1.カードリソースとはなんぞや

 まず、このエントリにおけるカードリソースについて定義しておく。
カードリソースとは「ゲーム・シナリオに関わるある一つの事柄についての情報を記したカード状の紙片類」である。
たとえば、現状であればSRSなどで使うハンドアウトは「あるPCの持つシナリオ開始前の前提情報」を記載したもので、これを切り離して各プレイヤーに配布する場合、カードリソースに相当する。
逆に、カードリソースではない例として、NPCのビジュアルを描写するためにTCGのカードを使う、などがある。雰囲気作りのためのイラストにはゲーム的な意味、シナリオ上の重要度はさほどないので、ほとんどの場合カードリソースには該当しない。

 要するに、プレイヤー間での情報共有・情報整理にカード形式のものを利用しようという趣旨である。

2.いったい何が良いのか

 まずは、なぜカードリソースを活用するとよいのか、という点について。
何と言っても最大のメリットは「セッションが円滑に進む」ことである。

 たとえば、「行方不明になってしまったNPCの捜索」というミッションを例にとって考えよう。
まず、PCはNPCの部屋を捜索する。ここで日記を見つけ、日記から最近よく港を訪れていた情報を得る。この時、GMは内容説明とともに「NPCの日記:最近よく港を訪れる」と書かれたカードをプレイヤーに渡すわけである。
その後、情報収集を進めていくと「港での目撃情報:ガラの悪い男とよく話していた」「バーテンの情報:ガラの悪い男は麻薬の密売人」などといったカードを順番に渡していくわけである。

 こうすることで、情報をどこまで提供したか、ということがGM、PL間で共有管理できる。
GMは足りない描写やイベントがあれば手元に残っているカードを見ればすぐに気付き、予定外の展開になっても必要な情報がどれだけわたっているかがあらかじめ整理されているのですぐに適切なフォローを入れることができる。
PLはシナリオの情報・伏線が整理された形で手元にあるので、プレイヤー間での次の行動方針や役割分担の相談が非常にスムーズに進む。
以前、この形式でシナリオを作ってプレイしたことがあるが、うまく作り込んでおくと相当なボリュームのシナリオでも驚異的な短時間でエンディングまで持っていくことができる。もちろん、シナリオをすっ飛ばしたわけではなく、プレイヤーにちゃんとストーリーが伝わってロールプレイをしたうえで、である。

 このリソースカードシステムの第二の利点は、シナリオ作成者以外がGMをするときの手間が格段に減る、というものもある。イベント単位でやらないといけないことをカードにしてまとめてあるので、シナリオの大枠をざっと流し読みすれば細かいイベントまで把握する必要がないからだ。

 システムによって適したカードーの分類はさまざまで、システムによっては恩恵を受けれないケースもありうる。
たとえばサイコロフィクションのシノビガミなんかではもともとカードで情報を管理するので、これ以上カードリソース化する余地はほとんどない。ダンジョンマップにストーリーイベントを配置するようなタイプのゲームでもあまり出番はない。
それから、何かあればイベント表を引くなどしてランダムにシナリオが展開するタイプのものではそもそも管理すべき情報が事前にわからないのカードをあらかじめ用意しておくことができない。
ただ、そういう例外はごく一部で、シナリオの情報をプレイヤーがGMから聞いてメモする、というような一般的な形式をとるタイプのセッションであれば、だいたい適用することができると思う。

3.シナリオをどう作れば良いのか

 シナリオ作成に関しては今まで通り普通作ってしまってかまわない。その中でイベントシーンでPCに渡す情報を抜き出して、細分化する。基本的に、「一度の判定/アクションで得られる情報を1枚のカードにする」「達成度などで段階的にわかる情報はナンバリングして分けておく」というルールでやればよいと思う。
先ほどの「行方不明になってしまったNPCの捜索」で「NPCの部屋の捜索」というシーンを例に考えていると

シーン例:NPCの部屋の捜索~シナリオ上の記述~
捜索判定に通常成功すると、NPCの日記が入手出来る。日記には、最近は港をよく訪れていることが読み取れる。さらに、ここで注意力判定に成功すると、金欠になったときに港に行っていることがわかる。
捜索判定に大成功すると、引き出しの奥が二重底になっていて、そこに何かを隠していた痕跡を発見する。

このイベントをカードリソース化すると、

・NPCの日記1:最近、港を良く訪れているようだ
・NPCの日記2:金欠になったときに港を訪れているようだ
・NPCの部屋の机:引き出しの底が二重底になっていた。ここに何かを隠していたようだ

 と、このような感じになる。

 市販のシナリオでもこのようにシーンごとにPCに渡す情報を整理して書き出していけば、カードリソース化ができるはず。

4.カードの印刷方法など

 便宜上、カードという形にしているが、ルーズリーフに手書きで書いて切り分けるなどでもかまわない。要は並べて整理出来る形になっていれば良い。
印刷するなら、officeなどのソフトウェアを使う場合は表計算ソフトでセルの大きさを調整すれば最低限の体裁は整う。見栄えにこだわって形を統一するなら、カード印刷ソフトを使うと決まったサイズのものが枠線付きで印刷出来るので便利。用紙メーカーのエーワン社がフリーで公開しているラベル屋さんなどを利用すると良いだろう。
名刺用紙を使うとなかな見栄えの良いモノができるが、使い回す気がないのであれば、普通のコピー用紙に印刷して、切り離せば十分。ペラ紙がどうしても気になるならカードスリーブに入れておくと分類もしやすい。
作ったカードは、TCG用のカードバインダーなどで管理すると良いだろう。もしくはきちんと封のできる封筒や箱に入れないと、クリアファイルなどに入れておくとせっかく作ったカードがこぼれてバラバラになってしまうので要注意。

5.まとめと応用

 カードリソース化の最大のメリットはなんと言っても、セッション中の情報整理が進むことでボリュームのあるシナリオを短時間でプレイ出来るという点につきる。つまり、状況の説明に割いていた時間が減り、他のこと、例えば戦闘に時間を割くことができる。もちろん、よりボリュームのあるシナリオを作ることだってできる。

 騙されたと思って一度試してみて欲しい。きっと驚くほど円滑にセッションが進む。特に、コンベンションのように、よく知らないプレイヤーと遊ぶときに威力を発揮するはず。

 このやり方は、おそらくシナリオ記述以外にも応用出来る。準備の手間は膨大にかかるが、FEARのルールブックによくあるクラスごとの特技の説明をコピーして全て切り離し、クラスごとにまとめておくとキャラクターメイキングでクラスの組み合わせを考えるときに非常に役立つだろうと思う。……まあ想像するだに手間が恐ろしいのでおすすめはしませんが。
まあ、データ全部は無理にしても、ライフパスのような全員が共通で使うチャートだけでもカード化しておくと、セッションに入るのがずいぶん楽になるはず。