフィアを呼び出し、告白する。
「好きです!付き合ってください!!」
と。

そして、最初の逆告白につながるわけである。

気絶から目覚めた稔。
メルフィナは謝罪しながらも、自分がアークシャードという異世界のザウエニアと言う国のお姫様だと話す。
はじめは彼女の言うことを信じられなかった稔だが、彼女に魔法を見せられ、半信半疑ながらも話を聞くことにした。
メルフィアの言うことには、一年ほど前、ここ秋津洲から異世界に召喚された人間たちがいること。
彼らはアークシャードやいくつもの異世界で戦い、英雄となったこと。
そして彼らが地球に帰って来る時に起きたある事件で、地球と幾つもの異世界の間にゲートがつながり、異世界人がこの学校に留学してきていることなど。
しかし、稔はその話を信じられなかった。
そんな稔を、メルフィアは所属するというクラブ「異世界秘密クラブ」に半ば強引に連れて行く。

日はさらに傾き、地平線に沈みかけたその頃。
稔、メルフィア、セイレンの三人は、ある場所にいた。
そこは──。
「なにもないじゃないですか!?」
学園の片隅にある、森の中にある、小山の前だった。
秋津州学園は広大な森を切り開いて建てられた学園であり、今もところどころに、そういう森が残っているのであった。
木々が生い茂る薄闇の中で、稔は不安そうにあたりをきょろきょろと見回す。
メルフィアの言うことは、やっぱり嘘や妄想なんじゃないか、騙されたんじゃないか、と言うような表情で。
「ここで厨二病ごっこですか!? ここで妄想チャンバラですか!? ああ、それとも秘密を知っちゃったからここで絞められるとかそういうのですか!? あー俺死にたくないー!!」
「何を言ってるんですの? さっ、有川くんは中でちょっと待っててくださいな。わたくしは部長と話をしに行ってきます。セイレンも一緒に待ってて」
「わかりました姫様」
セイレンはうやうやしくおじぎをする。
そして、メルフィアは草花が生えた小山の前に立つと、何事かを唱えた。
次の瞬間。
その小山の斜面の一部が、音もなく長方形に切り取られた。
人より少し大きな長方形に切り取られた先は、IT会社のそれにも似た、金属色で染められている未来的なデザインのロビーが見えていた。
「え?」
それを見た瞬間、稔は大きく眼と口を開いた。
呆然とする間もなく、メルフィアが、
「さ、入って」
とうながしながら、自分もその長方形の空間の中へ入っていく。
稔は自分の片頬を、手でつねった。
そして顔を大きくしかめる。
本当に痛そうな顔だった。
「なにをやってるのですか? 姫様が急かしておられますよ。さあ。お入りください」
横にいたセイレンに、眼鏡越しにじろりと睨まれる。
思わず稔は身を縮こませながら、二人の後をついて長方形の入り口の中へと、足を踏み入れた。
どこでも嗅いだことのない匂いが、つん、と鼻に来た。
人気のない、金属色を基調としたチリ一つないロビーに、何脚もある銀色の奇妙な形の長ソファに、稔とセイレンは隣り合わせで座った。
メルフィアは、すたすたとロビーの奥の方にある通路へと姿を消す。
稔はあたりを見回した。
照明はLEDの間接照明のようだったが、どことなく、太陽のような暖かさを感じる不思議な色合いだった。
天井にいくつもあるディスプレイには、見たこともない文字や風景が次々と映しだされては、消え、移り変わっていく。
稔は、見知らぬ会社かディスコとかにいるような、自分がいにくいような、それでもここに来るのが待ち遠しかったような、そんな気分だった。
その気分のまま、彼は隣で無表情に待っているセイレンに質問する。
「あのー。もし、その部長とやらに入部を拒否されたら、俺どうなっちゃうんでしょうね?」
「あなたの記憶を消します。すっきりばっさりと」
即答だった。
その身も蓋もない、感情のない言い方に、稔は身を地震のように震わせた。
(おいおいどうなっちゃうんだよ。こんな訳のわからないところに来て、俺、記憶を消されちゃうのかよー!?)
目の大きさを大きくしたり小さくしたり、体を小刻みに動かしたりしながら、稔はメルフィアが消えていった通路の方を見た。
何分たっただろうか。
何回息を吸って吐いただろうか。
柔らかい絨毯を刻む軽快な足音が、聞こえてきた。
メルフィアが、駆け込んできたのだ。
その表情は、走ってきたというのに、疲れは微塵もない明るさだった。
「おまたせいたしました! 部長とお話ししてきました!
……入部を認めますだって! 今は秘密を守るという条件付きですけれども!
良かったね! 有川くんっ!!」
そう言いながら体を曲げて稔の両手を取り、台風が近い海水浴場の波のようにブンブンと揺らす。
稔は、ちょ、ちょっと待ってよ、と言いながら事態を飲み込めない様子だったが、しばらくして一言、
「それって……、記憶を消さなくてもいい、ってこと?」
と恐る恐る訊く。
メルフィアは、そんなこと不安にしてたの? と言う顔を一瞬しながらも、もとの明るい南の島の太陽のような笑顔に戻って、
「そうでございます!
さっ、行きましょう! 部長がメインホールの奥のほうで待っております!
まずはそこに参りましょう!」
言いながら彼の手を離し、立ち上がる。
今度はすっ、と背筋を伸ばし、ゆっくりと歩き出す。まるでお姫様のように。
セイレンが彼女の前を行く。
これもまるで、お姫様を案内する侍女のように。
「あっ、ああ……」
事態を未だ飲み込めていなかった稔だったが、彼女が毅然とした様子で歩き出したのを見て、カバンなどを手にして、彼女の後をついていった。
廊下は広々としていて、壁は銀色一色。壁にはどこかの風景を描いた絵画がいくつも掛けられている。
床はふわふわとした赤絨毯で、はいている靴が、くるぶしまでのめり込むほどだ。
天井は幾つもの太陽色のスポットライトが線状に並び、奥の方へと誘っている。
(どこへ行くんだろう?)
そう思いながら稔は二人の後をついていくと、大きな扉の前に出た。
映画館などでよく見られる、木製のように見える扉に、金属の取っ手がついた、両扉開きの扉だ。
そこには、執事の黒い燕尾服を来た……人間に似た姿のロボットが、二人、いや、二体、それぞれの扉の前に立っていた。
「いらっしゃいませ、メルフィア姫御一同様」
「いつもありがとう。執事自動人形さん」
稔は、えっ、という声を上げた。
(こんな精巧なロボット、ネットでも見たことがないぞ!? 一体どうなっているんだ!?)
稔は、二人の後ろでキョロキョロと執事ロボットを見回す。
だが、耳に金属製の突起物がついており、顔が人形のような固さを持っている以外、どう見ても人間にしか見えない。
……どこぞのメイドロボの男性版のようにも思えますが。
彼が混乱している間もなく、それぞれのロボットが、両扉を引いた。
開く隙間のあいだから、光と音が怒涛のように雪崩れ込む。
彼女らの目の前で、世界が広がる。
そこは──。
そこは、異形の人々だらけだった。
「えっ、ええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」
そこは、大きな室内競技場や、一流ホテルの大宴会場もかくやという広さの、ホールだった。
高い天井にはいくつも大きく、きらめくシャンデリアが備えられ、その間を、様々な色の光が、いくつも飛び回っている。
天井から視線を下ろすと、壁際を中心に大勢の人がいた。
彼彼女らは、いくつも設けられた白いテーブルクロスが敷かれた丸テーブルを中心に、何人かのグループで集まっていた。
そして彼らは、ただの人ではなかった。
「こ、これって……!?」
目を丸くする稔の目の前を、きらめく影が通り過ぎた。
稔がその影を目で追う。
それは、きらびやかな白銀の鎧に赤いマント、竜の紋章をつけた大きな盾を手にした、ファンタジー世界の騎士だった。
が、よく見ると……。
その鎧に白色の大きな機械の腕がついていて、それで盾を保持している。
彼が歩いて行った先には、数人のファンタジー的衣装に身を包んだグループが、テーブルを取り囲み談笑している。
その内の一人、黒いローブを着た魔法使いらしい人がいる。
彼は、大きな丸い宝石が先端部にはまった、長い金属の杖を手にしていた。
杖の機械的な先端部から伸びたコードが、彼の首元のプラグに挿さっている。
「ま、魔法でサイバーだ……」
稔は魔術師を見て、小さく声を上げた。
さらにその魔法使いのそばには、何らかの紋章のホログラムを、頭の上に輝かせている、チェインメイルをつけた──どうやら僧侶らしい──人などがいた。
彼らが、機械騎士の人を笑って迎える。
(げ、幻覚じゃないよな、これ?)
稔は相変わらず疑うものの、この薄くまとわりつく空気の感覚が、現実だと教えてくれる。
サイバーファンタジーの人たちの、少し離れたところを見る。
さっきの人たちとは異なる雰囲気の人達が、透明なグラスでピンク色の飲み物を飲んでいた。
見かけは、あざやかな布をいくつも着重ねた民族衣装を着た、中東系の男子達に見える。
が、彼らは頭に一個から数個の角をつけていた。
彼らは一様に、腰に金属の輝きを持った、中央部が何かを差し込むソケットか何かに思える、ベルトを巻いていた。
いかにも変身しそうだった。
「鬼にライダーなベルトっ!?」
稔は上ずった声を上げる。
さらに彼は、別な場所に目をやる。
体に電撃のような青白い光をまとい、秋津州学園の制服を着た金髪の欧州系風の男子が、あるテーブルのそばで、腕を組んで誰かを待っている様子だった。
そこに、同じく学園の制服を着て、右腕が獣と化し、左腕は機械の小手を装備した、同じく金髪の欧州風少女が、やってきた。
彼に明るく声をかける。
その男子は腕を大きく広げ、女子に笑いかけ、言葉を返す。
「ち、超能力者に超人……!?」
稔は呆然として声にならない。
その近くでは、体にぴったりフィットした宇宙服を着た数人の、スラヴ系の顔つきの男子達が、ストローを差した細長いチューブを、そばに浮かべて輪を作っていた。
彼らの前にはホログラムのウィンドウが浮いていて、それでゲームでもしているのか、その画面を見つめながら、手や視線を忙しく動かしている。
一見彼らはスラヴ系に見えるが、肌の色は青白く、とても地球人とは思えなかった。
「う、宇宙人だ……! 宇宙人がおる……! ここは宇宙ステーションなのか……!?」
稔は今や自分が今どこにいて、何を見ているのか、よくわかっていない様子だ。
それぞれの人達は、それぞれ違った言葉で会話している。
彼らの言葉は、まるで静かな合唱曲を奏でているようだった。
姿も言葉も異なる人達(?)が、このホールに満ちていた。
その彼、彼女らの間を、グラスを載せたお盆を、頭の上で宙に浮かせた人間型ロボットが、その間を魚のようにすり抜けていく。
しばらくこの集会会場の様子を、呆然と眺めていた稔だったが、やがて気を取り直すと、首をいくどか横に振る。
それから、隣にいるはずのメルフィアに、
「なあ、これってコスプレ──」
と問いかけた次の瞬間。
「ってええ!?」
心臓が数度、大きく高鳴った。
メルフィア達は、秋津州学園の赤紫色ブレザーを着ていなかった。
メルフィアは、薄いクリーム色に金の刺繍で飾られた、気品良い体と腕を覆う上着と、幾つもの菱形状のパーツにわかれた、可動式のロングスカートを身に着けていた。
ハードポイントをつけた肩からは、美しいラインの白い一対の機械の腕が伸びている。
装甲スカートから見え隠れしている、雪のように白い、太ももを覆うロングソックスと、プラスチックにも金属にも思える白いロングブーツで覆われた、適度に太く健康的にくねった足の曲線が、とても美しい。
彼女のたたずまいは、機械の戦乙女《ヴァルキリー》にも似た姿だった。
稔は、彼女にはそれが似合っていると思え、そして制服よりもずっと綺麗だ、と思った。
セイレンも似たようなもので、彼女のものよりかなり簡略化されたものだったが、クリーム色を基調とした装甲風スーツを、身にまとっている。
そのメルフィアの全身に、赤・青・緑……。様々な色の小さな光が集まっていく。
そして、体が光を吸っていく。
光を体が「食べる」ように。
稔は知る由もないのだが、メルフィアはこうやって、ここでマナを補充しているのであった。
「それって──?」
稔が彼女らをキョロキョロと魚のような目で問いかけると、
「ああ、これね。これがザウエニアのドレスですの。ドレスというか装甲服ですけれどもね」
「……どーゆーことなの!?」
「私達の世界は、術法と科学が融合している世界ですの。今も見たでしょ、あの人達を。
あの人達も、ザウエニア人でございます」
と言いながら、機械の腕で最初に稔が見た騎士たちを指差す。
稔はそちらの方を見る。
それから、メルフィアの機械仕掛けのドレスをもう一度見て、
「なん、だって……!?」
と呟いた。
その声には、よろこびの色が含まれていた。
あの日以来、含まれていなかった声色だった。
そんな彼に、メルフィアは満面の笑みで告げる。
ああ、ようやくあなたにこう告げられる、という表情で。
「ようこそ、『秘密異世界クラブ』、暗号名『ひいく』へですの! ここにあなたが信じていた世界がございます!
……そして、これからパートナーとしてよろしくお願いいたします! 稔さん!」
あるんだ……!
昔夢見た世界は、あるんだ……!
そこに、俺はいていいんだ……!
彼女と、一緒に……!
彼女の歓迎の告白と、目の前に広がる「現実」に、稔は体を震わせて、叫んだ。
「……俺で、俺で、いいのか!?   ……ありがとう! よろこんでーーーーーーーーー!!」
ホール中に、響き渡るほどに。
あちこちで様々な色の瞳が、何事かと彼を見つめていたけど、構わなかった。
「現実」は、今、目の前に広がっていた。
奇跡も。魔法も。異能も。超能力も。そして、超科学もある、異世界たちがある現実が。
彼がかつて望んでいた世界達が、そこにあった。
彼がいたかった、夢の世界が。
(ああ……。こんなにうれしいことはないよ……)
「さあ、行きますの。稔さん」
そう語りかけながら、メルフィアは肩のアームを後方に動かすと、空いた腕を腰につけ、腕で輪を作った。
稔はそれに少し驚いた表情を見せながらも、幸せの潮に満ちた表情で、
「あ、ああ!」
そう一つ首を縦に振って笑い返すと、メルフィアと腕を組み、歩調をあわせ、ホールの奥の方へと歩き出した。

○メモ

主人公的決断力
ヒロイン的洞察力
勇者的決断力
魔道士的洞察力

ローフル重点。

バーニングアクション的に大げさな表現、アクションにする?

Categories: 創作

aizawayu


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