このゲームは異世界マップ上で四角の「セル」を取り合う陣取り合戦である。具体的な勝利条件はまた別にあるのだが、サービス開始当初は明かされず、僕らは漠然と「陣取りゲームである」という認識でいた。
実は僕は子供の頃からこの「陣取り」というのが苦手で、今でも囲碁などは上達する見込みがないくらい惨憺たる有様である。カルカソンヌなどのボードゲームでも仲間内では連戦連敗を続けている。
それはともかく、初めて遊ぶタイプのゲームということで右も左も分からない中、僕は全体チャットでラノベ談義をして友人にあきれられたりしながら黙々とキャンプを建てていた。「何ごとも試してみよう」ということで、最初に声をかけられた同盟にも所属した。
同盟というのはプレーヤー同士が組むグループのことで、資源にボーナスが付く、同盟専用のチャットが使えるなどのメリットがある。僕が所属していたのは救世主伝説的なネーミングの同盟で、盟主曰く積極的に発言している人に手当たり次第に声をかけた、ということらしい。
明らかに資源ボーナスが目的の同盟ではあったが、ノルマや強制といった規則は一切なく、出入り自由というネーミングにふさわしからぬ牧歌的な同盟であり、僕にはたいへん居心地が良かった。
ゲームは「キャンプ」と呼ばれる拠点を軸に展開する。各プレーヤーは一定個数のキャンプを持ち、そこに施設を建て、資源を集め、兵士を育成する。兵士を移動したり戦闘したりするためにはリーダーとなるキャラクターが必要で、このキャラクターはプレーヤーにつき5人までしか同時に操作できない。
キャラクターの中からひとりを選んでプレーヤーの「副官」とすることができ、その主な役割はブラウザ画面の1/3程度を占有してプレーヤーに愛想を振りまくことである。アチャ子可愛いよアチャ子。
異世界にキャンプを建設すると、その周囲の資源地セルから自動的に資源を獲得できる。加えて、キャンプ自体に生産施設を建設することでより生産率が向上する。キャンプの施設は「いかに兵士を効率よく生産できるか」に繋がっていく。
羊鯖のオープンから1ヶ月が経つ頃、教国の人口は王国の1/3以下に留まり、異世界マップの大半は王国キャンプの勢力下に置かれていた。教国の異世界支配率は10%を切る時すらあり、僕らは明らかに人数差による「力負け」に追い込まれようとしていた。
危機感を抱いた有志により、ゲーム外にパス付のチャットルームが設けられ、ある事情から僕もそこに呼ばれることになった。
そこは、僕が未だ経験したことのない異世界だった。
勝利するために集う、真の「ゲーマー」の世界がそこにあった。
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