その他

『白い死神』ペトリ・サルヤネン 理解はすれども共感はせず。狙撃の名手は、標的をあるがままに受け入れる

2012年4月5日 雑記 No comments , , , , , , , , , , , , , , ,

 シモ・ヘイヘは、銃や戦記物に興味がある人ならば、知らぬものがいない有名人である。狙撃の名手であり、1939~1940年の『冬戦争』では、ソ連兵542人の狙撃という戦果を挙げている。
 『白い死神』は、そのシモ・ヘイヘに実際にインタビューを行い、彼と関わった人や戦争についての調査を行ったヘルシンキ大学の歴史教師ペトリ・サルヤネンによる著書である。
 本書では、スキー板の上に載せた防盾(ぼうじゅん)をソ連軍が使っていたとか、その防盾を撃ち抜くための特殊な弾薬(鉄芯弾?)を部隊長が申請していた とか、擲弾発射器(グレネードランチャー)による積雪の中への擲弾投射は、着発信管が作動しにくく、不発が多いらしいとか、戦場における細々とした描写 を、フィンランド第34歩兵連隊第2大隊戦闘日誌から拾っており、冬戦争について知りたい方にもオススメの作品となっている。(梅本弘さんの『雪中の奇 跡』も合わせてオススメしたい)

 さて狙撃兵と言えば、戦場では敵から嫌われ、憎まれる存在である。捕虜として捕らえられずに殺されたり、あるいは拷問を受けたりという逸話も聞かれる。
 では、人を銃口の先に捕らえ、引き金を引いて殺す狙撃兵とは、常人とは異なる、異質な人間なのだろうか?
 本書に描かれたシモ・ヘイヘの事績から伺える狙撃兵としての資質は次のようなものだ。

・標的への高い理解力
 戦後の狐狩りでもそうだがシモ・ヘイヘは「標的が何をするか」を、しっかりと理解している。どう動くか、いつ動くか。それが分かっているからこそ、待ち伏せも可能であるし、逃げる標的を追うことができる。

・皆無に等しい共感力
 第11章「大隊戦闘日誌」にひとりのソ連兵が登場する。失敗に終わった攻勢で仲間が大勢死に、本人は死体の山の中に隠れて死んだふりをしていた。そして、夜が近づいてきて、あともう少しで周囲が闇に包まれるというのに、片足を引きずりながら走り始めるのである。

>>>
 「神経がいかれたな」ヘイヘは思った。
 これはよくあることだった。あと一歩で助かるところまで来ると、最後まで慎重な行動をとり続けられなくなってしまう者が多いのだ。
>>>(P147)

 ヘイヘは、このソ連兵を狙撃して殺す。この場面が、ヘイヘのインタビューで語られた実際の出来事なのか、それとも、作者の想像を元にした戦場の一場面なのかは分からないが、それほど的はずれな場面とは思えない。いかにもありそうな話である。
 私は想像してみる。私に――このソ連兵が撃てるだろうか?
 哀れなびっこのソ連兵! 彼の抱く恐怖と、生への狂おしい執念を我がことのように感じるようでは、引き金を引くことはできないだろう。
 だが、ヘイヘは淡々と銃の照準をのぞき込み、風や弾道を考え、ソ連兵の動きから未来位置を測定し、そこに銃弾を放つ。『憎悪のためでも、復讐するためでもなく、ただ父から受け継いだ土地をこれからも耕し続けるために』(P149)ヘイヘは、ソ連兵を殺すのである。
 ここにあるのは、共感の断絶だ。相手の願うこと、望むこと、それらを、『それはそれ、これはこれ』ですっぱりと割り切ってしまうことで、相手を殺すことへの疑問や葛藤を抱かずにいられるのだ。
 ここに関しては、確かに狙撃兵の心理には、通常の人では難しい割り切りが、すっきりとできているように思える。相手の心に共感したまま殺す異常な心理状態なのではない。割り切りがきちんと出来るのが、特殊な才能というだけのことだ。

 では狙撃兵の持つ、この割り切りは、どこから生まれるのだろう?
 それは、現実を「かくあって欲しい」「かくあるべきだ」と見るのではなく、「あるものを、あるがままに」見る感覚だと思う。
 戦後のシモ・ヘイヘは、静かな、自分が戦った戦争についてあまり語ることのない人物であったという。政治的、思想的な問題に巻き込まれることを嫌い、できるだけ人のいない森の中で暮らしてきた。
 政治や経済は「かくあって欲しい」「かくあるべきだ」という考え、物の見方が主流になる。そうやって人の思いや力を集めることで、政治や経済は動いている。
 「あるものを、あるがままに」見る人間は、現実を許容する。風が吹けば弾道はそれる。距離が遠ければ弾道は下に落ちる。自然における可能と不可能は、人 の希望や祈りとは無関係である。願いや思いが力になるのは、人と人の間だけである。自然や戦場では、願いや思いで不可能なことが可能になったりは、しな い。

 シモ・ヘイヘは、なすべきことを、ただなした。
 それを、どのように考えるのか。
 それは彼の事績を追う個々人の問題である。

アリアンロッド・サガ シナリオのキャンペーンログと、シナリオ非参加時の出来事表(シナリオ25)

2012年3月24日 アリアンロッド・サガ・キャンペーン No comments , , , , , , , ,

シナリオ25:玄武目覚める キャンペーンログ
■概要:
 PCたちダークドラゴンはカムイ地方の地下に眠るシェルターの探索を行なう。
 シェルターは異世界から来た円卓の騎士と名乗る守護者によって守られていた。守護者と力試しを行ったPCは、シェルター“箱船”を解放する。

■第13軍団:
第13軍団:11800人
■旅団
アヴァロン旅団人数:1800人
旅団レベル:15
維持費:18000G
■武勲
ギルド武勲317点
■ギルド所有物
輸送飛行船1隻(+1隻の運航を任される)
ノイエ・ガイエスブルク城
ファーレンの旅籠(ギルドの陣宿)
カツオブシ工場(休業中)
バァルの指輪付きおしゃれの盾
シェルター“箱船”(新規)★

■シナリオ25期間中の出来事(ROC)
===================================
1:カムイ地方で後方支援。シェルターに潜入しようとする妖魔の軍勢と交戦に。
※成長点+40。
===================================
2:ミドルロック島で武装飛行艇の操縦訓練中に空を飛ぶ妖魔と交戦。
※成長点+20。所持金+1万G。
===================================
3:ファーレン地方を巡回。“無面目”ジョン・ドゥと会う。
※シナリオ26の情報収集/罠感知の判定に+2D。所持金+1万G。
===================================
4:ドードー島で、妖魔将軍ジューコフの大戦車軍団を相手に戦う。
※成長点+20。所持金+1万G。
===================================
5:アルバン地方で、妖魔将軍ハンニバルとヤプールの戦いを偵察中に漁夫の利で妖魔王の石を入手。
※所持金+2万G。
===================================
6:物資輸送任務に携わり、アルバン地方やドードー島を飛び回る。
※成長点+20。所持金+1万G。
===================================
●全員獲得の成長点:150点

アリアンロッド・サガ・キャンペーン シナリオ26『闇よ落ちるなかれ』今回予告、シナリオ地図

2012年3月24日 アリアンロッド・サガ・キャンペーン No comments , , , , , , , , ,

■今回予告:
 カムイ地方のシェルターで発見されたのは、玄武ロスベルクの魂だった。オリアンにある“聖域”で目覚めた玄武は、我が身を取り戻すために活動を開始する。
 だが、このことを予測していた上級魔族“眠り姫”によって作られた恐るべき闇の領域が、ファーレン地方を侵食し始める。
 アリアンロッド・サガ「闇よ落ちるなかれ」
 世界を守るため、キミの力を貸してくれ。

■ギルドハンドアウト:
コネクション:“無面目”ジョン・ドゥ 関係:宿敵
 ファーレン地方に出現した闇の領域は、“無面目”ジョン・ドゥによって作られたものだ。
 “闇竜”ヴェスパーの竜核の力を使った闇は、玄武ロスベルクの魂が安置された“聖域”を呑み込もうと広がりつつある。
 闇の侵食を食い止め、今こそ因縁続くヤツに引導を渡すのだ。

■第13軍団:
 第13軍団:11800人
 アヴァロン旅団:1800人
 アヴァロン旅団レベル:15
 維持費:18000G
 +カツオブシ工場ひとつ(現在休業中)
 ギルド武勲:317点

■キャンペーン地図:ロスベルク島の現状

●地図の見方
地方(エリア):点線の四角枠が、各地方(エリア)になります。妖魔王ロスベルク本体は海面の下にあり、でこぼこしています。ドードー島とミドルロック島 は、浮上したことでロスベルク本島と地続きになりましたが、道路などのインフラはありませんので、現時点でのエリア間移動は飛行のみとなります。
人口:各地方(エリア)の人口を示します。1マスがおおむね10万前後です。あくまで戸籍として登録されているもので、流動的な人口が数十万存在すると見込まれています。
軍隊:各地方(エリア)の軍隊および、軍事施設を示します。青がグラスウェルズ、赤がレイウォールです。
物資:各地方(エリア)の持つ備蓄された物資です。主に燃料(薪、石炭、錬金術素材)だと考えてください。シナリオ終了時に1つずつ減少します。シナリオ 終了時に消費物資が不足するエリアは、人口や軍隊を維持できなくなります。(隣接エリアに人口は移動します。軍隊は消えます。これは軍事力として使えなく なる、という意味で兵隊が0になるわけではありません)他のエリアから人口が流入したエリアでは、流入したエリア1つに付き、備蓄物資が2倍減ります。
 例:カムイ地方からヴェンシス地方へ人口が流入した場合、ヴェンシス地方では、従来の1+2の3ポイントの物資を消費できないとエリアを維持できなくなる。

●輸送飛行船
 ギルドで保有した輸送飛行船に加え、ミドルロック島の飛天城を制圧したことで使用可能になった輸送飛行船1隻の2隻が稼働中です。FS判定で1隻につき1箇所のエリアに物資を運び込むことができます。

●シェルター“箱船”
 カムイ地方のシェルター“箱船(アーク)”を再稼働させたことで、エリアの1箇所を選んでそこの人々をシェルター内に疎開させることが可能になりました。“箱船”は冷凍睡眠装置によって最大1000万人の人を最長1万年にわたって保護できます。

●玄武ロスベルクの魂
 玄武ロスベルクの魂は、オープニングフェイズに“聖域”で目覚めます。
 現時点ではまだ、肉体であるロスベルク島を取り戻すことはできませんが、次のいずれかの行動は可能です。
A)ロスベルク島を、元の位置に戻す。
(大陸との連絡や補給が回復)
B)妖魔王の石消費型の特技を、封印する。
([戦闘不能]から回復など、妖魔将軍のチート技が無効に)
C)その他
(上記以外に思いつくものがありましたらどうぞ)

■シナリオ地図

■キャンペーン追加情報:
 聖域で“撤退派”の妖魔将軍ハンニバルと交渉して分かれたので、前回からハンニバルがアルバン地方にある妖魔将軍ヤプールの次元迷宮に攻め込んでいます。
 ヤプール軍が超獣を中心に30万(平均レベル30)に対し、ハンニバル軍がフォモールを中心に10万(平均レベル10)。最初はヤプール軍の圧勝かと思われましたが、意外なことにハンニバルが戦術を駆使して善戦しています。
 「ローマ人の方がよほど手強い」とはハンニバル談。

■シナリオ進行について(プレイヤー情報)
 ミドルフェイズは闇の領域境界線での攻防と、情報収集&前線支援を並行して行います。
 全PCがどちらかの行動を行ったら、ターンがひとつ進み、3つある防衛線のひとつが崩壊します。
 前線にいるPCは、闇の領域から出してくる妖魔と戦い、これを押し戻します。地形ごとに毎ラウンドのセットアップで判定を行い(平原なら【敏捷】13) 失敗すると、闇の領域の影響を受けます。この戦闘に勝利することでも、情報を得る可能性があります。また、PCが戦った防衛線ではターン終了時に戦力の減 少が起きません。
 後方にいるPCは、情報収集か後方支援を行います。後方支援を行えば前線の崩壊を先伸ばしできます。(最大3ターン。4ターン目からは、戦力が残ってい てもひとつずつ防衛線が崩壊します。6ターンですべての防衛線が崩壊し、聖域があるオリアンも闇に呑まれます)情報収集を行えば、クライマックスへの布石 が整います。
 1ターンにできる情報収集や後方支援は、それぞれ1つだけです。(手分けして1ターンにふたつの情報収集や、後方支援を行なうことはできません)

『機動戦士ガンダムAGE』のSFネタ解説その7:ビッグリングの戦いとモビルスーツ戦術

2012年3月22日 『機動戦士ガンダムAGE』のSFネタ解説 No comments , , , , , , , , ,

 機動戦士ガンダムAGEに出てくるギミックや台詞を元に妄想をたくましくしていくSFネタ解説シリーズの7回目。

 第7回は第22話『ビッグリング絶対防衛線』を題材に、モビルスーツ戦術について考えてみよう。モビルスーツと戦術の組み合わせは、ミリタリー ファンは現実の戦術や兵器を持ち込み、SFファンは現実の科学や数式を持ち込み、ガンダムファンはガンダムへの愛を持ち込むことで皆が不幸になる、悪魔の 三位一体である。その全員にいい顔をしたいコウモリ村の有袋類である私としてはできるだけ地雷は避ける方向でいきたい。どちらにせよ、いつもとおり真面目 七分に法螺三分、大嘘ついても小嘘はつくなの三割精神だ。最後までおつきあいいただければ、幸いである。

●なぜビッグリングは宇宙にあるのか?
 初代ガンダムでは、南アメリカの地下の洞窟に連邦軍本部ジャブローがあった。きわめて堅牢な基地であり、コロニー落としでもなければ無力化は困難なほどだ。
 ジャブローに比べると、ビッグリングは宇宙に浮かんでおり、攻撃には脆そうだ。司令部をこんなところに置くのは間違いのようにも思える。
 だが、ビッグリングが宇宙にあることには、立派な理由がある。
 というのも、衛星軌道を優勢な敵に制圧されると、地上のどこもが安全とは言えなくなるからだ。地球のどの地点にも、空から質量兵器を落とすだけで甚大なダメージを受ける。分厚い岩盤に守られていない地下基地ならともかく、都市も工場も農地も鉱山も、爆撃され放題である。
 かつて米ソ冷戦時代にソ連が衛星スプートニクを打ち上げた当時、アメリカに「スプートニク・ショック」と呼ばれる衝撃が走った。衛星軌道に物体を打ち上 げる能力を保有するということは、地上のどこにでも爆弾を落とせるということを意味していたからだ。余談ながら、ロケットに軍用か科学用かの技術的な違い はない。弾頭を搭載すればミサイルであり、衛星や探査機を乗せれば宇宙ロケットなのである。
 それと同じで、ヴェイガンが衛星軌道を支配すれば、地上のどこもが危険にさらされる。核弾頭でなくとも良い。十分な質量を持つ石ころを月か資源小惑星か ら切り取ってコンテナに詰めて落とすだけで、ピンポイント爆撃から都市への戦略爆撃まで自由自在である。十分な岩塊が手に入るのならば、火山灰が太陽光を 遮る要領で、気象を制御して飢饉を起こすことだって可能なのだ。
 侵攻作戦においても、軌道を支配する有利は圧倒的だ。衛星軌道を支配する側は、手薄な場所を狙って奇襲攻撃を仕掛けることができる。一戦した後で地上か ら宇宙へ上がるにはツィオルコフスキー的に大変であるが、機動性が高いモビルスーツ兵器によるゲリラ的な降下作戦と離脱――ガンダムに大きな影響を与えた ロバート・A・ハインラインの『宇宙の戦士』で、強化歩兵部隊が得意とした作戦でもある――ならば、連邦軍がおっとり刀で集まってくる前に撤退が可能だ。
 そして、敵の動きを読んでの待ち伏せ以外の方法でこの襲撃を防ぐ手だてはない。衛星軌道を敵に奪われるというのは、部隊の展開に関してそれほどのアドバンテージと主導権を敵に与えることを意味するのだ。

●ビッグリング攻略
 連邦にとって是が非でも死守しなければならないビッグリングだが、宇宙空間の拠点防衛は、超技術(エネルギーバリアとか)がなければ、それだけで難しい。
 たとえば、ヴェイガンが地球近傍天体(NEO:Near Earth Object)にブースターを取り付けて加速させ、ビッグリングとの衝突軌道に乗せたとしよう。時間をかけて加速した巨大質量は、それだけで脅威となる。 もちろん、加速する側にも超技術(バーゲンホルム機関的な慣性制御)がなければ、衝突時の相対速度はせいぜいが秒速10~30kmであろうが、こういうの は質量さえあれば速度は遅くても脅威は高い。
 質量兵器に対する現実的な回答は、ビッグリングを動かすことである。宇宙空間に浮かぶものは、それがたとえコロニーであろうが要塞であろうが、動かせ る。そして、質量兵器ほどに巨大な物体は、遮蔽物のない宇宙空間で隠れるのは難しい。惑星のように動けない物体と違い、軌道上の物体は敵が質量兵器を持ち 出すことさえ想定していれば、対処は可能なのだ。

 それゆえに、だろうか。AGE22話でヴェイガンが取った作戦は、きわめて正攻法だった。モビルスーツ部隊を展開してビッグリングの防衛線を突破し、取り付いてこれを落とすというものだ。
 ビッグリングを要塞と考えた場合、城攻めにはふたつの方法がある。ひとつは、ドイツ軍がセヴァストポリ要塞を攻めたように、ひたすら大火力を集中するや り方。もうひとつは、日本軍が旅順要塞を落としたように、ひたすら守備兵力を消耗させ、失血死させるやり方。ゼハートが選んだのは後者である。
 ここでポイントとなるのがヴェイガンの特殊なステルス能力である。第22話でも撤退時には使っているところから見て、使用に制限があると思われる。おそ らく推進時の噴射ガスがステルス圏外に出ると赤外線が漏れて発見される、一度解除した場合二度目の利用に一定時間経過後などの条件があるのだろう。加えて 連邦軍側にも、ステルスを防ぐ備えはあると思われる。
 だが、たとえ完全な戦術的奇襲ができなくとも、接近をぎりぎりまで悟らせないことで、連邦軍に対応の時間を与えない作戦レベルでの奇襲は可能だ。第22 話で連邦側が戦力的に不利、というのはステルスで接近したヴェイガンに対し、連邦軍には戦力を集中する時間がなかったためだと思われる。

●『ビッグリング絶対防衛線』の流れ

 まずは司令部の画面からだいたいの戦況の流れを。

 攻める側のヴェイガンは大型艦5隻、守る連邦軍は母艦が9隻である。出撃したモビルスーツについては不明ながら、ビッグリングを直接基地とする部隊なども含めて100~200機前後というところだろうか?
 戦闘規模から考えると、Xラウンダーの持つ優位性は高い。どちらも数で揉み潰すような戦いができず、手持ちの駒をどう使うかの戦術が重要な戦いとなる。

 双方がモビルスーツ部隊を展開させた後、最初に動いたのはヴェイガンだった。Xラウンダー部隊『マジシャンズエイト』を投入し、戦線に突破口を開こうとしたのである。
 だが、これは連邦の司令官フリットの想定内の動きであった。フリットは、複数の部隊で局所的な戦力優勢を実現し、Xラウンダーの動きを封じ込める。突破 前進ができなくなったXラウンダーの一部は弱い箇所を狙って戦線中央へと移動し、そこでウルフとAGE2に乗るアセムと交戦している。

 味方の攻勢が頓挫したことで、ヴェイガンの司令官であるゼハートは兄デシルと共に出撃する。これは、状況を打破するに足る予備戦力がヴェイガン側 にもうなかったことを意味する。ゼハートは、ビッグリング攻略に、最初からほぼ全力を投入したのだ。戦力の逐次投入は各個撃破の的であるから、考え方とし ては正しい。また、あまり時間をかけると、ビッグリング救援のため、連邦軍部隊が集結してしまう。時間はヴェイガンの敵だ。

 しかし、おそらくそこまでフリットは見切っていたのではないかと思う。
 ゼハートとデシルのふたりのXラウンダーが戦線を押し上げ始めた時、フリットはためらうことなく自らAGE1で出撃している。
 これはこの時点でフリットが勝利を確信したためであろう。すでにこの状況までが想定内で、自分が出撃することも含めて後の作戦をどうするかもあらかじめ決めてあり、それゆえに参謀のアルグレアスに何も言わずに出撃し、アルグレアスもまったく驚く様子がなかったのだ。

 では、いったい何がフリットとアルグレアスをして、ゼハートとデシルが出撃した時点で勝利を確信させたのか?
 それは、「時間」ではないかと思う。

 この後、カメラはフリット対デシル、アセム対ゼハートに集中しており、他の戦線でどのような戦いがあったかは分からない。
 が、結果としてヴェイガンは大型艦1隻を失う損害を被り、ゼハートに代わって指揮をしていたメデル・ザントがゼハートに撤退を進言することになる。この時のメデル・ザントの言葉が興味深い。

「連邦の戦術によって、我が部隊の多くが退却を強いられており――」

 そう、撃墜されたのではなくて、退却を強いられているのである。
 可能性として考えられるのは、ヴェイガン側のモビルスーツ部隊が燃料や弾薬が切れて母艦へと後退し、それを連邦が追撃してついには大型艦の一隻を落とした、ということである。
 ヴェイガン側のモビルスーツは攻勢に出る必要上、推進剤をどんどん消費して機動し、連邦軍の防衛線に穴を開けようとした。Xラウンダー部隊『マジシャン ズエイト』が戦線の左翼で頭を押さえられた後、戦線の中央まで出てアセムとウルフと交戦していることからも、それが伺える。
 華々しい機動戦は、だが、推進剤の過剰消費につながる。推進剤と共に攻勢のモメンタムを失ったヴェイガンは、部隊単位で後退し、前線からは櫛の歯が抜けるように穴が生じる。そこを連邦軍は突いたのだ。敵を倒すのではなく、敵が後退した穴を埋めるように。
 序盤からの、やたらと細かいビッグリングからの戦術指揮も、モビルスーツ部隊の推進剤消費をできるだけ小さくするため、だとすると納得できることは多い。
 それを悟ったからこそ、ゼハートは撤退を決めたのであろう。フリットのAGE1が脅威だったのではない。フリットがゼハートとデシルとの戦いに出る前に、すでに自軍の勝ちを決めていたことに気が付いたのだ。

 つまるところ、この戦いは最初から最後まで、フリットの掌の中で行われていたことになる。高いステルス能力を持ち、Xラウンダー部隊をも有する ヴェイガンの戦術的有利と、短期決戦でビッグリングを落とす必要がある戦略的不利を見切って作戦を立てていたフリットに、ゼハートはまったく歯が立たな かった。

 恐るべきはやはり、天才フリット・アスノということだろうか。がんばれ、アセム! お父ちゃんを超えるのは息子の役目だ!

アリアンロッド・サガ・キャンペーン シナリオ25『玄武めざめる』今回予告・シナリオ地図

2012年2月24日 アリアンロッド・サガ・キャンペーン No comments , , , , , , , , , ,

■今回予告:
 カムイ地方の地下にある太古のシェルター。
 それは、妖魔王ロスベルクが目覚めた時に、人々を避難させるためのシェルターだった。
 今こそ危急の時である。キミたちは封印されたシェルターの内部へと入る。
 そこでキミたちを待っていたのは、ロスベルクをめぐる、驚くべき真実であった。
 アリアンロッド・サガ「玄武めざめる」
 世界を守るため、キミの力を貸してくれ。

■ギルドハンドアウト:
コネクション:ロスベルク 関係:??
 600年前、妖魔軍団を乗せてアルディオン大陸へ侵攻してきた妖魔王ロスベルク。
 邪神に侵される前は、亜神の位を持つ巨大な亀、玄武であったという。
 封印されて500年。今では300万近い人々がかつて妖魔王であった島の上で暮らしている。
 たとえ封印されて島になったとはいえ、なぜ、誰が、何の目的をもってロスベルク島に人々を移住させたのだろうか。

■第13軍団:
 第13軍団:11800人
 アヴァロン旅団:1800人
 アヴァロン旅団レベル:14
 維持費:18000G
 +カツオブシ工場ひとつ(現在休業中)
 ギルド武勲:317点

■キャンペーン地図:ロスベルク島の現状

●地図の見方
地方(エリア):点線の四角枠が、各地方(エリア)になります。妖魔王ロスベルク本体は海面の下にあり、でこぼこしています。ドードー島とミドルロック島 は、浮上したことでロスベルク本島と地続きになりましたが、道路などのインフラはありませんので、現時点でのエリア間移動は飛行のみとなります。
人口:各地方(エリア)の人口を示します。1マスがおおむね10万前後です。あくまで戸籍として登録されているもので、流動的な人口が数十万存在すると見込まれています。
軍隊:各地方(エリア)の軍隊および、軍事施設を示します。青がグラスウェルズ、赤がレイウォールです。
物資:各地方(エリア)の持つ備蓄された物資です。主に燃料(薪、石炭、錬金術素材)だと考えてください。シナリオ終了時に1つずつ減少します。シナリオ 終了時に消費物資が不足するエリアは、人口や軍隊を維持できなくなります。(隣接エリアに人口は移動します。軍隊は消えます。これは軍事力として使えなく なる、という意味で兵隊が0になるわけではありません)他のエリアから人口が流入したエリアでは、流入したエリア1つに付き、備蓄物資が2倍減ります。
 例:カムイ地方からヴェンシス地方へ人口が流入した場合、ヴェンシス地方では、従来の1+2の3ポイントの物資を消費できないとエリアを維持できなくなる。
 物資のエリア間輸送や、新たな物資の発見や確保、また物資の追加消費によるエリア防御施設の建設などについては、キャンペーン進行に伴って随時、明らかになっていきます。
 いずれにせよ、ロスベルク島の社会と人口は(妖魔王が何もせずとも、空を飛んでいるだけで)遠からず崩壊することだけは確実です。

 そろそろ、あちこちで備蓄物資が限界になってきました。今回のシェルター探索が、事態の打開につながるかどうか。

■ダンジョン地図

■ダンジョン追加情報:
 ミドルロック島の天空城をクリアしているので、『ホワイトノア』の制御精霊ヴィヴィオから、シェルターについて次の情報を得られます。
「シェルターはね、私と同じように精霊制御なの。精霊エンジンが搭載されてて、空も飛べるよ」
「形は空飛ぶ円盤みたいなの。おっきくて、直径2kmくらい」
「このシェルターは、元は“水の粛清”で神様が一部の人や動物を助けるために作った箱船(アーク)なの。水がひくまでの間、中で眠り続けることができるよう、冷凍睡眠システムが搭載されてるわ」
「箱船を目覚めさせるには、16本ある柱のうち、最低でも3ヵ所の柱を起動させる必要がある。でも気をつけて。箱船は、本来が亜神かその域に達した神の戦 士によって動かされることしか想定していない。人間がうかつに起動させようとすると、魂ごと吸収されて干からびてミイラになっちゃうかも」
「対策? 対策と言われても、そうだなぁ……あ、そうだ! 妖魔王の石、あるでしょ? あれをできるだけたくさん集めて持っていくといいよ。すでに浄化されてるから、あれは純粋な魔力の塊。きっと役に立つと思うよ」

※GMから補足:
 妖魔王の石はダンジョンの外で調達するなら、1個5万G。
 ダンジョンの中で追加で欲しくなった場合は、1個10万G。

■キャンペーン追加情報:
 聖域で“撤退派”の妖魔将軍ハンニバルと交渉して分かれたので、ハンニバルが動き始めます。
 アルバン地方の妖魔将軍ヤプールの迷宮に、ハンニバルが集めた軍勢が攻め込みます。現時点では、ヤプール軍が超獣を中心に30万(平均レベル30)に対し、ハンニバル軍がフォモールを中心に10万(平均レベル10)で、ヤプール側が優勢です。

■シナリオ進行について(プレイヤー情報)
 ダンジョンシナリオです。
 ダンジョンは、コントロールセンターまでたどりつけばエンディングです。時間が足りなくなってきたら、切りあげてコントロールセンターへ直行します。
 うまくダンジョンをクリアしていけば、それぞれの場所でボーナスを得られます。がんばってください。
 また、『レボリューション』が発売になりました。フォーキャスターやプリーチャー、そして何よりファランクスがあります。
 リビルドを行なうプレイヤーは、あらかじめキャラクターのリビルド案を持ってきてください。セッション開始前にチェックいたします。

アリアンロッド・サガ・キャンペーン シナリオ24『聖域の試練』ログとレポート

2012年2月21日 アリアンロッド・サガ・キャンペーン No comments , , , , , , , ,

シナリオ24:聖域の試練 キャンペーンログ
■概要:
 PCたちダークドラゴンはファーレン地方のオリアンへ向かう。
 オリアンの中央広場には、地下からせりだしてきた十字架型の塔があった。
 この中に入ったPCは、妖魔将軍ハンニバルと遭遇し、いったんは戦闘になるも、ロスベルクからの撤退派であるハンニバルとは情報交換を行って別れる。
 今後は、バァルの指輪でハンニバルとアニマルメッセンジャーによる連絡が可能。
 同時に、妖魔四天王最後の生き残りジョン・ドゥの背後に、人間に転生(寄生?)した上級魔族がいるらしい、との情報を得る。
 次回は、カムイ地方にあるシェルターへ向かう。

■第13軍団:
第13軍団:11800人
■旅団
アヴァロン旅団人数:1800人
旅団レベル:14
維持費:18000G
■武勲
ギルド武勲317点
■ギルド所有物
輸送飛行船1隻(+1隻の運航を任される)
ノイエ・ガイエスブルク城
ファーレンの旅籠(ギルドの陣宿)
カツオブシ工場(休業中)
バァルの指輪付きおしゃれの盾(新規)★

■シナリオ24期間中の出来事(ROC)
===================================
1:ファーレン地方のオリアンで、地割れから出た妖魔の群れと戦う。
※成長点+40。所持金+8万G
===================================
2:ミドルロック島で武装飛行艇の操縦訓練を受ける。
※成長点+20。所持金+12万G。
===================================
3:カムイ地方でシェルターについて情報収集を行なう。
※シナリオ25の情報収集/罠感知の判定に+2D。所持金+12万G。
===================================
4:ドードー島で、妖魔将軍パットンの大戦車軍団を相手に戦う。
※成長点+20。所持金+12万G。
===================================
5:アルバン地方で、妖魔同士の戦いに遭遇。漁夫の利で妖魔王の石を入手。
※所持金+16万G。
===================================
6:物資輸送任務に携わり、カムイ地方やヴェンシス地方を飛び回る。
※成長点+20。所持金+12万G。
===================================
●全員獲得の成長点:120点

■キャンペーン地図:シナリオ24での状況

■シナリオ地図:オリアン市

■ダンジョン地図: