※今回は長くなるので、である調で書いています。
メタリックガーディアンRPGが発売されて2か月ほどが経った。
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%B3RPG-%E8%97%A4%E7%94%B0%E5%8F%B2%E4%BA%BA-F-E-A-R/dp/4829177225
そろそろ、多くの人がプレイしてみた感想が固まってくる頃だと思う。 幸いなことに、僕も何度かプレイする機会に恵まれて、楽しく遊ばせてもらった。
さて、プレイをした感想としてよく耳にするものがある。それは、 「サンプルキャラクターの天雷の狙撃手が弱い」 というものだ。
データを見る限りでは、他のサンプルキャラクターに比べて、極端に弱いようには思えない。
にもかかわらず、なぜこのサンプルは弱いという印象を与えるのか。
この疑問の奥には、実はTRPGにおける役割分担の重要性と、そして『メタリックガーディアンRPG』の挑戦的なアプローチがかかわっているのである。
▼なぜ弱いと感じるのか
なぜプレイヤーは「天雷の狙撃手」を弱いと感じてしまうのか。理由は2つ、考えられる。
1つは、彼(と、ここでは書かせてもらう)が、実際に他のキャラクターに比べて弱い、という可能性だ。
『メタリックガーディアン』のように特技を取得していくゲームでは、取得した特技が意味をなさない場合、プレイヤーは「他の特技を取ってればもっと強いのに」と感じる。
たとえば、「天雷の狙撃手」の場合は、《スナイパー》があまり意味をなさないことが多い。
たしかに、《スナイパー》は多様な状況(たとえば、敵が長距離にいる場合)に対処するための特技なので、そうでない状況では働きにくい。
しかし、様々な戦場で遊ぶようになれば、より強みを発揮することになるだろう。
また、9つある特技のうち一つが機能しなかったからといって、それほど「弱い」と感じるだろうか?
どうやら、「天雷の狙撃手」が弱いと感じる理由は、《スナイパー》のせいではなさそうだ。
もうひとつ考えられるのは、プレイヤーがやりたいと思ったことを完全にこなせるようになっていない、ということだ。
TRPGは、役割演技のゲームと言われる。 そうすると、自分に求められている役割を演じられない時、プレイヤーは『自分が役目を果たせていない』、ひいては『キャラクターが弱い』と感じてしまうのだ。
天雷の狙撃手にはどんな役割が求められているのか。そもそも『メタリックガーディアン』にはどんな役割があるのか?
それを語る前に、まずは典型的な「役割」について語ってみよう。
▼典型的な役割分担
古典的なTRPGにおける役割は、「魔法使い、盗賊、神官、戦士」であると乱暴に定義しよう。
というのも、ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ4版は、この役割分担を再定義し、「制御」、「撃破」、「指揮」、「防衛」として定義しなおしている。
プレイヤーズ・ハンドブックによれば、これらは以下のような役割を持っている。
・制御:多数の敵にまとめて対処する、敵の妨害をする。
・撃破:単体の目標に対し、瞬時に大ダメージを与える。
・指揮:仲間を支援し、癒す。
・防衛:前衛を担当し、仲間を守る。
『天下繚乱RPG』はこれと同じように基本クラスを定義していることからも分かるとおり、古典的、かつベーシックな役割分担であると言える。
▼役割を三つにする
一方で、日本国内にはプレイヤーの人数が少なくても遊びやすくするために、役割を3つにする、という需要があるように思える。
役割が3つであるルールはスタンダートRPGを歌う『アルシャードセイヴァーRPG』に代表され、『メタリックガーディアンRPG』もそのひとつだ。
そこで問題になるのは、D&Dの「制御」、「撃破」、「指揮」、「防衛」をどのように減らすか、ということである。
『アルシャードセイヴァーRPG』の場合は、攻撃を行うクラスを2つ(アタッカー、キャスター)、指揮を行うクラスを1つ(エンチャンター)にし、アタッカーには防衛、キャスターには制御に近い役割を持たせる、という方法を採っている。
『ビーストバインドトリニティ』はディフェンダー=防衛、サポーター=指揮とし、同じ「攻撃を行う役割」である撃破と制御をアタッカーに兼ねさせるという方法だ。
▼余談:盗賊=撃破役?
「盗賊が撃破役になった」というと、違和感を覚える人も少なくないだろう。
もともと、盗賊は先頭においては戦士ほどの存在感を持ってはいなかった。 その代わりに、聞き耳を立てたり、罠を解除したり、忍び足をしたり……と、戦闘以外の部分に役割を持たせていたのである。
しかし、それでは最も盛り上がる場面である戦闘で、盗賊のプレイヤーが活躍しづらいということから、徐々に戦闘における役割が与えられてきたというように思える。
この「盗賊に戦闘以外の部分に役割を持たせる」という方法は、現在でも『ソード・ワールド2.0』などにおいて採用されている。
この典型例は、戦闘も含めてそれぞれの役割が活躍する場面自体を切り分けた『迷宮キングダム』だろう。
▼メタリックガーディアンの役割分担
話を戻して、『メタリックガーディアンRPG』における役割分担がどのようなものかを考えてみよう。
このゲームにおいての役割は、リンケージクラスというクラスによって決まる。
それぞれのリンケージクラスの自動取得特技を見ると、ストライカーには「撃破」、コンダクターには「防衛」が割り振られているように思える。
だが、コンダクターの特技である《スウィープブラスト》はモブ(数の多い雑魚)に対してのダメージを増大させるものであり、単純に「防衛」だけを役割としているわけではないようだ。
▼スイーパーの役割は何か?
「天雷の狙撃手」のクラスであるスイーパーには自動取得特技がないため、「スイーパーなら誰でもできること」が存在しない。
そこで、レベル1で取得できる特技を分析して、どのような役割が含まれているのかを分析してみた。
スイーパーの特技は、大きく3種類の方向性に分けることができる。
1,妨害を行うもの:《アブストラクション》、《プリヴェント》、《ブロウビート》
2,仲間を助けるもの:《インターセプト》、《シンクロアタック》、《レリーズ》
3,自分の攻撃を強化するもの:《エイミング》《マルチロック》
スイーパーの特技の中では、攻撃の対象を拡大する《マルチロック》が目立つため、このクラスの役割は「制御」に近いものだと考えてしまいがちだ。
しかし分類してみると、スイーパーの仕事は制御だけではないことが分かる。
妨害に加え、支援もあるということは、このクラスは制御と指揮を兼ねたものなのだろうか?
▼同じように分析してみると
では、スイーパーと同じリンケージクラスであるストライカーとコンダクターにはどんな役割があるだろうか。
同じように、レベル1で取得できる特技を分類してみよう。
・ストライカー
ダメージを与えるためのもの:《パニッシャー》《アタックブースター》《覚醒する力》《戦鬼咆吼》《フィニッシュブロウ》《ヘビーストライク》《連環撃》も命中のために使うものなのでこの分類に含めていいだろう。
この中でも、《戦鬼咆吼》《フィニッシュブロウ》《ヘビーストライク》は遠隔攻撃や射撃攻撃では使用できず、白兵攻撃のみに使える。
(修正:《戦鬼咆吼》はエラッタによって、白兵攻撃以外にも適用されるものになっていました)
そのため、前衛に出るための移動を行う《アサルトチャージ》が重要になってくる。
ストライカーの役割は、前衛に出て敵に大ダメージを与える、というもののようだ。
・コンダクター
防御のためのもの:《カバーアシスト》、《攻撃誘導》、《ジェネレイトバリア》
仲間を助けるもの:《アドヴァイス》、《アタックアシスト》、《イグニッションブレイブ》《クイックリペア》《チェイスアタック》《リトライ》
そして、浮いているのが《スウィープブラスト》だ。これはモブに対するダメージを増大させる特技で、ストライカーの《パニッシャー》とは対照的な能力である。
▼メタリックガーディアンの戦闘
『メタリックガーディアンRPG』においてストライカーの役割は、最も強い敵=《BOSS属性》の持ち主を攻撃し、撃破することだと言える。
が、先に述べたとおり、ストライカーは基本的に白兵攻撃を行うクラスだ。となると、BOSS以外の敵キャラクターは、すべて「ストライカーがBOSSに接近することを邪魔する存在だ」と言える。
スイーパーに《マルチロック》と《エイミング》、コンダクターに《スウィープブラスト》が設定されてるのは、「BOSS以外の敵を倒すため」と言えないだろうか。
『メタリックガーディアンRPG』は、ロボットによる戦闘を行うゲームである。そこで、支援に徹するキャラクターはあまり似合わない。
だから、コンダクターとスイーパーは、両方とも攻撃ができるクラスであり、さらにそれぞれ得意としている敵が違うのである。
▼スイーパーの役割とは
改めて、スイーパーに与えられた役割とは何だろうか。
《マルチロック》があるため、D&Dにおける「制御」の役割が与えられているというのは早合点だ。
むしろ、注目すべきは《エイミング》である。スイーパーの解説文によれば、スイーパーには、ストライカーよりも高い命中値が設定されている。
そのため、スイーパーは「ストライカーの攻撃が命中しない敵」に対処できる能力が与えられていると言える。
これは、「ヴィクラマ高機動型」などのエネミーと対面したことがあるプレイヤーには、身にしみていることではないだろうか。
▼天雷の狙撃手の性能
改めて結論しよう。スイーパーに求められる役割は、「敵を倒すこと」にある。
だがその対象は、「制御役」に求められるような、「数が多くて弱い敵」ではない。むしろ、ロボットものでは定番の「動きが速くて捉えるのが難しい敵」である。
その観点で、『天雷の狙撃手』を見直してみよう。
彼の命中値と砲撃値は10と8だが、実際に攻撃を行う時は、《エイミング》と《砲撃姿勢》で1412/12まで増大する。
(修正:《砲撃姿勢》は射撃攻撃には無効という指摘を受けて数値を直しました。ご指摘感謝!)
カバリエの特性によってクリティカル値も下がっているため、出目によってはまさに狙撃手、といえるような必中の攻撃が繰り出される。
また、回避能力の高い敵に対する切り札ともいえる《ヘイムダル》の存在により、撃ち漏らしの確率は非常に低い。
数の多い敵ではなく、「動きが速い敵」を倒すことに着目すれば、最高級の性能を持っているとすら言えるだろう。
▼弱さの理由
「天雷の狙撃手」が弱く感じる理由は、プレイヤーの求める役割とのギャップにあるといえる。
《マルチロック》を見たプレイヤーは、彼に「制御役」=モブを倒す役割としての活躍を期待する。
しかし、本当の役割はむしろヴィクラマ高機動型などの回避能力の高い敵を倒すことにあるため、モブに対処していると「あれ、あんまり雑魚を倒す能力が強くない?」と感じてしまうのである。
『メタリックガーディアンRPG』は、PCの役割に対して、古典的な役割分担とは違ったアプローチをしている。
そのルールデザインと、プレイヤーの意識の差が、「天雷の狙撃手」の印象を大きく左右し、「弱い」と感じさせてしまったのではないだろうか。
射程距離の問題も弱いと認識される理由の一つかも。
狙撃手は射程8というべらぼうな射程をもちながら、最短射程は4.
サブの射撃武器は射程2のため、射程3が空くのです。
これは、『PLにスナイパーをやらせたい』という意識のあまり生じた事故かもしれません・・・
以上、天雷の狙撃手を使った感想でした。
敵が近づきすぎた場合は移動後のビームライフルで対応するのがいいんでしょうが……
ただ、一度接近されてしまうとスナイパーライフルの射程に復帰するのは難しそうですね。
はじめまして。
重箱の隅をつつくようで申し訳ありませんが、《砲撃姿勢》は砲撃にしか効果がないので命中値と砲撃値は12/12ですよ。
天雷の狙撃手が弱いと言われるのには「先手を取れない」があるのではないでしょうか。
天雷の狙撃手の行動値は9ですが、おそらく最もPCに倒されたであろうザコ・ヴィクラマの行動値は17という異常な値でした(ヴィクラマ高機動型が16なのに!)。
もちろんこれはエラッタが入りましたが、イメージというのは第一印象で大きく左右されてしまいます。
結果、天雷の狙撃手はザコ相手に距離を詰められ、狙撃できずにちまちまダメージを与えるしかない=弱い、というイメージが固まってしまったのではないでしょうか。
また、ぱっと見ると役割がかぶっているように見える炎の女帝と比べ、砲撃値やダメージで大きく劣るのも原因かもしれません。
せめて第三の加護がバルドルでなくネルガルだったらここまで言われなかったと思います。
以上、天雷の狙撃手、炎の女帝の両方を使った感想でした。
はじめまして。コメントありがとうございます。
行動値の問題はたしかにありますね。
ザコに先手を取られて、先に砲撃で制圧できないというのは大きな痛手ですよね。
場合によっては、近くのザコはコンダクターに任せて、別の敵を狙う、というのも有効なんですが、実際のプレイではなかなかそういう思い切った攻撃はできませんよね。
ダメージについても、クリティカルが出れば/《ヘイムダル》が使えればダメージロール自体は炎の女帝に劣らないのですが、なかなかうまく出目は出てくれませんね。
やはりコンダクターと一緒に取得した方が……というのは、言わない約束で!