ダブルクロス用入門1時間シナリオ『護るべきもの』

2012年12月27日 その他セッション資料 1 comment , , , , , ,

■シナリオデータ
プレイヤー人数:3~5人
PCの消費経験点:0点
プレイ時間:1時間

■シナリオの目的
 このシナリオは、ダブルクロスの入門用シナリオである。ゲームの判定方法や、侵蝕率などの処理、ロイスとタイタスといった仕組みを学び、戦闘を行い、ダ ブルクロスの一通りの内容を1時間でプレイすることを目的としている。プレイ後に得た経験点でキャラクターを成長させ、もう1本シナリオを遊ぶのもよいだ ろう。
 なお、このシナリオでは《リザレクト》の処理を把握するため、強制的にPCにダメージを与えることになる。あらかじめ、GMはシナリオの目的と理由を説明して、了承をとっておくこと。

■シナリオ概要
 このシナリオはダブルクロスThe 3rd Editionのルールブック1に掲載されたオープニングコミックの内容をなぞる流れにしてある。シーン数は全部で5つ。学園の中でジャームが暴れ、PC①のシナリオロイスの友人がジャーム化し、それを倒す展開となる。
 シナリオはPC①が通う学園をステージとして進行し、シナリオ内の時間も、おおむね1時間ほど。

■クイックスタート
 本シナリオでは、以下の5つのサンプルキャラクターを使用することを推奨する。
PC①:不確定な切り札
PC②:閃光の双弾
PC③:誇りある紅
PC④:深緑の使徒
PC⑤:真実の探求者

===トレーラー
 平和な学園生活は、一瞬で終わった。
 学園に出現した無数のジャーム。
 危機の中で覚醒した若きオーヴァード。
 だが、その友人はジャームと化す。
 互いに牙をむけるバケモノとバケモノ。
 ダブルクロス3rd『護るべきもの』
 ダブルクロス、それは裏切りを意味する言葉。

===シナリオハンドアウト
■PC①
ロイス:田井足太郎(たいたすたろう)
推奨感情:P友情/N厭気
 キミはごく普通の学生だ。だが、ある日突然、キミの学校はバケモノに襲撃される。そして、バケモノとの戦いの中でキミもまた、バケモノとなってしまう。

■PC②~⑤
ロイス:茂撮望都(もどりもと)
推奨感情:P庇護/N疎外感
 キミはUGNの関係者/協力者だ。とある学園が、ジャームの襲撃を受けた。キミは、人々を護るため、学園に向かった。

===

シナリオMAP
===
●シーン1:覚醒
シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 PC①が通う学園に、突如としてジャームがあふれだし、PC①もまた、オーヴァードとして覚醒する。
 PC②~⑤の他のPCは、ジャームを退治するために、PC①と合流する。
 この場面でのジャームはエキストラである。
▼衝動判定(判定のやり方)
 難易度9で判定。
 ダイスの振り方、達成値の求め方、クリティカルした時の振り足しの方法について学ぶ。失敗したときのバッドステータスについても補足しておく。(このシーンではBS:暴走の影響はない)
▼侵蝕率
 記録方法や、上昇していくことによるメリットとデメリットについて学ぶ。
▼ロイスの取得
 合流時に、PC間ロイスをもうひとつ追加で取得させる。
◆描写
 放課後の学園は、バケモノの群れに占領された。PC①の友人の田井足太郎も、逃げ出そうとしてバケモノの群れに捕まってしまう。
 PC①もあわや、というところで、他のPCが駆けつけるが、間に合わない。
 だが、次の瞬間。オーヴァードとして覚醒したPC①はバケモノ=ジャームの群れを一撃で粉砕する。
▼セリフ:田井足太郎
「こんなバケモノだらけの学校にいられるか! 俺は家に帰るぞ!」
(ジャームの群れの中に消える)「うわあああっ、助けてくれぇっ」
◆結末
 オーヴァードとして目覚めたPC①に、他のPCが自己紹介をしてロイスを結び、シーン終了。

●シーン2:喪失
シーンプレイヤー:PC②
◆解説
 PC①の友人の田井足太郎(たいたすたろう)がジャーム化して、クラスメイトの茂撮望都(もどりもと)を襲う。
 田井足太郎を止めるには、PC①の持つエフェクトを使用する。
 田井足太郎はジャーム化しており、もはや取り戻せない。彼へのロイスをタイタス化する。
▼エフェクトの使用
 サンプルキャラクターを使用している場合は、不確定な切り札の獣爪撃。
▼ロイスのタイタス化
 PC①のハンドアウトのシナリオロイスである田井足太郎を、レコードシート上でタイタス化にチェックする。
◆描写
 女子生徒の悲鳴が聞こえた。駆けつけてみると、女子生徒がドアを必死に押さえて、部屋に入ろうとするジャームを食い止めている。
 女子生徒=茂撮望都を手伝ってドアを閉めると、今度は窓を破って田井が現れた。だが、田井はすでにジャーム化していた。
▼セリフ:茂撮望都
「きゃあっ、助けてーっ」
(助けられて)「あ、ありがとうPC①くん。でも、いったい何が起きてるの?」
(田井が登場し)「あ、田井くんも無事だったんだ。……田井くん? きゃあっ?!」
▼セリフ:田井足太郎
(気絶した望都を腕に抱いて)「なんだ、こいつまだ、バケモノになってないのか。だめだろぉ? 仲間はずれはよぉ」
(PC①に)「お前はもう、俺と同じバケモノになったようだな。へへへ、いいぜいいぜ。一緒にバケモノの世界を作ろうぜぇ!」
(望都に向かって爪を伸ばしながら)「こいつはどうすりゃ、バケモノになるかな? まず目玉でもえぐってみるか……」
(エフェクトで止められて)「おいおい、どういうつもりだ。同じバケモノの俺を攻撃するなんて……この裏切り者がっ! いつまでも人間のつもりでいるんじゃねえっ!」
◆結末
 もはや田井は心までバケモノとなっていた。彼へのロイスをタイタスにしてシーン終了。

●シーン3:衝動
シーンプレイヤー:PC③
◆解説
 ジャーム化した田井足太郎(たいたすたろう)が暴れ、PCは傷を負う。このシーンまでの田井は、エキストラである。演出の上では田井がPCを攻撃するが、田井はデータを持っていない。また、PCが田井を攻撃する方法もない。
▼【HP】とダメージ
 最初にPC①が2D10+15点のダメージを受ける。
 続いてPC全員が、2D10+15点のダメージを受ける。
 いずれも攻撃ではなく、ダメージなので回避やカバーリングはできない。
▼《リザレクト》
 HPが0になれば(PC①はかなりの高確率で0になるだろう)《リザレクト》が発動し、PCは【HP】を回復させ、侵蝕率を上昇させる。
◆描写
 ジャーム化した田井が、謎のエフェクトを発動させてPCを攻撃する。
▼セリフ:田井足太郎
(PC①にダメージを与えて)「PC①、死ねえっ!」
(全員にダメージを与えて)「お前たちも、死ねぇっ!」
(《リザレクト》が発動)「へへ、どうだ俺の力は……な、なにっ、立ち上がるだと……このバケモノめっ!」
◆結末
 バケモノ(ジャーム)に、バケモノ(オーヴァード)と蔑まれる。それこそが、超人でありながら常人の中で生きるPCに課せられた重い十字架なのか。シーンを終了し、クライマックスへ。

●シーン4:戦闘
シーンプレイヤー:PC④
◆解説
 クライマックス。衝動判定を行う。
 場所は学園の屋上。PCは田井足太郎(たいたすたろう)とジャームを倒す。全員を倒せば、戦闘終了。
▼戦闘の処理

 エネミーは4体。
・田井足太郎×1
 基本データはジャーム:ジェノサイダー(『R2』P266)に《漆黒の拳》5を追加。
 戦闘プラン:同一エンゲージに2人以上のPCが入るまでは、射撃攻撃。PC2人が入れば、《漆黒の拳》で白兵攻撃。
・ジャーム:クラッシャー×3(『R2』P264)
 戦闘プラン:近くのPCと同じエンゲージに入り、白兵攻撃。
▼タイタスの使用
 戦闘中、GMはタイタスの使用を促す。PCの攻撃での命中値が、エネミーのリアクションの回避値をわずかに下回った場合などに、達成値の+1Dが可能である、など。
◆描写
 キミたちは、気がつけば校舎の屋上に出ていた。まだ残っているジャームは、全員が田井足太郎に従っている。すでに理性は残っていないようだが、田井が一番強いことを、本能で理解しているかのようだ。
▼セリフ:田井足太郎
(PC①に)「みろよ、バケモノが俺に従ってる。俺はバケモノの王ってわけだ」
「へへ……力がわいてくるぜぇ。闇と、雷の力がなあっ!」
(倒された)「力がぬけていく……へ……バケモノなんて……やっぱ、俺の柄じゃなかったな……畜生、今週のバイト代、もらいそこね……」
◆結末
 田井と、ジャームは倒された。後片付けは、やってきたUGNのエージェントがやってくれるだろう。

●シーン5:帰還
シーンプレイヤー:PC①
◆解説
 PCは日常へ帰還する。
▼バックトラック
 クライマックスフェイズの最後に行う。ここでは、このシーン5がクライマックス兼エンディングということで、シーンの最初にバックトラックを行う。
◆描写
 学園に再び日常が戻ってきた。破壊された校舎は修復され、事件に遭遇した教師や生徒には、記憶処理が施された。
 しかし、戻ってこないものもある。
▼セリフ:茂撮望都
「PC①くん、おはよー」
「そういえば田井くん、転校なんだってね」
「急にいなくなっちゃうんだもの。びっくりだよ」
「PC①くんは……わたしに黙って、いなくならないよね?」
◆結末
 望都の問いかけに、PC①が答えてシーン終了となる。
===
■アフタープレイ
 エンディングが終了したら、アフタープレイを行う。レコードシートの項目をチェックして経験点を算出する。
 本シナリオの、「シナリオの目的を達成した」は5点となる。

アルシャードセイヴァー・シナリオ:終末のその後で 今回予告

2012年12月22日 その他セッション資料 No comments , , , , ,

■今回予告:
 20**年**月**日、世界が終わる。
 とあるオカルトな予言を信じた、ひとりの少女がいた。
「世界が終わる前に、大好きなあの人に告白したい」
 少女は純真無垢な恋心の導くまま、告白をし、そして失恋する。
 そして翌日。
 世界は終わっていなかった。
 少女が失恋したというのに、告白に失敗したというのに、世界は終わらなかったのだ。
 少女の絶望が、奈落を呼ぶ。
 今度こそ本当に。
 世界は終わろうとしていた。
 アルシャードセイヴァー『終末のその後で』
 蒼き星にまた奇跡が生まれる。

ガールズ&パンツァー二次創作短編:九七式戦車隊、奮闘す

2012年11月21日 小説 No comments , , , , , , , , , ,

 アニメ『ガールズ&パンツァー』の第6話(未見)で、九七式戦車が主人公のお姉ちゃんが乗るティーガー戦車に全滅させられるエピソードがあると聞いて、その場面の二次創作を妄想しつつ、書いてみました。
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 九七式戦車が、丘を駆け上がる。履帯が小石を弾き、柔らかい土を抉る。
 土埃はほとんどでない。昨夜降った雨が、地面を濡らしているからだ。
「天佑は我にあり、だな」
 一号車に乗る戦車長はそう言って、砲塔のハッチを開き、身を乗り出した。左右に二両ずつ、計四両の九七式戦車が見える。いずれも、土煙はあげていない。音はさすがに消せないが、こちらの位置を特定されるほどではないはずだ。
「これならば、敵に気付かれることなく丘の上まであがれるな」
 袋に入れた地図を確認する。斜面のこちら側の等高線の間隔は開いていて、敵のいる反対側の等高線は詰まっている。
 ――これならば、いける。反対側の斜面からは、この丘の上にあがってこられない。
 戦車長は、ほっこりと笑った。沖田畷作戦は、成功しそうだった。

 三日前。学校の作戦会議。
「オキナワ作戦?」
「沖縄ではない。沖田畷(おきたなわて)。戦国時代の、島津&有馬の連合軍と龍造寺軍の戦いだ」
 ぽっちゃりした隊長は、手にしたポッキーで卓の上に広げた地図をとんとん、とつつく。先ほど学校に届けられた、黒森峰高校との戦場に選ばれた演習場の地図だ。
「それが今回の作戦の名前ですか。どんな戦いだったんです?」
「人口に膾炙している戦いの様子は、大軍を擁する龍造寺軍が湿地帯の細い道でにっちもさっちもいかなくなり、島津と有馬連合軍に敗北した、となっている。実際は違うようだが」
「湿地帯……なるほど」
 ポッキーで示された地点を見ると、大きな川と湿地帯が広がっていた。
「黒森峰高校は、自慢のティーガー戦車を持ち出すだろう。対する我が校は、九七式戦車だ。おい、我らが愛するチハたんが、ティーガー戦車とまともに戦えると思うか?」
「冗談はやめてください」
 ドイツのティーガー戦車は、戦車道で使用を許された戦車の中では最強クラスだ。前面装甲は一〇〇ミリ。側面と後面の装甲も八〇ミリである。
「我らがチハは、歩兵支援戦車。戦う相手は、敵の歩兵とその陣地です。搭載された五七ミリ戦車砲では、距離一〇〇mまで近づいても、装甲貫通力は二五ミリ。ティーガーの重装甲が相手では、生卵をぶつけるようなものです」
「まあそうだ。そしてチハの装甲は最大で二五ミリ。こいつは、当時の主力だった三七ミリ対戦車砲に一発くらいは耐える厚さ、という理由で決まった」
「黒森峰のティーガーの主砲は名高い八・八センチ砲。射程二〇〇〇mで、八四ミリの装甲を撃ち抜きます。牛刀を持って鶏を割くどころの騒ぎではありません」
「射程に入りしだい、撃ち抜かれるな」
「我が校の戦車隊はいずれも名人揃いですが、これは技量や大和魂で何とかなるレベルを超えています」
 戦車長は、大きく溜息をついた。正直、彼女の頭では華々しく散る以外の選択肢は思い浮かばなかった。
「まあ待て。三本のポッキーという教えがあってだな。このように一本のポッキーは」
 ぽりん。
 隊長は口にくわえたポッキーを歯で折り、もぐもぐと食べた。
「簡単に折れてしまう。だが、三本のポッキーを束ねると」
 隊長は口にポッキーを三本まとめてくわえる。
「ふひゃひゃように、ひゃほへほっひーへも」
「何やってんですか」
「あ」
 ばりん。
 戦車長がぺしりと隊長の頭をたたいた拍子に、口にくわえたポッキーが折れた。
 もぐもぐ。
「まあ、ポッキーは何本集まってもポッキーということだな」
「ダメじゃないですか」
 ティーガーと戦うとなると九七式戦車は、まさにポッキーのようなものである。装甲は簡単に折れるし、主砲はゼロ距離まで近づいても、弾かれる可能性が高い。当たり所がよければ、火災を起こすか履帯を外すことも期待できるが、それで勝つのはいくらなんでもムシが良すぎた。
「それで、沖田畷ですか。湿地帯にティーガーをおびき寄せて、足回りを封じて接近すると」
 戦車長は地図の上に定規をあてて線を引き、コンパスをあてて距離を算出する。ティーガーの射界に入れば九七式戦車は一発で撃破される。うまく、地形を利 用して隠れながら敵に接近できる経路を見つけ出せば、たとえ無駄でも、零距離射撃で黒森峰の心胆を寒からしめることが可能なはずだと考えたのだ。
 あれこれ考えること小一時間。ようやく戦車長は納得のいく経路を見つけ出した。
「何とか、二百メートルくらいまでは接近できそうですね。相手がのってきてくれるかどうかは、賭けですが……」
 戦車長がそう言うと、それまで暢気に携帯をいじっていた隊長はびっくりした顔になった。
「おいおい、黒森峰ともあろうものが、こんな見え透いた手にのってくるわけがないだろ。ちょっと射界は狭いけど、この丘の麓に待ち伏せされて遠距離砲撃で全滅だ」
 ぶちんっ。戦車長のこめかみに青筋が浮かぶ。
「た~い~ちょ~う~~」
「まてっ、コンパスはやめろっ、刺さる、刺さるっ!」
 しばらくして。
 戦車長は、隊長のおごりで買った缶の汁粉をぐびりとやった。疲労した脳にブドウ糖が染み渡る。
「いい加減、私をからかってないで、本当の作戦を教えてくださいよ」
「作戦名が沖田畷ってのは、本当だ。作戦内容は公表しないけど黒森峰の連中は優秀だからな。名前くらいはすぐに突き止めるだろう」
「そうですね」
「んで、これから三日間、我々は九七式戦車に発煙筒を増設する。これも、黒森峰にはすぐ伝わるだろう。九七式戦車にとっては珍しいことじゃないから隠すまでもないし」
「そりゃそうですね」
 九七式戦車は、車体後部に発煙弾発射筒を搭載してある。実際の戦いでは発煙筒を砲塔などに増設したものも多かった。装甲の薄さと、主砲の貫通力の弱さから、発煙筒で姿を隠しつつ接近するのが戦場での常套手段になっていたのである。
「そして彼我の性能差。さて、黒森峰の西住がこれらを知ったらどう考えると思う?」
「私と同じ結論になるでしょうね。湿地帯におびき寄せて足回りの差を活かして肉薄攻撃を仕掛けると」
「そうだ。だが、悲しいかな、その作戦は絶対に失敗する。この丘の麓に陣取れば、一両のティーガーで我が校の戦車を全滅させられるだろう」
「絶望的ですね」
「いや、そうじゃない。ここに。ここだけに、勝機があるんだ」
「え?」
「おい、しっかりしろ。敵のティーガーは、絶対に、この場所にいるんだ」
 隊長はポッキーの先で、ぐりぐりと丘の麓を指し示した。
「丘の上からなら、この場所にいるティーガーを、狙えるんだ」

 そして試合の日。
「急げ急げっ! 黒森峰がこの作戦に気付けば、勝機はなくなる!」
 車体の後部をにらむ。ディーゼルエンジンの煙すら、今はうらめしい。
 隊長の乗るフラッグ戦車をのぞくすべての九七式戦車が、この作戦に投入されていた。
 丘の上から、麓にいる黒森峰のティーガーまでの距離は約三〇〇m。その距離での主砲の装甲貫通力は二〇~二五ミリ。
 ――ティーガーの上面装甲は二五ミリ。上からの砲撃ならば、可能性はある。
 もちろん、こちらから狙える以上、敵からも狙える。そして九七式戦車はどこに当たろうが撃破確実だ。
「もうすぐ稜線を超える。いいか、この作戦は、こちらの五両が全滅するまでに、敵のフラッグ戦車を撃破できるかどうかにかかっている。左右の僚車にはかまうな。一発でも多く、敵に砲弾を命中させることだけを考えろ、いいな!」
 戦車長は、無線で全車にそう伝えた。返事は必要ない。作戦開始前のブリーフィングで、全員が、そのことを理解している。
「行くぞ!」
 五両の九七式戦車は、一斉に稜線を超えた。

 次の瞬間、四両になった。

「なにっ?」
 一撃で砲塔が吹き飛ばされた九七式戦車が横倒しになる。
 威力をみれば、誰に撃たれたかは、一目瞭然。八八ミリ戦車砲。ドイツが誇る高射砲FLAK88を対戦車用にしたもので、ドイツ軍が戦ったすべての敵戦車を打ち砕く、重騎士の槍だ。
 撃ったのは、ティーガー戦車。
 問題なのは、どこから撃ったか、だ。
「なぜだ! なぜ、ここにいる!」
 戦車長は叫んだ。
 距離一〇〇メートル。戦車戦においては至近距離。丘の麓にいるはずのティーガー戦車は、丘の上にあがって待ち伏せていたのだ。
 ティーガー戦車の砲塔のハッチが開き、戦車長が顔を出した。黒森峰高校の隊長、西住まほ。国際強化選手にも選ばれる、沈着冷静な戦車乗りだ。
 その冷たい視線を見て、戦車長はすべてを理解した。彼女は、こちらの作戦をその裏まですべて読みきっていたのだ。
「だが、こんな急斜面を、鈍重なティーガー戦車がこちらより先に上がってこられるはずが……む?」
 戦車長の視線が、まだ濡れた地面に残る轍の跡に気付いた。目の前のティーガーのものではない。戦車長の視線が轍の跡を追って左の茂みを見る。
 いた。砲塔のない、ティーガー戦車の車体。
「戦車回収型(ベルゲパンター)ティーガー……こいつに牽引されて、ここまで上がったのか!」
 戦車長の視線と、推理に気付いたのだろう。ティーガーに乗る西住まほがわずかに顎を下げてうなずいた。
「なるほど。湿地が多いような、足場が悪い場所での戦いも、想定済みということか。さすがは黒森峰! だが!」
 戦車長は通信を開いた。砲塔の周囲を囲む鉢巻きアンテナに電流が流れ、じじっと音をたてる。
「全車突撃! 目の前にいるのは黒森峰の隊長車だ! 討ち取って名をあげるぞ!」
 残った四両の九七式戦車が左右に広がりながらティーガーに迫る。
 たとえかなわぬまでも、最後まで諦めない。
 それが、九七式戦車に乗る彼女たちの戦車道だから。

(おしまい)

『戦術入門たくてぃくす!!』番外編:戦車乙女の憂鬱

2012年11月2日 戦術入門たくてぃくす!! No comments , , , , , , , , , , , ,

 これは、『MC☆あくしず』連載『戦術入門たくてぃくす!!』の第11回と第12回の間の出来事をショートショートにしたものである。
 この時点で主人公の守人が契約した戦闘妖精には、歩兵科のファン、砲兵科のキャノ、航空科のエリルに加え、装甲科のアルモがいる。他の三人が守人とほぼ同年代であるのに対し、アルモだけは若干年上である。

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『戦術入門たくてぃくす!!』番外編:戦車乙女の憂鬱

「で、どうなのよ? 異世界の勇者クンとは」
 同期の戦闘妖精は、端正な顔をニヤリと崩して、酒臭い息をアルモに吹きかけた。手にするジョッキに入っているのはアルコール度数八八(アハト・アハ ト)%の蜂蜜酒。醸造酒が通常のやり方でここまで発酵するはずもなく、妖精界ならではの魔法で化学反応をいじって作ってある。
「ん……まあ、その。ぼちぼちと、な」
 ここは居酒屋『ウラノス』。前大戦で活躍した騎兵科の戦闘妖精が退役後に開いた店だ。店の名前は、愛馬にちなんでつけたと聞く。
「は? なんで? 電撃戦(ブリッツクリーク)でしょ! 蹂躙突撃でしょ! あんたそれでも、伝統ある騎兵科由来の戦闘妖精なの? しっかりしなさいよね!」
「飲み過ぎだぞ、ブリュンヒルデ……じゃなかった、ヒルデ」
 酔いの回った目でぎろりと睨まれ、アルモはあわてて言い直す。
 ブリュンヒルデ家は女系直系で、居酒屋でこうして酔っぱらってクダを巻いている戦闘妖精は、初代ブリュンヒルデから数えて一三代目である。ブリュンヒル デ、という名前は彼女に重いらしく、幼名のヒルデか、あるいは士官学校でついたあだ名の十三代(サーティーン)で呼ばれる方を好む。
 名前が重い裏には、かけられた期待と、それを実現できぬ現実とがある。歴代のブリュンヒルデたちが天馬にまたがって空を駆けていたのも今は昔。十三代目 はヘリコプターを用いた空中騎兵となっている。空中騎兵は、将来の花形兵科の呼び名も高いが、今のところは脆弱性と火力不足に悩んで特殊作戦がせいぜいと いうありさまだ。
 ――うちも旧家の出だが、彼女はそれ以上だ。久しぶりに召喚された勇者のパートナーに彼女を、という声も大きかったと聞く。
 結局、上の方が守人の適性その他を判断して、ブリュンヒルデとの契約はなくなった。しかし、背後にはいろいろときな臭い派閥争いもあったらしい。それほ どに、守人の潜在力は高かった。何しろ四人の戦闘妖精と契約を交わせているのだ。アルモとしては、他の年若い戦闘妖精たち、エリル、ファン、キャノらが巻 き込まれないよう、あれこれと気苦労の毎日である。
「まーた、周りのこと考えてるんでしょ、アルモ」
「う」
 図星をさされ、アルモは言葉に詰まる。
「戦車は単独では戦えない。いえ、それは戦車に限らず戦闘妖精全員に言えることよ。だから、常に周囲に気を配るあんたは、間違っちゃいないわ」
 ぶすり。ヒルデが皿に並べた焼き鳥に串を刺す。
「でも、それはあくまで戦場での話よ。娑婆では娑婆のルールがある。獲物はこうやって容赦なく追いつめ、そして」
 ぱくり。大きく口をあけて、焼き鳥を放り込む。もぐもぐ。
「このように、美味しくいただく」
「娑婆のルールって……」
「恋のルールよ。早いモノ勝ち。周囲を見て遠慮するのはお門違いよ。一番年上のあんたがそんなんじゃ、下の子だって遠慮して手を出せないわ」
「手を出すって、直接的すぎるぞ」
「あのねー。あんただって、状況はわかってんでしょ? ライバル三人よ、三人。元気なボクっ子に、定番なツンデレ娘、そして毒舌ロリ。属性のある男なら、一発で引っかかるわ」
「守人殿は、そのような男ではない……たぶん」
「そうね。あんたの話を聞く限りじゃヘタレ系ね。ただし、それはカレの表の一面よ。こいつを見なさい」
 鞄から取り出した巻物の封蝋にヒルデは親指を押しつける。固有魔力波動でのみ溶ける封蝋が外れ、スクロールが広がる。しばらく待ってから表面に文字が浮かんだ。封蝋を指定の手続きで外さなければ、文字は浮かばない。妖精界の機密文書で昔から使われる書式だ。
 そうまでして厳重に保管されていたデータに目を通し、アルモは首をひねる。
「『痛いのがスキでスキすぎてスキ』『同級生はドMな奴隷志願』……なんだこれは?」
「あんたの勇者が、あっちの世界でベッドの下に隠してるエロ本のタイトルよ。内容と詳細は奥の方に入ってるから、家に帰って読みなさいな」
「なな……っ。どうやってそんなものを……」
「蛇の道はヨルムンガルドよ。カレの中には、愛想のいいヘタレとは違う、凶暴なものがある。でなきゃ勇者として呼ばれるわけもないわ」
「確かに、演習でも驚くほど度胸のある一面があるな。あの時だって……」
 何回か前の演習のことを、アルモは思い出していた。

 それは、まったくもって不意打ちだった。
 ゆるやかに右カーブを描く道路を走っていた先頭の戦車の前面装甲に閃光が走る。直後にドン、という破裂音が響き、煙がぶわっとあがる。戦車は、残った慣性でずるずると滑るように前進し、左側の路肩をはずれて落ちた。
「一号車がやられた!」
「警戒! 対戦車砲!」
「どっちだ?」
 後方の戦車のハッチからアルモの分身である戦車長が姿をみせ、双眼鏡をのぞく。
 息つく間もなく、二両目の戦車が煙をあげて停止した。破壊された戦車に乗っていた分身が光の粒子となって消える。
 わずか一分の間に二両の戦車が失われた。戦車戦闘における、最大の危機がこれだ。長射程、高初速の対戦車砲、あるいは戦車による待ち伏せによる攻撃は、あまりに早く展開するため、対応の時間がひどく短い。散開したり、隠れたりという余裕がないのだ。
 それでも、二両の戦車を犠牲に捧げてえた貴重な時間が、敵の所在を明らかにした。
「一〇時の方角! 茂みから発砲煙! 距離五〇〇!」
 左前方の茂みからうっすらとたなびく白い煙を見つけた三両目の戦車が急いで後退する。擱座した二両目の戦車の砲塔に光が走り、擱座した車体が揺れた。対戦車砲の砲弾が、戦車の残骸に命中したのだ。
「二両目の車体が盾になってくれている! 急いで後退しろ!」
 後方の指揮車両。アルモは分身の戦車がやられた時の疼痛を感じながら地図をにらむ守人に報告する。
「敵と接触しました。待ち伏せで、戦車二両を失いました」
 それを聞いて、残り三名の戦闘妖精が顔をしかめる。
「こんなに手前で? 目標の町は、ずっと向こうだよね?」
「進撃路として使える道路は三本あるの。残り二本に振り分けも考えるべきなの」
「守人、先に偵察機を飛ばしたらどう?」
 しばらく地図を見て考えていた守人は首を左右に振った。
「この道路が一番、距離が短く状態もいい。平地を走っているから、見晴らしもいいし、戦車を展開させるにも適している」
 他の二本は、森や丘陵地帯を抜ける迂回路で、しかも未舗装な道路となっている。戦車はともかく、歩兵部隊を乗せたトラックだと、道路の状態が悪いとそれだけで進撃速度が落ちる。
「でも、こんな手前で待ち伏せされたんだから、この後、どれだけ待ち伏せされるか、分からないよ!」
「それだよ。こんな手前で待ち伏を受けたということは、敵の目的は時間稼ぎだと考えられる。だから進撃に時間がかかる迂回路を通って、相手の時間稼ぎに付き合う必要はない。ここは、幹線道路を強行突破する」
 守人は地図から顔をあげてアルモを見た。
「後続の歩兵と砲兵を町を攻撃できる場所へ届けるため、戦車部隊には道を切り開いてもらう。損害は覚悟の上だ。いいね、アルモ?」
「もちろんです、守人殿。我ら戦車の装甲は、そのためにあるのです。我が身を盾にして友軍の安全を確保できるなら、本望です。どうぞ、存分に我らをお使いください」
 アルモは胸を張って答えた。

 そして再び居酒屋。
「はーん。その自慢の胸を張って。はーん。なんかもう、どうでもよくなってきたわねー」
 ヒルデがジト目でアルモのゆさゆさと揺れる大きな胸を見た。アルモは顔を赤らめて胸を隠す。
「何を言う。胸(ここ)は関係ないだろうが。それにこれで分かったろうが、守人殿は、優しいというだけの方ではない。勝つために必要であれば、犠牲が出ることも許容する強さを持っておられる」
「はいはい、ごちそうさま。でも、どうしたのよ、その演習。聞いてるだけで被害大きそうじゃない」
「それほどでもない。守人殿に頼んで、重戦車を召喚させてもらったからな」
 重戦車は、分厚い装甲を持つ戦場の缶切り役だ。敵の砲火を自らの装甲で弾き、突破を果たす。重いため、脆弱地形などでは使えないが、場所が平地の幹線道路であれば、その実力をいかんなく発揮できる。
「そして、あんたは追加の契約で濃厚なキスをぶちゅっと」
 ヒルデが、うりゃうりゃとひじで小突くと、アルモもぎこちないウィンクで返した。
「そのくらいの役得はあってしかるべきだろう。ま、同期に心配されなくても私はそれなりにうまくやっているということだ」
「……便利な女として使われてるだけっぽくもあるんだけど」
 ヒルデはぼそりと言ってから、蜂蜜酒のジョッキを掲げた。
「ま、これならライバルが増えても大丈夫そうね。よかったよかった」
「そうだな。いくらライバルが増えても……おい、今なんて言った」
「あれ? 聞いてないの? 五人目、もうすぐよ。ミサイルの戦闘妖精の子が入ってくるわ。今は女王様の侍女をやってるから、分類でいけば年下の健気系ね」
「待て。聞いてないぞ」
「大丈夫、大丈夫。おっぱいは小さいから。平たいから」
 酔いがまわってきて、いろいろどうでも良くなった感のあるヒルデが、手をひらひらさせて、けっけっけと笑う。
「そういう問題じゃない!」
 対して酔いが醒めた感のあるアルモがテーブルを叩いて詰め寄るが、ヒルデは取り合わない。
 戦車乙女の憂鬱は、まだまだ続きそうだった。

(おしまい)

『戦術入門たくてぃくす!!』番外編:無人島サバイバル

2012年10月27日 戦術入門たくてぃくす!! No comments , , , , , , , , , , , ,

 これは、『MC☆あくしず』連載『戦術入門たくてぃくす!!』の第12回の後の出来事をショートショートにしたものである。
 『MCあくしず』26号か、rondobell(ろんどべる)さんの、こちらのイラスト MCあくしずvol.26と合わせてどうぞ。

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『戦術入門たくてぃくす!!』番外編:無人島サバイバル

 雨粒が、強い風に煽られて洞窟の内側まで吹き込んでくる。嵐の到来と共に気温も下がったのだろう。水着にパーカーを羽織っただけでは寒いくらいだ。
「こっちにおいでよ。ちょっと狭いけど、ここなら濡れないし」
 だから、守人のその言葉は何ら下心のない、相手を気遣うものだったのだが、返ってきたのは、警戒心に満ちた冷たい視線だった。
「……いいです」
 しばらくして、視線をそらしてからぼそっと呟くように言ったのは、ミーシャという少女だ。戦闘妖精(タクティカルフェアリー)の名を呼び名を持つ妖精族のひとりである。
 こちらは地球の、何のことはない一般的な青年である防人守人(さきもりもりと)は、どうしうたものか、と頭をかいて考える。
 ふたりがいるのは、昨日の演習で使い、今日は皆で遊んだ海岸に近い小島である。演習時に召喚した兵器のいくつかが残っていることが判明し、手分けして片づけていたら、突然の嵐に襲われ、とりあえず洞窟に避難したのである。
 ――やっぱり、俺が何かやったんだろうなぁ。
 いつも彼と妖精界で戦闘演習に参加している四人の戦闘妖精(ファン、キャノ、エリル、アルモ)の後輩にあたるミーシャは、もともと引っ込み思案なところがあるが、守人に対してこのような態度に出ることは、これまでなかった。
 連戦に疲れ果てた守人が浜辺で寝ているところに、ミーシャがやってきて……そう、そこで何かを守人はしでかしたらしい。
 本人は夢の中にいたので何をしたのかは分からないが、気が付くと、ミーシャにぼこぼこにぶっ飛ばされていたのだ。かすかに覚えているのは、掌に残る柔らかな感触……ボリューム的にはちょっと微妙。
「……じーっ」
 手をわきわきさせている守人を、ミーシャは疑惑の目で見た。
 ――やっぱり、信じられません。こんな人が妖精界を救う勇者だなんて。
 普段は女王の侍女をしているミーシャだが、将来は戦闘妖精として世界樹を侵略者から守るべく、研鑽を積んでいる。だが、戦闘妖精が単独で使える力は、 微々たるものだ。レベルに応じた分身をひとつかふたつ。自らを危険にさらさずに戦えるのは利点だが、戦争でものを言うのは、やはり数だ。
 ――昨日の戦闘演習での、先輩たち……すごかった。
 対上陸演習。小鬼兵たちが扮する大軍に、四人の戦闘妖精はそれぞれ数百の分身を出して戦った。演習ということで力を加減しているが、実戦ではひとりが千、あるいは万の分身を出して戦うことになる。
 そして、それを可能にしたのが、戦闘妖精と契約を結んだ守人の力だ。戦闘妖精と勇者の契約は、唇を重ねることで行なう。ミーシャの先輩たちは、嫌がる様 子もなく……というか、むしろ競い合うかのように、守人と唇を重ねた。そして、守人から得た指揮力を費やして、分身たる歩兵や戦車、戦闘機や大砲を顕現さ せて戦ったのである。
 その時の凛々しくも艶やかな四人の姿を思い出し、ミーシャはそっと自分の唇に指をあてた。
 ――私も、いつかあんな風に……女王様はまだ早い、って言ってたけど。私だって、ちゃんと鍛錬はしてるもの。心の準備だって……心の準備は……まだ、だけど……
 ちらり、と守人を見る。
 昼間、守人に胸を掴まれた。セクハラである。
 だから、たたきのめした。正当防衛である。
 その後の四人の戦闘妖精の取り調べで、守人は寝ぼけていただけで、守人がかぶっていたエリルの下着も小鬼兵の悪戯なのだと分かった。だから、守人をそのことで恨んではいない。
 ミーシャが気にしていたのは、別のことである。
 ――あの後、守人さんを取り囲んで拷問……尋問していた先輩たち、すごく……活き活きしてた。
「まったく! まったくもう! 守人はしょうがないんだから! ボクたちがいないと、すぐ、しょーもないことするんだから!」
 手をぶんぶんと振り回し、乳もゆさゆさと揺らして怒るファン。
「これはもう監視カメラの設置が必要、なの」
 砂浜に正座させた守人の後頭部を、ぺちぺちと叩くキャノ。
「今回は小鬼兵のいたずらだったようですが、騒ぎになるのは精神の鍛錬が足りてないからですぞ、守人殿」
 腕組みをして守人の正面に立ち、くどくどと説教をするアルモ。
「それより私が気にしてるのはね、守人がなーんにも覚えてないってことなのよ。なんかあるでしょ! 乙女の下着を顔にかぶったんだから!」
 守人のほっぺたを、ぎりぎりと締め上げるエリル。
 ――先輩たち、守人さんのこと、本当に信頼してるんだ。そうだよね。これまでたくさん一緒に演習を重ねてるんだもの。心が結ばれてなきゃ、あんなすごい演習、できないよね。
 戦闘妖精と言っても、誰もが勇者と契約できるわけではない。実戦経験を積んでレベルが高くなった戦闘妖精が契約すると、元の世界では一般人でしかない勇 者など、精気も生命力も根こそぎ吸われて干物である。そうならないためにも、召喚した勇者とレベルの低い新米戦闘妖精を組み合わせて演習で育てなくてはな らないのだ。
 ――なのに、私は演習のお手伝いをするだけ。契約なんか全然させてもらえない。
 守人と契約する前の四人の先輩は、ミーシャとさほど変わらない力しか持っていなかった。しかし、今や力の差は歴然としている。守人もそうだ。もし契約で はなく、実戦でマナを消費して戦闘妖精にあれだけの分身を顕現させるには、古老(エント)の森をまるごとひとつ、枯れ果てさせる覚悟がいるだろう。
 ――私では、守人さんと契約できないのかな。私には何が足りないんだろう。まさか……その……色気、とか?
 そこでミーシャは、はっ、と気が付く。彼女は妖精族女王の侍女をしているせいで、いわゆる極秘文書みたいなものを、その気がなくても見ることがある。
 ――お城でのパーティーの後、女王様は守人さんのこといろいろ調べてた。守人さんは昔、女王様が戦闘妖精だった頃に出会った勇者様の子孫らしいって……そして前の勇者様は、それはそれは……おっぱいが大好きだったって……
 ミーシャは自らの胸に手をあてる。
 ぺたん。
 悲しいほどにささやかな感触。対して、先輩たちの胸はいずれも――エリルでさえ――それなりのボリュームを誇っている。もしも、守人との契約の可否を決めるのが、胸の成長であるのだとしたら……
 くらり。
 努力ではとうてい超えられぬ壁の高さに、めまいがする。視界が歪み、洞窟の床が眼前に迫り……
 がしっ。
 意外なほどに逞しい腕が、倒れかかったミーシャの細い身体を支えた。のぞきこんでくるのは、演習の時にちらちらと横目で見た真面目な守人の顔。普段のだらけた表情とはまるで違う。
「やっぱり熱があるんだな。くそっ、なんで言わなかったんだ」
 体調の不良に気付かれていた、という恥ずかしさと。
 自分の様子をきちんと見ていてくれたんだ、といううれしさに、ミーシャはどぎまぎする。
「その、ちょっと寒気がするくらいで……この程度なら、大丈夫ですから」
「大丈夫なら、倒れたりしないって」
「……すみません」
「謝らなくてもいい。それより、どうするかだな」
 守人は洞窟の奥のくぼみに自分のパーカーを脱いで床に敷くとミーシャを座らせた。そしてミーシャを守るようにその前に立ち、洞窟の外を見る。
「雨は止みそうにないし、暗くなってきたな。ここで夜を過ごすわけにはいかないし、助けを呼ぶ必要があるな」
「でも、どうやってです?」
「そうなんだよな。装備は何もないし」
「装備……装備、ですか……あのっ! 守人さん!」
 ミーシャは守人の背中に思い切って声をかけた。
「ん?」
「私と、契約してください!」
「え?」
「私も戦闘妖精です。守人さんと契約すれば、装備が呼び出せますから、それで連絡を取れると思います」
「あー、そうか。ミーシャちゃんは、確かエリルやキャノに近いタイプだっけ」
「はい。ロケットやミサイルなどの誘導兵器、無人兵器が私の担当です」
「それなら、通信関係に強そうだね。でも君は大丈夫なのかい? 体調も悪いみたいだし」
「契約はしたことありませんが、体調が悪くても問題はないです。むしろ、戦闘妖精にとっては、パワーアップになるんで怪我や病気、呪いなんかが治る効果もあるそうです」
「あー……思い当たることが多すぎるなぁ。みんな、肌がツヤツヤするんだよね」
「むしろ、負担がかかるのは守人さんだと思います。すみません」
「いや、いいって。俺も最初に何度かぶっ倒れてからいろいろ調べたんだけど、筋肉を鍛えた時の超回復みたいなもので、ああやって吸われることで、俺の中の指揮力の容量が増えるらしいし。最近は、むしろ……モニョモニョ」
「?」
 守人が口を濁したのは、吸われた後でやたらイロイロと昂ぶる、身体への副作用のことであった。
「そういうことなら、いいか。じゃ、その……やるよ?」
「はい」
 両手を胸の前で組み、ミーシャはおとがいを上げて目を閉じた。まるで修道女が祈りを捧げているようで、この少女の唇を奪うことに守人はためらいを覚えた。
 ――やっぱり、四人と比べると華奢だよな。キャノは小さいけど、ああみえてタフだし……なんか、女の子を騙している悪いお兄さんな気分になっちゃうな。
 しかし、今は他にいい手がない。最悪でも、契約の力でミーシャを元気にできる。
 ――ごめんよ。
 罪悪感を押し込め、守人はミーシャの上にかがみこみ、唇を重ねた。

 ずるっ。

 ――?!

 ずるるっ。

 ――な、なんだっ?!

 ずりゅりゅりゅりゅりゅりゅっ。

 ――何が起きてるんだっ?

 他の四人の戦闘妖精との契約では感じたことのない違和感。そして次の瞬間。まるで底なしの沼に足を踏み入れたような、身体の中の何もかもが吸い取られていくような恐怖に、守人は無意識にミーシャから離れようとした。
 がしっ。
 逃げられなかった。ミーシャの両手が守人の首にまきつき、しがみついている。そしてその間も、契約は続行していた。守人の中から、意識と共に精神力のこ とごとくが吸われ、ミーシャの中に入っていく。すでに一回の演習で四人の戦闘妖精全員に分け与える分の指揮力はとうに吸われている。なのに、ミーシャの底 は、まるで感じられない。どれだけ注ぎ込んでも満たされることがない空っぽの聖杯。
 がくん。
 守人の膝がくずれ、洞窟の床に落ちた。そしてそのまま、仰向けに倒れていく。
 ミーシャは離れない。目を閉じ、唇を重ねたまま、守人に覆い被さってくる。
 ごつん。
 洞窟の床に後頭部をぶつけ、その痛みが消え落ちかけた守人の意識を一瞬だけ覚醒させた。ミーシャとの唇が離れ、契約が終わる。
 消えゆく意識の中で守人が見たのは、祈りを捧げていた時と同じ、あどけなさの残る少女の顔。だが、その唇には、他の戦闘妖精との契約では見たことのない、妖艶な微笑みが浮かんでいた。
 再び守人が目覚めた時、目の前には逆さまになったミーシャの顔があった。心配そうな顔で、じっと守人を見つめている。
「ん……ミーシャ?」
「守人さん。よかった、痛いところとか、ありませんか?」
「ああ。キスしたら、なんかこう……吸い込まれるような感覚があって……」
「私のせいです。私が吸い過ぎちゃったせいで……」
 ミーシャは今こそ、女王の言葉の真意を理解した。『契約するには、まだ早い』のは、ミーシャの側ではなく、守人だったのだ。守人がもう少し成長して己の力を増さなくては、ミーシャとの契約で守人がシオシオになってしまう、という意味で。
「……でも、良かった。守人さん、目を覚ましてくれて」
 ぐすっと、涙ぐむ様子からは、守人が気絶前に見た(?)妖艶さは欠片もなかった。
「ごめんな、かっこ悪いところ見せちゃって。契約もうまくいかなかったし」
「そんなこと、ありません。契約はちゃんとできました。ほら」
 きゅらきゅらきゅら。履帯の音に首を傾けると、旅行用トランク大の箱形のボディに無限軌道を取り付けた車両が洞窟の入口に見えた。
「あれは弾薬運搬車両(ゴリアテ)じゃないか」
 危険な地雷原や障害物に無人で接近し、自爆して切り開く車両である。今は投光器を背負っており、その明かりで洞窟の中を照らしている。外はもう、真っ暗だ。
「はい。洞窟の外には、誘導ミサイルもあります。私、守人さんと契約できたんです」
「良かった。よ……っ、とと」
 起きあがろうとして、守人はふらついた。ミーシャがそっと身体を寄せて支える。ぴとりと吸い付くように重なる肌の感触に、守人の中の獣の部分が滾る。
「うわっ、こりゃまずい」
「そうです。だめですよ、守人さん」
「いや、そっちじゃなくて。この格好でこの体勢だと肌がこすれて……いろいろ、まずい」
「何がどう、まずいんですか?」
「いやその……男にはいろいろ……うひょぉっ」
 守人の足と足の間に、ミーシャの足がするりと滑り込んだ。太股やふくらはぎがこすれあい、守人は情けない声をあげる。
「み、ミーシャちゃん、あの……」
「何も、まずくないんですよ、守人さん」
 ミーシャがにっこりと笑う。あどけなく、愛らしく。そして、捕食者の笑みで。
 しゅばばばっ。しゅばばばばっ!
 猛烈な光と、音。そして煙と熱せられた蒸気が洞窟の入口から吹き込んできた。
 ミーシャが呼び出した誘導ミサイルが打ち上げられたのだ。
 螺旋を描く白い煙の尾を引いて、誘導ミサイルが天高く上がっていく。暗い夜空を切り裂くこの目印を見て、ふたりを探している他の戦闘妖精たちも、すぐに駆けつけるだろう。
 洞窟の中でふたりのシルエットがひとつに絡み合い、床へと倒れたところで。
 弾薬運搬車両(ゴリアテ)の投光器が、消えた。

(おしまい)

アルシャードセイヴァー用シナリオ:チュートリアル奈落

2012年9月25日 チュートリアル奈落 No comments , , , , ,

■シナリオデータ
プレイヤー人数:3~5人
PCレベル:3
プレイ時間:1時間

■シナリオ概要
 このシナリオは、アルシャードセイヴァーRPGルールブックのオープニングコミック『蒼き世界を救う者』を題材にした、プレイ時間1時間のチュートリアルシナリオです。
 初めてアルシャードセイヴァーを遊ぶプレイヤーのために、判定のやり方からゲームの進め方、そして戦闘方法までを実際に遊びながら習得します。
 オープニングコミックは、ルールブック以外にも、こちらの公式サイトから読むことができます。
 下段のAboutクリック後、左のオープニングコミックをクリック

■今回予告:
 夢の中の少女は語る。世界を守れと。
 現実の少女は笑う。自分たちはただの学生だと。
 だが、キミは知る。
 自分がガイアの戦士、クエスターであることを。
 そして奈落がキミの世界を脅かしていることを。
 目覚めよ、そして戦え。
 アルシャードセイヴァー『チュートリアル奈落』。
 蒼き星にまた奇跡が生まれる。

■キャラクター作成
 キャラクターはサンプルキャラクターを使用します。レベルは3です。(自作の場合は、あらかじめ作ってきておいて、GMに見せた上で許可を取ってください)
 PC①は、オープニングコミック同様に、カバー:学生で、最初はクエスターとして覚醒していません。普通の学生ですから、魔物と戦うこともできません。
 シナリオのシーン2にて、覚醒します。
 PC②~PC⑤は、すでに覚醒したクエスターです。PC①に対するクエスターとしての先輩、導き手として活動します。

■シナリオハンドアウト

PC①用ハンドアウト
コネクション:奈良久子(ならひさこ) 関係:友人
クイックスタート:救世候補者 コンストラクション:レジェンド カバー:学生
 キミは、夜ごと夢を見る。ガイアのアバターと名乗る少女の夢だ。
 その夢の話を学校で友人の奈良久子に話すと笑われてしまった。
 それはただの夢の話だと。
クエスト:夢の謎を解く

PC②~⑤用ハンドアウト
コネクション:PC① 関係:秘密(彼がクエスターであることを知っている)
 キミは、独自のツテでPC①のことを知る。
 まだ覚醒していないが、キミと同じクエスターであるらしい。
 だが、そのPC①を狙って、PC①が通う学校に奈落が忍び込んでいる。
 PC①を守り、そのクエスターとしての覚醒を導くのだ。
クエスト:PC①を導く

■シナリオ地図

■シーン1:いつもの日々
 シーンプレイヤー:PC①/他、登場不可
◆解説
 オープニングコミックの1~2ページ部分。
 PC①のみが登場する。
 NPCの奈良久子との会話が終わった後、彼女の様子に違和感を感じるので、行為判定を行なう。
 難易度10の【知覚】判定。成功すると、奈良久子の身体に、黒い靄のようなものが取り憑いている光景が、一瞬だけ見える。
◆描写
 PC①は最近、不思議な夢をみる(オープニングコミック1ページ目を示す)。
 女の子が、キミをクエスターと呼び、ガイアを守れと言うのだ。
 夢の中のキミの手には、光輝く宝石があり、それはシャードと言うらしい。
 その話を、放課後の学校でクラスメイトの奈良久子に言うと、彼女はケラケラと笑った。
(オープニングコミック2ページ目を示す)
▼セリフ:奈良久子
「なにそれっ。それは夢でしょ」
「私たちは、選ばれた勇者でもなんでもなくて、ただの学生だよ」
(真面目な顔になって)「でもね。もし本当に、その夢が正しいなら、キミには“敵”がいることになるんだよ? 世界を脅かす“敵”が」
「じゃあね、バイバイ! 私、やることがあるんだ。また明日、ね」
◆結末
 奈良久子はそう言って、去っていった。さあ、キミも家路につくことにしよう。
 PC①はハンドアウトにある、【クエスト:夢の謎を解く】を得る。
 PC①以外は、ハンドアウトにあるクエスト【PC①を導く】を得る。

■シーン2:隠された真実
シーンプレイヤー:PC①/難易度10
◆解説
 オープニングコミックの3ページ部分。
 PC①が、奈落に襲われ、他のPCに助けられてクエスターとして覚醒する場面。
 PC①が、学校からの帰り道に、奈落の敵アビスバンガード(エキストラ)がPC人数分、登場する。便宜上、アビスバンガードには番号を振って区別する。
 それぞれのアビスバンガードは番号に対応するPCが場面に登場して宣言すれば、倒すことができる。ただし、PC①は最後になる。
 宣言の時に、自分のスキルに応じた演出を行なうよう、GMは指導すると良い。たとえば、PC①がサンプルの救世候補者の場合は、《剣王の城》で両手剣が出現し、これでアビスバンガードを斬る、という風に。
 登場判定に失敗したPCがいた場合、そのPCはシーンの外で奈落で戦って遅れたこととなり、【HP】と【MP】を1D点失ってから、最後に登場する。
 PCが全員登場し、2~5番のアビスバンガードが全員倒されたら、PC①のシャードが輝き、彼はクエスターとして覚醒する。そして、1番のアビスバンガードが倒されて、シーンは終了となる。
 この時点で、PCは
◆描写1
 PC①が家路についていると、周囲に結界が張られる。人や車の姿が消え、代わりに地面から魔物が登場する。魔物はPC①を狙って襲ってくる。
◆セリフ:アビスバンガード
「クエスターだ……」
「まだ覚醒していない……」
「覚醒前に殺す……」
◆描写2(他のPCが登場すると)
 魔物に襲われたPC①は、あわやというところで、他のPCに助けられる。
 彼らはいったい、何者なのだろうか。
◆描写3(全員登場、アビスバンガード1のみ残っている)
 魔物は次々と倒されていく。
 だが、一体の魔物が、攻撃の手を逃れてキミに飛びかかってきた。
 その時、PC①の手に輝く石、シャードが出現する。
 PC①はついに、覚醒の時を迎えたのだ。
◆セリフ:アビスバンガード1
(倒された)「任務失敗……我が主にこのことを伝えねば……」
◆結末
 PC①はついに、クエスターとして覚醒した。PC①が見た夢は真実だった。そして、PC①には頼もしい仲間がいるのだ。
 だが、これで終わりではない。倒したアビスバンガード1の身体から、黒いコウモリのような影が飛び立ち、学校へと向かった。影を追いかけてシーン終了。

■シーン3:奈落の罠
 シーンプレイヤー:PC①/全員登場
◆解説
 情報収集のシーンである。場所は学校となる。
 ここではふたつの情報収集項目について、情報収集の判定を行なう

・奈落はどこにいる?(【知覚】難易度10、〈情報:ウェブ〉〈情報:魔法〉〈情報:裏社会〉)
 奈落は、学校の講堂に仕掛けられた結界の中にいる。

・奈落の正体は?(【理知】難易度10、〈情報:噂話〉〈情報:魔法〉〈情報:学問〉)
 奈良久子が、奈落の種、アビスシードによってスペクターになった。

 情報収集の判定は、ひとりにつき、シーン中にどちらか1回だけとなる。
 1回のシーンで情報収集に失敗した場合は、校内に仕掛けられたアビスシードで生まれた奈落の魔物に襲われ、各PCは【HP】と【MP】を1D点ずつ失う。その後で、もう1回、情報収集の判定を行なうこと。
◆結末
 すべての情報が出揃えば、講堂に作られた結界に向かう。全員にクエスト【校内の奈落を倒す】を渡して、シーン終了。

■シーン4:救世者の覚醒
 シーンプレイヤー:PC①/全員登場
◆解説
 オープニングコミックの4~7ページ部分。
 クライマックス戦闘を行う。
 エネミーは奈良久子と、アビズマルディゾナンス(『AL2』P371)×3モブ。
 PCは全員が1エンゲージ。そこから5mの距離にアビズマルディゾナンス×3体が1エンゲージ。さらにそこから5mの距離に奈良久子が単体で1エンゲージ。
 奈良久子を倒せば、彼女の身体を支配していたアビスシードが離れて割れ、奈良久子は戦闘不能となって気絶するが、元の人間に戻る。
 すべてのエネミーを倒せば、戦闘終了。シナリオも終了となる。
◆描写
 学校の講堂には、スペクターとなった教師や生徒がうごめいていた。いずれも
 その奥に、闇の女王然とした風格を漂わせて立っている奈良久子は、キミたちをみてにっこりと笑った。
▼奈良久子(スペクター)
「ようこそ、世界の真実に」
(PC①へ)「ごめんね、本当はあたし……世界の敵なの。ここにいる先生やみんなを奈落の怪物にしたのも、あたしのしわざよ。どう、私が憎い? 許せない?」
(PC②~⑤へ)「PC①を囮に使えば、彼を守ろうとする、他のクエスターが引っかかる……あなたたちは、あたしの掌で踊っていたのよ」
「ふふ……現実はいつだって残酷なもの。さあ、殺し合いましょう、ガイアの戦士」
◆結末
 その後、奈良久子や教師ら、奈落に憑かれていた者は病院で検査を受けるが特に異常はないとのことで翌日には元気に学校に戻ってくる。
 だが、全員が奈落に憑かれていた頃の記憶は失っていた。ただ、奈良久子だけは、何かが残っているようで、数日後、PC①のところにやってくる。
「あのね……不思議な夢を、みたの」
 彼女の夢の相談に、PC①が返答して、シナリオは終了となる。

■経験点
▼グランドクエスト 1点
▼パーソナルクエスト 1点
▼シナリオクエスト【夢の謎を解く】  1点
▼シナリオクエスト【PC①を導く】  1点
▼シナリオクエスト【校内の奈落を倒す】4点

■敵データ&戦闘プラン

『帝国の「辺境」にて 西アフリカの第1次世界大戦 1914~16』こんぱすろーず かえりみられることの少ないWW1の西アフリカ戦線をまとめた労作

2012年9月6日 雑記 No comments , , , , , , , ,

 今年(2012年)の夏コミで頒布された同人誌。
 ツイッター経由で内容を聞き、通信販売でお願いして取り寄せ。
 内容は、日本語の資料がきわめて乏しいWW1の西アフリカ戦線を、英仏の公刊戦史をはじめとする、豊富な参考資料を背景に、西アフリカ植民地の成り立ちからその経済、そして本国との関係まで踏まえてまとめられた、貴重な一冊である。

 第一次世界大戦が始まる前、西アフリカには列強の植民地がパッチワークに存在しており、その中にはドイツのトーゴランドと、カメルーンとがあった。
 あるにはあったが、いざ世界大戦ともなると、この地域はいささか以上に、ドイツにとっては手に余る土地であった。
 何しろ、敵にしたのがアフリカの他の土地を広く領しているイギリスとフランスである。また、イギリス海軍が相手では、ドイツ本国とこれら植民地との間は切り離されたも同然、孤立した籠城状態。
 第一次世界大戦以前の列強同士の戦争の習いで行けば、戦後の外交交渉の取引材料として、英仏に占領される危険があったし、それを防ぐのは困難であろうと思われた。

 一方の英仏にしても、ドイツの西アフリカ植民地は手を出すには難しい土地であった。この地は、農業生産力はそこそこあり、それゆえにアブラヤシや カカオという商業作物の農園が広がっていた。意外ではあるが、ドイツが主に列強グループの面子として西アフリカに地歩を築いたことで、この地域には国家の 統制が及ばぬ自由市場的な発展があり、このままゆっくりと時代が流れ、資本の蓄積と都市化に伴いアフリカ人中産階級が発達すれば、いずれは西アフリカ経済 が工業化へ離陸し、ひとりだちができる可能性もあった。
 しかしそれはあくまで未来の話。WW1開戦時の西アフリカは、社会のインフラがお粗末な上、ツェツェバエのような寄生虫のせいで馬や驢馬を用いた当時の 軍事行動を支える兵站の維持がはなはだしく困難だったのである。列強がヨーロッパ戦線でみせた大軍を運用するなどもっての他であり、そしてそれゆえに、要 所に配置された少数の機関銃陣地に支援された防衛線は、弾薬の続く限り難攻不落であった。

 また、ドイツも英仏も共に、第一次世界大戦がまさか国家の総力を投入した4年にもおよぶ長期の戦いになるとは、思ってもいなかった。そのことによ る、戦略的な錯誤は主戦線である欧州戦線でもさまざまなドタバタを生んだが、これが辺境の植民地では、さらなる悲喜劇となって現れた。

 ドイツが国家の威信と技術力を結集して築いた巨大なカミナ無線ステーションをめぐるトーゴランドの戦いは、カミナ無線ステーションを中継した大西洋通商破壊戦を危惧した英国海軍と、現地の野心あふれる前線指揮官の暴走に引きずられる形で比較的短期決戦となった。

 英領ナイジェリアと、フランス領赤道アフリカ、ベルギー領コンゴなどに挟まれた形のドイツ領カメルーンは、熱帯雨林のジャングルと貧弱なインフラ こそが最大の敵となって長期戦になり、最後には後詰めのない籠城戦につきものの防衛側ドイツ軍のちょっとしたミスが戦線の崩壊を生み、決着がつく。

 本書は、このふたつの植民地での戦いを軸に、小さな戦いでの部隊の戦術的機動や、ポーターを用いた兵站線の苦労などのエピソード、本国と植民地の意見の相違などを、豊富な参考資料を元にまとめられている。
 まことに読み応えがあり、知的興奮を覚える一冊であった。
 この本の著者であるこんぱすろーずさんに、感謝し、ここに紹介したい。

アルシャードセイヴァー シナリオ:蛸壷騒動 今回予告と地図、ハンドアウト

2012年8月11日 蛸壷騒動 No comments , , , , , ,

■今回予告:
旧校舎に開いたゲートから現れたのは、異世界のお姫様、ラーナ姫。
彼女は、ゲートを使って逃げた奈落の怪物を追ってきたのだという。
同時に、平和な街のあちらこちらで、奇妙な事件が発生する。
果たしてこれらの事件に関連はあるのか。
そして、誰もが見かけているのに、どこにもいない怪物の正体は?
アルシャードセイヴァー『蛸壷騒動』
蒼き星にまた奇跡が生まれる。

■シナリオ地図

■ハンドアウト

■このシナリオについて
 このシナリオでは、戦闘はクライマックスでのみ行われます。
 それまでは、登場するエネミーはエネミー(影)として扱います。ミドルフェイズの間は、加護を使用しても、エネミー(影)にダメージを与えることはできません。
 ミドルフェイズでは、NPCが、エネミー(影)に襲われることがあります。

●セッションルール
「エネミー(影)の撃退」
 エネミー(影)は、NPCを襲って自らの力を強大化させます。
 襲撃のシーンは、最初はマスターシーンとして始まります。
 登場判定の難易度は11です。
 登場することができれば、エネミー(影)を撃退することができます。
 シーンに登場したPCの人数に応じて、エネミー(影)を撃退するまでの苦労(ダメージ)が変動します。

 PC1人:HPとMPを2D6点失う
 PC2人:HPとMPを1D6点失う
 PC3人以上:HPかMPのどちらかろ1D6点失う(PCの任意)

 誰も登場できなかった場合、NPCはエネミー(影)の襲撃を受け、生命力を奪われて人事不省となります。エネミー(本体)がクライマックスで倒されるまで、登場できません。
 NPCへの襲撃が成功すると、エネミー(本体)はパワーアップし、クライマックスでより手強い相手となります。

関ヶ原古戦場 見学メモ

2012年8月1日 見学メモ No comments , , , , , , , ,

 今から35年以上前。生まれて初めて関ヶ原を新幹線で通過してから、数百回、関ヶ原の上を通り抜けているが、思えばすべて新幹線か飛行機で、高速道路すら1回もなかった。

 つまりどういうことかというと、「関ヶ原を結んで東西の高低差って、こんなにあったんだ」ということを、今回初めて、国道とJR普通線で認識したのである。新幹線で通ったのでは、高低差はよくわからない。
 鉄道ファン(一緒に見て回った鷹見一幸さんと椎出啓さんはどちらも鉄道ファン)的には常識であったらしいのだが関ヶ原の戦いでは必ず出てくる大垣は、鉄 道が敷設されてからというもの、長らく関ヶ原越えのための機関車を増設するための重要な駅があり、西の傾斜を登るために、わざわざ迂回の鉄道線まであった そうである。
 大垣から関ヶ原にかけては登り斜面がずーっと続いているのである。
 実際に地面に近いところを移動しないと、知識ではあっても、気付かないことはたくさんある。

 今から400年前の1600年の秋。
 この場所で、後に「天下分け目の戦い」と呼ばれる日本史に名高い決戦が行われた。
 中学生の教科書にすら、その名を記される関ヶ原の戦いである。
 だが、教科書では今ひとつ分からないことがある。

「東軍、西軍の大名たちは、なんでドンパチやったんだろう?」

 秀吉死後の政治の主導権争いとか、朝鮮の役での恨みとか、いろいろ言われてはいるが、おそらくもうちょっとシンプルで、いい加減な理由だったのではないかと思う。

 いい加減な理由だったから、たまたま「日本の西側にいて、三成らが挙兵した時に大阪で足止めされちゃったから西軍」とか「日本の東側にいて、徳川と一緒に、上杉討伐に向かっていたから東軍」となり。

 シンプルな理由だったから、東軍も西軍も「いや、ここは武力ではなく話し合いでなんとかしようよ」とはならなかったのではないかと。

 そうして考えると、やはり最大のポイントは朝鮮の役の失敗だと思われる。
 秀吉が企画して朝鮮半島に遠征を行い、明国とも華々しく戦って日本の武威を見せつけはしたが、結局は壮大な金と人命の浪費となった朝鮮の役。
 この戦いで多大な損失を被った日本全国の大名たちは、秀吉の死と共に、戦国時代が延長戦に入ったと考えたのだ。

 上杉景勝は特にその意識が強く、かつてと同じやり方で、各大名がそれぞれの地域ごとに戦争を繰り広げて領地を奪うべく、地元へと戻った。

 しかし、豊臣政権の中枢にいた家康や三成(そして毛利輝元も)は、戦国時代の延長戦になったとしても、それは戦国大名が群雄割拠する初期からのや り直しを意味するのではなく、本能寺の後の、秀吉が日本を統一したやり方でこの延長戦を終わらせるべきだし、そうするつもりだった。

 秀吉の日本統一とは、つまるところ、政権与党である大名が徒党を組んで、反抗する地方大名をボコボコにタコ殴りにして領土を分割する収奪方式である。

 家康はまず、前田家を相手にこのやり方を試してみたが、前田が完全な恭順をみせたのでうまくいかなかった。
 そこで狙いをつけたのが、かつての後北条よろしく地方で独立を試みる上杉である。
 今度は上杉の側もやる気満々であるから、うまくいった。家康は、豊臣政権の名の下に、全国の大名を動員して上杉討伐へと向かう。

 家康が、しゃかりきになったのには理由がある。関東に250万石という大領を持つ家康は、自分が政権与党にならなければ、石田三成らによって、領 土を分割される危険があった。今は大丈夫でも、自分の死後が危ない。そしてこの当時の家康はすでに57才で当時としては老人である。彼がこのあと16年も 生きるというのは、後の歴史を知っていればこそである。彼も、彼の周囲も「そんなに先はない」くらいの心づもりであったはずだ。

 自分が死ぬまでに、豊臣政権を安定させて、自分の死後の徳川家を安泰にするため、家康はなりふりかまわず、上杉への討伐を押し進めた。
 この時点では、東軍であろうが西軍であろうが、上杉討伐でちょっとでも論功行賞に預かるべく、戦意を高めていただけであるはずだ。

 だが、ここで隠居させられていた石田三成や、毛利家の周辺に、欲がでる。

「東へ東へと軍や大名が移動して、大阪、京都から徳川の与党が消えた今なら、クーデター起こして自分らが政権与党になれるんじゃないの?」

 そう。あくまで、武力クーデター。ボードゲーム『フンタ』のノリである。
 朝廷や、秀頼らの政治的な『玉』を掌中におさめて、豊臣政権の与党の地位を手に入れる。
 味方になる大名への褒美は、与党側につけるというエサだ。うまくいけば、家康を隠居させて、徳川の領土を大幅に縮小し、その空いた土地を与党勢力に分配して、政権を強固なものにする。

 もちろん、家康がクーデター側に唯々諾々と従うとは考えにくい。ドンパチも想定に入れた上で、計画を進めなくてはいけない。
 首都圏である京都や大阪を戦場にはできないから、できるだけ東に防衛線を広げる。
 そのため、京都の伏見城に残った鳥居元忠率いる首都防衛師団を排除し、徳川与党勢力の留守部隊や家族を確保。しかる後に、北陸~岐阜~伊勢という防衛ラインを構築する。

 後は時間の問題である。
 時間が経過すればするほど、『玉』を実効支配しているクーデター側が有利になる。
 家康を戦場で負かすなどという、リスクの高い作戦を行なう必要はない。東西内戦ではなく、これはクーデターなのである。

 しかし、このクーデターは、東軍側の諸将、特に豊臣恩顧とされる中堅大名たちに激烈な反応を引き起こす。
 福島正則ら、秀吉子飼いの大名たちは、元が外様である家康などより、よほど豊臣政権与党としての自覚が強い。
 その自分たちが、こともあろうにクーデターで政権から排除されて野党勢力に追いやられようとしているのだ。それは自分たちの人生すべてを否定されるに等しい。

 それゆえ、小山評定をはじめとする、東軍側の豊臣恩顧大名の戦意の高さは、家康よりも上であった。彼らはクーデター軍との全面戦争を望み、腰の定まらない家康を引きずるようにして東海道をばく進する。
 彼らの脳裏にあったのは、本能寺の後の、中国大返しだろう。明智光秀のクーデター軍を打ち破り、秀吉に栄光をもたらしたあの戦いを、今度は、自分たちの手で行なうのだ。

 そしてまさに。
「ゆっくり時間をかけて勝利すればいいや」
 と考えていたクーデター軍は。
「んな時間与えるかよ、おらおら」
 と迫り来るカウンター・クーデター軍に押し切られるようにして、岐阜を落とされる。

 クーデター軍は、自分が先手を取って有利な状況を作ったがゆえに、そこに安住しようとしてしまい。
 カウンター・クーデター軍は、このままの状況では、負けるのでそれこそゲーム盤をひっくり返すつもりで進撃したのである。

 このあたりで、実はもう、クーデター側はかなり不利になっている。石田三成や毛利・宇喜多らの一部をのぞけば、クーデター側に参加した諸将は、そ れほど理由があってクーデター軍についているわけではない。巻き込まれた上に、政権与党の座につけるから、従っているだけである。東軍の連中と国をまっぷ たつに割った大戦争をしてまで、何がなんでも勝利する気概や覚悟を持っているわけではないのだ。

 ましてや、ここで西軍が負ければ一蓮托生になってしまう。小早川秀秋などは元より家康与党勢力の側であったし、こうなっては何としても東軍側に合流したいところである。

 石田三成は大谷吉継と作戦を練り直し、大垣城を第1防衛ライン、関ヶ原を第2防衛ラインとする守勢の策を立てる。大谷吉継は、第2防衛ラインであ る関ヶ原周辺の要塞化を監督し、松尾山に防衛拠点としての城を建設する。ここに毛利本隊を進出させ、とにかく京~大阪に東軍を進出させない構えだ。
 石田三成自身は、大垣城に進出し、ここと南宮山の部隊とを組み合わせて、第1防衛ラインを維する。

 そして、9月14日。
 家康が大垣城前面の赤坂に進出したその同じ時、小早川秀秋が関ヶ原の松尾山城の留守部隊を追い払って、ここに陣取ってしまう。
 
 小早川秀秋が、最初から「東軍側に逃げ込む」つもりであったとするなら、このタイミングは完璧である。
 そして、西軍側にとっては最悪の展開であった。
 この時点で、第2防衛ラインは消滅し、第1防衛ラインは前後の敵に挟まれて退路を断たれたのである。

 しかし、数日を経ずして壊滅間違いなしであったこの死地を、西軍は見事な夜間行軍によって回避する。
 大垣城を夜に抜けでるや、伊勢街道を通って関ヶ原に転進。

 一方の家康も、西軍が動いたことと、小早川秀秋が東軍側として松尾山を制圧したと知り、大あわてで関ヶ原へ向かう。

 ふたつの軍の夜間行軍は、タッチの差で西軍側が先に関ヶ原へ布陣を果たす。

 なお、大垣側に向いて展開していた南宮山の部隊は事態の急変についていけてなかった。転進しようにも山を下りた先の垂井を東軍部隊に押さえられ、 戦うことも逃げることもできぬまま、遊軍となったのである。もしかしたら、素早く抜け出て後退することも可能だったかもしれないが、すでに徳川に内応した 吉川広家がわざと事態を静観した可能性もある。吉川の裏切りは、当日ではなく、前夜に行われたのだ。

 翌、9月15日。
 いきなり最終防衛線で戦うことになった西軍は、数で勝る東軍を相手に、地の利を活かしてよく戦った。関ヶ原は西に進めば進むほど狭くなっていて数の優位を活かせない。
 東軍側は数で勝りながら、一進一退を続ける。

 松尾山の小早川秀秋は、見通しの良い山頂からじっと自分が出撃するタイミングを計っていた。松尾山からの出撃口では、大谷吉継が通せんぼしており、これまた、地形から数の優位が活かせない。
 ここを迅速に突破するには、数で劣る西軍の予備戦力が時間経過と共に減少し、小早川軍の動きに対応できなくなる、その時を狙うしかない。朝鮮の役で活躍した小早川秀秋には、そのタイミングを見計らう能力があった。

 南宮山の毛利や長宗我部の部隊は、関ヶ原が山の反対側ということもあって、状況がよくわからないまま、何もできずにいた。垂井にいる東軍後衛部隊 と正面からぶつかればこれを撃破することは数の差から可能であったが、そこで東軍本隊が関ヶ原から戻ってきては袋だたきである。家康と内応していた吉川広 家は、毛利諸将を「ここは俺に任せて。何もしないのが一番」と説得し、実際、できることもあまりないので毛利隊はそれを受け入れてこの日を過ごす。

 そして、西軍の予備戦力が枯渇した午後。
 ついに小早川秀秋が動き出す。大谷吉継は必死に防戦につとめるが、ここで赤座、脇坂らが東軍側に内応。
 小早川秀秋と戦っていた大谷吉継隊は無防備な側面から痛撃を受けて敗走。
 片翼が潰れてしまえば、後は早い。立て直すだけの戦力もない。西軍は右翼からずるずると崩れて全面潰走。天下分け目の戦いは、ここに一日で決着がついたのである。

アルシャードセイヴァーシナリオ:チュートリアル奈落 今回予告と地図、ハンドアウト

2012年8月1日 チュートリアル奈落 No comments , , , , , ,

■今回予告:
夢の中の少女は語る。世界を守れと。
現実の少女は笑う。自分たちはただの学生だと。
だが、キミは知る。
自分がガイアの戦士、クエスターであることを。
そして奈落がキミの世界を脅かしていることを。
目覚めよ、そして戦え。
アルシャードセイヴァー『チュートリアル奈落』
蒼き星にまた奇跡が生まれる。

■このシナリオについて
 このシナリオは、アルシャードセイヴァーのオープニングコミックを題材にした、プレイ時間1時間のチュートリアルシナリオです。
 初めてアルシャードセイヴァーを遊ぶプレイヤーのために、判定のやり方からゲームの進め方、そして戦闘方法までを実際に遊びながら習得します。

■キャラクターについて
 キャラクターはサンプルキャラクターを使用します。レベルは3です。(自作の場合は、あらかじめ作ってきておいて、GMに見せた上で許可を取ってください)
 PC1は、オープニングコミック同様に、カバー:学生で、最初はクエスターとして覚醒していません。普通の学生ですから、魔物と戦うこともできません。シナリオのシーン2にて、覚醒します。
 PC2~PC5は、すでに覚醒したクエスターです。

■シナリオ地図

■ハンドアウト

PC1用ハンドアウト
コネクション:奈良久子(ならひさこ) 関係:友人
クイックスタート:救世候補者 コンストラクション:レジェンド カバー:学生
 キミは、夜ごと夢を見る。ガイアのアバターと名乗る少女の夢だ。
 その夢の話を学校で友人の奈良久子に話すと笑われてしまった。
 それはただの夢の話だと。
 
PC2~5用ハンドアウト
コネクション:PC1 関係:秘密
 キミは、独自のツテでPC1のことを知る。
 まだ覚醒していないが、キミと同じクエスターであるらしい。
 だが、そのPC1を狙って、PC1が通う学校に奈落が忍び込んでいる。
 PC1を守り、その覚醒を促すのだ。