【TRPG】【ログ・ホライズンTRPG】『LHZ』で版権キャラを遊ぶ

前回の記事では、「ログホラTRPG」の設定が、説明を省き、ゲームに参加する際の負担を大きく軽減する、ということについて書いた。
さて、今回はもう少し具体的な、かつ一般性の低い話をしていく。

なぜわざわざそんな話をするのかというと、長年僕が考えてきた疑問に、同作が一種の回答を出しているように思えるからだ。

疑問というのは、ずばり「TRPGで原作のあるキャラを遊ぶのはいけないことなのか?」ということだ。
(注:『ログ・ホライズンTRPG』の話になるまでにかなりの量の前起きがあります)

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TRPGは様々なキャラクターを再現することができるルールが多いため、特定のキャラを再現して遊ぶことは難しくない。
たとえば手足が伸びる海賊だとか、月に変わってオシオキする美少女戦士だとか、そういうキャラを作るのは簡単だ。
でも、「麦わらのルフィ」や「セーラームーン」そのものをPCにしてTRPGに参加するのって、すごくハードルが高いとは思わないだろうか?

 

メタリックガーディアンとストライクガンダム

以前『メタリックガーディアンRPG』を遊ぶ時、プレイヤーのひとりがこんなことを言った。
「ストライクガンダムに乗りたい」
GMは彼に聞き返しました。
「それは、ストライクガンダムのようなガーディアンで遊びたいということ?
(注:ガーディアンというのは、同作においてPCたちが乗り込むロボットのこと)
彼は答えた。
「いえ、僕の乗っている期待がストライクガンダムそのものということにしたいんです」

この事件は僕を大いに驚かせた。
『メタリックガーディアンRPG』の舞台は地球によく似た惑星であり、地球ではない。
よって、「ガンダム」というロボットは存在しないし、おそらくガンダムという単語もないだろう。

『メタリックガーディアン』の世界設定、ルール設定にしたがってストライクガンダムを再現することは難しくない。
でも、『メタリックガーディアン』の世界にオーブやヘロポリスコロニーはないし、『フェイズシフト装甲』もない。
(似たようなものはあるが、「そのもの」ではない)
それを遊ぶということはすなわち、これから遊ぼうとしているTRPGの世界の外から設定を持ち込んでくる、ということに他ならない。

「いやいや、単にガンダムに乗りたいだけで、そこまで深く考えてないでしょ?」と思われるかもしれない。
たしかに、その彼もわざわざ『メタリックガーディアン』の世界の枠を崩して遊びたいわけではなかった。ただ純粋に、自分がストライクガンダムに乗ってみたかっただけだ。
念のために言っておくが、その時も特に変なプレイをしたというわけでもなく、普通に『メタリックガーディアン』を遊ぶことができた。

 

ソード・ワールドとレゴラス

僕はどちらかというと考えすぎる気性なので、このプレイが終わった後、いろいろ考えてしった。
なぜTRPGでは版権キャラクターを持ち込んで遊ぶべきではない、と考えられているのか?
たとえば、ソード・ワールドでエルフのレンジャーを作って、「レゴラス」という名前をつけることはできる。
でも、一緒に遊ぶプレイヤーからは微妙な反応をされるだろうし、おそらく本物の……『指輪物語』で冒険をした……レゴラスとしては扱ってもらえないと思う。

そうとは限らないんじゃないか? という反論もあるだろう。
たしかに、ルールはソード・ワールドでも、世界設定を中つ国に変えて、「指輪物語」を再現して遊ぶゲームなら。他のプレイヤーがフロドやアラゴルンをプレイしているなら、レゴラスがいてもフシギじゃない。いや、むしろいるべきだ。
ということは、「ソード・ワールドでレゴラスをやってはいけない」というわけではない。
「ソード・ワールドの世界でレゴラスをやってはいけない」のだ。
その場に居る全員が、「今遊んでいるのは指輪物語の世界だ」と納得できるなら、レゴラスは卓上で大いに活躍できるのだ。

 

アルシャードセイヴァーと巴マミ

議論を進めよう。
ということは、版権キャラクターを遊ぶことによって生じる問題は、このように説明できる。
「そのキャラクターが登場することによって、他のプレイヤーと世界が共有できなくなる」

たとえば、『アルシャードセイヴァー』の世界に巴マミがいたら大変だ。
まず、巴マミが魔法少女であるためには『魔法少女まどか☆マギカ』の莫大な設定が必要になる。いくらアルシャードでも、それだけの設定を抱えこむと、ちょっと世界観が変わってしまう。
つまり、『アルシャードセイヴァーとまどかマギカを足した世界」として遊ぶしかない。
PCたちは奈落と戦わなければならない上に、魔女が巻き起こす騒動にも無関係ではいられないだろう。

逆に、マミさんだってアルシャードの影響を受けずにはいられない。
アルシャードの神々の力があれば彼女の運命を変えることもできるし、ほかのキャラとの(たとえば、まどかや杏子との)関係も影響を受けざるを得ない。
生い立ちや人間関係をアルシャードに合わせてしまったら、果たしてそれは再現したかった巴マミであるといえるだろうか。

巴マミが巴マミのままアルシャードを遊ぼうと思ったら、アルシャードもマミさんも、そのままでは遊べない。
加えて言えば、そこで描かれる物語はもうアルシャードそのものとは言えない。アルシャードにマミさんを加えたものだ。マミさんはアルシャードで遊ぶためのキャラクターではないのだから、必然的にそうなる。
鴨鍋にアンコウまで入っているようなものだ。マミさんがアンコウであるという意味ではない。
(あるいは、マミさんをまどかマギカの宇宙から切り離し、アルシャードの宇宙にやってきたという設定にするしかない……たぶん、こっちのほうが簡単だ)
(というか、最初のほうに書いたように、マミさんのような設定や外見を持ったキャクターをアルシャードの世界設定で用意するなら、もっと楽だ)

版権キャラはたいてい、そのキャラがそのキャラであるための背景設定やエピソードをたくさん抱えている。
その設定やエピソードを保ったままシナリオに参加されると、はっきり言ってシナリオの中に収まり切らなくなってしまうのだ。場合によっては、世界設定の中にすら収まらない。
そのキャラクターが「本物である」とするのならば、背景となる世界も、そして周囲のキャラクターも、「本物」にならなければならないのだ。
少なくとも、参加者の間で「今日はダブルクロスでまどかマギカを遊びます」というような約束がなければ、本物のマミさんを遊ぶことは難しい。

 

ログ・ホライズンTRPGで版権キャラを遊ぶ

さて、ここでようやく本題に入る。
発想を転換してみよう。
「全てが原作そのままの世界」でなければ版権キャラが遊べないのであれば、「最初から全員偽物だと分かっている世界」ならどうだろう?
そう、ログ・ホライズンTRPGの世界設定は、そのようにできている。

つまり、PCである〈冒険者〉は、舞台となる世界セルデシアに生まれ育った「本物」ではない。
前回の記事で書いたように、彼らそのものが世界の外からやってきた存在だ。つまり、彼らは最初から世界の枠を壊している。
加えて、仮にある〈冒険者〉が「オッス、オラ悟空!」と言ったとしよう。
おそらく、全てのプレイヤーが「ああ、ドラゴンボールの孫悟空になりきって遊んでいるんだな」と思うだろう。

ということは、君はこのように宣言して遊ぶことができる。
「私が演じている『ログ・ホライズン』のプレイヤーは新撰組の大ファンで、沖田総司になりきって遊んでいるんです。だから、普段の言動も沖田総司そのものなんです!」
最初から「本物」ではなく、「本物によく似たもの」として遊んでしまえばいいのだ。
全員が本物だと理解していれば遊べるのと同じで、全員が偽物だと分かっているなら、誰もそれを咎めたりはしない。

役者が演じているのと同じようなものだ。
誰も阿部寛を古代ローマ人だとは思っていないが、そういう設定の映画を楽しむことはできる。
通常のゲームは、世界の中に直接PCがいるから、他のプレイヤーの視点から「そういうものだ」と思うことは難しい。
でも、ログ・ホライズンTRPGの設定(キャラクターにはプレイヤーがいる)なら、他のプレイヤーから見ても「プレイヤーがキャラを演じることを楽しんでいる」と見ることができるかもしれない。

 

注意書き

なお、本記事は版権キャラになりきって遊ぶこともできるといっているだけで、「私のキャラは岸部露伴だから、モンスターと戦いになんかいきません!」とかいう類の悪質なプレイを推奨しているわけではない。
世界設定が版権キャラすら受け入れる幅を持っているというだけであって、遊ぶ際にはきちんとGMや他のプレイヤーから許可をとって、楽しく遊びましょう。

4 thoughts on “【TRPG】【ログ・ホライズンTRPG】『LHZ』で版権キャラを遊ぶ

  1. ソードワールドでレゴラスを再現するのと
    ログホライズンでこのキャラ再現したキャラですって設定のキャラ
    どっちも元のキャラじゃないんだからなんか違うように感じる・・・
    うまく言葉にできない

    • それによって世界が破壊されるかどうかってところに着目して論じたかった。
      わかりにくかったらすみません

  2. 版権のキャラクターをやるのは、そのPCがゲームの世界観に合わせたプロフィールを構築しているならば、問題ないと僕は思ってます。

    つまりは、PLが勝手に独自世界観を混ぜ込むのが問題なわけです。

    絶対不変なゴールデンルールとしてルールブックにある世界観を踏襲した上でのキャラクターであるならば、それはもはや版権ではなく二次創作と言えるのではないでしょうか。

    逆に、二次創作としてPCを作った場合、TRPG初心者にとってはこの上なく楽なRPが出来ると思います。なぜなら、元ネタである版権キャラクターがいるわけですから、RPの細部はそのキャラクターをモチーフにすればいいわけです。クイックスタートなどのルールブックに既に構築されているPCなどは、ステータスこそ決定されているものの、性格や行動指針などは全くないのです。まぁそれを考えるのがTRPGの醍醐味なんですが……。

    誰しもがオリジナルの人物を作り、性格・経歴・細かな言葉使い・行動指針・信念・トラウマなどなどを簡単に創作できるわけではないので、「RPの見本がある」というのは初心者の手助けになると思います。
    卓を重ねていく上でPCの独自性は勝手に生まれていくわけですから、その結果次第でオリジナルPCと言えるものに変貌することもあるかもしれません。
    長々と失礼しました。

    • イチからキャラを作るのって、やっぱり慣れてないと大変なんですよね。
      そのまんまやるのではなく、上手に要素を抜き出してキャラを作る方法というのをそのうち書きたいなあと考えています。

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