カール・フォン・クラウゼヴィッツの『戦争論』に曰く、「打撃力は兵力と速度の二乗に比例する」とある。
教国の勝因をひとつ挙げるなら、移動速度増加スキルを活用するプレーヤーが多かった、という点だろうか。高速魔導士隊の働きを見て「これは使える」と判断したプレーヤーが、普段の兵員輸送や色塗りにも使うようになり、結果として作戦行動全体の速度が向上していた。
ゲーム終盤ともなると、最高90%カットに達した高速魔導士隊の速度に合わせるため、攻撃隊すらも移動速度増加スキルを使うようになっていた。
象徴的なエピソードがある。“一夜城”が健在だった頃、共和国のキャンプ破壊活動中に、共和国の攻撃隊が一夜城に向かって進軍して来たことがある。一夜城のキャンプ主はこの時攻撃隊として参加していたが、移動速度増加スキルを発動してすぐにとって返し、攻撃隊を迎撃、これを全滅させた。
あまつさえ、この時表示された敵攻撃隊のキャラクター名から出撃元キャンプを割り出し、このキャンプを強襲して予備兵力を殲滅してしまったのだ。相手よりも移動距離が短い「内線の利」があったとは言え、鮮やかすぎるクロスカウンターに「この人だけは敵に回したくない」と戦慄を覚えたものである。
移動速度はラスダン攻略にも貢献している。ダンジョンの攻略では、派遣元となるキャンプからラスダンまでの距離が移動時間となる(*1)。移動速度増加スキルにより、対人層は他のプレーヤーよりも手早く攻略を終えることができ、その分消耗した兵力の回復や、他国の妨害に時間を使うことができたのだ。
また、他国の妨害でラスダン隣接セルを塗られてしまった時も、すぐに復旧することができた。
しかしもちろん、教国の勝利はこうした対人層の活躍だけでもたらされたものではない。他国よりも早くラスボスのHPを削るためには、「教皇様万歳!」のかけ声とともに(あるいは黙々と)攻略隊を派遣してくれた、非対人層の活躍を忘れてはならない。彼らは最後まで、国全体の士気を落とすことなく、僕らの作戦に協力し、時には地雷や防衛に参加してくれた。
教国はゲーム開始から終了まで、教皇聖下の名の下に一致団結し、そして勝利したのである。
次のゲームに向けたサーバー・クローズの日、僕らは再び教国の旗の下に集うことを誓ってタブを閉じた。
『ROGM回顧録』第一部 了
*1 通常のダンジョンではキャンプからダンジョンまでの距離が移動時間になるが、ラスダン攻略ではこの時間が1/10になる。それでもラスダンまではかなり距離があるので、移動速度増加なしに1日10回の派遣を終えるのは結構厳しい。
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