二ヶ国同盟に対抗するために、こちらも使者を立てて切り崩し工作をするべきだ、という意見もあった。しかしこ僕らはこの作戦とともに心中する決意を固めた。両方を選んでいる余裕はなかった。
二ヶ国同盟というゲーム上最も過酷な状況に対して、ゲームの枠の中でどれだけの抵抗ができるのか試して見たい。そしてそこには、この状況を作り上げた王国対人層への賞賛も含まれていた。
おそらく、全てのサーバーを合わせた中で最も強力な手を打った相手に、僕らは理論上最高の一手で応じたい。
それがゲームを楽しむと言うことではないだろうか。
12月9日午前、その瞬間に向けて、僕らは動き始めた。
キャンプが完成する瞬間、そのセルを教国陣地にしていなければ建設は失敗する。この期に及んで踏み抜かれる訳にはいかない。防御特化キャラを中心とした兵士を送り出し、陣地防御とする。
直接、キャンプの側に送るのは塗りミスによる強制帰還の可能性があるため、着地地点を細かく打ち合わせながらの移動になる。Google Docsに周辺マップを描き、このセルは着地に使うから塗らない、このセルは塗る、などと情報を共有しながら慎重に移動する。
途中、キャラクター単騎と思われる塗り返しがあったようにも思うが、もうよく憶えていない。問題なく撃隊したはずだ。あとはただ、固唾を呑んで見守っていたことだけを憶えている。
ゼロ・アワー。
南西ラスダンに9個のキャンプがほぼ同時に建った。クリックミス等から早めに予約してしまった2つのキャンプを除き、48秒以内に7つのキャンプが建つ。ミスしたキャンプも予定より早い分には問題がない。なぜなら……。
「本命」たる隣接キャンプ「アマテラス」以外のキャンプは、アマテラスを12時間保護するための捨て石に過ぎないからだ。
外周7つのキャンプは即刻指令爆破された。これにより、アマテラスに隣接するセルすべてが「攻撃不可能なセル」と化す。
しかし、アマテラス東側の隣接キャンプに対しては、「教国プレーヤーだけは」援軍を送ることができる。この12時間を利用して、援軍の兵士は右のキャンプに、資源の支援はアマテラスに送る。これなら、食糧不足を気にせずキャンプを育てられる。アマテラスのプレーヤーは当然のように有料チケットを連打して促成栽培する。
寸分狂わぬチームの連携、移動速度増加による兵員の高速輸送、地雷による陣地防御と野戦築城。今まで僕らが積み重ねてきたすべての技術が投入された、乾坤一擲の一手。
国別チャットに、久しぶりの歓声があがった。
※異世界情勢マップ画像は「ROGM情勢マップ」にて作成したものをRoPG管理人様よりご許可をいただいて掲載しています。
Post a Comment