ごく当然の結果として、守備隊は全滅した。
最初の先遣隊こそ蹴散らしたものの、共和国軍の主力一個大隊(約3千人)の突撃を受け、指揮官であるキャラクターが戦闘不能。その指揮下にある兵士はまだ多少残ってはいたが、指揮官が戦闘不能の間は戦闘にも参加できない。俗に「抱え落ち」と呼ばれる状態にあった。ほぼ最高レベルだった結界も3レベルまで低下したところに、後続の敵魔導士部隊が突き刺さる。
だが、紙一重というところでキャンプの耐久力が持ちこたえた。
キャンプの耐久力を少しでも上昇させるため、完成した日からずっと聖職者を配備していたのが功を奏したのだった。ただ、その代償として聖職者隊はひとり残らず戦場の露と消えた。のちの検証で聖職者にはキャンプへのダメージを吸収する効果もあると分かり、文字通り彼らは身体を張ってキャンプを守ったのだった。
この時被攻撃表示は6まで増えていたが、第二波までは若干の時間的余裕があった。見るからに敗色濃厚ではあったが、未だキャンプが残っている以上、味方への撤退指示もできない。できることはすべてやろうと思い決め、有料の建築時間短縮チケットをつぎ込んで結界を10まで修復する。それ以上は資源が尽きて修復できなかった。
味方の援軍や支援物資がようやく到着し始めていた。だが、キャンプに援軍や物資が届くと自動的にブラウザが更新され、数秒間操作不能になる。何かのダイアログが出ていてもキャンセルされてしまい、チャットの入力欄もクリアされてしまう。これが連続して起こるとキャンプの操作自体が難しくなる。
幸いACCAのチャットは別のブラウザで立ち上げているので、ゲーム画面を操作できなくてもACCAへの報告はできる。そこで僕はキャンプの操作を諦め、ACCAへの状況報告に専念した。全体への要請や告知はACCAの他のメンバーが請け負ってくれた。
この直後に、共和国側の偵察と思われる攻撃が着弾。援軍が集まりつつある、ということは共和国側も当然想定している訳で、とどめの魔導士部隊を送り込む前の強行偵察と考えられた。
僕らにとって幸いなことに、この部隊は偵察としては規模が小さすぎた。戦力に大きく差がある場合、詳細なレポートはキャンプの所有者にしか届かず、攻撃側には防衛側の情報が表示されない(大きな戦力差があって敗北したことだけが表示される)。
死体は情報を持ち帰らないのだ。
この戦闘では援軍と結界の効果で辛くも攻撃力の2倍の防御力を達成し、防衛戦力の隠蔽に成功。すると、この日初めて被攻撃の表示が減った。こちらの戦力が不明なため、攻撃を諦めた部隊が出て来たのだ。
絶望的と思われた防衛戦に、僅かな光明が見えた一瞬だった。
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