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ROGM回顧録11 戦場の黒い霧事件

 勝った勝ったと浮かれてばかりもいられない。
 この頃の教国にはひとつ、頭を悩ませる問題があった。

 異世界中央、教国キャンプ群の南端に王国のキャンプが建ってしまったのだ。当然のように攻撃隊が組織されたが、ここで不思議なことが起こった。
 攻撃指示したキャラクターが、いつの間にか元の地点に戻っているのである。正確には、着弾の瞬間、攻撃指示などなかったかのように、移動開始した地点に戻される。当然、戦闘処理は行われない。
 何かのバグだろうか、と何度か攻撃を繰り返していると、今度はキャラクターが戦闘不能、兵士0の状態で帰還させられる。戦闘結果も表示されないとあって、いささか薄気味悪い心持ちになったものである。いったい、この異世界の霧の向こうにはどんな魔物が潜んでいるというのか。

 結論から言えば、これはバグないしはゲーム・プログラムの仕様によるものだった。ひとつのキャンプに数十人のキャラクターが駐屯している時に攻撃すると、戦闘処理プログラムが途中で中断されて戦闘がなかったことになる。
 おそらくは戦闘処理プログラムに何らかの時間制限があり、キャラクター・データとの照合に時間がかかりすぎるとタイムアウトされるのだろうと思われた。

 実際、この現象はアクティブ人数が多い(と思われる)夜間に多く発生し、昼間やメンテナンス中の攻撃では発生しにくいと噂されていた。余談だが、着弾時間を対処されにくいサーバー・メンテナンス直前や最中に合わせる「メンテアタック」は実際に何度か実行され、戦果を挙げている。

 後に、駐屯しているキャラクターが増えれば増えるほど処理が重くなり、限界を超えると発生する現象であることから、この現象は「ブラックホール(BH)化」と呼ばれることになる。
 先の王国キャンプでは、全体チャットで大々的に防衛キャラクターを募集したとの報告が某掲示板にあり、BH化がなくても落とすのは困難であることが予想された。

 しかし、だからといってそのままにしておけば、このキャンプを踏み台に近隣の教国キャンプが攻撃されかねない。
 僕らはやむなくそのキャンプを「完全包囲」した。すなわち、隣接するすべてのセルに防衛隊を置き、王国キャンプにこれ以上の援軍が入って来れないようにしたのである。

 異世界では例を見ない「完全包囲下での長期戦」がこうして始まった。

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