11月下旬、何度目かの話し合いの後、計画の前倒しが決定された。理由は、国内の士気低下が著しく、引退者が出ているらしい、という観測からだった。
「休止はいい、引退は困る」
僕らは最終的な勝利のためにあらゆる努力を積み重ねてきたが、このゲームでは最後に非対人層の協力が得られるかどうかが勝敗の鍵を握る。対人戦から手を引いて休止するのは構わないが、シーズンの最後には戻ってきてもらわねばならない。そのためにはどうしても「旗印」が必要だった。
11月30日、“Dデイ”。
王国勢力圏内へ3本の「塗り」が走る。いずれも90%カットの高速塗りである。その内一本は教国が目指す南西ラスダンをかすめるように動いていく。残りの2つは王国の踏みを誘発するためのフェイクだ。
10日がかり、ACCAの主力十数人を動員するROGM史上最大の作戦が今始まったのだ。
これから4日間、僕らは断続的に王国勢力圏を塗り続け、合計9個のキャンプの予約を入れることになる。
「南西ラスダンに9個のキャンプを同時に作る」
それがこの前代未聞の計画の骨子だった。9個のキャンプを、寸分の狂いもなく建設する。キャンプの完成時間はすべて12月9日正午に合わせられた。
残念ながら僕は予定が合わない可能性があったため、リザーブに回っていた(*1)。誰かが何らかの理由でキャンプの予約に失敗した時、直ちに代わりに予約をいれるために待機するのだ。
ただし、もし一箇所でも王国の妨害予約が入っていたら、作戦失敗と判断し速やかに撤退することが事前に決まっていた。爆弾を背負った決死隊を送り出すような気持ちで、祈りを込めて時を待つ。
ひとり、またひとりと予約成功の報を聞く。
12月3日早朝、最後の席が埋まる。作戦の第一段階は成功した。
後に分かったことだが、この頃、王国内部でも南西ラスダンに妨害キャンプをつくって固めてはどうか、という提案はあったようだが、今期の仕様では維持が難しいということで先送りになったらしい。
二カ国同盟による逆襲以後、後手に回っていた僕らだが、今度こそは先んじた。
*1 正確に言うと、日曜の予定をキャンセルするかどうか迷っているうちに9人分席が埋まってしまい、必然的に補欠に回った。個人的には情けないエピソードだが、それだけACCAの「やる気」が高かったとも言える。
※異世界情勢マップ画像は「ROGM情勢マップ」にて作成したものをRoPG管理人様よりご許可をいただいて掲載しています。
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