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勝利の焼きそばパン 第0稿

ちっくしょう、タニセンの奴め。数学教師のくせにキッチリ時間も守れねぇで。おかげで争奪
戦に出遅れるどころの話じゃねえ。『焼きそばパン』と言えばお昼の購買人気ナンバーワン
ターゲット、普段であれば食べられない高嶺の花だからこそ、狙うとなったら絶対仕留めると
決めていたのに。もう遅いか? いや、俺ならできる。俺なら勝てる。いや、勝つ! ゼッタ
イに――
「――勝ったああ! 勝ったぞおお!」
何とかこの手に収めることのできた、最後の一個。
勝負のゴングから開始5分、出遅れること2分……。危ない戦いだった。
やはり、親友との誓いあった焼きそばパンをかけた勝負で、俺が負けるはずなかったのだ。
「これで『勝利の焼きそばパン』は俺のものだ」
「ちょっと、そこのひと。聞こえてますかー?」
「なんだ女。俺は今勝利の余韻に忙しいんだ、後にしてくれ」
「その『勝った』ってなんのこと? これ私のなんだけど」
……確かに見れば、女の手は俺の持っているパンに伸びている。否、彼女が焼きそばパンをも
っている手ごと、俺が掴んでいる。
確かに俺は置かれたパンを手に取ったはず
購買部の掟の番人と呼ばれたこの俺が? なぜ? どうして? ホワイ?
「はい、どこのだれか知らないけど。購買部鉄の掟、第六条」
「っ! ……『人の手に渡りしもの、取るべからず』」
「判断の怪しき場合」
「――同胞の多数決を絶対とする」
「偽証は」
「――有罪。正直ならざる者食うべからず」
「よろしい。……で、皆に聞いてみる??」
確認するまでも無い。場の空気が言っている、俺の負けだ、と。
「いや……、ごめん」
「分かればいいのよ、わかれば」
「俺の……『勝利の焼きそばパン』が……」
「ああ、それとね。その、『勝利の焼きそばパン』っていうの、やめてくれる? 親友との誓
いとか思い出、穢されたくないの。……っていうか、なんで貴方が知ってるの?」

今。この女……何ていった?
思い出? 誓い?
「それは俺の台詞だああああ!!」

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