600kの攻撃を当てても、相手の防御が1Mクラスだと、戦闘結果に敵の総防御力は表示されない。
この場合、僕らは敵キャラクターを戦闘不能にできているかどうかが判別できない。勝ち目があるのかどうか分からないまま、攻撃を続行するかどうかの判断を迫られることになる。
だが、しかし。
兵士は損害比率に従って減る。雑兵と言えども、100名の兵士を全滅させるには15倍以上の戦力が必要だ。
それならば、死体の数を数えることで、敵の戦力をある程度の幅で推定することができるではないか。
2月18日、午前7時。
僕らは「要塞」を完全に包囲した。要塞の周辺セルには教国中から有志を募って地雷を埋める。そのひとつひとつが数百kの防衛力を持つ、「踏めば即死」の対人地雷である。
さらに、教国最精鋭の攻撃隊3個師団と僕を含む魔導士隊2個連隊が配置につく。
そして最後に、通常の攻防戦では用いられない弓兵一個連隊が配置され、即刻突撃を敢行した。彼らは純粋に、「死んで情報を持ち帰る」ためだけに組織された、僕らの切り札だった。
彼らの攻撃力は100kちょうどになるように調整されていた。彼らが0.5%以上残れば、僕らの勝ちがほぼ確定する。0.4%以下なら即、作戦中止と事前に決めてあった。そして、彼らは予定通りに散った。
「敵総防御力は1.0ないし1.2Mと認む」
教国最強の重装騎兵隊が、要塞の脇腹に穴を穿つ。要塞内部は大混乱に陥った。
スキルの発動しない世界で唯一、確率を変動させる「混乱発生」の装備効果が教国に僅差の勝利をもたらした。当然のごとく防衛隊は壊滅。その後約2時間の戦闘を経て、要塞は陥落した。
終わってみれば、教国の圧勝であった。
要塞攻略戦で戦力の疲弊した隙を突かれ、“一夜城”を失陥するという一幕はあったものの、これ以降、共和国は中央ラスダン周辺において組織的抵抗力を失う。北部にあったコロニーは掃討され、教国の勢力下に置かれた。
「これで共和国との勝負づけは済んだ」
そんな空気がACCAに流れ、僕らは王国との戦いにシフトしていった。その2ヶ月後に、第一期最後の波乱が幕を開けた。
2012年4月18日、ラストダンジョン「アッシュ・パレス」実装。
Post a Comment