読み物

読み物

アニメ『氷菓』3年目の答え合わせ

 先だって、米澤穂信〈古典部〉シリーズ最新作が『野性時代』2016年1月号に掲載されることが発表された。  2001年から続く大人気シリーズだが、現在「連峰は晴れているか」「鏡には映らない」「長い休日」の短編3作が単行本未収録となっており、長らく単行本化が嘱望されて来た。まだいささか気の早い話だが、この最新作をもって『遠まわりする雛』以来の短編集として出版されることを一ファンとして期待したい。  なぜなら、この短編集はおそらく〈古典部〉シリーズ最大の“謎”に対する解決編となることが予想されるからだ。 (以下、本編およびアニメの一部ネタバレが含まれます) […] «アニメ『氷菓』3年目の答え合わせ»

By |2015-11-26T00:49:10+09:0011月 13th, 2015|Categories: 読み物|Tags: |アニメ『氷菓』3年目の答え合わせ はコメントを受け付けていません

狐狸狐狸 壱

 もうかれこれ二十年ほども前の話になる。  陰暦四月の初め、父と共に僕は丹沢山中にわけいり、頂を目指していた。春霞む卯月の頃と言っても桜並木に花は無く、見渡す限り芽吹いたばかりの葉が淡く緑色に茂っていた。  山頂も間近となり、ふと視界が開けた頃、突然生暖かい風が吹き抜けたかと思うと中天より桜の花びらが舞い落ち、あれよという間に僕と父は桜吹雪に見舞われた。周囲に桜の花などないというのに、である。  僕はなんとも言い表しがたい気分を抱いたが、口には出さず、父もまた無言で歩き続けた。  後に山頂にたどり着いてみると、そこには未だ桜が咲いており、なるほど先の花吹雪は山頂の桜の花が風に乗って舞い降りたものかと合点した。思うに、世に言う「狐に化かされる」とはこういうことだったのではなかろうか。

By |2014-06-26T06:05:36+09:006月 26th, 2014|Categories: 読み物|Tags: |狐狸狐狸 壱 はコメントを受け付けていません