『ログ・ホライズンTRPG』は、プレイヤーキャラクターに特殊な設定がなされている。 同作のプレイヤーキャラクターは「MMORPGの世界に迷い込み、〈冒険者〉となったプレイヤー」である。
プレイヤーがキャラクター。なんだか混乱しそうだ。
混乱しそうだが、別にどんなプレイヤーを演じるのかを詳細に決めなくても、遊ぶことはできる。
とりあえず、「MMOのプレイヤーである」という共通認識をみんなが持つことが重要なのだ。
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さて、一見してロールプレイがややこしくなりそうなこの設定だが、実はクッションとして大きな働きをしてくれる。
すなわち、説明の手間を大きく減らし、遊ぶための負担を引き受けてくれるのだ。
説明を減らす
従来のTRPGでは、はじめて遊ぶにあたって、
・この世界がどんな世界か
・PCがどんな立場か
・どういったパワーソースを持ち、どんなことができるのか
こう言ったことをGMや他の参加者から聞き、
・そのPCはどんな生まれか
・どんな風に生きて来たか
・どういう目的で冒険をするのか
と、いうようなことを設定する必要があった。
それは、プレイヤーがその作品の世界に入門し、その世界で遊ぶために必要な儀式だ。
だが、ログ・ホライズンTRPGでは、
「あなたたちはMMOの世界に取り込まれたプレイヤーです」
という一言だけで、説明を大きく短縮することができる。
どんな事件があったか、今の世界の状況はどうかということは、実際にプレイを始めてから説明しても問題ない。
どうせ説明されるんなら同じじゃないかと思われるかもしれない。
しかし、キャラを作る前に説明を受けるのと、とりあえず自分のキャラのポジションが定まってから聞かされるのとでは、存外受け取り方が違うものだ。
もちろん、PCを作ってから聞く方が気が楽だ。なにせ、聞き流したっていい。
(よくはないけど、必要なことだから覚えなきゃ! という気構えは必要ないはずだ)
負担を引き受ける
TRPGでPCを演技するにおいて、プレイヤーにはどうしても引き受けなくてはいけない負担がある。
それは、その世界にそのキャラクターを生み出し、役割をまっとうする、という負担だ。
それはたとえば、PCの背景設定を考えなければならないということだ。
親はどんな人物だったか。どんな環境で育ったか。
なぜ戦士としての道を選んだのか? 武器として剣を選んだのはどうして? エトセトラ、エトセトラ……。
あまり厳密に決める必要はないにしろ、これらの設定を決めるのは、プレイヤーにとって一種の責任だ。
TRPGに参加するということは、GMや他のプレイヤーと同じ世界を共有するということだ。
あまり素っ頓狂な設定や、世界設定から外れたキャラクターはその共有を難しくするおそれがある。
「あなたのPCは粉塵爆発という現象を知らないはずだ!」
……というのは昔よくあった世界観共有の失敗例だが、ここまで極端でないにしても、どこかで世界に対するイメージを妥協し、遊ぶことは少なくない。
ところが。
繰り返しになるが、『ログ・ホライズンTRPG』の舞台はもともとMMOの世界だ。PCはMMOのプレイヤーが作ったキャラクターである。
だから、かなり無茶がきく。
ログ・ホライズンTRPGの舞台〈エルダー・テイル〉はファンタジーの設定だが、別にPCが時代劇オタクであっても構わない。
最新の科学技術に詳しくてもなんら齟齬はないし、小学生が冒険してたっておかしくない。
なんなら、PCに背景設定なんかなくたっていい。
「とにかくMMOに取り込まれたプレイヤーとして、冒険をする」という部分さえ共有していれば、他の参加者と世界観が共有できているのだ。
キャラクターはもちろん、(MMOの)プレイヤーの設定を詳細に決める必要はないのである。
「キャラクターにプレイヤーがいる」という設定は、自分のPCと世界、そして他の参加者との擦り合わせをするというプレイヤーの負担を、大きく軽減しているといえる。
こだわり派へ
どんなバックボーンがあってキャラクターがその世界に生きているのかということに大きなこだわりを持つプレイヤーもいる(僕もそのケがある)が、その楽しみが奪われる、というわけでもない。
単にゲームの中で集まって仲間になった、とするのがイヤなら、どんな冒険を一緒にしてきたのかを考える余地は大いにある。
ファンタジー世界に実際に生きていたPCでも、MMORPGのプレイヤーでも、バックボーンを作り込むことができるのは同じである。
2014/05/15追記:続きの記事を書きました。