10月に入ると、僕らは王国の主力対人層である『南東連合』との対決を検討し始めた。
今期、共和国の領土を大きく削ってきたのはこの『南東』グループの存在が大きく、僕らは今まで彼らをなるべく刺激しないように戦ってきた。しかし、もはや教国と王国の間の緩衝地帯に、『南東連合』以外の突出キャンプはない。他のキャンプはすべて僕らが焼き尽くしてしまったからだ。
今期の仕様では、守りに入ったら不利な戦いを強いられる。いずれ『南東』とは決着をつけなければならない。
しかし、殴ると決めたのなら徹底的に、一気呵成にやっつけなければ。覚悟もなく中途半端に戦端を開けば、痛い目を見ることになりかねない。やるならば、『南東』を異世界からたたき出すくらいの攻め方をしなければ。
それまで、数人の攻撃隊がバラバラに動いていた僕らは、足並みを揃えるために、10月6日の攻撃開始を見送った。見送った理由は、単にスケジュールが合いそうにないというごく消極的なものだ。
ぬるい判断は、容易に僕ら自身に牙を剥く。おそらく僕らは、この日初めて戦略的なミスをした。
翌7日の日曜日、教国の領土全体に青と黄色の「塗り」が縦横無尽に走り、僕らのキャンプは次々に『南東連合』の攻撃隊に襲われた。攻撃隊のキャンプのみを集中的に狙う、完全な奇襲だった。中には共和国の攻撃隊に襲われるキャンプもあった。僕らは、王国と共和国の攻撃隊が連携しているという事実に驚愕した。
「まさか」という思いだった。
このゲームでは、敵対国同士でも連絡を取り合うことを禁止していない。実現可能かどうかはともかくとして、三ヶ国で談合することも理論的には可能だ。だが、現実には二国間同盟というものは不可能だと思っていた。
このゲームは一見陣取りゲームに見えるが、最終的にはラストダンジョン「アッシュ・パレス」のボス撃破によって勝敗が決まる。そして、ボスのHPは「運営のさじ加減」で調整されてしまうのだ。
この「さじ加減」について、僕らは異世界支配率が関係するかも知れないという予測を立てていた。僕らの予測が正しければ、現状で最も有利なのは「国内の士気が高く、かつ異世界支配率の少ない」共和国なのである。事実、前期異世界支配率で僕らとドングリの背比べを演じていた共和国のラスボスHPは、教国とほぼ同じくらいだった。一方で、支配率ダントツの王国はラスボスHPもダントツだった。
共和国から見れば、現在の状況を動かす理由はあまりない。問題は国内の士気だけであり、わざわざ王国と協定を結んで士気を下げるようなことをしなくても良いはずだ。むしろ王国の士気が回復して困るのは共和国である。だから、この同盟は共和国側にメリットがない。
だからといって、敵もそう考えるとは限らない。戦争とは、そういうものである。
見事に先手を打たれ、僕らが『南東連合』に対してやろうとしていたことを、僕らはそっくりそのまま実行された。ACCAの攻撃隊は完全にマークされていて、異世界からたたき出されるまでそれほど時間はかからなかった。
※異世界情勢マップ画像は「ROGM情勢マップ」にて作成したものをRoPG管理人様よりご許可をいただいて掲載しています。
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