宮澤伊織さんの『ウは宇宙ヤバイのウ! セカイが滅ぶ5秒前』がたいへん面白いSFで、私のツボにはまりまくりましたので、ここにご紹介を。

 舞台は現代日本(少なくとも最初はそんな感じだった)。主人公はごく平凡な高校生(少なくとも最初はそんな感じだったし、読み終わってもそんな感じ)。
 そこに、隕石は落ちてくるわ、暗殺者は襲ってくるわ、列強種族(列強種族!列強種族ですよ!この言葉の響きのかぐわしさ!)が地球に迫るわで、次から次へとトラブルが押し寄せるのを、元敏腕エージェントで世界線混淆機なる超絶ガジェットで世界がぐっちゃんぐっちゃんに入り混じってしまった結果、記憶を失って普通の男子高校生になってしまったという、寺沢武一さんの『コブラ』っぽい主人公君がなんとかしちゃうというお話であります。

 『銀河ヒッチハイクガイド』的とタイトルに書きましたが、ところどころに出てくるライブラリのうさんくさい記述が、まったくもって、ヒッチハイクガイドっぽいです。要約して説明しろと機械に命じると、機械が悲しそうにするところとか!

 ライトノベルのユーモアSFですと、山本弘さんの『ギャラクシー・トリッパー美葉』に近いと言えるかもしれません。

 漫画のユーモアSFですと、長谷川裕一さんの『わかりすぎた結末 あるいは失笑した宇宙 もしくはキャプテン・オーマイガーの華麗なる挑戦』的な感じでもあります。あと、不遇なタイムパトロールが出てくるあたりは、横山えいじさんの『マンスリープラネット』っぽいです。

 本作品のポイントはやはり、状況が悪くなると、世界をぐっちゃぐちゃにして何とかしてしまう世界線混淆機の大活躍と、それによって、どんどん世界が変革されていくスットコドッコイな展開、さらにそれが、「学校の授業の内容」という形で半ページでさらりと要約される手際の良さでありましょう。

 主人公も、周囲のキャラクターも、みな、愉快で気のいい連中で、安心して読むことが出来ます。

 売れ行きがよければ、2巻以後もあるみたいですので、ここは興味を持たれた方はぜひ! ぜひ! 私が続きを読みたいので! 脳の因果地平が広がるとか、生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答えが手に入るとか、そういうことはありませんが、にやにや笑いながらページをめくる楽しさに満ちた、たいへん良質のユーモアSFであることは、保証いたします。