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ROGM回顧録45 望郷

 戦いは終わった。

 アミストル・サーバーに「勝利国、アルナベルツ」の文字が刻まれ、国別チャットに万歳の声が鳴り響いた。

「教皇様万歳!」
「教皇たん万歳!」
「教皇聖下万歳!」

 それぞれの呼び方で、教皇聖下を称え、互いの健闘を称える声が続く。
 共和国との差はわずか2時間と推定された。ほんの数人、攻略に積極的なプレーヤーがいれば変わっていたであろう僅差で、予測通りに23時までかかっていたら負けていた。
 本当に、最後は教国プレーヤー全員が勝ちに行ったからこその勝利であった。

 勝てた理由を挙げれば切りがない。単なる偶然かもしれない。二カ国同盟が逆に王国や共和国の士気を下げてしまったのかもしれない。異世界から放逐されたことが、教国を勝利に向かわせたのかも知れない。あるいは、サービス終了が告知されたことも影響しているかも知れない。事前告知なしでコイン購入が停止されなければ、どうなっていたか。
 自分のプレーを振り返って見れば、反省するべき事は多い。結局、僕はこうしたゲームにおいては素人も同然であって、予測のひとつひとつがヌルかった。もっと突き詰めて考え、果敢なプレーをしていれば違う展開があり得たかもしれない。
 もし次があれば、今度こそは。

 だが、それは永遠に叶わない夢だ。

 名残を惜しむだけの時間をおいて、役目を終えたアマテラスは指令爆破された。
 そして、僕らが異世界の地を離れる時が来た。最後にもう一度みんなで万歳を叫んで、ブラウザを閉じた。

 最強の敵を相手に、最高のプレーをして、勝利した。
 いちゲーマーとしてこれ以上の名誉はない。これ以上ない良い仲間に恵まれたと思う。そして、これ以上ない良い敵に恵まれたと思う。この戦いのことはほとんど記録に残っていない。だが、僕らの心にはずっと残り続けるだろう。

 ただ勝利するために集った仲間たちと、共に駆け抜けた日々のことを。

**

 ――今でも午前四時にふと目を覚ますことがある。
 ブラウザを立ち上げて、もう行くことのできない場所に思いを馳せる。

 あの頃、確かに僕は、異世界にいた。

ROGM回顧録 了

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