焼きそばパン競作~ゲームと焼きそばパンとご奉仕と。-第四稿
焼きそばパン競作~ゲームと焼きそばパンとご奉仕と。-第四稿
俺にとって、この世界は『ゲーム』だ。
昼休み。俺は今学校の廊下を駆けていた。
今日のお目当ては、焼きそばパンだ。
焼きそばパン。焼きそばパン。ああ焼きそばパン。字余り。
そんな事を思いながらも、目の前の学生を追い抜き、歩いてきたやつをひらりと交わす。
まるで、ドライブゲームかシューティングゲームかのように。
焼きそばパンちゃーん。
焼きそばをパンに挟んだだけというシンプルな組み合わせ。炭水化物オン炭水化物。
ああ、なんという食べ物だ。だが、それがいい。
学生の、青春の食べ物である。それを生徒たちは昼間になると争奪しあうのだ。
そのゲームに勝ち、焼きそばパンをゲットすることが今回のゲームだ。
だが、なんという不覚。授業の遅れによりちょっと出遅れてしまった。
急げ。俺。急げ。
そして俺は、購買の校内コンビニへとたどり着いた……。が!
「はいっ、お目当ての焼きそばパンですよっ。最後の一つをゲットしておきましたっ」
「おいちょっと待てよっ!?」
眼の前に立つのは、ちょっと背のちっちゃい、目のくりっとした女の子。俺の後輩だ。
なんということだ! 先にパンを買われていた!
このゲームは俺の負けだ。畜生ー!!
「あー、ちくしょー! 負けたー! お前に負けたー!! くやしーっ!!」
「せ、先輩!? 落ち着いて落ち着いて!?」
はぁ……っ。はぁ……っ。
しかし、しかしっ!?
「なんで俺のために焼きそばパン買ったんだよ!? お前が買ったんだからお前が食べればいいじゃねーか!?」
「だって……。先輩にご奉仕したかったから……」
額や腕にキラリと汗を光らせ、うっとりする後輩女子。激戦の後を物語っている。
「だからって俺のゲームを邪魔するなよっ!? 俺は自分で焼きそばパンをゲットしてゲームに勝ちたかったんだよっ!? これじゃチートじゃねえかよっ!?」
俺が怒鳴りつけると、彼女はその大きな瞳をうるっとうるませる。
「あ、あたし、先輩にご奉仕しようと、一生懸命頑張ったのに……」
うっ。これじゃ俺が悪党、ボスキャラじゃねーかよ!? しょうがねえなあ……。
「う、うむ……。クリア報酬としてこれをやろう」
そう言うと俺は、手を離して制服から財布を取り出し、焼きそばパン代を後輩に渡す。
すると彼女は、目を餌を欲しがる猫のように大きくして尋ねてきた。
「ご、ご褒美は……?」
うっ……。またいつものパターンか。
しょうがないなあ……。
俺は小さく震える後輩のちっちゃい体の頭に、ぽん、と手を乗せた。
そのまま優しく撫でてやる。
彼女の顔が、ぱあっと明るく輝く。
ご奉仕と言いながら、きっちりと報酬を要求してくる。現金だよな。こいつ。
しかし、こいつの小躍りしている顔を見てると。
嬉しくなるのは、どうしてだろうな。
「……ま、それがお前のゲームだよな。よくやった」
ゲームは、一人でプレイするのも楽しいが、ふたり以上でプレイすると、もっと楽しい。
7月 18, 2013 木曜日 at 3:55 pm