お前ら、月がすごく綺麗だぞ(ラリイ・ニーヴンの傑作短編『無常の月』を2chのスレッド風味に)

2014年11月21日 小説, SF 2 comments

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 2008年、ということで今からちょうど6年前に書いてblogにもあげたSFパロディ短編であります。

 掲載したブログが消滅していたので、こちらにアップし直しました。

 ラリイ・ニーヴンの『無常の月』(1972年)をSNS仕立てにしてみたものです。SFの中にはこういう風にしてみると新しい味わいがあります。

 筒井康隆先生の『おれに関する噂』なんかも、ツイッター形式にすると面白そうです。

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1 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:11:53
 外を見てみろ、月がすごいぞ

3 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:15:11
 俺も見た。すごいよな。

11 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:15:21
 そりゃ、満月だからきれいだろ……な、なんじゃあれはーっ!!

14 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:16:33
 びっくりした。
 俺の部屋からは月は見えないんだが、窓の外が急に明るくなったので外に出てみた。
 すると、満月が直視できねーほどに明るくなってる。いやーびっくりだ。
 もしかして、お前らのところの月もそうなのか?

16 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:17:02
 当たり前だ。俺たちの地球に月はひとつだ。

18 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:17:44
 スマン、そりゃそうだな。
 いやでも、こうしてみんなで同じものを見ているかと思うと、なんだか連帯感があっていい気分だよな。

20 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:17:56
 月は出ているか?

 ……すまん、うちは曇ってて月が出ていない。
 けど、雲の向こうがぼんやりと明るいからな。たぶん、お前らの言う通りなのだろうとは思う。

22 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:18:03
 マイクロウェーブ! 来る!

30 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:19:42
 おお、ここは和んでていいなぁ。
 いや、他のところって今、回線がぶち切れて大騒ぎだからさ。

32 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:20:11
 あー、ほんまや。株式市場スレとか、狂ってる。NYもロンドンも上がりかけた瞬間に全部、つながらなくなってるからな。

34 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:23:44
 アメリカやヨーロッパのサーバと全部つながらなくなったらしいな。カリフォルニアで大地震でもあったんじゃないかって噂も出ている。

41 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:25:50
 お前らには、いろいろと腹も立つこともあったが。こうなってみると、それもいい思い出だよ。ありがとう。
 俺、田舎の母ちゃんとこに電話してくるわ。

44 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:26:34
 待て待て、もう深夜だぞ。
 いくら月がきれいだからって、さすがに寝てる母ちゃんに電話しちゃいかんだろ。

50 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:28:11
 うん。母ちゃんには怒られた。まあ、月を見てびっくりして、喜んでくれたから、良かった。
 ……俺が泣いてたのはバレてたようだが、母ちゃんは気づかないふりをしてくれたよ。

60 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:33:08
 なんだか妙なスレが混ざってるな。まぶしい月の光にあてられたか?
 昔から満月の夜には凶悪犯罪が多いとか、自殺者が増えるとかいうからな。こんだけ明るい満月だと、精神的にヤバい人間は光浴びたらまずいんじゃないか。
 もう寒いし、あまり月ばかり見てるのはよくねーぞ。
 まあ、滅多に見られない貴重なものではあるのだがな。

66 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:34:51
 狼男のオレサマ、大・興・奮!
 さー、赤ずきんちゃんを食べに行くぞーっ!

69 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:36:48
 おとぎ話の世界に帰れっ!
 月光条例、執行!

75 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:38:28
 月光条例は俺も思った。
 富士鷹ジュビロなら、このネタを利用してくれそうだよな。
 次のサンデーあたりで。

77 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:38:49
 次のサンデーはもう出ないよ。

81 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:44:01
 ここもヘンなのが湧いてきたな。他のところでも世界の終わりだとか、月光を浴びておかしくなったのが増えてるし、回線もつながりにくいし。
 今日はもう寝る。おやすみ。

99 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:46:33
 おやすみ。
 どうせ終わるのなら、このまま、バカ話をしつつ終わるのも良いし。今日と同じ明日が来ると思いながら寝ることができるなら、もっと良い。
 んで、もしも勘違いなら、笑って次のバカ話のネタにすればいいわけだし。

102 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:47:15
 そのバカ話のネタというのが分からないのだが。

108 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:50:16
 うーん……言ってもしょうがないのだが。黙ってても、疑心暗鬼でおかしな感じになるだけだな。
 あのな、月は自分では光らない。
 月の輝きは、太陽の光の反射なんだ。
 月にあたる太陽の光の、およそ7%ほどが反射して地球に届く。
 そして今、空に輝いている月をみろ。
 月の反射率が同じならば、太陽がどのくらい強く輝いていれば、あれだけ明るくなると思う?

345 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:51:55
 日焼けがどうこうというレベルじゃないのは分かったろう。
 おそらく、今、太陽が出ている南北アメリカ大陸や、ヨーロッパ、アフリカなんかは全滅だ。
 死者は十億を超えている……と思う。
 できれば間違いであって欲しいんだが、世界中のサーバやノードの生存確認してる連中によると、残念ながら、これは現実だ。
 いつまで太陽がこんな異常な輝きを続けるかは分からないが、これが24時間以上続くなら。

 俺たちが見る次の太陽は、人類にとって、最後の夜明けだ。

511 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:52:37
 逃げる? どこへ?
 残念だが、永遠に夜明けから逃げ続けることはできない。
 飛行機で中国やインドに行ったところで、そっから先には行けない。
 ヨーロッパに向かうならやめておけ。すでに日の光を浴びたところは焼け野原になっている。
 それに、太陽の猛烈な輝きに炙られて、昼の面では海や川、湖の水がすごい勢いで蒸発している。
 水が蒸気になると、1700倍にふくれあがるんだ。今頃、熱せられて膨張した大気と、水蒸気の塊が、夜の面を津波のように襲っているはず。

632 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:53:10
 月が輝いた直後、IRCのチャットで話をしていたモスクワの友人が、市民にシェルターに避難するように命令が出たつうて切れた。
 あっこは夜になったばかりだったんだが、なんかすごい風が吹いてきて。
 どんどん温かくなってきたと言ってた。

694 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:54:18
 地下室とか、地下のシェルターのように太陽の光を浴びない場所ならば、当分は助かる可能性がある。ただ、気温は容赦なく上昇するだろうし、いっそ死に方としては苦しいかもしれんぞ。

748 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:56:32
 おい、NHK見てたら、もうすぐローゼン麻生から重大な発表があるって。

812 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:57:50
 どっからだ? 首相官邸?
 まさかすでに自分だけシェルター入ってることはないよな?
 もし自分だけシェルターに入っているなら

 次の選挙では、自民党に入れてやらない(w

899 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:58:11
 日 本 終 了 の お 知 ら せ

 ……まさかコレが本当になるとは思わなかったよ。
 昨日と同じ、明日が来ると。
 夜になれば、朝が来ると。
 そう思ってたんだがなぁ。

 あ、でも。次のコミケ落ちてたからちょうどいいか。

941 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 00:59:42
 いや、それは本当ではない。
 正しくは

 人 類 終 了 の お 知 ら せ

 まあでも、俺もなんだかすっきりした気分だ。
 死刑囚は死刑執行の朝にはさわやかな気分になるというが、コレがそうかな。

966 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 01:00:02
 次スレどうするんだ?
 人類終了のお知らせなら、すでに重複含めて七スレくらい乱立してるぞ。

982 月は無慈悲な名無しの女王 2008/11/14 01:01:01
 もちろん立てるさ。
 俺たちが生きていた、証のためにな。

 お、NHKに麻生首相、出てきたぞ。すげー、皇居の外に立ってる。陛下もいる。

1001 1001 Over1000 Thread
 この世界は終了しました。
 もう書けないので新しい世界を立ててください。。。。

『魚で始まる世界史 ニシンとタラとヨーロッパ』越智敏之 ヨーロッパの歴史における魚の役割についてまとめられた良書

2014年8月21日 歴史, 読書感想 No comments

ヨーロッパの歴史と魚の関わりを、
 人々が「どんな魚を食べていたのか?」
 その魚は「誰が、どこで取っていたのか?」
 そして、獲った魚は「どのように加工されて流通していたのか?」
 以上の3つの視点でまとめたものが主な内容になります。

 現代日本で、世界中を繋げた物流ネットワークと、冷蔵庫のある暮らしをしているとついつい忘れがちでありますが、人類200万年の歴史のほとんどで、我らがご先祖様は「歩いて1日」の距離にあるものを、ある時だけ食べておりました。
 それ以上の距離を大量に、そして日常的に運ぶのはあまり現実的でなく、また食べ物を長期間保存するのも、技術的に困難であったからです。

 じゃあ、その「歩いて1日」に食い物なかったらどーすんだ、飢えて死ぬのか、というと、その通りであります。それゆえ、飢えて死なないために人類は親戚筋である他のお猿さんと同様に、一カ所に留まらずに昨日はあっち、今日はここ、明日はそっちと、食べ物のある場所へ、ある場所へとフラフラしておったわけです。どのくらいフラフラしておったかというと、200万年前にはアフリカに住んでいたのが1万年くらい前には気が付いたら南アメリカの南端の方まで移動している者がいたりするくらい。私たちの故郷である日本にも、大勢がやって来て、狩猟採集をもっぱらの生活をしておりました。
 その頃から日本に住む人々はせっせと貝を掘って食っており、そのせいか今なお私らの味覚はやけに旨味成分に敏感というか、貪欲であります。

 やがて農耕の技術が発達して、ある程度の保存が利く穀物を生産できるようになると、うろうろするのをやめて定住する人間も増えてまいりました。肉も、狩猟以外に豚や鶏などを家畜として飼うことで食べることができるようになります。
 しかし、家畜は餌が不足する冬場には多くを屠殺して解体する必要がありました。その肉をせめて次の収穫が見込める春頃まで食いつなぐには保存方法も考えねばならず、塩漬けにしたり、干したり、燻製にしたりしたわけです。

 魚も、肉と同じく動物性タンパク質の供給源です。ですが肉と違い、家畜のように人が育てるのはごく一部の品種、そしてつい最近のこと。今なお、魚は海や川で獲ってくるものなのです。

 どんな魚が、どこにいるか?
 魚を食料源として考えた場合、これがまず大事になります。
 巨大な群れを作り、たくさん獲れる魚というのは、常に同じ場所に同じだけいるわけではありません。たいていは季節に応じて産卵して数を増やし、海を回遊してあちらへこちらへと移動しております。そして、しばしば、ふ、とその移動ルートが変更になります。

 北ヨーロッパでよく食べられた魚のひとつ、ニシン。
 ニシンの回遊ルートが移動したことがスカンジナビア半島での食料不足を招いてヴァイキングの移動を招いた原因のひとつかもしれない、などという意見があるほど、ニシンは当時のヨーロッパで重要な食料でした。
 北海やバルト海で大量に獲れたニシンですが、獲れただけではダメで、それを多くの人が食料源としてアテにするには保存がきかなくてはいけません。
 ニシンは不飽和脂肪酸が多く、すぐに酸素と結合して傷みやすいので、これを塩漬けにして保存する、というのは昔からあった手です。これを、より大規模に、より高品質にしたのが、ハンザ同盟諸都市でした。船を改良して樽を多く運べるようにし、岩塩を大量に輸入して品質の高い塩漬けニシンを作れるようにしたり、したわけです。
 後にこの手法を受け継いだのがオランダです。同じ時期のイングランドよりも高品質なのが売りであり、オランダの塩漬けニシンはイングランドの倍以上の値段で売れたという記録があります。
 イングランドは燻製ニシンの品質ではオランダに勝っていたようですが、大量に塩を輸入して安くあげる塩漬けニシンに比べると、燃料である木材を地元で消費する燻製ニシンは、やはり高価な上、大量に作ることができません。
 イングランドが海洋覇権を作り上げる前のオランダの強さのひとつは、塩漬けニシンの市場を独占していたことにあるようです。

 もう一つ、北ヨーロッパで食を支えた魚、タラ。
 タラは回遊魚のニシンほどには群れが増えたりしませんが、脂が少ないので、じっくり天日干しして棒ダラ(ストックフィッシュ)にすれば、塩漬けニシンよりもさらに長期間、最大で五年近く保存がききます。
 ここまでカチコチにしてしまうと、いざ食べようという時に、ぼこぼこに叩いてから水で一日以上戻して、ようやく調理、という手間もかかりますが、この保存性の良さは大航海時代の食料として、大いに役立ったようです。
 また、新大陸に渡った初期アメリカ移民の食を支えたのも、北米沿岸で獲れるタラでした。
 後には、カリブ海の島々で各国の砂糖のプランテーションが作られ、奴隷労働で砂糖ばかりを作る農園ができます。これらの島々は奴隷に食べさせる食料の自給ができませんから、北米植民地で作った干タラの格好の市場となります。
 今でこそ世界の超大国として君臨するアメリカですが、独立前は干タラが主要輸出品で、これと引き替えに砂糖や茶、その他諸々を輸入していたわけです。
 この時に英国本国が保護貿易として外国産の砂糖などに高い関税をかけたことへの不満も、アメリカ独立につながっているようで、干ダラといってもあだやおろそかにはできませぬ。独立後もマサチューセッツ州の州議会には、そのことを象徴するように『聖なるタラ』の像が飾られていたそうです。

 越智敏之先生の『魚で始まる世界史』はこうした面白エピソードが満載してあります。
 帯にある『ハンザとオランダの繁栄はニシンが築き、大航海時代の幕は塩ダラが開けた』にワクワク来る人には、オススメの一冊です。

キャンペーン『鋼鉄郷の黒騎士』基本コンセプト

2014年6月20日 未分類 No comments

 辺境の開拓村にひとりの君主(PC1)がいる。
 村の住人は30家族、およそ100人。
 辺境領においても、取るに足らぬ規模の村だ。

 だが、この開拓村のすぐ近くにある魔境の存在が、そこで産出する産物の価値が、開拓村に周辺領主の注目を集める。

 鋼鉄郷(スティールカントリー)。
 異界から来た投影体が闊歩し、この世界では手に入らない貴重な鉱物や物品が手に入る魔境である。
 開拓村に身を寄せる投影体(PC3)もまた、そのひとりだ。
 開拓村を拠点とし、鋼鉄郷からの産物を独占すれば、その君主の国は膨大な富と強大な軍事力を手に入れることになる。

 開拓村を狙える位置にある領主はふたりいる。
 ひとりは、東のバリスタ男爵。
 もうひとりは、西のデストリア伯爵だ。

 バリスタ男爵は、己の野心のため。
 デストリア伯爵は、傾いた財政を立て直すため。
 それぞれ、開拓村と鋼鉄郷を手にする理由があった。

 そして、その様子をじっとうかがう、第三の集団がいる。
 パンドラと呼ばれる、秘密結社だ。
 彼らもまた、何かを求めてこの地へとやってきた。

 グランクレストRPGキャンペーン
 『鋼鉄郷の黒騎士』

 混沌(カオス)を治め、聖印(クレスト)に至れ。
キャンペーン素案1

 

キャンペーン素案2===
PCの所属、立場
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PC1:開拓村の領主(固定)
PC2:バリスタ男爵の部下(変更可)
PC3:鋼鉄郷から来た投影体(固定)
PC4:PC2の知人・親族(変更可)

※素案ではPC1はバリスタ男爵に従属していることにしてありますが、デストリア伯爵側、あるいは独立領主でもかまいません。
※PC1が独立領主の場合、PC2とPC4も、男爵の部下ではなくPC1の協力者という形になります。PC2/PC4がロードの場合、もうひとつ開拓村を作って、そこの独立領主という形でも良いでしょう。

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キャンペーンの流れ
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 4~5回くらいのキャンペーンを想定しています。
 バリスタ男爵と、デストリア伯爵の対立に、パンドラがいろいろ陰謀を仕掛けて状況をさらに悪化させます。
 PCはその中で、基本的にパンドラと対立する形になります。
 パンドラとの対立の流れで、バリスタ男爵やデストリア伯爵と敵対することがあります。
 男爵や伯爵の家臣を選んだ場合、PC2やPC4は、板挟みになる危険があります。

ログ・ホライズンTRPGシナリオ:アンドリューの迷宮再び

2014年6月19日 TRPG, 未分類, ログ・ホライズンTRPG No comments

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シナリオガイダンス
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プレイヤー人数:4人(3~5人対応)
キャラクターランク:2
プレイ時間:2~3時間

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プリプレイ
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■今回予告
 〈アンドリューの迷宮〉は近日オープンが予定されている、地下十階まで広がる冒険者専用の訓練迷宮だ。
 現在、地下3階層まで建設が進んでいる。
 その建設現場にいる迷宮建築技師のアンドリューから、緊急の依頼が来た。
 事故が起き、急いでメンテナンスルームを再起動する必要があるのだが、自分は事故現場から動けないのだという。
 代わりに、メンテナンスルームへ行って再起動の作業をして欲しいというのが、彼の依頼だ。
 きみたちは〈アンドリューの迷宮〉へと向かった。

■レギュレーション
●使用ルール
 基本ルールブック
●難易度
 イージー:PC全員の【因果力】+1
 ノーマル:特になし
ログホラMAP2a
■ハンドアウト
●PCの立場
 冒険者にて迷宮建築技師のアンドリューが建設中のダンジョン〈アンドリューの迷宮〉。
 そのアンドリューが地下3層の建設現場で事故にあい、脱出ができなくなる。アンドリューとの〈念話〉によると、このまま脱出すると迷宮が崩落してしまうのだという。
 アンドリューは、PCのギルドに、迷宮地下3階層のメンテナンスルームを再起動してくれるよう依頼する。
 メンテナンスルームには警備用のエネミーが配置してあり、危険が予想される。

●シナリオ開始時の状況
 このシナリオは、PCたちが依頼を受けて〈アンドリューの迷宮〉の入口に到着したところから始まる。

●依頼内容と報酬
 依頼内容は〈アンドリューの迷宮〉の第3階層のメンテナンスルームを再起動させること。依頼を達成すれば、PC1人あたり200Gの報酬が支払われる。
 メンテナンスルームの再起動手順や必要なパスワードは〈念話〉でアンドリューから聞いているので、事前にアンドリューに会う必要はない。
 想定される危険は、メンテナンスルームを警備するエネミーだ。[ボス]タグのエネミーを倒せば、メンテナンスルームのロックを解除するキーアイテムが手に入る。

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オープニングフェイズ
===
■インタールード1
 シーン1のシーン定義を読み上げる。

■シーン1:アンドリューの迷宮前にて
●シーン定義
 シネマティックシーン/シーンプレイヤーなし
▼解説:
 〈アンドリューの迷宮〉に到着したPCたちが、依頼の内容を確認するシーン。
▼目的:
 中に入る。

●シーン本体
▼オーバーチュア
 アキバの街から馬車で揺られて数時間。
 大きな岩の前でキミたちは馬車を降りた。
 岩の表面にくりぬかれ、地下へつながる階段が伸びている穴がある。
 入口には『工事中』と書いた看板が立っている。
▼シーン終了
 迷宮へ続く階段を下りるところでシーン終了となる。
 ここで、オープニングフェイズも終了となる。
 PC全員に【因果力】を1点ずつ配布すること。

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ミドルフェイズ
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■インタールード2
 GMはミドルフェイズの開始を宣言する。
 GMはシーン2のシーン定義を読み上げる。

■シーン2:迷宮第1階層
●シーン定義
 シネマティックシーン/シーンプレイヤーなし
▼解説:
 水の精霊に会う
▼目的:
 第3階層について説明を受ける

●シーン本体
▼オーバーチュア
 広間に続く第一階層の最後の部屋の中央に泉がある。床は石畳で少し硬いが、休息するにはもってこいだ。奥に、第二階層へと続く階段が見える。
 泉のそばのベンチに、水の精霊ウンディーネが座り、困った顔でため息をついている。
・セリフ:水の精霊(独り言)
「もう、マスターったら……せめて私が第三階層に降りられるよう、制限を外してくれればいいのに……お前を危険にさらしたくないんだ、なんて……」
▼場面:精霊の泉がある部屋
 水の精霊ウンディーネと会話して第3階層にある危険について説明を受ける。
▼モンタージュ:PCたちが近づいた
 キミたちに気が付いたウンディーネが顔をあげて、礼をする。
・セリフ:水の精霊
「(コホン)ようこそ、冒険者の皆さん。私はこの迷宮を作りしアンドリューを主とする水の精霊です。主からはアミという名前をいただいております」
「皆さんは、我が主からの依頼で、メンテナンスルームへ向かっておられるのですね?」
「第三階層の途中には、パックマンの迷路があります。ここは幻影のモンスターが追いかけてきます。触れても物理的なダメージはありませんが、精神エネルギーを吸われて[疲労]5を受けます。お気を付けください」
「メンテナンスルームの警備用エネミーは、凝り性のマスターがランダムに召喚するため、私の方では何が待っているかは説明しかねます。申し訳ありません」
「警備用エネミーのうち、[ボス]タグがついたエネミーを倒せば、メンテナンスルームに入るためのキーアイテムをドロップします」
「よろしければ、私の作った水薬[万能薬(初級)](P219)が2本ありますので、持っていってください」
「あの……マスターをよろしくお願いします。身の回りのことから何からダメな人なんですけど、優しい人なんです。この迷宮も、失敗できない実戦に出る前に、少しでも冒険者が経験を積めるようにって……」
▼シーン終了
 水の精霊と別れ、第二階層へ続く階段を下りるところでシーン終了となる。

■インタールード3
 GMはシーン3のシーン定義を読み上げる。

■シーン3:迷宮第3階層
●シーン定義
 アブストラクトシーン/シーンプレイヤーなし
▼解説:
 パックマンの迷路を突破する
▼目的:
 先へ進む
ログホラMAP2b
●シーン本体
▼オーバーチュア
 パックマンの迷路という部屋に入ると閉ざされた扉がある。こちらが出口だ。
 扉のない通路は十字路へとつながっている。ここには、モニター画面とマイクがある。
 十字路の先には、3つのコースが広がっている。ひとつのコースには、ひとりのPCだけが挑戦できる。
 それぞれをクリアすれば、扉が開くようだ。

②十字路
 ここでは、モニタで仲間やモンスターの動きを見て、アドバイスすることができる。

《アドバイスする》
分類:シナリオ動作
タイミング:仲間の判定直前/自分は行動済みになる
判定:基本(解析or知識/7)
 成功すれば、判定に+2される。

③体力コース
 傾斜が多く、通路を走る体力が求められるコース
 3回成功したら、コース突破

《体力コースを走る》
分類:シナリオ動作
タイミング:メインプロセス
判定:基本(運動/9)

走ると、判定の成功/失敗にかかわらずモンスターに出会う可能性あり。
2D6で5以上でモンスターが出現する。

《モンスターを避ける》
分類:シナリオ動作
タイミング:リアクション
判定:基本(回避/9)失敗すると[疲労]5

④頭脳コース
 曲がり角や、一方通行が多く、頭脳が求められるコース
 3回成功したら、コース突破

《頭脳コースを走る》
分類:シナリオ動作
タイミング:メインプロセス
判定:基本(知識/9)

走ると、判定の成功/失敗にかかわらずモンスターに出会う可能性あり。
2D6で5以上でモンスターが出現する。

《モンスターを避ける》
分類:シナリオ動作
タイミング:リアクション
判定:基本(回避/9)失敗すると[疲労]5

⑤運試しコース
 モンスターは少ないが行き止まりが多いコース
 5回成功したら、コース突破

《運試しコースを走る》
分類:シナリオ動作
タイミング:メインプロセス
判定:基本(運動、耐久、知覚/8)

走ると、判定の成功/失敗にかかわらずモンスターに出会う可能性あり。
2D6で7以上でモンスターが出現する。

《モンスターを避ける》
分類:シナリオ動作
タイミング:リアクション
判定:基本(回避/9)失敗すると[疲労]5

▼シーン終了
 ⑥出口に向かう。
 PC全員が、消耗表(P413)を体力の欄で振る。
 ミドルフェイズ終了。
 PC全員に【因果力】を1点ずつ配布すること。

===
クライマックスフェイズ
===
■インタールード4
 GMはクライマックスフェイズの開始を宣言する。
 GMはシーン4のシーン定義を読み上げる。

■シーン4:戦闘準備
●シーン定義
 ブリーフィングシーン/シーンプレイヤーなし
▼解説:
 エネミーとの戦闘に備え、準備を整えるシーン。
▼目的:
 続くシーンで万全の状態で戦えるようにする。

●シーン本体
▼戦闘準備
 タイミングがブリーフィング、レストタイムの行動を行い、【準備】タグの行動を行って、続く戦闘の準備をする。

▼シーン終了
 準備を整え、骸骨広間へ向かうとシーン終了となる。

■インタールード5
 GMはシーン5のシーン定義を読み上げる。
 マップやマーカーなどを用意する。

■シーン5:メンテナンスルーム前の戦い
●シーン定義
 戦闘シーン/シーンプレイヤーなし
▼解説:
 PCたちが、メンテナンスルーム前のエネミーと決戦を行うシーン。
▼目的:
 エネミーを突破し、メンテナンスルームへ入る。
ログホラMAP2c
●シーン本体
▼オーバーチュア
 メンテナンスルーム前は広い部屋になっている
 奥にメンテナンスルームへ続く扉がある。
 しかし、その前には巨大な昆虫型のモンスターが控え、その周囲の床は赤く粘々した物体で覆われているようだ(プロップ:[ネバネバした床])。

▼エネミーの配置:
 D2:〈緑小鬼〉(『基本』P430)
 D3:〈緑小鬼〉(『基本』P430)
 D4:〈緑小鬼〉(『基本』P430)
 F1:〈緑小鬼の呪術師〉(『基本』P430)
 F5:〈緑小鬼の呪術師〉(『基本』P430)
 G3:〈甲冑蜘蛛〉

〈甲冑蜘蛛〉
 CR:3 大種族:[自然] Eタイプ:スピア エネミーランク:[ボス]
【STR】2【DEX】3【POW】1【INT】2
【回避】3+2D 【抵抗】1+2D 【物理防御力】10 【魔法防御力】7
【HP】78 【ヘイト倍率】×2 【行動力】5 【移動力】2
【識別難易度】6 【因果力】3
特技
《ネバネバランス》_[白兵攻撃]_メジャー_対決(4+3D/回避)_単体_2Sq_37+2Dの物理ダメージを与える。_[マイナー]対象に[追撃:5]と[硬直]を与える。_[因果力1]対象を[範囲(選択)]とする
《蜘蛛糸そらし》_ダメージ適用直後_自動成功_自身_ラウンド1回_自分がダメージを受けた際に使用する。蜘蛛の糸をはいて、攻撃をそらしてダメージを2D点軽減する。[因果力1]受けるダメージを0にする。
《再行動》_本文_ラウンド1回_このエネミーが[行動済]になった時に使用する。このエネミーは即座に[未行動]となり、その後ラウンド終了時まで【行動力】が0となる。
ドロップ品
固定:青いリボン(メンテナンスルームの扉を開けるキーとなる)
1~5:折れたランス[換金]30G
6:蜘蛛糸袋[コア素材]50G

※PCが3人の場合には、D2と、D4のエネミーを取り除く。
※PCが5人の場合には〈甲冑蜘蛛〉の【HP】を+20点、【因果力】を+1する。

▼エネミーの戦術:
 〈緑小鬼〉は、【ヘイトトップ】のPCに接近して白兵攻撃を行う。
 〈緑小鬼の呪術師〉は射程内のPCに射撃攻撃を行う。射程内に【ヘイトトップ】のPCがいれば、それを攻撃する。
 〈緑小鬼〉と〈緑小鬼の呪術師〉は[ネバネバした床]のBSを受けるので、自分からはプロップのあるスクェアに移動しない。
 〈甲冑蜘蛛〉は、[ネバネバした床]の上を優先的に移動する。射程内に【ヘイトトップ】のPCがいれば、それを攻撃する。
 〈甲冑蜘蛛〉の【因果力】の使用優先順位は1>2である。
 1:《ネバネバランス》で複数のPCへの攻撃が可能であれば使用する。
 2:実ダメージが20点以上の攻撃で《蜘蛛糸そらし》に使用する。

▼プロップ:
・プロップ:ネバネバした床[魔法][破壊不能]ランク1
 探知難易度-、解析難易度8、解除難易度8
 中に入ると床が粘ついて[硬直状態]となる。通常のマイナー、メジャーでは解除できない。特技または[万能薬(初級)]を使用するか、解除判定に成功するか、甲冑蜘蛛を倒すまで[硬直状態]は持続する。
 甲冑蜘蛛だけは、BSなしで自由に行動できる。

・プロップ:透明な蜘蛛の巣[魔法][破壊不能]ランク1
 探知難易度8、解析難易度8、解除難易度8
 プロップ[ネバネバした床]と同じスクェアにある。透明なので探知難易度がある。
 [飛行]状態ならここで停止。通常のマイナー、メジャーでは解除できない。特技または[万能薬(初級)]を使用するか、解除判定に成功するか、甲冑蜘蛛を倒すまで[硬直状態]は持続する。
 解除すれば、[飛行]状態で通過可能になる。

▼戦闘終了
 PCが全滅するか、エネミーを全滅させたら、戦闘は終了になる。
 財宝表ロール:金銭で行う。PCひとりずつ2D+【CR×5】で財宝を獲得する。

▼モンタージュ:戦闘がPC勝利で終了した
 キミたちは、甲冑蜘蛛を倒した。
 倒した甲冑蜘蛛から、固定ドロップ品の青いリボンが手に入る。これを持って、メンテナンスルームへの入口に近づけば、ドアが開き、メンテナンスルームへ入れる。

▼モンタージュ:戦闘がPC全滅で終了した
 キミたちは、武運拙く敗北した。
 次のシーンでは、復活したPCが精霊の泉で合流する。
 復活後の【疲労】状態は、水の精霊が30点まで解除してくれる。
 エネミーに与えたダメージは、残ったままだ。倒したエネミーは復活しない。
 さあ、今度こそ勝利しよう。

▼シーン終了
 戦闘終了後、財宝表の処理を行った後、シーンを終了させる。
 クライマックスシーンはこれで終了となり、エンディングフェイズへ移行する。

===
エンディングフェイズ
===
■インタールード6
 GMはエンディングフェイズの開始を宣言する。
 戦闘で死亡したPCがいた場合など、ここでシーンを挿入して、復活したPCが戦闘後に合流するシーンを入れてもいいだろう。
 GMはシーン6のシーン定義を読み上げる。

■シーン6:メンテナンス開始
●シーン定義
 シネマティックシーン/シーンプレイヤーなし
▼解説:
 メンテナンスルームを再起動し、依頼を完遂するシーン
▼目的:
 物語を終わらせる。

●シーン本体
▼オーバーチュア
 メンテナンスルームには、手にドリルやハンマーがついた作業ロボが並んでいる。
 再起動させると、作業ロボが動きはじめ、ぞろぞろと事故現場へと向かう。

▼モンタージュ:事故現場へ向かう
 事故現場へ向かうと、そこには魔法で崩れそうな柱を支えているアンドリューがいた。

・セリフ:アンドリュー
「やあ、助かった!」
「この柱を放置してメンテナンスルームへ向かうと、途中でこの階層全部が崩れてしまう危険があったんだよ」
「おかげで助かった。礼を言う」

▼シーン終了
 PCたちのロールプレイが一区切りついたら、シーンを終了させ、シナリオも終了となる。PCはアキバの街に戻り、報酬を手に入れる。

===
アフタープレイ
===

●ログチケットの配布
▼プレイヤー
 キャラクターランクアップ:1枚、アザーゲット:1枚
▼GM
 キャラクターランクアップ:1枚、財宝ゲット:プレイヤー人数+1枚、アザーゲット:2枚
▼因果力ゲット
 プレイヤーとGM全員に、ログチケット:因果力ゲットを1枚ずつ。
 さらに、各PCの活躍について参加者同士でおしゃべりし、活躍した(できれば、全員となるように!)PCのプレイヤーにログチケット:因果力ゲットを1枚ずつ。

ログ・ホライズンTRPGシナリオ:アンドリューの迷宮

2014年5月18日 TRPG, ログ・ホライズンTRPG No comments

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シナリオガイダンス
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プレイヤー人数:4人(3~5人対応)
キャラクターランク:1
プレイ時間:2~3時間

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プリプレイ
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■今回予告
 〈アンドリューの迷宮〉。
 それは、冒険者にして迷宮建築家であるアンドリューが建設中の迷宮だ。
 アンドリューは、仕事に没頭すると迷宮の奥深くの自分のオフィスから出て来なくなる。
 そこで食事や着替えその他を、アンドリューのオフィスまで運ばなくてはいけない。
 キミたちは、荷物を受け取り、アンドリューの迷宮を通り抜けることとなった。

■レギュレーション
●使用ルール
 基本ルールブック
●難易度
 イージー:PC全員の【因果力】+1
 ノーマル:特になし

■状況の解説
 ログ・ホライズンに馴れていないプレイヤー向けの簡単な迷宮探検型シナリオ。
 このシナリオは1回のミッションと、1回の戦闘で構成されている。
 PCに与えられた依頼は、迷宮を突破して荷物をアンドリューに届けること。
 依頼を達成すれば、PC1人あたり100Gの報酬が支払われる。
●GM向け解説
 このシナリオの目的は、プレイヤーが、自分のPCに何ができて、判断と行動が、どのように結果に結びつくかを知ることにある。
 GMは常に、次の2点に留意しておくとよいだろう。
・プレイヤーは、自分のPCに何ができるかを知りたがっている。
・プレイヤーは、自分のPCの行動が、どういう結果になるかを知りたがっている。
 何ができるか分からなければ、判断はできない。
 自分の行動がどういう結果になるか予測できなければ、行動には踏ん切れない。
 本シナリオでは、この2点ができるだけ分かりやすいように書いてある。だが、不足分については、GMが適時補って欲しい。

■ハンドアウト
●PCの立場
 PCはCR1、すなわち駆け出し状態の冒険者である。
 元のゲームの経験はあったりなかったりだが、CR1なので〈大災害〉以降はほとんどアキバに引きこもっていて、冒険はしていない。
 今回、知り合いの冒険者の紹介で、そういう駆け出しの冒険者に適している依頼を受けることになった。
 特に事前の設定がないなら、全員が、同じギルドに所属しているものとする。PCだけで独自のギルドを結成する場合には、ギルドの名前と、ギルドマスターを決めること。そうでない場合には、全員が〈三日月同盟〉に所属しているものとする。

●シナリオ開始時の状況
 このシナリオは、PCたちが依頼を受けて〈アンドリューの迷宮〉の入口に到着したところから始まる。

●依頼内容と報酬
 依頼内容は〈アンドリューの迷宮〉の第2階層にあるアンドリューの事務所へ荷物を届けること。依頼を達成すれば、PC1人あたり100Gの報酬が支払われる。

■シナリオMAP

ログホラMAP1a
===
オープニングフェイズ
===
■インタールード1
 シーン1のシーン定義を読み上げる。

■シーン1:チュートリアル迷宮前にて
●シーン定義
 シネマティックシーン/シーンプレイヤーなし
▼解説:
 〈アンドリューの迷宮〉に到着したPCたちが、依頼の内容を確認するシーン。
▼目的:
 〈アンドリューの迷宮〉に、渡された荷物を持って入る。

●シーン本体
▼オーバーチュア
 アキバの街から馬車で揺られて数時間。
 大きな岩の前でキミたちは馬車を降りた。
 岩の表面にくりぬかれ、地下へつながる階段が伸びている穴がある。
 馬車の御者でもある〈第8商店街〉の商人が、キミたちに今回の依頼内容を確認する。
・セリフ:〈第8商店街〉の商人
「さて、この階段の下が〈アンドリューの迷宮〉だ。キミたちにはこの中に入ってもらう。目的地は、第2階層にあるアンドリューさんの事務所だ」
「アンドリューさんは、迷宮建築家だ。アンドリューさんは、仕事を始めると迷宮から出てこなくなるので、こうして食料や衣類などを、定期的に届けるよう、あらかじめ私たちのギルドに頼んである」
「この荷物を持って、アンドリューさんのところへ届けてくれ。ちゃんと全部届けることができたら、アンドリューさんの受け取りのサインを持って〈第8商店街〉の営業所で、報酬の100Gがもらえる」
「〈アンドリューの迷宮〉には、エネミーがいるし、トラップも仕掛けられている。だが、第1、第2階層にはそれほどの危険なものはない」
「腕試しには、もってこいの迷宮だよ」
・アンドリューに届ける荷物は全部で5スロット分。換金や使用はできない。1人で全部持ってもいいし、手分けして持ってもいい。タグは【アンドリューの荷物】。シートに記入すること。付箋があれば、5枚に書いてシートに貼り付けるのも良いだろう。

▼モンタージュ:商人との別れ
 商人はこの後、馬車で街道を先に進む。
 ここでキミたちとはお別れだ。
・セリフ:〈第8商店街〉の商人
「それでは、私はこれで失礼するよ。残りの荷物を届けに行くんだ」
(名前を聞く)「私の名はシャイロックだ。そう、シェークスピアの『ヴェニスの商人』からいただいた商人の名だよ。実はあらすじしか知らなくて、読んだことはないがね」
(アドバイスを聞く)「聞いた話では、第一階層は迷路のようになっているそうだ。第二階層にはエネミーもいるそうだから、気をつけたまえ。ただし、降りる前に精霊の泉というのもあって、そこで休息できるそうだよ」

▼シーン終了
 アンドリューに届ける荷物を持ち、迷宮へ続く階段を下りるところでシーン終了となる。
 ここで、オープニングフェイズも終了となる。
 PC全員に【因果力】を1点ずつ配布すること。

===
ミドルフェイズ
===
■インタールード2
 GMはミドルフェイズの開始を宣言する。
 GMはシーン2のシーン定義を読み上げる。

■シーン2:迷宮第1階層
●シーン定義
 アブストラクトシーン/シーンプレイヤーなし
▼解説:
 迷宮第1階層を突破する。
▼目的:
 ミッションの勝利条件を達成する。
ログホラMAP1b
●シーン本体
▼ミッション:迷宮第1階層を突破せよ
 迷宮第1階層は、いくつもの通路が迷路のようになっている。
 ①から⑧までの番号を振ったマスがあり、パーティーは、全員が同じマスにいるものとする。エンカウントシートにパーティーのマーカーを置いて、どこにいるかを示す。
 ①のマスから始まり、⑧へ移動したらミッションは勝利条件を達成したものとする。

▼シナリオ動作:
 各マスでの行動はラウンド進行となる。PCは次の行動が可能。
 《異常探知》セットアップ
 《プロップ解析》メジャー
 《プロップ解除》メジャー
 1ラウンドが終了すると、PCは線でつながった隣接するマスへ移動できる。
 ただし、マスによっては《プロップ解除》に成功しないと、マスからマスへの移動ができない。

①迷宮の入口
 地上からの階段を降りたところは広間となっていて、壁に地図(エンカウントシート:迷宮第1階層を突破せよ)が描かれている。通路が続いている。灯りがついている。

・プロップ:隠し扉[隠蔽][魔法]ランク1
 探知難易度9、解析難易度5、解除難易度7
 《異常探知》で探知難易度9で判定して成功すれば見つかる。
 《プロップ解析》で解析難易度5で判定して成功すれば、解除が可能になる。
 《プロップ解除》で解除難易度7で判定して成功すれば、中に入っているアイテムを獲得することができる。
 アイテム:回復薬×1本
 アイテム:アンドリューのメッセージ『よろしい。基本は常に大事にせよ』。パーティー全員の【因果力】+1

②T字路
 道が左右に分かれている。
 右側の通路は灯りがなく、奥は暗闇になっている。
 ここには特筆すべきプロップなし。

③ぬかるみの通路
 天井からぽたぽたと水滴が落ちてくる。
 地面が水を含んだ泥で、ぬかるみになっている。
 ここをそのまま通れば、全員が【疲労】5を受ける。

・プロップ:ぬかるみの通路[魔法]ランク1
 探知難易度-、解析難易度6、解除難易度6
 このプロップは、隠されていないので探知は必要ない。
 《プロップ解析》で解析難易度6で判定して成功すれば、解除が可能になる。
 《プロップ解除》で解除難易度6で判定して成功すれば、歩きやすい場所を発見して、【疲労】することなく、このマスを通り抜けることができる。

④暗闇の通路A
 闇に閉ざされた通路。
 中から、キィキィというコウモリらしきエネミーの声がする。
 [暗闇]を解除せずに通過すれば、全員に【疲労】10が加算される。
 この時点で引き返すことは可能である。その場合には【疲労】しない。

・プロップ:暗闇の通路[暗闇][空間][天然]
 探知難易度-、解析難易度-、解除難易度-
 探知、解析、解除のいずれも判定なし。
 [暗闇]を解除するには、魔法《マジックトーチ》や灯火の巻物などが必要。
 [暗闇]を解除すれば【疲労】することなく、このマスを通り抜けることができる。

⑤氷結の通路
 気温が氷点下にまで下がっている通路。
 ここをそのまま通れば、全員に【疲労】10が加算される。

・プロップ:氷結の通路[魔法]ランク1
 探知難易度7、解析難易度7、解除難易度7
 《異常探知》で探知難易度7で判定して成功すれば通路の気温を下げている魔法の仕掛けが見つかる。
 《プロップ解析》で解析難易度7で判定して成功すれば、解除が可能になる。
 《プロップ解除》で解除難易度7で判定して成功すれば、通路の気温が一時的に元に戻り、【疲労】することなく、このマスを通り抜けることができる。
 パーティーが通過後、魔法の仕掛けが再起動してまた気温は下がる。

⑥暗闇の通路B
 闇に閉ざされた通路。
 中はしん、と静まりかえっている。

・プロップ:暗闇の通路[暗闇][空間][天然]
 探知難易度-、解析難易度-、解除難易度-
 探知、解析、解除のいずれも判定なし。
 [暗闇]を解除するには、魔法《マジックトーチ》や灯火の巻物などが必要。
 [暗闇]を解除すれば、通路にある隠された宝箱を発見できる可能性がある。

・プロップ:隠された宝箱[隠蔽][魔法]ランク1
 探知難易度6、解析難易度6、解除難易度7
 以下の判定は[暗闇]解除が条件となる。
 《異常探知》で探知難易度6で判定して成功すれば見つかる。
 《プロップ解析》で解析難易度6で判定して成功すれば、解除が可能になる。
 《プロップ解除》で解除難易度7で判定して成功すれば、中に入っている財宝を獲得することができる。また、PC全員の【因果力】+1。
 財宝表ロール:金銭で行う。PCひとりずつ2D+【CR×5】で財宝を獲得する。

⑦惑わしの通路
 どこからともなく靄のようなものがかかって、視界が妨害される。
 通路も細く、入り組んできて、迷路のようになってくる。
 ここを突破するには、この迷路の仕組みを解析する必要がある。

・プロップ:惑わしの通路[魔法]ランク1
 探知難易度7、解析難易度9、解除難易度7
 《異常探知》で探知難易度7で判定して成功すれば途中で壁が発生したり、通路のつながる先が変更されていることに気が付く。つまり、どれだけ歩いても通り抜けられない。
 《プロップ解析》で解析難易度9で判定して成功すれば、法則性を分析して、解除が可能になる。
 《プロップ解除》で解除難易度7で判定して成功すれば、迷路を突破できる。
 ここでは、1ラウンドごとに【疲労】5が加算される。
 2ラウンド目、3ラウンド目は、すでに誰かが《異常探知》《プロップ解析》が成功していれば、これらの判定は不要である。

⑧広間
 広間に出た。
 奥の方から清らかな水の音が聞こえてくる。
 ミッションは成功だ。

▼シーン終了
 広間に出たところで、シーン終了となる。

■インタールード3
 ここで一度、プレイヤーに休憩してもらうといいだろう。
 GMはシーン3のシーン定義を読み上げる。

■シーン3:精霊の泉
●シーン定義
 シネマティックシーン/シーンプレイヤーなし
▼解説:
 探索で消耗したPCたちが、休息を取りながら、泉の精霊から第二階層に待ちかまえているエネミーの情報を聞くシーン。
▼目的:
 【疲労】を回復し、戦闘に関する情報を集める。

●シーン本体
▼オーバーチュア
 広間に続く第一階層の最後の部屋の中央に泉がある。床は石畳で少し硬いが、休息するにはもってこいだ。奥に、第二階層へと続く階段が見える。
 泉のそばのベンチに、水の精霊ウンディーネが座り、困った顔でため息をついている。

▼場面:精霊の泉がある部屋
 ここでは、回復の行動が可能である。
 手持ちの【食料】アイテムを使用するなどして、回復することができる。

▼モンタージュ:PCたちが近づいた
 キミたちに気が付いたウンディーネが顔をあげて、礼をする。
・セリフ:水の精霊
「ようこそ、冒険者の皆さん。私はこの迷宮を作りしアンドリューを主とする水の精霊です。主からはアミという名前をいただいております」
「皆さんは、我が主からの依頼で、荷物を届けに来られたのですよね? それで……実は、少々、困ったことがありまして」
(次の骸骨広間のエンカウントシートをプレイヤーに見せる。演出的には、ウンディーネが水を操って、床に地図を描く)「これが、第二階層にある骸骨広間の地図です。我が主の部屋には、ここを通らなければいけません」
「ここには3体のエネミーが配置されており、すべて倒せば、鍵が外れて先に進めます。強い冒険者の方向けには、さらに追加で3体のエネミーが準備されているのですが……」
「実は、仕掛けにトラブルがありまして、増援のエネミーと部屋との間には檻が降りていて移動できないのに、シャッターだけは上がったままなのです」
「これは私どものミスですので、お話しておきます。もし、皆さんがこの増援のエネミーとは戦いたくないなら、上の操作盤を動かしてシャッターを下ろせば、エネミーは部屋からいなくなったものとして、ロックが外れます」
「増援のエネミーと戦いたいなら、操作盤を動かして檻を開けて移動可能にできます」
「檻越しにも飛び道具や魔法は使えますから、皆さんが檻をそのままにして戦うことも可能です。ですが、エネミーの側も同じだということには注意してください」
「配置されたエネミー3体と、増援のエネミー3体がどのようなものかは、私には情報がありません。さほどランクは高くないはずですが、お気を付けください」

▼シーン終了
 水の精霊と別れ、第二階層へ続く階段を下りるところでシーン終了となる。
 ここで、ミドルフェイズも終了となる。
 PC全員に【因果力】を1点ずつ配布すること。

===
クライマックスフェイズ
===
■インタールード4
 GMはクライマックスフェイズの開始を宣言する。
 GMはシーン4のシーン定義を読み上げる。

■シーン4:戦闘準備
●シーン定義
 ブリーフィングシーン/シーンプレイヤーなし
▼解説:
 エネミーとの戦闘に備え、準備を整えるシーン。
▼目的:
 続くシーンで万全の状態で戦えるようにする。
ログホラMAP1c
●シーン本体
▼戦闘準備
 タイミングがブリーフィング、レストタイムの行動を行い、【準備】タグの行動を行って、続く戦闘の準備をする。

▼シーン終了
 準備を整え、骸骨広間へ向かうとシーン終了となる。

■インタールード5
 GMはシーン5のシーン定義を読み上げる。
 マップやマーカーなどを用意する。

■シーン5:骸骨広間の戦い
●シーン定義
 戦闘シーン/シーンプレイヤーなし
▼解説:
 PCたちが、骸骨広間のエネミーと決戦を行うシーン。
▼目的:
 広間のエネミーを倒し、扉の鍵を開ける。

●シーン本体
▼オーバーチュア
 キミたちが入った広間には、大勢の骸骨がいた。
 大勢いるようだが、そのうち2グループはモブだ。
 手強いのは、中央にいる武士の格好をした骸骨のようだ。
 奥は檻になっていて、そこにも骸骨が3体いる。こいつらは弓矢を持っているようだ。
 広間の骸骨たちは、無言のまま、キミたちに迫ってくる。
 弓矢を持つ奥の骸骨は、弓矢を構える。が、キミたちまでは弓矢では少し遠いようだ。

▼エネミーの配置:
 C2:〈動く骸骨〉(『基本』P428)
 C4:〈動く骸骨〉(『基本』P428)
 D3:〈骸骨武士〉(『基本』P429の〈PK武士〉流用。タグは[不死][暗視])
 F2:〈骸骨の弓兵〉(『基本』P428)
 F3:〈骸骨の弓兵〉(『基本』P428)
 F4:〈骸骨の弓兵〉(『基本』P428)
※PCが3人の場合には、C2と、F4のエネミーを取り除く。
※PCが5人の場合には、〈骸骨武士〉の【HP】を+20点する。

▼エネミーの戦術:
 〈動く骸骨〉と〈骸骨武士〉は、【ヘイトトップ】のPCに接近して白兵攻撃を行う。
 〈骸骨の弓兵〉は射程内のPCに射撃攻撃を行う。射程内に【ヘイトトップ】のPCがいれば、それを攻撃する。射程が3であることに留意する。射撃の死角はないものとする。

▼プロップ:
・プロップ:シャッター操作レバー[機械][隠蔽]ランク1
 探知難易度7、解析難易度7、解除難易度7
 探知、解析、解除はいずれもE4でのみ可能となる。
 《異常探知》で探知難易度7で判定して成功すれば解析可能。
 《プロップ解析》で解析難易度7で判定して成功すれば、解除が可能になる。
 《プロップ解除》で解除難易度7で判定して成功すれば、シャッターを下ろせる。

・プロップ:広間出口[機械][破壊不能]ランク1
 探知難易度-、解析難易度-、解除難易度-
 鍵がかかっていて、外に出ることができない。
 広間のエネミーが全滅すれば、扉を開くことができるようになる。

▼戦闘終了
 PCが全滅するか、エネミーを全滅させたら、戦闘は終了になる。
 財宝表ロール:金銭で行う。PCひとりずつ2D+【CR×5】で財宝を獲得する。

▼モンタージュ:アウトレンジ攻撃が可能になった
 広間の敵を倒した後、射程4Sqの武器・特技でアウトレンジ攻撃をかけられるPCがいて、PCたちがそのことに気付けば、GMは〈骸骨の弓兵〉は全滅したものとして戦闘終了としてよい。

▼モンタージュ:戦闘がPC勝利で終了した
 キミたちは、広間の敵を一掃した。
 カチリと、扉のロックが解除されて、先へ移動できる。

▼モンタージュ:戦闘がPC全滅で終了した
 キミたちは、武運拙く敗北した。
 次のシーンでは、復活したPCが精霊の泉で合流する。
 復活後の【疲労】状態は、水の精霊が30点まで解除してくれる。
 エネミーに与えたダメージは、残ったままだ。倒したエネミーは復活しない。
 さあ、今度こそ勝利しよう。

▼シーン終了
 戦闘終了後、財宝表の処理を行った後、シーンを終了させる。
 クライマックスシーンはこれで終了となり、エンディングフェイズへ移行する。

===
エンディングフェイズ
===
■インタールード6
 GMはエンディングフェイズの開始を宣言する。
 戦闘で死亡したPCがいた場合など、ここでシーンを挿入して、復活したPCが戦闘後に合流するシーンを入れてもいいだろう。
 GMはシーン6のシーン定義を読み上げる。

■シーン6:アンドリューの事務所
●シーン定義
 シネマティックシーン/シーンプレイヤーなし
▼解説:
 アンドリューに荷物を届け、依頼を完遂するシーン
▼目的:
 物語を終わらせる。

●シーン本体
▼オーバーチュア
 アンドリューの事務所の扉には、札がかかっている。
 『アンドリューの事務所。営業時間は10時から17時。アンドリューは*在室中*』
 扉を開けると、ハーフアルヴの青年が、ローブ姿で仕事をしていた。
 彼がアンドリューのようだ。顔をあげると、無精ひげが伸びている。
・セリフ:アンドリュー
「む、キミたちは誰だい?」
「おお、荷物を届けに来てくれたのか。もうそんなに時間が経っていたとはね」
「ありがとう、では受け取りのサインを……む、そういえば、ここに来る途中の骸骨広間はちょっと仕掛けが故障していたはずだが、修理がまだだった」
「何かトラブルはなかったかね?」
(これまでのことを説明する)「そうだったか。キミたちには迷惑をかけたね。お詫びと言ってはなんだが、ここにある余っている魔法素材をあげよう」
 財宝表ロール:魔法素材で行う。PCひとりずつ2D+【CR×5】で財宝を獲得する。

▼モンタージュ:ウィザードリーのネタに言及する
 アンドリューの顔が、にんまりとする。
・セリフ:アンドリュー
「やあ、気付いてくれたかね。そうだよ。私は古いPCゲームのファンでね。初代ウィザードリーはFM7というマシンで遊んだんだ。当時は5インチのフロッピーディスクでね(延々と昔話が続く)」

▼シーン終了
 PCたちのロールプレイが一区切りついたら、シーンを終了させ、シナリオも終了となる。PCはアキバの街に戻り、受取証を渡して報酬を手に入れる。

===
アフタープレイ
===

●ログチケットの配布
▼プレイヤー
 キャラクターランクアップ:1枚、アザーゲット:1枚
▼GM
 キャラクターランクアップ:1枚、財宝ゲット:プレイヤー人数+1枚、アザーゲット:2枚
▼因果力ゲット
 プレイヤーとGM全員に、ログチケット:因果力ゲットを1枚ずつ。
 さらに、各PCの活躍について参加者同士でおしゃべりし、活躍した(できれば、全員となるように!)PCのプレイヤーにログチケット:因果力ゲットを1枚ずつ。

アリアンロッド・サガ二次創作短編『ギィの朝帰り』

2014年5月15日 TRPG, アリアンロッド2E, 小説 No comments

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 このお話は、『アリアンロッドRPG2E サガ・クロニクル』(菊池たけし/F.E.A.R.)収録のワールドセクションに書かれた、人類戦争後のアルディオン大陸に関するネタバレを含みます。
 あと、小説の内容については私の妄想でありますゆえ、ふたりの過去と合わせて、そういうことが本当にあったわけではありません。ご了承のほどを。
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 早朝のノルウィッチ。この町で最初に朝日を浴びるのが、町のシンボルとも言うべき、高い城壁だ。まだ周囲が暗い中、壁だけがやんわりと白く浮かび上がって見える。
「春は曙、ようよう白くなりゆく壁ぎわ、ってか……ふわあ」
 まだ闇が残る下町の通りを歩きながら大きくあくびをした眼帯の男。名前をギィという。
 フェリタニア合衆国の密偵を束ねる立場にあり、戦いにおいては弓を得手とする。狙った獲物を決して逃さぬ弓の腕前から、敵対する連中に『隻眼の鷹』なるあだ名をちょうだいしているが、本人はあまり気に入っていない。
「朝になっちまったし、そろそろ帰って寝るか……うーむ……」
 ねぐらに向かう足が重い。
 理由は分かっている。見たくない顔が、そこにいるからだ。
「いるんだろうなぁ……マム」
 ギィがマムと呼ぶ人物の名はオーレリー・カルマン。小柄で童顔なフィルボルの女性だ。ギィにとっては弓を始めとする戦闘術の師匠であり、可愛らしい外見とは裏腹に恐るべき女傑だ。マムという名の由来にしても、王蛇会という犯罪組織の女首領であることから来ている。
 そのマムが、王蛇会を放り出してギィの家に転がり込んで、もうずいぶんになる。
「まったく、いつまでいる気なんだか」
 王蛇会の本来の縄張りはアルディオン大陸東部だ。今もそこに本部があり、マムの留守をギィにとっては妹分にあたるルナ・チャンドラが守っている。この間もギィ宛に手紙がきてマムがいなくて大変だという愚痴とギィへの恨み節が延々と書かれていた。
「昔はけっこう可愛かったのに、すっかり甲冑の似合う魔術師になりやがって……だいたい、俺はもう王蛇会とは縁が切れて……切れてるようなもんだろうが」
 歯切れが悪いのは、王蛇会が犯罪結社によくある、裏切りを許さない組織だからだ。
 裏切り者は処刑される。その恐怖の掟があればこそ、王蛇会は裏社会で一目置かれているのだ。実力がいくらあっても、そのあたりが甘い組織は、舐められる。
「もう、そんな時代じゃないだろうに……って、俺が言っても説得力はないか」
 ギィは立ち止まり、がっくり首を落として大きくため息をついた。
「ん……」
 その動作の際に、ギィの鼻が白粉の匂いをかぎ取った。懐から、白粉の匂いと、そしてもうひとつの臭いが漂う。
「あー……昨夜のアレか……」
 朝帰りのギィが、夜の間にどこにいたかというと、白粉と香水を付けた女たちが大勢いる、そういう界隈にいたのである。
「この匂いはまずいな……何か、わざとらしくない別の匂いは……」
 きょろきょろと周囲を見回したギィの鼻に、香ばしい匂いが漂ってきた。ソースの焼ける匂いである。
「お、焼きそばの屋台か」
 朝の早い労働者向けの朝食を出す屋台が並ぶ一角に、焼きそばの屋台があった。焼きそばはノルウィッチからみて南方にあるニュービルベリの名物で、最近はあちこちにビルベリ焼きそばの屋台が進出している。
「おっちゃん、ひとつくれ」
「あいよ」
 気のよさそうなドゥアンの男が、鉄板の上で焼きそばを焼いて皿にのせる。一緒に入っているのはそこらの店で出たクズ野菜を刻んだものだが、歯ごたえがしゃきしゃきしていて、旨い。
「そういやニュービルベリじゃ、ギデオンのおっさんが焼きそば作ってたな」
 何の気なしにギィがもらした言葉に、ドゥアンの店主が驚いて聞き返す。
「あんた、ギデオンさんの知り合いかい?」
「まあ、そんなものだ。ギデオンを知ってるってことは、おっちゃんは、ニュービルベリの出身かい」
「ああ。出稼ぎでな。この屋台はここで借りたモノだが、ソースはニュービルベリで作ったやつを運んできた。どうだ、違うだろ」
「ああ。こっちのソースは味が平板でな。こんなに複雑な味はしちゃいないよ」
「そうだろう、そうだろう。ギデオンさんが町の連中と苦労して作ったソースだ」
 得意そうに語るドゥアンの店主の話を聞きながら、ギィはギデオンという男について考えていた。
 ――あいつも俺も、どっちかといえば、俺たちが戦っている悪党の側に近い人間だ。いったい、何が俺やギデオンを、悪党の側に追いやらなかったんだろうな。
 今の自分やギデオンには、仲間がいる。守りたいものがある。だからもう、悪党の側に回ることは考えられない。
 けれど、その前は? 仲間がいなかった頃の自分とギデオンは、なぜ、悪党の側にいなかった?
 しばらく考えて、ギデオンについては答えが浮かんだ。
 ――あのおっさん、悪党になるには、怠け者すぎるな。
 悪党は、勤勉だ。バルムンクも、他の悪党も、アンリのような男でさえ、勤勉だった。恨み、憎しみ、欲望……そういう強い負の感情が、彼らを駆り立て、行動させた。怠惰に適当に、のんべんだらりと過ごすことを許さなかった。
 怒ったり憎んだりすることすら面倒に感じるギデオンが、悪党になれるはずもなかった。
 ――俺は、どうだ? ギデオンのおっさんに比べれば、まだしも勤勉だ。何より、王蛇会って組織で育てられ、マムに鍛えられている。悪党の側にいても、おかしくはないよな。
 答えは見つからず、焼きそばを平らげたギィは、ねぐらのあるアパートへ戻った。
「た・だ・い・ま~~?」
 相手はマムである。今さら足音を隠すような真似はしない。だが、どうしても声が探るようなものになってしまうのは、子供の頃からの刷り込みの効果か。
「よう、お帰り放蕩息子」
 今日のマムは、どういう心境かエプロンドレスのメイドさんだった。
 ――似合っているのが、腹が立つな。
「まったく、毎日毎日、朝帰りとはいいご身分だな」
「仕事だよ、仕事」
「ほう……?」
 マムがすっと間合いを詰めてギィの胸元に飛び込んできた。これが恋人や夫婦なら抱きしめるところだろうが、相手がマムとなると子供の頃からの条件反射で、思わずギィはのけぞってしまう。
「その動き、やめてくれよ。そのままブスっとやられそうで怖いんだよ!」
「ほほう、ブスっとやられる心当たりはあるようだな」
 くんくん、と近づいたマムがギィの胸元で鼻をならす。その顔がアテが外れたという表情になり、ギィはにやっと笑った。
「これは……ソースを焼いた香り?」
「夜っぴいての仕事帰りだからな。腹が減ってたんで、そこの屋台で焼きそばを食ってきたんだよ。じゃ、そういう訳なんでもう寝るぜ」
 してやったりというギィが、あくびをしてみせる。
「待て、ギィ」
 そのまま寝室へ向かうギィの背中に、マムの声が届いた。
 ぴたり、と足が止まる。
「なんだい、マム?」
「服を脱げ、今日はいい天気だ。洗濯してやる」
「おう」
 ギィは服を脱いだ。服の中に仕込んであるさまざまな道具や武器をはずして居間にある机に置く。そちらにはマムも手を触れない。プロが持つ仕事の道具は、同じプロだろうが家族だろうが、他の人間が触ってよいものではない。彼らはそういう決まりの中で生きている。
「ほいよ」
 上半身裸になったギィが、服をまとめてマムに渡そうとする。マムはそれを受け取ろうと手を伸ばし――
 すっ、と間合いをつめてギィに身体を密着させるほどに近づいた。
 予測していたギィが、くるりと身体を回転させて離れようとする。
 エプロンドレスのスカートから伸びたマムの足が、ギィの軸足を払う。
 洗濯物がばさっ、と広がって周囲の床に散らばる中、体勢を崩したギィを床に押さえつけて馬乗りになったマムがギィの右の脇腹に手をやった。一カ所、青黒くなっている場所があった。魔法で癒したが、完全には塞がっていない傷を探られてギィが痛みに呻く。
「ふん、下手に策を弄するからだよ」
「……」
 ギィはだんまりである。
「あんたが昨夜、どこにいたかは知ってる。白粉の匂いなら、ごまかす必要はなかったんだよ。いつものようにあたしに皮肉を言われて、それで終わりだろ」
「……」
「ギィ、あんたが隠そうとしたのは血と薬……毒の匂いだ」
「仕事だからな。毒を持った敵とやり合うことだってあるさ」
「ああ、そうだね。でも……あんたが昨夜戦って、殺したのは自分の部下だ」
「……知ってたのか」
 その部下は、表向きは歓楽街の女たちを専門にみる薬師だった。おしゃべりがうまく、人好きのする青年で、女たちから情報を聞き出して集める任務に就いていた。しかし、合衆国を裏切ってラングエンドに情報を流し、そのせいで別の部下が死ぬことになった。
 最初から殺すつもりだったわけではない。だが、捕らえようとして抵抗された時、ギィには殺す以外の選択肢はなかった。
「組織を裏切った間諜は、組織の手で殺さなきゃいけない。あんたがいる場所は、王蛇会と変わらないんだよ、ギィ。だから――」
 そこでマムは何かを言いかけて口をつぐんだ。
「だから、戻れってか? それはできない相談だぜ、マム」
「どうしてだい? 王蛇会でなら、あたしが――」
 再びマムの言葉が途切れた。ギィの人差し指が、マムの唇に当てられていた。
「それはダメだ、マム。俺はもう、あんたにそういうことをさせたくないんだ」
 ギィはようやく思い出した。
 何が自分を悪党の側から遠ざけていたのかを。

 子供の頃に、一度だけ、ギィはマムが泣いている場面を見たことがある。
「なんで……なんで、あんたが……あんな男のために……」
 王蛇会を裏切り、自分が殺した女の形見となった髪飾りを前に、マムが泣いていた。
 マムとは仲のいい、友達のような女性だった。気だてがよく、お日様のような笑顔が似合う優しい女性だったと、ギィも覚えている。
 悪い男に恋をして、悪い男に騙されて、王蛇会の金を盗んで男と一緒に逃げようとしたところで、殺された。
「あの男、逃げた先であんたを殺して金を独り占めにするつもりだったんだよ……あんただって、分かってたはずじゃないか。好きな男と一緒になれる、そんな甘い、綺麗な話が、あたし達に来るはずないって……なんで、そんな、夢を……」
 子供のギィにとって、無敵だと思っていたマムのそんな姿は衝撃だった。
 マムを泣かせたくない。マムが泣かないためには、どうすればいいだろう。
 ギィという男の歩く道は、その先にあった。そこにしかなかった。
 ――だから俺は今、ここにいる。

 上半身裸で床に押し倒され、マムに馬乗りにされたまま、ギィは言った。
「なあ、マム。マムの方こそ、王蛇会を――ぐほぉあっ?!」
 みぞおちに、掌底を一発。横隔膜が大痙攣を起こし、呼吸すら困難になったギィは苦しさで床をごろごろと転げる。
「まったく、朝から何を間抜けなことを、間抜けな格好で言おうとしてるんだい」
 立ち上がったマムは、涙目でのたうつギィには目もくれず、ギィが脱いだ服を床から拾い上げて抱えあげた。
 マムは部屋を出て洗い場へ向かう。扉を閉じると、扉に背を預けてため息をついた。
「あたしに、裏切り者を処分するなんてことさせたくないなら、まず自分が王蛇会に戻って裏切り者でないことを証明すべきだろうに……そこをやらずに、どこに向かってるつもりだい、あいつは」
 マムは洗濯物を抱えたまま、人指し指でそっと自分の唇に触れてみる。
「……ま、しょうがないね。もうしばらく、あたしが面倒を見てやらないとね」
 ふふっ、と笑ってから、マムはぎゅっ、とギィの脱いだ服を抱きしめた。
 服からは、ソースの匂いがした。

 おしまい

艦これRPGシナリオ 鎮守府カレーふぇすちばる

2014年4月19日 TRPG, 艦これRPG No comments

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艦これRPGシナリオ 鎮守府カレーふぇすちばる
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 このシナリオは、各地の鎮守府の艦娘たちが鎮守府ごとのカレーの腕を競うというものです。
 2014年4月19日に横須賀であったカレーグランプリをシナリオの元ネタにしております。

===
シナリオスペック
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艦娘人数:3~4人
プレイ時間:2時間
リミット:2
任務:
・自分の鎮守府のオリジナルカレーを作る
・他の鎮守府カレーとカレーフェスタで競い合う

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導入フェイズ
===
●読み上げ
 きみたちは、鎮守府の提督執務室に集まった。
「このたび、七カ所の鎮守府が合同で演習を行うことになった」
「演習とは他に、互いの鎮守府の親善のため、カレーフェスティバルを開催する」
「それぞれの鎮守府が、独自のカレーを作り上げて腕を競うというお祭りイベントだ」
「主な目的はもちろん合同演習なのだが、カレーフェスティバルにも手を抜かずに勝利を狙っていきたい」
「きみたちには、我が鎮守府のオリジナルカレーを作って、カレーフェスティバルに出場してもらいたい」
 いつになく提督がやる気だ。きみたちも頑張ろう。
「あ、そうだ。合同演習はチームを入れ替えて何試合もあるので、きみたちにも出場してもらうよ」

●本シナリオの流れ
 1サイクル目は、鎮守府の中を回ってオリジナルカレーを作ります。
 1サイクル目の終わりに、イベントが発生し、出撃と戦闘があります。
 2サイクル目は、カレーフェスタの当日です。
 2サイクル目が終わると、決戦フェイズです。

艦これRPGシナリオ3MAP
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鎮守府フェイズ
===
■1サイクル目:オリジナルカレーを作ろう!
 1サイクル目は、オリジナルカレーを考案する流れとなります。
 もちろん、イベントカードではどのイベントを選んでもかまいません。
 キーワード候補は、「神の食材」「伝説のスパイス」「カレー仙人」「秘伝のレシピ」「料理人の愛」など、オリジナルカレー関連です。もちろん、プレイヤーはこれ以外からも自由に選んでかまいません。
 イベントの判定で『達成』がでれば、オリジナルカレーの完成が進んだことになります。
 『残念』がでると、オリジナルの道は険しい、ということになります。
 この結果は、任務で得られる経験点に影響します。

■イベント1:
 このイベントは1サイクル目の終わりに発生します。
 これは出撃イベントとなります。

●読み上げ
 きみたちは、遠征任務に出ている。場所は南西海域だ。
 オリジナルカレーの目処はついたのだが、いくつかの食材はきみたちの鎮守府では手に入らず、南西海域にいかなければ手に入らないからだ。
 遠征任務で船団を守って南西海域に到着したきみたちは、あらかじめ頼んでおいた食材を取りに向かう。そこへ、SOSが入った。
 深海棲艦が出現して現地の商船を襲っているらしい。しかも、その商船に積んであるのはきみたちが頼んだ食材だという。すぐに出撃しよう。

●エネミー
 駆逐ロ級×3
 軽巡ト級elite×1(敵旗艦)
 軽母ヌ級×1
 同航戦。

●読み上げ(戦闘で勝利)
 きみたちは深海棲艦に勝利して、商船を守った。
 無事に食材を手に入れることもできた。
 さっそくその食材で試食用のカレーを作って食べてみる。
 とても美味しくできた。【行動力】を1D6点回復する。

●読み上げ(戦闘で敗北)
 きみたちは深海棲艦に敗北したが、商船はなんとか守った。
 だが、残念ながら積み荷は海に投棄してしまうこととなり、食材は失われてしまう。
 代わりの食材を手配したが、これではカレーフェスタで苦戦はまぬがれない。
 2サイクル目のイベントの判定に-1の修正がつく。

■2サイクル目:カレーフェスタ当日
 2サイクル目は、カレーフェスタ当日となります。
 もちろん、イベントカードではどのイベントを選んでもかまいません。
 キーワード候補は「行列整理」「レッドキャッスル襲来!」「魔のブラックカレー」「食材が逃げた!」「迷子」などです。
 イベントの判定で『達成』がでれば、PCの鎮守府カレーの評判が上がります。
 『残念』がでると、PCの鎮守府カレーの評判は今ひとつでした。
 この結果は、任務で得られる経験点に影響します。

■イベント2:
 このイベントは2サイクル目の最初に発生します。

●読み上げ
 いよいよ、カレーフェスタが……いや、鎮守府合同演習が始まった。
 鎮守府の入り口には、大きな垂れ幕に『鎮守府カレーふぇすちばる』と書かれている。垂れ幕を作ったのは、どこかの駆逐隊らしい。
 カレーフェスタでは、艦娘や、訪れた見学客にカレーをふるまい、食べた人の投票で勝敗を決める。
 ひとりでも多くの人を、きみたちのカレーで楽しませることができればいいのだが。

■イベント3:
 このイベントは2サイクル目の終わりに発生します。

●読み上げ
 鎮守府合同演習は、どこの鎮守府も精鋭を繰り出して一進一退、激しいつばぜり合いが続いている。
 そしていよいよ、きみたちの演習の番となった。
 いつもの訓練通り、実力を発揮できるだろうか。

===
決戦フェイズ
===
 決戦フェイズで、PCは他の鎮守府の艦娘と合同演習を行います。
 エネミーは、深海棲艦のデータを使いますが、他の鎮守府の艦娘です。
 PCとかぶった場合には変更しますが、候補としては次の通り。
・戦艦:伊勢か日向
・空母:飛龍か蒼龍
・重巡:摩耶か鳥海
・軽巡:名取か由良
・駆逐艦:子日か若葉

●エネミー
 戦艦の艦娘(戦艦ル級)
 空母の艦娘(空母ヲ級elite)旗艦
 重巡の艦娘(重巡リ級)
 軽巡の艦娘(軽巡ヘ級elite)
 駆逐艦の艦娘(駆逐ニ級elite)
 同航戦。
※PCが4人ならエネミーの軽巡を、3人ならエネミーの軽巡と戦艦を取り除く。

●特別ルール
 対戦相手の艦娘は、深海棲艦のデータを使用します。
 加えて、それぞれ次の特殊アビリティを保有しています。
 PCの戦力やプレイヤーとGMの習熟度に合わせて使ってください。

・戦艦の艦娘【レーダー照準砲撃】
 艦娘が回避に成功した時に使用。判定をふり直させる。ラウンド1回。
 ※レーダー照準による精密砲撃。避けにくい。
・空母の艦娘【雷爆同時攻撃】
 艦娘の回避の判定に-1の修正がつく。ラウンド1回。
 ※雷撃と爆撃を同時に行う練度の高い攻撃。避けにくい。
・重巡の艦娘【噴進砲一斉発射】
 艦娘の航空攻撃に-1Dの修正がつく。ラウンド1回。
・軽巡の艦娘【高速機動】
 『艦これRPG 着任の書』P253を参照。判定は自動成功する。
・駆逐艦の艦娘【護衛艦】
 『艦これRPG 着任の書』P255を参照。判定は自動成功する。

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終了フェイズ
===
 エピローグは、決戦フェイズの勝敗によって以下のいずれかを読み上げてください。

●読み上げ(勝利)
 合同演習はきみたちの勝利となった。
 他の鎮守府の艦娘との戦いは、きみたちにとって良い経験となった。

●読み上げ(敗北)
 合同演習は残念ながら、きみたちの敗北となった。
 けれども他の鎮守府の艦娘との戦いは、きみたちにとって良い経験となった。

●読み上げ(共通)
 鎮守府合同演習は大きな成果をあげて無事に終わった。
 一方で、カレーフェスタの方は、残念ながら決着がつかずに終わってしまう。
 あまりに大勢の客が訪れたため、どこもカレーが足りなくなり、カレーを食べ比べるということができなかったからだ。
 決着はつかなかったが、艦娘や訪問客は、みんな幸せそうにきみたちのオリジナルカレーを食べてくれた。
 カレーはいくつもの海を越えて、食材が集まってくる。食材が海を渡ることができなければ、カレーも作れない。
 人々の笑顔とカレーを守るためにも、がんばらなくては。

●経験値と任務の達成
 任務の経験点は次のように計算します。
・1サイクル目でオリジナルカレーのレシピがうまくいった+20点
・2サイクル目で鎮守府カレーの評判が上がった+20点
・イベント1の戦闘で勝利した+10点
・決戦フェイズに勝利した+50点
・決戦フェイズで敗北した+30点

艦これRPGシナリオ お花見はお弁当持って

2014年4月10日 TRPG, 艦これRPG 1 comment

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シナリオ お花見はお弁当持って
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 このシナリオは、艦娘たちが鎮守府の近くにある小島でお花見をするというものです。
 艦これノベライズ『艦これ とある鎮守府の一日』(スニーカー文庫)収録の第4話『桜色の夜間監視任務』をシナリオの元ネタにしております。

===
シナリオスペック
===
艦娘人数:3~4人
プレイ時間:2時間
リミット:2
任務:
・お花見の場所を選び、お花見の準備をする。
・お花見の場所近くに出現した敵艦隊を撃破してお花見を成功させる。

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シナリオMAP
===

艦これRPGシナリオ2MAP
===
導入フェイズ
===
●読み上げ
 春らんまん。
 きみたちは、鳳翔さんに呼ばれて鎮守府の酒保に集まった。
「今度、この鎮守府の皆さんでお花見をすることになりました」
「皆さんには、お花見の準備をしてもらいたいのです」
「場所の選定や、他の艦娘の皆さんと相談してスケジュール調整、食事や飲み物の手配、何かイベントを一緒にするなら、その企画などです」
「分からないことがありましたら、私がサポートしますから、がんばってくださいね」

●本シナリオの流れ
 1サイクル目は、鎮守府の中を移動して回って花見の事前準備です。
 1サイクル目の終わりに、イベントが発生し、出撃と戦闘があります。
 2サイクル目は、お花見当日になります。
 2サイクル目が終わると、決戦フェイズです。

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鎮守府フェイズ
===
■1サイクル目:お花見の準備をしよう!
 1サイクル目は、お花見の準備となります。
 もちろん、イベントカードではどのイベントを選んでもかまいません。
 キーワード候補は、「桜の名所」「開花情報」「お天気予報」「スケジュール調整」「広報」など、お花見の準備関連です。
 イベントの判定で『達成』がでれば、準備が進んだことになります。
 『残念』がでると、準備は進みませんでした。
 この結果は、任務で得られる経験点に影響します。

■イベント1:春島の桜
 このイベントは1サイクル目の終わりに発生します。
 これは出撃イベントとなります。

●読み上げ
 きみたちは、鎮守府の近海にある四季島(しきじま)に来ている。
 ここには春島・夏島・秋島・冬島の四季の名がつけられた無人島が並んでいる。
 その中の春島は、こんもり盛り上がった丘の上に桜が満開になっていた。
 ここなら、花見の場所にふさわしい。
 きみたちが場所の下見をして、いざ鎮守府に戻ろうとした時に通信が入る。
 近くの漁船が、深海棲艦の空襲を受けているのだ。どうも軽空母がいるようだ。
 一番近くにいるのはきみたちだ。すぐに出撃しよう。

●エネミー
 駆逐イ級×PCと同じ数
 軽母ヌ級×1(敵旗艦)
 同航戦。

●読み上げ(戦闘後)
 きみたちが戦っている間に、漁船は逃れることができた。
 漁師さんたちは、お礼にと、きみたちにれたての伊勢エビをくれた。
 鳳翔さんに持っていって調理してもらい、みんなでおいしくいただいた。
 【行動力】を1D6点回復する。

■2サイクル目:花見当日
 2サイクル目は、花見当日の準備になります。
 もちろん、イベントカードではどのイベントを選んでもかまいません。
 キーワード候補は「場所取り」「お弁当」「設営」「遅刻」などです。
 イベントの判定で『達成』がでれば、準備がはかどります。
 『残念』がでると、準備ははかどりませんでした。
 この結果は、任務で得られる経験点に影響します。

■イベント2:花見を守れ
 このイベントは2サイクル目の終わりに発生します。

●読み上げ
 きみたちは、花見の準備のため、他の艦娘より一足早く春島へと向かった。
 春島の桜は満開で、天気も良い。絶好のお花見日和だ。
 しかし、そこへ鎮守府から緊急通信。
 再び空母を含む深海棲艦がこの近海に出現したというのだ。
 どうやら、鎮守府を直接空襲しようとしているらしい。前に戦った深海棲艦はそのための下見の艦隊だったようだ。
 深海棲艦を撃退しなければ、花見は中止になってしまう。
 みんなで楽しみにしていた花見を守るため、出撃だ。

===
決戦フェイズ
===
 決戦フェイズで、PCは鎮守府近海にやってきた深海棲艦の艦隊と戦闘になります。

●エネミー
 駆逐ロ級×2
 軽巡ホ級×1
 重巡リ級×1
 空母ヲ級×1(敵旗艦)
 同航戦。

●特別ルール
 この深海棲艦の艦隊は、鎮守府を直接空襲するために特別編成された部隊です。
 太平洋戦争でいえば、ドーリットル空襲の部隊に相当し、いろいろと無理をしてはるばる鎮守府のすぐ近くにまでやってきております。
 そのため、空母ヲ級から【艦爆】のアビリティを削除します。このことは航空攻撃のフェイズまで伏せておきます。

===
終了フェイズ
===
 エピローグは、決戦フェイズの勝敗によって以下のいずれかを読み上げてください。

●読み上げ(勝利)
 きみたちは、深海棲艦の撃退に成功した。
 花見は無事に行われることとなった。
 きれいな花と、おいしいお弁当で、花見はおおいに盛り上がった。
 夜になってからは、探照灯で照らされた夜桜を楽しむ。
 さあ、明日からもがんばろう。

●読み上げ(敗北)
 きみたちは敗北したが、鎮守府から応援の艦隊が来る時間を稼ぐことに成功した。
 深海棲艦は、応援の艦隊が撃退し、鎮守府は守られた。
 けれども、戦いが長引いてしまったので、安全のため花見は中止になってしまう。
 来年こそは、花見を成功させよう。

●経験値と任務の達成
 任務の経験点は次のように計算します。
・1サイクル目で花見の準備がはかどった+20点
・2サイクル目で花見の準備がはかどった+20点
・イベント1の戦闘で勝利した+10点
・決戦フェイズに勝利して花見を無事に開催した+50点
・決戦フェイズで敗北して花見が中止になった+10点

艦これRPGシナリオ 鼠輸送作戦

2014年3月22日 TRPG, 艦これRPG 1 comment

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シナリオ 鼠輸送作戦
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 このシナリオは、孤立した島に補給物資を送るというものです。
 スニーカー文庫の艦これノベライズ『艦隊これくしょん 一航戦、出ます!』の第3章をシナリオの元ネタにしております。

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シナリオスペック
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艦娘人数:3~4人
プレイ時間:2時間
リミット:2
任務:
・ドラム缶を集めて、鼠輸送作戦の準備をする。
・敵艦隊を撃破して物資を届ける。

※注意!
 決戦フェイズは夜戦となります。
 PCの艦娘として空母を選ぶことはできません。

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シナリオMAP
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艦これRPGシナリオMAP


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導入フェイズ
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●読み上げ
 きみたちは、提督に呼ばれて提督執務室に集まった。
「深海棲艦が出現して、孤立した島がある」
「きみたちに、島へ補給物資を届けてもらいたい」
「本来なら、補給は輸送船が行うのだが、空母の深海棲艦が近くにいるようで、昼間に近くを通ると、沈められてしまうんだ」
「だから、ドラム缶に物資を入れて、きみたちが引っ張って島まで届けてほしい。昼間になると空襲を受けるから、夜の間に行って帰ってくるんだ」
「ドラム缶は鎮守府のあちこちにあるだろうから、それを集めてくれ。物資はこちらで用意する」
「ドラム缶を引っ張って物資を輸送することを、昔は鼠輸送作戦と呼んでいたそうだよ」

●本シナリオの流れ
 1サイクル目は、鎮守府の中を移動して回ってドラム缶を集めます。
 1サイクル目の終わりに、イベントが発生し、出撃と戦闘があります。
 2サイクル目は、うまく鼠輸送ができるように練習したり、物資を詰め込んだりします。
 2サイクル目が終わると、鼠輸送作戦で決戦フェイズです。

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鎮守府フェイズ
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■1サイクル目:ドラム缶を集めよう
 1サイクル目は、ドラム缶集めになります。
 もちろん、イベントカードではどのイベントを選んでもかまいません。
 イベントの判定で『達成』がでれば、ドラム缶を見つけたことになります。
 『残念』がでると、ドラム缶は見つかりませんでした。
 この結果は、任務で得られる経験点に影響します。

■イベント1:ドラム缶泥棒!
 このイベントは1サイクル目の終わりに発生します。
 これは出撃イベントとなります。

●読み上げ
 キミたちは、演習海域に来ている。
 キミたちが集めたドラム缶がちゃんと輸送で使えるかどうか、海に浮かべて確認しているのだ。
 紐で数珠つなぎにしたドラム缶は、ぷかぷかと、海の上に浮かんでいる。
 と、その時!
 ドラム缶がずるずると、どこかへ移動していくではないか。
 見れば、出現した深海棲艦がドラム缶をつないだ紐に引っかかっている。
 どうやら、偵察任務の深海棲艦がたまたま通りかかったようだ。
 ドラム缶を取り戻すため、出撃だ。

●エネミー
 駆逐ロ級×PCと同じ数
 駆逐ニ級elite×1(敵旗艦)
 同航戦。

●読み上げ(戦闘後)
 突然の戦闘だったが、ドラム缶は必要な数を集めることができた。
 続いてこのドラム缶に物資を入れたり、うまく引っ張れるよう練習したりしよう。

■2サイクル目:鼠輸送の準備
 2サイクル目は、鼠輸送の準備になります。
 もちろん、イベントカードではどのイベントを選んでもかまいません。
 イベントの判定で『達成』がでれば、準備がはかどります。
 『残念』がでると、準備ははかどりませんでした。
 この結果は、任務で得られる経験点に影響します。

■イベント2:壮行会
 このイベントは2サイクル目の終わりに発生します。

●読み上げ
 鼠輸送作戦の準備は整った。
 日没とともに島の周囲の海域へ行く時間調整のため、鎮守府を出発するのは昼過ぎになる。そこで、昼食の時にこれから出撃するきみたちのため、他の艦娘が壮行会を開いてくれる。デザートもついて、ちょっと上等なお昼ご飯になった。
 全PCの行動値を1D6回復する。

===
決戦フェイズ
===
 決戦フェイズで、PCは島の周囲を封鎖している深海棲艦の艦隊と戦闘になります。

●特別ルール
 夜間での戦闘なので、本シナリオの特別ルールとして戦闘は次のようになります。
・夜間での戦闘になるため、航空戦フェイズは発生しません。
・砲撃フェイズでは1ラウンド目から短距離砲撃フェイズのみ行います。
・夜戦フェイズは通常通り判定します。

●エネミー
 駆逐イ級×2
 軽巡ヘ級×1
 重巡リ級elite×1(敵旗艦)
 同航戦。

===
終了フェイズ
===
 エピローグは、決戦フェイズの勝敗によって以下のいずれかを読み上げてください。

●読み上げ(勝利)
 きみたちは、島を封鎖している深海棲艦の艦隊を撃破し、無事にドラム缶を島に届けることができた。
 鎮守府に戻ったきみたちを、提督が桟橋まで出迎えてくれる。
「ありがとう。これで島に残された地上部隊は一息つくことができるだろう」
「これで時間を稼ぐことができた。次は主力艦隊を率いて、あの島の周囲の深海棲艦をまとめてやっつけるぞ」
「さあ、修理用ドックはあけてある。傷ついた子はすぐに入ってきなさい。出てきたら、みんなで祝賀会だ」

●読み上げ(敗北)
 きみたちは、島を封鎖している深海棲艦の艦隊を撃破することができず、引き上げることになった。
 鎮守府に戻ったきみたちを、提督が桟橋まで出迎えてくれる。
「残念だったね。でも、きみたちが戻ってきてくれて、良かった」
「引き返せば、また行くことができる。次こそ、勝利しよう」

●経験値と任務の達成
 任務の経験点は次のように計算します。
・1サイクル目でドラム缶を集めた+20点
・2サイクル目で鼠輸送作戦の準備をした+20点
・イベント1の戦闘で勝利した+10点
・決戦フェイズに勝利して鼠輸送作戦を成功させた+50点
・決戦フェイズで敗北して鼠輸送作戦が失敗した+10点

宮澤伊織『ウは宇宙ヤバイのウ! セカイが滅ぶ5秒前』ライトノベル版『銀河ヒッチハイクガイド』的な、良質のユーモアSF

2014年1月10日 ライトノベル, 読書感想 No comments

 宮澤伊織さんの『ウは宇宙ヤバイのウ! セカイが滅ぶ5秒前』がたいへん面白いSFで、私のツボにはまりまくりましたので、ここにご紹介を。

 舞台は現代日本(少なくとも最初はそんな感じだった)。主人公はごく平凡な高校生(少なくとも最初はそんな感じだったし、読み終わってもそんな感じ)。
 そこに、隕石は落ちてくるわ、暗殺者は襲ってくるわ、列強種族(列強種族!列強種族ですよ!この言葉の響きのかぐわしさ!)が地球に迫るわで、次から次へとトラブルが押し寄せるのを、元敏腕エージェントで世界線混淆機なる超絶ガジェットで世界がぐっちゃんぐっちゃんに入り混じってしまった結果、記憶を失って普通の男子高校生になってしまったという、寺沢武一さんの『コブラ』っぽい主人公君がなんとかしちゃうというお話であります。

 『銀河ヒッチハイクガイド』的とタイトルに書きましたが、ところどころに出てくるライブラリのうさんくさい記述が、まったくもって、ヒッチハイクガイドっぽいです。要約して説明しろと機械に命じると、機械が悲しそうにするところとか!

 ライトノベルのユーモアSFですと、山本弘さんの『ギャラクシー・トリッパー美葉』に近いと言えるかもしれません。

 漫画のユーモアSFですと、長谷川裕一さんの『わかりすぎた結末 あるいは失笑した宇宙 もしくはキャプテン・オーマイガーの華麗なる挑戦』的な感じでもあります。あと、不遇なタイムパトロールが出てくるあたりは、横山えいじさんの『マンスリープラネット』っぽいです。

 本作品のポイントはやはり、状況が悪くなると、世界をぐっちゃぐちゃにして何とかしてしまう世界線混淆機の大活躍と、それによって、どんどん世界が変革されていくスットコドッコイな展開、さらにそれが、「学校の授業の内容」という形で半ページでさらりと要約される手際の良さでありましょう。

 主人公も、周囲のキャラクターも、みな、愉快で気のいい連中で、安心して読むことが出来ます。

 売れ行きがよければ、2巻以後もあるみたいですので、ここは興味を持たれた方はぜひ! ぜひ! 私が続きを読みたいので! 脳の因果地平が広がるとか、生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答えが手に入るとか、そういうことはありませんが、にやにや笑いながらページをめくる楽しさに満ちた、たいへん良質のユーモアSFであることは、保証いたします。