●超ド級戦艦〈扶桑〉参戦
 戦艦という言葉の響きには、魅惑的なものがある。
 しかし、艦娘の元となった、第二次世界大戦で戦った「装甲が厚くて甲板の上に砲塔が乗っかっていて、でっかい」という戦艦は、軍艦の歴史の中では、それほど新しいものではなかったりする。
 そもそも、全体が装甲に覆われた軍艦というものは、ナポレオンの頃には存在せず、その後のリンカーン大統領の南北戦争の頃になって、ようやくそれっぽいのが出てくるほどなのだ。
 第二次世界大戦の頃は、現代的な戦艦というのは、まだ100年とたっていない新しい艦種だったのである。
 そして、新しいがゆえに、進化も早い。
 日露戦争の日本海海戦で戦艦が大活躍した翌年の1906年に進水した戦艦ドレッドノートも進化を加速した戦艦のひとつである。
 効率的な砲戦能力と、有利な砲戦に必要な位置取り能力とを備え、従来型のあらゆる戦艦を時代遅れにしたとされるドレッドノートの登場で、戦艦は、「ドレッドノート前」と「ドレッドノート後」に分けられたのである。
 ドレッドノートより古い設計の戦艦が、前ド級戦艦。
 ドレッドノートと同じ設計の戦艦が、ド級戦艦。
 そして、ドレッドノートより一段階進化した戦艦が、超ド級戦艦である。
 超ド級戦艦よりもさらに一段階進化した戦艦を超々ド級戦艦と呼称することもあるが、ここまでくると訳が分からなくなるので、艦これ的にはド級と超ド級だけ押さえておけば良いだろう。

 我が艦隊に配属された〈扶桑〉は、日本で建造された最初の超ド級戦艦である。
 特徴はやはり、火力と防御力である。戦艦の進化は彼女以後も急ピッチで進むため、史実の彼女は鈍足で使い勝手が悪い戦艦となったが、艦これでは違う。
 何しろ、艦これで提督(プレイヤー)が一番恐れるのは、自らが手塩にかけた艦娘が沈むことである。たとえ旧式であろうが、戦艦の装甲と耐久力は、提督(プレイヤー)にとってたいへん心強い。

 さっそく扶桑は第1艦隊に配属され、敵の攻撃を引きつける盾役として大活躍するのである。

「それって、損害担当艦ということですよね」

 いや、そうだけど。そういう台詞をにこにこと笑いながら言わないでくれるかな〈名取・改〉!

「だぶった駆逐艦娘(1レベル)、食べさせてくれたら黙っておいてあげます」

 キミすでに装甲が40、雷装も60あるよね!
 ついつい食べさせちゃう(近代化改装すること)、俺も俺だけど!

「そんなこといいから、撃っていい? ねえ、撃っていいよね? ねっ、ねっ」

 いいから落ち着け〈足柄〉。あんたはパトレイバーの太田か。なんでそんなに残念系美人なんだ。

●空母〈赤城〉登場! そして大破!
 「敵空母を撃沈せよ!」というミッションが出現した。
 すでに、敵空母は何隻も沈めており、今さらなんだろうと思ってかる~く実行してみると、空母〈赤城〉が手に入った。
 今まで空母を手に入れようとして大量に消費した資源は、いったいなんだったんだ、と呆れるほどにあっさりと。
 第二次世界大戦で、海の主力となった空母。21世紀の現代では航空機の航続距離が伸びたおかげで、かつてほどの神通力はなくなったが、今も空母を持つことを、一等海軍のステータスとする風潮は根強い。

 なぜ空母は強いか。それは砲撃や魚雷に対する圧倒的なアウトレンジ能力である。
 戦艦の砲撃戦の射程は、せいぜいが30km。30km向こうに大砲の弾を届かせることを考えると、それでもすごいものだが、相手も戦艦がいれば、それは互いに撃たれることが前提となる距離だ。
 だが、空母は違う。空母の間合いは搭載した航空機の航続距離だ。艦これではおなじみの九九式艦上爆撃機の行動半径は500kmである。一度、敵の空母に発見されてしまえば、この500kmから30kmまでの間は、空母艦載機に殴られほうだいになってしまうのである。悪天候や夜の闇に乗じるにしても、そうそう詰められる間合いではない。太平洋戦争の戦いが、空母中心になったのは、このためだ。
 だから、この時代の海戦は、敵味方に空母があれば、狙うのはまず敵の空母となる。空母がいなくなった敵は、一方的に空襲されるのがいやなら、逃げるしかなくなるからだ。

 もちろん、史実通りではWEBゲームにならないので、艦これでは、空母はそれほど一方的な存在にはなっていない。一方的な空襲は最初の1回だけで、それが終われば、空母は敵の砲撃の間合いへと入れられてしまう。空襲は可能だが、砲撃の対象ともなるのだ。

 それが、どのような影響をもたらすかは〈赤城〉が旗艦となった最初の戦いですぐに明らかになった。
 敵巡洋艦の砲撃を受けた〈赤城〉が、いきなりクリティカルで中破の判定を受けたのである。そしてもう一撃。たちまち耐久力のゲージが真っ赤になる。いくらなんでも、呆れるほどの運のなさである。
 這々の体で港に戻ってきたが、ここで衝撃の事実が明らかになる。
 赤城の修理の見積もりをとったところ、えらい数の資源が必要とされたのだ。
 もちろん、そんな資源はない。
 地道に艦隊護衛任務をこなしつつ、資源がたまるのを待つ。
 そしてようよう、資源がたまった頃。

「あの……提督。私の修理、そろそろの予定では?」

 すまんな〈赤城〉。〈扶桑〉が魚雷を受けて損傷したので、そっちに資源を回す。

「いえ、いいんです。私、その……いつまでも待ってますから」

 だが、それから数日。
 〈赤城〉はボロボロの姿のまま、ドッグの外に係留され続けたのである。
 その間、艦隊の航空戦力の要として大活躍を続けたのが軽空母〈祥鳳〉だった。
 最前線で戦い続けるから、あっというまにレベルが上昇。気が付けば〈祥鳳・改〉となっていて、搭載機数も48に上昇。主力は新型の彗星爆撃機である。長く問題であった装甲も40になり〈赤城〉に迫る勢いだ。
 後方支援能力という身の丈にあったリーズナブルさというのは、兵器にとって大事だなぁ、とつくづく感じるゲームである。