10月の終わりには、教国は異世界マップ上にあるキャンプの数で共和国に抜かれ、最下位に転落した。この頃、ACCAのチャットも様変わりしていた。
かつての主力攻撃隊がリアルの事情で戦列を離れるなど、ただですら薄い対人層がさらに手薄になっており、国別チャットで防衛の意識の高いプレーヤーに片っ端から声をかけてACCAに引き入れた。
国別チャットは連日連夜、悲痛な損害報告で埋まり、いかに狂信者の国といえども士気の低下は避けられなかった。愚痴を言う者も増え、某掲示板には僕らを名指しで戦犯と扱う書き込みもあった。
ACCAメンバーを増員したところで、急に攻撃隊の数が増えるわけでもない。カウンター攻撃を仕掛ける人数が揃わなければ、結局の所二ヶ国同盟の攻撃の手を止めさせることはできない。
僕らは手詰まりに陥っていたかに見えた。
ACCAのある中心的なプレーヤーから、「まるひけいかくしょ」(*1)が回ってきたのはこの頃である。万が一の漏洩を避けるため、Google Docを使ったこの計画書はACCAのごく一部にしか知らされなかった。
それは、ROGMのゲーム・ルールを根底から覆す、前代未聞の秘密作戦だった。決まれば確かにこの苦境を逆転できる「一手」だが、リスクも大きい。敵に感づかれれば妨害は比較的容易であり、失敗すれば二度と通用しないと思われた。
僕らはこの「まるひけいかく」にすべてを賭けた。その日から、すべてのリソースをつぎ込んだ準備が始まった。
ある日、同盟チャットで「教国の主力対人層は今後の戦いに何か方針を持っているのか?」という主旨の質問をされた時、僕はこう答えた。
「我々は骨の髄までゲーマーなので、対人戦に勝つ、というよりはゲームに勝つ方向で動いています」
この発言はその後しばらく、某掲示板に話題を提供したようである。おそらく、誰もが教国の敗北を信じて疑っていなかった。僕ら以外は。
*1 ゲーマーの常であるが、「作戦名(コードネーム)ヴィオロンの溜息」とか名付けるセンスは僕らにはない。
※異世界情勢マップ画像は「ROGM情勢マップ」にて作成したものをRoPG管理人様よりご許可をいただいて掲載しています。
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