攻撃をキャンセルすると、その部隊は所属キャンプに帰還するまで操作不能になる。攻撃側が手を控えるということは、防衛側に援軍が到着するまでの時間的余裕を与えることになる。
おそらくこの日はじめて、共和国軍はミスを犯した。
ひとたび守備隊を失ったキャンプは脆い。援軍というものは、「ひとりのプレーヤーが適当に余っているキャラクターと兵士を送りつける」という形だと、到着する端から攻撃側に各個撃破されてしまい、余計に被害を拡大しかねない。
だが援軍が集まっているところに攻撃をかければ、どんな部隊でも楽観はできない。このゲームでは攻撃側には人数制限があるが、防御側には制限がないため、コストを度外視するなら際限なく防御を固めることができる。
共和国軍は、僕のキャンプを落とすならばどんなに被害が出ようが徹底して攻撃するべきだったのだ。攻撃を手控えたことによって、共和国軍は主力――僕の守備隊を全滅させた第一波の攻撃隊――が再出撃するまで「待ち」の状況を作ってしまった。
共和国内部のぬるい判断は、容易に攻撃隊自身に牙を剥く。彼らが二度目に僕のキャンプを襲った後、戦場に残っていたのは共和国軍ではなく、一万を数えた教国の援軍たちだった。
この日三度目の大戦力差による防衛勝利は、共和国軍の主力攻撃隊を全滅させた。この直後、ついに被攻撃の表示がなくなった。
キャンプは残った。
午前10時前に始まった戦闘は、午後1時には終わっていた。二万を超える将兵が戦闘に参加し、一万が戦場の露と消えた。
この戦闘で、教国は1セルの領土も獲得していない。だが、共和国軍の本気の攻めを皆で協力して凌いだということは何より僕らの自信に繋がった。ACCAはこの攻防を徹底的に分析し、それはこの戦いのわずか3日後にひとつの作戦として結実した。
群狼作戦。
後に共和国軍を震撼させた教国の逆襲は、この日から始まったのだ。
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