アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(6)

アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(6)

●近代化改装  軍艦、特に大型艦の寿命はそこそこ長い。  戦争がなかったら、10年20年は普通に現役だし、長いのになると30年40年と改装を続けながら海に出ることもある。  21世紀の現代でも、アメリカ海軍のニミッツ級空母は50年の運用を前提に建造と改修が行われており、一番艦の〈ニミッツ〉が1975年に就役し、今も現役である。  このへんは、お金の問題もある。艦これのプレイヤー提督なら同意するだろうが、苦労して手に入れた艦があっさり寿退役して、「提督さん、お世話に なりました。私、これからカレと幸せになります」と旅だってしまわれては、「相手の男(艦?)を殺してやる!」と叫びたくもなるだろう。艦娘には、永遠に 手元にいて欲しいと願ってしまうのが父親……じゃなくて、海軍側の事情というものだ。  しかし、そうは言っても時代が移ろえば、必要とされる機能も変わってくる。艦娘にいつまでも綺麗でいてもらうためには、ファッション(装備)は新しいものに切り替えなくてはいけない。  艦これでは、戦艦を改装すると、砲塔が新しくなったり、水上偵察機が新型になったりする。砲塔はともかく、なぜ偵察機、と思われるかもしれない。実は、太平洋戦争が始まる前まで、将来の戦艦には航空機の支援が必須、と考えられていたのだ。  それは、戦艦の主砲の性能がアップし、砲戦距離が昔の1万mくらいから3万m以上にぐん、と伸びたことが背景にある。大砲の弾は遠くに届いたとしても、 じゃあ、それが命中するのか? という問題が生じたのだ。何せ、遠くまで届くということは、発射してから命中するまでの滞空時間もかかる。発射して1分く らいして相手に届くのだから、こりゃ、狙って撃っても当たらないんじゃないか? と考えられたのだ。  そこで、少しでも命中率を上げるために考えられたのが、偵察機を艦隊の上空に飛ばし、砲撃の観測をさせようというものだった。戦艦の多くに水上偵察機が搭載されたのも、最初は遠くの敵を発見するというよりは、砲撃戦の観測用であったわけだ。  そのあたりも反映してだろうか。艦これでは、水上偵察機を搭載することで、偵察能力だけでなく、命中率が向上している。  実際には、敵味方の戦艦が悠長に観測機を飛ばして砲撃を照準しつつ殴り合う白昼堂々の艦隊決戦など太平洋戦争では発生せず、夜中に近距離で殴り合う暗闇 デスマッチとか、はるか彼方から空母艦載機だけが波状攻撃して戦艦が海の藻屑になる戦艦にとってミスマッチな戦いばかりがWW2の太平洋の戦いでは発生し ている。  良い戦術とは、相手に実力を発揮させないことである。WW2の戦艦は砲撃戦に特化した優秀な軍艦だったが、それゆえに、まともな砲撃戦をさせてもらえなかったのだ。 ●期間限定海域「警戒線突破」成功!……だが、「湾内突入」で攻勢頓挫  さて、地味にレベル上げと日々の任務を達成しながら、第2、第3艦隊に遠征任務をこなさせて、物資を貯めていくことしばし。  物資の備蓄が石油も弾薬も鉄も3000を超え、ボーキサイトにいたっては8000オーバーとなった。あまり危険な任務に空母を投入しないので、艦載機の 損耗が低く抑えられているのである。史実の日本海軍は、空母艦載機部隊を地上に配置して航空優勢をかけては、消耗するという悪循環に陥ったが、その愚はお かさない。  いよいよ物資が貯まったので、期間限定海域「警戒線突破」への攻勢を開始する。  我が第1艦隊の陣容は以下の通り。  旗艦:空母〈赤城〉改 零戦52型×20、零戦21型×10、彗星艦爆×20、97式艦攻×32   軽空母〈祥鳳〉改 零戦52型×18、彗星艦爆×12、97式艦攻×12、応急修理女神  戦艦〈霧島〉改 41cm連装砲、35.6cm連装砲、15.5cm三連装副砲、零式水上偵察機×3  重巡洋艦〈足柄〉改 20.3cm連装砲、12.7cm連装高角砲、61cm四連装魚雷、零式水上偵察機×2  重巡洋艦〈羽黒〉 20.3cm連装砲、61cm四連装魚雷、零式水上偵察機×2  軽巡洋艦〈名取〉改 20.3cm連装砲、61cm四連装(酸素)魚雷、21号対空電探  空母2隻を中心とする高速艦隊である。  ……あれ〈名取〉? お前さん、そのレーダーどうした? 〈名取〉「あ、〈五十鈴〉ちゃんから奪……貸してもらいました」  ……うん、分かった。ほどほどにしとけよ?  「警戒線突破」マップでは、途中で巡洋艦中心の前衛艦隊と、潜水艦隊2つと激突するが、潜水艦については諦めることとして・・・よし、出発! ===ドッグの裏にて 〈五十鈴〉「もがー、もがもがー」 〈隼鷹〉「わ、〈五十鈴〉どないしたんや。お前、対潜水艦用に期間限定海域行くんやなかったんか?」 〈五十鈴〉「もががーっ!」 〈隼鷹〉「あー、なんか分かったわ。分かりたくないこととか、全部」 ===  しかし、ここで〈名取〉が大活躍をする。必殺の酸素魚雷による雷装99のパラメタが夜戦で炸裂したのだ。敵のエリート戦艦にバックスタブで忍び寄り、クリティカルヒットを連発する。ここぞというところで頼りになるヤンデレである。  もちろん、無傷とはいかないが、20個以上貯めておいた緊急修理バケツをざぶざぶ使って、攻勢を繰り返す。そして思っていたよりは簡単に、マップ「警戒線」突破はクリアすることができた。レアアイテムの46cm三連装砲も獲得である。  続いて、少し時間を置いて「湾内突入」マップである。  航空戦艦中心の陣容ということで、艦隊を再編成して〈扶桑〉〈山城〉姉妹に頑張ってもらう。  旗艦:空母〈赤城〉改 零戦52型×20、零戦21型×10、彗星艦爆×20、97式艦攻×32   航空戦艦〈扶桑〉46cm三連装砲、35.6cm連装砲、21号対空電探、瑞雲偵察機×10  航空戦艦〈山城〉35.6cm連装砲×2、21号対空電探、瑞雲偵察機×10  戦艦〈霧島〉改41cm連装砲、35.6cm連装砲、15.5cm三連装副砲、零式水上偵察機×3  軽空母〈祥鳳〉改 零戦52型×18、彗星艦爆×12、97式艦攻×12、応急修理女神  軽巡洋艦〈五十鈴〉改 20.3cm連装砲、12.7cm連装高角砲、61cm四連装(酸素)魚雷  航空戦艦といっても、瑞雲偵察機を除けば搭載しているのは主砲と電探である。  ……あれ、今度は〈五十鈴〉なのか? 〈五十鈴〉「ま、〈名取〉センパイには謝ってもらいましたし。引っぱたきましたけど」 [...]

By |2014-04-22T13:21:06+09:006月 1st, 2013|Categories: アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌|Tags: |アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(6) はコメントを受け付けていません

アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(5)

●主力艦配備状況 少しずつ、主力艦がそろってきた。 〈名取〉「……」 ・戦艦 〈扶桑〉※航空戦艦に改造 〈山城〉 〈伊勢〉※航空戦艦に改造 〈霧島〉※改造済み  〈扶桑〉と〈山城〉は姉妹艦、つまり基本設計が同じ艦である。 姉妹艦は、性能が近いため、艦隊を組ませて行動するのに適している。 いつも一緒の仲の良い姉妹というわけだが、妹が心配でたまらない〈扶桑〉さんは、我が艦隊に〈山城〉がいない頃から「〈山城〉大丈夫?」などと空中に向 かって語りかけていて、たいへん怖かった。  少々苦労したが〈山城〉を獲得できたことは、提督である私にも、他の艦娘にとっても、精神の安定に良いことで あった。 〈伊勢〉は〈扶桑〉〈山城〉の発展改良型である。〈扶桑〉さんが、ああみえて〈伊勢〉型戦艦にライバル心旺盛なため、バランスを取るため〈扶桑〉さん優先でレベルアップや、装備の改良は進めている。  〈霧島〉は高速戦艦だ。眼鏡さんで、いかにも頭が良くてドジばっかりしてそうである。機動力が高いので、小型艦や空母を引率させて出撃させることが多い。装甲が若干弱かったが、改良型になってこちらも十分になってきた。今後の同型艦の登場が期待される。 戦艦は一度出撃させると燃料も弾薬もしこたま消費するため、ここぞという作戦以外では、港に浮かべてある。史実でも〈大和〉が、南太平洋で激戦が続く間 も、なかなか停泊地から動かないので〈大和ホテル〉と揶揄されていたが、こうして提督の側に立つと動かせなかった気持ちがよくわかるというものだ。 〈名取〉「……」 ・正規空母 〈赤城〉※改造済み  正規空母は、現時点で〈赤城〉1艦のみ。正規空母はたいへん強力なのだが、どうしても空母の特質上、攻撃に脆い。おかげで資源がどんどんなくなる。  …… ひょっとしたら、〈赤城〉さんだけで、他の空母ならここまで資源は食わないのかもしれないが、何にしても今は〈赤城〉さんを養うので手一杯である。ツイッ ターをながめたところ、他の艦隊でも腹ぺこキャラが板についているようだ。強いけど、燃費が悪い。fateのセイバーさんポジションか。 〈名取〉「……」 ・軽空母 〈祥鳳〉※改造済み 〈隼鷹〉※改造済み 〈飛鷹〉 〈鳳翔〉 〈龍驤〉  我が艦隊の実質的な主力が、この軽空母艦隊である。陣容もそれなり。特に〈祥鳳〉と〈隼鷹〉は出撃回数が多いせいで、レベルも上がり改装を施して流星爆撃機や、零戦52型などの新型機を搭載している。 燃料や弾薬の消費は正規空母よりも低い上、戦闘力はほぼ互角。敵に空母がなければ、搭載機の少なさもそれほど気にならない。 ただし、レベルが上がると、損傷の修理には時間がかかるようになる。ちょっとした修理に1時間とか2時間とかの時間が必要なので、こまめに任務をこなして修理用資材(バケツ)の備蓄が必要となってくる。  あと、主力艦以外として〈川内〉がついに参入。〈川内〉型そろい踏みで第3艦隊が運用できるようになった。これで、遠征艦隊が2つになる。 第2艦隊は、固定で海上護衛任務を回し続け、第3艦隊はそのときの資源備蓄に応じて、タンカー護衛や、資源輸送、鼠輸送などを実施している。地道に経験点も入るので、レベルの低い駆逐艦の育成にも使っている。 〈名取〉「……」  ところで〈名取〉。『巨人の星』のお姉ちゃんのように物陰からじっと見るのやめてくれないかな。 〈名取〉「……」  えーと。駆逐艦、食べる? 〈名取〉「いりません。これ以上駆逐艦を食べても、雷撃能力限界値なので上がりませんから」  ああ、そういえばもう、雷装が99(酸素魚雷込み)まで上がってたっけ。 当たればでかいんだよなぁ……当たれば。 〈名取〉「どうせ、私は外してばっかりのダメな子です」  いやいや、艦隊決戦では使わせてもらうって。 〈名取〉「そう言って、こないだだって〈五十鈴〉ちゃんを連れてったじゃないですか。騙されません」  ああ、あれはほら。〈五十鈴〉が成長したらレーダーが手に入るとか聞いて…… 〈名取〉「そうですよね。私なんか、成長しても代わり映えのしない酸素魚雷が手に入るくらいですし。もうお役に立てませんよね」  むむむ。 〈名取〉「いいんです、私。どうせ旧式艦ですし。でも、時々は、若い子の引率、任せてくださいね?」  ああ、はい。分かりました。 というわけで、しばらくは軽巡洋艦や駆逐艦など水雷戦部隊の育成に励んでみたい。 レーダーも手に入れたいし。

By |2014-04-22T13:14:38+09:006月 1st, 2013|Categories: アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌|Tags: |アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(5) はコメントを受け付けていません

アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(4)

●潜水艦との戦い 戦艦〈扶桑〉と空母〈赤城〉が登場し、いよいよ陣営も整ってきた我が艦隊。 ここは、もう一度期間限定の『敵泊地に突入せよ』マップに挑戦してみよう。 最初に挑戦した時には、途中で潜水艦にぼこぼこにされたあげく、ボス戦で水上機母艦〈千代田〉と駆逐艦〈吹雪〉が轟沈した死のマップである。 この潜水艦というのは、実にやっかいな軍艦である。 艦これでの敵潜水艦は、海面から腕がにょろーんと伸びた、まるで妖怪“船幽霊”ぽいイメージの敵だ。怪談話では、夜の海で船に乗っていると、海から“船幽霊”が現れて「ひしゃくー、ひしゃくを寄こせー」と言ってくるのだが、うっかり供養のつもりでひしゃくを渡すと、船の中に水を汲まれて船が沈むのである。 艦隊これくしょんの敵が、沈んだ船の怨念が原型であるならば、潜水艦型の敵とはまさに、この“船幽霊”に他ならない。海に潜って姿を消せるあたりも“船幽霊”っぽい。 潜水艦は、海に潜ることができる軍艦だ。初期の潜水艦は、空気や動力の関係から、長時間の潜水が難しかった。海の上であれば空気(酸素)がふんだんにあるので、石炭や石油を燃やして、その力で動くことができる。しかし、海の中では、石炭や石油を燃焼させる空気がない。そこでWW2頃の潜水艦は、潜った後は電池を使った。海の上では石油を燃やして動き、そのついでに電池も充電し、敵と戦闘となれば海に潜って電池で動くのだ。ずっと潜りっぱなしはできないので、初期の潜水艦は『可潜艦』とも呼ばれる。 水上艦同士の戦いで効果を発揮する大砲や魚雷は、海の中にいる潜水艦には無効である。そこで、対潜水艦用の爆弾、いわゆる爆雷が必要とされる。 艦娘の中で爆雷を装備しているのは、軽巡洋艦と駆逐艦だ。特に軽巡洋艦の〈五十鈴〉と〈由良〉は対潜能力が40もあり、潜水艦が登場するマップでは心強い。 航空機からの爆撃も、浮上航行中か浅い深度で航行中の潜水艦相手には有効である。あと、横隊にするとダメージが増える。最初、いつものように単縦陣でつっこんで、ダメージが1点とか2点とかしか通らなかった時には、泣きそうになった。 艦これの時代の後、潜水艦はさらなる進化を遂げる。原子力動力の原子力潜水艦が誕生したのである。燃料を燃やさず核分裂反応からエネルギーを引き出す原子力は、酸素を必要としない。長時間の潜行と水中での高速発揮が可能であるため、対処がとてもやっかいな敵だ。また、潜水艦の持つ見つかりにくさを利用して、冷戦時代には多くの原子力潜水艦が、潜水艦発射型の核ミサイルを搭載して海に潜んだ。 もし、核戦争が奇襲的に発生して片方の勢力が火の海になったとしても、核ミサイルを搭載した原子力潜水艦が海の中で生き残っていれば、それで反撃を行うことができる。核ミサイルをつきつけあった相互確証破壊とは「ワシが負ける時には、お前も道連れじゃ」という実に覚悟完了した戦略である。そのへん、21世紀はだいぶ理性的な時代になったと言える。 理性的な時代の遊びが可愛らしい女の子を軍艦にしちゃう艦隊これくしょんというゲームなのはどうかと思われるむきもあるだろうが、大丈夫。そのうち、イギリス海軍とかが参戦してくれて、こちらはきっと可愛いらしい男の子を軍艦にしてくれてバランスを取ってくれるに違いない。インド出身のマハラジャーな男の子とか、グルカ兵っぽい男の子とか、メイド服で女装した男の子が! 根拠はないが、21世紀は理性の時代だから!●敵の補給艦をたたけ 『敵泊地に突入せよ』マップに突入を開始して数日が経過した。 ようやっとマップ1『前哨戦』をクリアしたが、そこで弾や油が尽きてしまう。 敵にエリート艦が存在していて、味方に相応の損害が出るので、再び2個しかないドッグの前には、損傷した艦娘による長蛇の列ができている。 少し目先を変えて、『南西諸島海域』のバシー島沖へと向かう。 この海域には、敵に補給艦が出てくる。補給艦を対象とした任務もあり、これを実行して資源を手に入れようという魂胆だ。 だが、これは残念ながら失敗に終わった。 補給艦は攻撃はしてこないが、意外と沈めにくい。また、このあたりのマップともなると、敵にエリート艦がちらほら見えるようになって、手痛い反撃も受ける。今の我が艦隊では、任務を達成して手に入る資源より、修理などで出ていく資源の方が多いのだ。 補給は、軍がその戦力を維持するために必須の存在である。特に燃料と弾薬の重要性は、艦これを遊んでいるプレイヤーには言わずもがなのことであろう。 加えて、日本やイギリスのような海洋国家の場合は、戦略物資の輸送を担う輸送艦が途切れることなく海を渡ってくれないことには、経済が壊死してしまう。 補給艦や輸送船を守るためには、補給艦や輸送船にとっての脅威を排除すればよい。 かつて商船にとっての最大の敵は、巡洋艦、フリゲートだった。そして巡洋艦、フリゲートを駆除する一番の方法が、その根拠地となる港を叩くことであった。 日露戦争以前は、敵の根拠地となる港を封鎖・占領することが海軍の作戦行動の多くを占めていた。日露戦争の旅順軍港の戦いは、その代表例である。 しかし、第一次世界大戦の頃になると、敵の港を直接封鎖するのは機雷などの兵器の発達で危険が大きくなり(日露戦争の時点でも、封鎖中だった日本軍の戦艦2隻が相次いで機雷で失われている)戦艦を含む主力艦隊は、敵艦隊の出撃に合わせてこちらも出撃する、という風になってきた。 かわりに、活躍するようになったのが、潜水艦と、通商破壊用の商船改造型巡洋艦、いわゆる特設巡洋艦である。これらの船は、潜水して、あるいは商船に擬装してこっそりと敵の警戒網をぬけて外洋に出、敵の商船を狙ったのである。 第二次世界大戦では、これに航空機と、航空機や潜水艦がばらまく機雷が含まれるようになる。日本海軍はそうでなくとも補給路を維持するための商船の数が足りていなかったが、戦いが激しくなるにつれ、潜水艦と航空機の攻撃によって、いよいよ致命的に物資不足へと追い込まれることになる。 なお、補給艦というのは数があればいいというものではなく、ガダルカナル島の戦いでは、夜の闇に乗じて補給艦や駆逐艦に搭載した物資を島に届けるまではできても、海岸にごろごろ並べるまでが精一杯で、そこから内陸に輸送する手段がなく、昼間になってから空襲で焼かれたりしたそうである。港湾施設の重要性がよくわかるエピソードだ。

By |2014-04-22T13:10:48+09:005月 30th, 2013|Categories: アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌|Tags: |アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(4) はコメントを受け付けていません

アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(3)

●超ド級戦艦〈扶桑〉参戦 戦艦という言葉の響きには、魅惑的なものがある。 しかし、艦娘の元となった、第二次世界大戦で戦った「装甲が厚くて甲板の上に砲塔が乗っかっていて、でっかい」という戦艦は、軍艦の歴史の中では、それほど新しいものではなかったりする。 そもそも、全体が装甲に覆われた軍艦というものは、ナポレオンの頃には存在せず、その後のリンカーン大統領の南北戦争の頃になって、ようやくそれっぽいのが出てくるほどなのだ。 第二次世界大戦の頃は、現代的な戦艦というのは、まだ100年とたっていない新しい艦種だったのである。 そして、新しいがゆえに、進化も早い。 日露戦争の日本海海戦で戦艦が大活躍した翌年の1906年に進水した戦艦ドレッドノートも進化を加速した戦艦のひとつである。 効率的な砲戦能力と、有利な砲戦に必要な位置取り能力とを備え、従来型のあらゆる戦艦を時代遅れにしたとされるドレッドノートの登場で、戦艦は、「ドレッドノート前」と「ドレッドノート後」に分けられたのである。 ドレッドノートより古い設計の戦艦が、前ド級戦艦。 ドレッドノートと同じ設計の戦艦が、ド級戦艦。 そして、ドレッドノートより一段階進化した戦艦が、超ド級戦艦である。 超ド級戦艦よりもさらに一段階進化した戦艦を超々ド級戦艦と呼称することもあるが、ここまでくると訳が分からなくなるので、艦これ的にはド級と超ド級だけ押さえておけば良いだろう。 我が艦隊に配属された〈扶桑〉は、日本で建造された最初の超ド級戦艦である。 特徴はやはり、火力と防御力である。戦艦の進化は彼女以後も急ピッチで進むため、史実の彼女は鈍足で使い勝手が悪い戦艦となったが、艦これでは違う。 何しろ、艦これで提督(プレイヤー)が一番恐れるのは、自らが手塩にかけた艦娘が沈むことである。たとえ旧式であろうが、戦艦の装甲と耐久力は、提督(プレイヤー)にとってたいへん心強い。 さっそく扶桑は第1艦隊に配属され、敵の攻撃を引きつける盾役として大活躍するのである。「それって、損害担当艦ということですよね」 いや、そうだけど。そういう台詞をにこにこと笑いながら言わないでくれるかな〈名取・改〉!「だぶった駆逐艦娘(1レベル)、食べさせてくれたら黙っておいてあげます」 キミすでに装甲が40、雷装も60あるよね! ついつい食べさせちゃう(近代化改装すること)、俺も俺だけど!「そんなこといいから、撃っていい? ねえ、撃っていいよね? ねっ、ねっ」 いいから落ち着け〈足柄〉。あんたはパトレイバーの太田か。なんでそんなに残念系美人なんだ。●空母〈赤城〉登場! そして大破! 「敵空母を撃沈せよ!」というミッションが出現した。 すでに、敵空母は何隻も沈めており、今さらなんだろうと思ってかる~く実行してみると、空母〈赤城〉が手に入った。 今まで空母を手に入れようとして大量に消費した資源は、いったいなんだったんだ、と呆れるほどにあっさりと。 第二次世界大戦で、海の主力となった空母。21世紀の現代では航空機の航続距離が伸びたおかげで、かつてほどの神通力はなくなったが、今も空母を持つことを、一等海軍のステータスとする風潮は根強い。 なぜ空母は強いか。それは砲撃や魚雷に対する圧倒的なアウトレンジ能力である。 戦艦の砲撃戦の射程は、せいぜいが30km。30km向こうに大砲の弾を届かせることを考えると、それでもすごいものだが、相手も戦艦がいれば、それは互いに撃たれることが前提となる距離だ。 だが、空母は違う。空母の間合いは搭載した航空機の航続距離だ。艦これではおなじみの九九式艦上爆撃機の行動半径は500kmである。一度、敵の空母に発見されてしまえば、この500kmから30kmまでの間は、空母艦載機に殴られほうだいになってしまうのである。悪天候や夜の闇に乗じるにしても、そうそう詰められる間合いではない。太平洋戦争の戦いが、空母中心になったのは、このためだ。 だから、この時代の海戦は、敵味方に空母があれば、狙うのはまず敵の空母となる。空母がいなくなった敵は、一方的に空襲されるのがいやなら、逃げるしかなくなるからだ。 もちろん、史実通りではWEBゲームにならないので、艦これでは、空母はそれほど一方的な存在にはなっていない。一方的な空襲は最初の1回だけで、それが終われば、空母は敵の砲撃の間合いへと入れられてしまう。空襲は可能だが、砲撃の対象ともなるのだ。 それが、どのような影響をもたらすかは〈赤城〉が旗艦となった最初の戦いですぐに明らかになった。 敵巡洋艦の砲撃を受けた〈赤城〉が、いきなりクリティカルで中破の判定を受けたのである。そしてもう一撃。たちまち耐久力のゲージが真っ赤になる。いくらなんでも、呆れるほどの運のなさである。 這々の体で港に戻ってきたが、ここで衝撃の事実が明らかになる。 赤城の修理の見積もりをとったところ、えらい数の資源が必要とされたのだ。 もちろん、そんな資源はない。 地道に艦隊護衛任務をこなしつつ、資源がたまるのを待つ。 そしてようよう、資源がたまった頃。「あの……提督。私の修理、そろそろの予定では?」 すまんな〈赤城〉。〈扶桑〉が魚雷を受けて損傷したので、そっちに資源を回す。「いえ、いいんです。私、その……いつまでも待ってますから」 だが、それから数日。 〈赤城〉はボロボロの姿のまま、ドッグの外に係留され続けたのである。 その間、艦隊の航空戦力の要として大活躍を続けたのが軽空母〈祥鳳〉だった。 最前線で戦い続けるから、あっというまにレベルが上昇。気が付けば〈祥鳳・改〉となっていて、搭載機数も48に上昇。主力は新型の彗星爆撃機である。長く問題であった装甲も40になり〈赤城〉に迫る勢いだ。 後方支援能力という身の丈にあったリーズナブルさというのは、兵器にとって大事だなぁ、とつくづく感じるゲームである。

By |2014-04-22T13:09:05+09:005月 28th, 2013|Categories: アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌|Tags: |アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(3) はコメントを受け付けていません

アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(2)

●遠征任務(わけても海上護衛任務)の重要性について 艦これの面白いところに、後方支援の重要性がある。 かつての太平洋戦争において、日本海軍は序盤でこそハワイで真珠湾したり、南太平洋にまで進出したり、それなりの活躍をみせたが戦争が進むにつれて、精細を欠いていく。 その原因として、ミッドウェー海戦の敗北や、ガダルカナルでの消耗がよくあげられるが、空母が沈んだり、航空機や熟練パイロットが失われたことは、痛くはあっても致命傷ではない。 日本海軍が、ぱっとしなくなった最大の理由は、艦隊や航空部隊を前線に送り出し、彼らに実力を発揮させるための補給や整備を整えるという、後方支援能力の貧弱さにある。 対するアメリカ海軍については、有坂純さんが『歴史群像アーカイブ3』所収の『怒涛の米軍物量戦』で書かれているが、守勢ではなく、攻勢に出た戦争後半における後方支援能力の高さには瞠目すべきものがある。フィリピン侵攻作戦において、アメリカ海軍は第3艦隊に空母8隻、軽空母8隻を編成したが、こいつらが大量に消費する燃料は、タンカーでどんどん後方から送り出された上、給油艦34隻、護衛空母11隻などでなる海上兵站戦務群が洋上給油ステーションとなって前線近くまで進出し、腹を空かせた空母に燃料を供給し続けたのである。 このあたりの、「無駄になってもいいから、大量の物資を途切れることなく送り出し続ける」アメリカ軍の兵站センスはたいしたものである。同時に、このセンスは、いらなくなった物資をどんどら捨てたり爆破して処分したりして平然とできる人や組織でなくては、なかなか身に付くまいとも思う。対して日本的な美意識はやはりカンバン方式に代表される、無駄を削ぎ落として効率を追求するところにあるように思う。 閑話休題。艦これに話を戻す。 艦これでも、艦隊が充実してくると兵站がネックになってくる。出撃して損傷した艦艇が、ドックに順番待ちの長い列を作り、資源がなくなったので、出撃できない艦隊が暇そうに港でちゃぷちゃぷ水遊びをしている風景は、艦これを遊んでいる人であればおなじみであろう。 もちろん、WEBゲームであるからには課金をすることで足りない資源を何とかする手はある。ドッグも、課金して数を増やすことが可能だ。このあたりの感覚も、史実っぽさが出ていて、なかなかに面白い。 しかし、多くの場合、兵站を支えるのは遠征(おつかい)任務である。中でも海上護衛任務は、そこそこの難易度・時間で、燃料200&弾薬200を補給してくれるので、艦隊の生命線となっている。 だが、第1艦隊はこの遠征任務に参加できない。これはなんとも無念な話で、常に物資不足に泣いている我が海軍としては、第1艦隊も海上護衛任務に投入したいのが本音だ。 というか、艦隊決戦とかいらないよね。 検索したところ、遠征任務を担当できる第3艦隊が運用できるようになるのは、川内型軽巡洋艦3隻がそろう任務を達成したら、ということらしい。 〈神通〉と〈那珂〉の2隻は、ちょくちょく出現しているので艦隊にそろえているが、いつまでたっても〈川内〉が登場しない。早くこいー。●南西諸島防衛戦~敵機動部隊を撃滅せよ! 遠征艦隊を海上護衛任務に送り出し、物資をためる。 物資がたまったら出撃し、経験点と艦娘を獲得する。 すでに同じ艦がいる艦娘は、見なかったことにして廃棄処分にし、物資をためる。あ、その魚雷発射管と12.7cm連装砲は剥いておけ。使えるからな。 これを繰り返しているうちに、だんだんと主力艦隊の陣容が整ってきた。 旗艦は我が艦隊初の空母〈祥鳳〉である。戦闘機は相変わらず搭載せず、九九式艦爆と、九七式艦攻が主力である。よく命中させるので常にきらきらモード(高揚状態)にあり、テンションも高い。脆いが、修理にさほど手間がかからない。まことにお手軽な、いわゆるチョロイン枠。 護衛部隊の主力は、これまた我が艦隊初の重巡洋艦〈足柄〉である。〈足柄〉は史実ではイギリス海軍から「飢えた狼」とまで評された艦であり、黙っていれば、すらりとしたプロポーションのモデル体型な美人さん。だが口を開くと「飢えた狼」どころか「血に飢えた狼」になる。いいから落ち着け。美人なのにヒロインになれない枠。 艦隊のまとめ役として重宝するのが、初期から長く旗艦を続けて気が付けばレベル20越えで酸素魚雷搭載艦となった〈名取(改)〉である。〈祥鳳〉の空襲、〈足柄〉の砲撃で撃ちもらした敵艦を、魚雷攻撃や夜襲で、こっそり後ろから忍び寄って刺し殺す。どうみてもヤンデレ枠。 これら頼もしすぎる3隻を中核に、マップ1-4「南西諸島防衛戦」に挑むわけであるが……制空能力が足りない。 マップ1-4「南西諸島防衛戦」をクリアするには、マップボスである敵機動部隊を撃破する必要があるのだが、この艦隊には正規空母が含まれる。 戦闘機を搭載していない〈祥鳳〉では、敵艦隊にたどりつく前に搭載機をばたばた落とされてしまい、戦力が半減してしまうのだ。かといって、空母なしではつらい。 もう1隻、どうしても空母が欲しい。 そんな中で建造されたのが、軽空母〈隼鷹〉である。 同じ軽空母だが、搭載機数は〈祥鳳〉の30機に対して〈隼鷹〉は58機。 また、最初から戦闘機を搭載しているのだが……九六式艦上戦闘機である。ちと古い。 仕方ないので、慣熟航海(レベル上げ)を繰り返しながら装備品を作ってみる。 運良く、さほど失敗を繰り返すことなく零式艦上戦闘機21型、名高き零戦が完成する。ありがとう、庵野監督! こうして軽空母〈祥鳳〉〈隼鷹〉、重巡洋艦〈足柄〉、軽巡洋艦〈名取(改)〉に、「なのです」駆逐艦〈電〉、「ボクっ娘」駆逐艦〈時雨〉を加えた我が第1艦隊は、幾度かマップ1-4「南西諸島防衛戦」に挑み、ついに敵艦隊を退けたのである。 そして登場したのは……なんと戦艦〈扶桑〉であった。 ついに本当の意味での主力艦、超ド級戦艦が我が艦隊に加わったのである。(続く)

By |2014-04-22T13:05:58+09:005月 25th, 2013|Categories: アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌|Tags: |アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(2) はコメントを受け付けていません

アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(1)

ツイッター上で、フォローしている方々がやたらとプレイしている、WEBゲーム『艦隊これくしょん、通称『艦これ』を遊んでみましたので、その日誌を。 ●『艦隊これくしょん』とは? 旧日本海軍の艦艇をコレクションして、その中から6隻を艦隊に編成して出撃させ、敵と戦って戦果をあげていくゲームです。 最初は、駆逐艦などの小型軽量艦艇(弱い)が中心ですが、だんだんと戦艦などの大型艦艇(強い)が使えるようになります。 DMM公式サイトはこちら ●ゲーム開始から~水雷戦隊結成 最初に、駆逐艦〈吹雪〉を手に入れる。 とにかく何をやればいいかは分かるが、何をやれば得になるか、損になるかの判断基準がないので画面上にある『任務』をひとつずつこなしていく。 ・艦隊を編成したり ・艦隊を出撃させたり ・他のプレイヤーの艦隊と演習をしたり ・損傷した艦艇の修理や新造艦の建造をしたり  まず『任務』欄をクリックし、次に実行し、任務を『達成』ボタンを押したら資源や艦がもらえる、という仕組みである。実行してから『任務』をクリックしても、一部をのぞいてダメである。  そうこうしているうちに、軽巡洋艦と駆逐艦の数が増えてくる。  この時期の艦隊編成は、軽巡洋艦〈名取〉を旗艦に+1隻軽巡洋艦、4隻駆逐艦編成であった。旗艦には命中ボーナスでもつくのか、〈名取〉はもうダメだダメだと言うくせに、よく当てる。 しかし、いつまでたっても軽巡洋艦よりも大きな艦艇がやってこない。 これは自分で作るしかないのか、と資源を消費して艦艇を建造してみるが、ことごとく駆逐艦と軽巡洋艦である。どうも、資源を100ずつとか200ずつバランスよくばらまいてはいかんようだ。 そこで鉄と弾薬を300消費して、後はそのままにしたら、駆逐艦だった。 腹いせにその場でスクラップにする。鉄300使って鉄7かよ、ちっ。 ●敵空母出現!  などとやっていると、敵に軽空母がでてきた。 現実の海戦がそうであったように、このゲームでも空を制するものが強い。 海戦の流れは、偵察の後、まず空母機動部隊の空襲からスタートし、その後で砲撃戦(ときどき空襲)があり、締めに魚雷を発射する。遠距離、中距離、近距 離の順番である。魚雷は、駆逐艦や巡洋艦が発射できるが、それまでに中破以上の損害を受けていると、魚雷戦は仕掛けられない。  魚雷戦というのは、位置取りである。現代のミサイルと違い、当時の魚雷は発射するとまっすぐ進むだけなので、ちゃんと良い位置について、しかも距離は肉薄していないと魚雷は当たらない。損傷を受けていれば、速度が落ちたりして位置取りができないのだ。 その後、プレイヤーが望めば夜戦を挑むことができる。夜戦では航空機は使用できない。敵に空母がいれば、ここで一方的に攻撃することも可能だ。 しかし、そうは言っても空母の空襲は先手を取ってくるので痛い。かなり運が作用するが、小型艦であれば一発くらっただけで中破大破はざらであり、こうなれば、魚雷を撃つこともできずに殴られまくることとなる。 敵に空母がでてきたのも痛いが、重巡洋艦が出てきたのも痛い。 軽巡洋艦と重巡洋艦という切り分けは、分類的にはあまり意味のあることではない。ワシントン軍縮条約のからみで、戦艦などの大型艦をほいほい作るわけに はいかなくなったので、ぎりぎり条約に引っかからないサイズの巡洋艦を主力艦として使用しようとしたのが、重巡洋艦である。 重巡洋艦は何とかサイズを押さえようとしたせいで、バランスはちょっと悪くなったが、それでも主力艦を目指しただけあって、砲撃のパンチ力は従来型の巡洋艦、つまり軽巡洋艦よりもでかい。装甲も軽巡洋艦に比べるとあるので、これまたタフだ。 小型艦艇しかないこちらが頼りにできるのは魚雷だけだ。  駆逐艦や軽巡洋艦から砲塔をおろして代わりに廃棄処分にした他の艦の魚雷発射管を山盛り搭 載して出撃させたところ、肉を斬らせて骨を断ったり、骨を斬らせて骨を断つ獅子奮迅の戦いぶりをみせ、勝率はそこそこ上がった。 しかし、鎮守府に帰還してくる艦隊は毎回ボロボロである。修理しようにも、修理ドッグは2カ所しかなく、順番待ちの長い行列ばかりが伸びてくる。とはい え、建造したり戦闘で獲得するのもやはり、小型艦ばかりなので、交代要員はいくらでもいる。〈綾波〉など4番艦までいる。まさに「私が死んでも代わりはい るもの」である。 ●ついに空母建造、その名は〈千代田〉……いや、お前違うだろ!  だが、このやり方は私もストレスがたまるが、艦隊の女の子=艦娘からもえらく不評であった。いい加減に大型艦を導入しろというのである。  とうとう、艦娘を代表して〈名取〉が目に涙を浮かべて抗議してきた。他に大型艦がいないので、ひたすら旗艦として働かせてきたせいでいつの間にか、20 レベルである。頭上に高々と酸素魚雷を持ち上げ、「提督を殺して私も死にます」などと言われては、私としても心を入れ替える他ない。 しょうがないので、空母を導入することにした。鉄と弾薬と燃料を300ずつにして、ボーキサイトを500投入である。ひとまずは軽空母を造って、防空艦にしようと考えたのだ。  そして登場したのは……〈千代田〉である。 いやいや、水上機母艦だろ、お前! 空母じゃないだろ! 装備を調べてみたら、高角砲と水上偵察機が12機である。 確かに、12機というのはそれなりの数であるが、搭載してるのが水上偵察機ではどうしようもない。母艦そのもにも攻撃力はない。これはダメかとがっかりしたが、ひとまず〈名取〉と組んで戦場に送り出してみる。 そしたらこれが、意外な大活躍。いや、大というほどではないが中活躍。 まず、偵察能力が高いので、敵を発見し、命中率、回避率が(心持ち)よくなる。が、この(心持ち)よくなるのが、小型艦艇中心の我が艦隊ではけっこう心 強い。敵の攻撃が当たらなくなってきたのだ。毎回、煙をあげながら無事な味方艦に曳航されてよろばうように港に戻り、しかも、ドッグが埋まってるものだか ら港でボロボロの姿をさらしていた艦娘たちの姿が、どんどん減っていったのだ。  また、砲撃戦での偵察攻撃はどうも特殊攻撃扱いになるようで、時に魚雷命中並のダメージをたたきだす。 いけるいける。これはいける。 調子に乗った私は期間限定イベントマップ『敵泊地に突入せよ』に〈名取〉と〈千代田〉の艦隊を送り出した。 数日後、ボロボロになった艦隊が戻ってきた。 艦娘の顔は一様に暗く、その中に〈千代田〉の姿はなかった。 [...]

By |2017-01-14T18:16:05+09:005月 25th, 2013|Categories: アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌|Tags: |アカガネダイ提督の『艦隊これくしょん』日誌(1) はコメントを受け付けていません

『宇宙戦艦ヤマト2199』のSFネタ解説その2:コスモリバースシステム

 宇宙戦艦ヤマト2199に出てくるギミックや台詞を元に妄想をたくましくしていくSFネタ解説シリーズの2回目。  今回は人類救済のためのコスモリバースシステム、旧作では放射能除去装置コスモクリーナーDについてである。  いったい、あそこまで破壊された地球の環境を復活させるというコスモリバースシステムとは、いかなるものだろうか。  まず考えられるのが、旧作のコスモクリーナーDと同じような機械がイスカンダル星にあって、それを部品の状態でヤマトの中に運び込んで組み立て、地球に帰還すると地球が青い星に戻る、というパターンだ。  このパターンだと、干上がった地球の海が戻り、動物や植物が復活し、しかもそれがごくごく短い時間で成し遂げられるというわけなので、 「ぱんぱかぱーん!世界創造装置ー」 「それはなんだいドラえもん」 「七日間で世界をひとつ創造するという装置さ。もちろん、作られるのは小さな箱庭世界だけど、未来の小学校では夏休みの宿題に、世界創造観察日記というのがあるくらい、よく使われている装置なんだ」 「劇場版じゃあるまいし、それじゃエドモンド・ハミルトンの『フェッセンデンの宇宙』だよ。ロクなオチが待ってないと思うな」 「21世紀ののび太くんは、ノリが悪いなぁ」  という、ほとんどドラえもんの不思議道具並のパワーが装置に必要となる。  いずれにせよ、地球環境の現状を考えると、こうした形での再生で一番ネックになるのが、時間である。何しろ人類滅亡までおよそ一年という時間を区切って いるのがヤマト世界だ。コスモリバースシステムを持ち帰ったはいいが、地球再生に千年も二千年もかかっていたのでは、地下都市に暮らす人々が全滅してしま う。  時間を圧縮する方法として20世紀末あたりからSFでよく使われてきたのが、ナノマシンの使用である。今流行のノリでいくと、ナノマシンで作った物質を3Dプリンタ方式で組み立てて、植物や動物を作り出すのだ。  このノリでいくともうひとつの地球が作れるということで…… 「カーティス、きみは地球をもうひとつ造れるというのか」 「もうひとつの地球を造れるかと聞いたんだ、カーティス。山や海や街を造り、男や女や子供たちの声でいっぱいにすることができるのか。そして、もうひとりの、オットーやグラッグやサイモンを造れると言うのか」 (エドモンド・ハミルトン『物質生成の場の秘密』より)  またもやエドモンド・ハミルトンが!  さらに逆転の発想としてロバート・チャールズ・ウィルスンの『時間封鎖』手法がある。生き残った人間の方を時間的に凍結しておいて、地球環境が何万年かかけて復活するまで待ってからこれを解凍するという方法が考えられる。  時間操作となるとかなりの超技術だが、ラリイ・ニーヴンのノウンスペースシリーズで登場した停滞フィールド的なものを使えば、ヤマト2199の作中のテクノロジー的にも妥当な範疇で何とかなりそうだ。人類が暮らす地下都市を、停滞フィールドに閉じこめておくのである。  あとは並行宇宙とアクセスする技術を使って、人類が誕生していないが自然がそのままの並行宇宙から、地球を引きずりだして今の赤茶けた地球と交換 するという荒技もある。そろそろこのあたりになると、ハリイ・ハリスンの『ステンレス・スチールラット 世界を救う』っぽくなってきたな。  なんにしても、遊星爆弾であそこまでむちゃくちゃになった地球を元に戻すのはよほどのテクノロジーがなくては難しそうである。惑星環境というのは、破壊するのは簡単だが再生してバランスを取り戻すには手間がかかるのである。  だがしかし。  ここでやはり、大いなる疑問が出てくる。  いったいぜんたい、なぜ、イスカンダルは、そしてスターシャは「地球の環境を回復させる」ために「イスカンダルまで来い」という迂遠な方法をとっているのか、ということだ。  これが神話や民話などの物語世界であれば、この流れはごくごく自然なものである。  ウラジーミル・プロップが『昔話の形態学』で31の類型にまとめたように、物語はしばしば、主人公に試練を課してその力を証明させる。そこで使われるの が、苦難の旅路だ。連れ去られた幼なじみを取り戻すために、雪の女王の宮殿に行ったアンデルセンの『雪の女王』のように、ヤマトは地球環境を取り戻すため に、イスカンダルへ向かうのである。  ヤマト2199も物語である以上、この構造自体に問題はないが、SF的な仕掛けもまた、そこにありそうである。  そこで出てくるのが第5章で登場したビーメラ4の遺跡である。  ビーメラ4には、今から400年ほど前にイスカンダルの使者がやってきて、波動コアを渡して、当時はまだ存在していたビーメラ星人に救済を約束している。  遺跡や、不時着したイスカンダル宇宙船の様子からみて、どうもビーメラ星には恒星間航行に十分な科学力がまだ存在しなかったのではないかと考えられる。  にも関わらず、イスカンダルが示した救済策は「イスカンダルへ来い」であったようだ。波動コアの内部情報からみて、ビーメラ星人に与えられた情報 の中にはイスカンダル人が作り(400年前の時点では)ガミラス人がメンテナンスしているゲートネットワークの情報も入っている。  つまり、十分なワープ技術を作れないであろうビーメラ星人には、ゲートネットワークによるショートカット航路を、イスカンダルは示したと思われる。  そしてもうひとつ、ビーメラ4の遺跡で気になる点がある。  それは、イスカンダルの宇宙船が「そのまま」である点だ。  これまで、サーシャの乗っていた宇宙船が1話で火星まで到達したところで爆発したから忘れていたが、実はイスカンダルからの宇宙船はもう1隻、ユリーシャが乗って無事に到着した1年前の宇宙船があるのだ。  それはどうなったのか?  思うに、もともとイスカンダルから送られる宇宙船というのは『一方通行』なのではないだろうか。サーシャの宇宙船のように爆発せずとも、地球に着陸したところで、自壊して機能を停止してしまうような。  イスカンダルの、スターシャの一族は、400年の昔から、あるいはそれよりはるか昔から。滅亡の危機が訪れた知的生命体の星に、そうやって一族を宇宙船で送り出した。救済が欲しければ、イスカンダルへ来るよう伝えるメッセージを携えて。  そして、成功すれば、一族のものは知的生命と共にイスカンダルへと帰還する。  失敗したら――そう、失敗したら、その星で一生を終えるのである。ユリーシャも、サーシャも、元から任務に失敗すればイスカンダルへ戻れない運命だったのだ。  400年前、ビーメラ4に送り込まれた過去の姉妹がそうであったように。  これはまた、えらい覚悟である。なるほど、ある程度は裏の事情を知っていた沖田艦長がメ号作戦において「信じるんだ、彼らを」と言ったのも分かる。血を分けた一族の者を地球人と道連れにする覚悟で、イスカンダルは地球を救済しようというのだから。  いったいぜんたい、何がイスカンダルをして、そのような理想追求というか、宗教的な情熱に駆り立てているのか。  そこについては、まだ不明である。ガミラスとの関係も、何やらきな臭いものを孕んでいるようだ。  しかし、もしすべての裏側に救済という名の罠があるとしても、どうやらスターシャやユリーシャらの一族は(ひょっとしたらガミラスやデスラーも!)その犠牲者であるらしい、と考えられる。  滅びたくなければイスカンダル星へ来い、という救済の仕組みは、400年以上前から、地球やガミラスとは無関係なところで存在していたようだからだ。  ガミラス人と地球人が遺伝的にほぼ同一であるように(そして、第5章冒頭で滅ぼされた惑星オルタリアの住人や、シュルツ司令の故郷ザルツも)大マゼランから銀河系にかけては広く、同一種族がはるか大昔に播種された可能性がある。  それがイスカンダルの唱える救済とやらのシステムを作り出した連中だろう。 [...]

By |2017-01-14T18:16:06+09:005月 24th, 2013|Categories: 『宇宙戦艦ヤマト2199』のSFネタ解説, 雑記|Tags: , , , , , , , , , , , , , |『宇宙戦艦ヤマト2199』のSFネタ解説その2:コスモリバースシステム はコメントを受け付けていません

アルシャードセイヴァー『ミョルニルの雷石』キャンペーン Bチーム第2回『帝都炎上』今回予告、シナリオ地図、ハンドアウト

■今回予告  積層都市ティモテにおける都市リアクター破壊未遂事件は、反帝国組織によるテロとして処理された。  だが、キミたちは知っている。これが、帝国内に忍び込みはじめた謎の敵――ワームスカルによるものであることを。  銀十字軍総本部の密命を受け、キミたちは帝都グラスウェルズでワームスカルの調査を開始する。目的は、帝都内に潜むワームスカルに汚染された人物の摘発だ。  そして調査を進めていくうちに、ワームスカルの恐るべき陰謀が明らかになる。  奴らは、皇帝レオポルト2世を自分たちの手駒にしようとたくらんでいたのだ。  アルシャードセイヴァー  『帝都炎上』  そして今、君は神話を越える。 ■シナリオ地図 ■ハンドアウト: ================ PC1:(候補:ヤタ) コネクション:皇帝レオポルト2世 関係:幼子  沈黙帝の退位を受けて皇帝になったレオポルト2世は、キミが腕を認めた騎士ルバ・メルフィンダの娘(養女)だ。彼女が幼い頃に、キミはルバから娘を鍛え るてくれるよう頼まれている。どういうわけか、相手は今や真帝国の皇帝となったが、キミとルバの男の約束に変わりはない。 【クエスト:皇帝陛下に会う】(1点) ================ PC2:(候補:シャルロッテ・ブリューゲル) コネクション:ヴィルヘルム・グーデリアン 関係:ストレス  銀十字軍の総司令官はヴィルヘルム・グーデリアン少将だ。彼はキミにとって直属の上官であるグンターの腹違いの兄である。有能な軍人であり、真帝国累代 の大貴族の嫡男だ。グンターとは仲がよい……はずなのだが、どうも最近、両者の間に溝ができているらしい。今回の、銀十字軍総本部がある帝都へ報告書を届 ける任務も、どうにも気が重い。 【クエスト:】ヴィルヘルムにグンターからの書状を渡す(1点) ================ PC3:(候補:K) コネクション:セレーナ・ゴルデンバウム侍従長 関係:忘却  記憶にはないが、キミはどうやら帝国の侍従長であるセレーナ・ゴルデンバウムと何らかの接点がある……らしい。少なくとも、向こうはキミのことを知っている……ようだ。若い皇帝陛下の側仕えというと、権力者っぽいが、どうも彼女は彼女で苦労しているようである。 【クエスト:侍従長の悩み相談にのる】(1点) ================ PC4:(候補:ヴェイハルトリ・マイセルブルグ) コネクション:ハーマン枢機卿 関係:ビジネス  真帝国における公認クエスターの立場は、微妙だ。それは庶民向けの作られたヒーローであり、教会がラグナロク以前の古き神々の力を、おとぎ話のランプの 魔神のように使役していることを示すための存在だ。ややこしいことに、グンター配下の銀十字軍特務C部隊、つまり非公認クエスターであるキミたちは、管理 局の書類上ではその公認クエスターとなっているのだそうだ。ともあれ、帝国内に潜入している謎の奈落種族と戦うには、ひとりでも味方が欲しい。 【クエスト:】公認クエスター管理局にコネクションを作る(1点) ================ PC5:(候補:スルーズウィルド) コネクション:エドヴァルド・バウアー公爵 関係:疑惑  帝国内外で、金儲けのためであれば、何でもやる企業。それがヨルムンガルドだ。先だっての、積層都市ティモテでのシャードリアクター停止事件も、その前 のミョルニル山での事件にも、ヨルムンガルド社のエージェントが関わっている痕跡があった。それがどこまで、本社の意向を受けてのことかは分からないが、 帝国一の大企業が奈落に汚染されているのだとしたら放置はしておけない。 【クエスト:】ヨルムンガルド本社の内偵を行う(1点) ================

By |2017-01-14T18:16:07+09:005月 21st, 2013|Categories: アルシャードセイヴァー『ミョルニルの雷石』キャンペーン|Tags: , , , , , , , |アルシャードセイヴァー『ミョルニルの雷石』キャンペーン Bチーム第2回『帝都炎上』今回予告、シナリオ地図、ハンドアウト はコメントを受け付けていません

『宇宙戦艦ヤマト2199』のSFネタ解説その1:第二次火星会戦

 宇宙戦艦ヤマト2199に出てくるギミックや台詞を元に妄想をたくましくしていくSFネタ解説シリーズの1回目。  第1話で名前だけ出てきた第二次火星沖会戦である。  まずは2199年1月の太陽系の惑星の配置は以下の通り。 (※この図は、Solar System Liveを使って作成したものに、手を加えた)  第一話の冒頭。沖田提督率いる地球艦隊は、冥王星軌道の近くで、ガミラス軍と接触、交戦に入る。  彼我の戦力は圧倒的で、地球艦隊はたちまち壊滅状態に追い込まれる。  地球艦隊の目的は、表面上は、ガミラスの冥王星基地の破壊である。  この段階で、地球は海が干上がり、赤茶けた死の星となっている。それを成したのが、冥王星から発射される遊星爆弾だ。  冥王星基地に打撃を与えて、これを食い止める、というのはいかにも納得のいく作戦目的である。ガミラス側も、地球艦隊の総力を挙げたこの作戦に、全力で迎撃をしている。  さて、それにしては――地球艦隊が妙に弱いようには思えないだろうか。  ビーム砲は跳ね返されるわ、ガミラス艦の砲撃に対して地球艦隊の装甲は紙同然だわで、とてもではないが、戦いになっていない。  作中で名前だけ出てくる第二次火星沖会戦では、ガミラス艦隊の侵攻を阻止できるほどの損害を与えたはずなのに……である。  これには、戦場における準備と支援の有無が影響していると考えられる。  地球艦隊は、火星において迎撃戦を行った。  メ号作戦では、はるばる冥王星まで進出したあげく、迎撃されたのである。  艦の性能差に加え、はるばる地球から(おそらく、有力な拠点は他にもうないものと考えられる)ワープ航法は使わずにやってきたのである。燃料(推進剤)もギリギリの状態だったのではないか。  では、作中の描写を踏まえて、第二次火星沖会戦の展開を妄想してみよう。なお、妄想のソースとして谷甲州さんの『アナンケ迎撃作戦』を使用している。    火星での迎撃作戦前。ガミラス艦隊との交戦記録から、ガミラス艦の基本性能や、戦術については地球艦隊も理解していた。  ワープ航法(ゲシュタム航法)を使わない場合の機動力はほぼ互角としても、彼我には火力と防御力に圧倒的な差がある。通常の戦い方では、勝ち目がない。  地球艦隊が対抗策として用意したものがふたつ。  ひとつは、ダイモスに設置した要塞砲である。  もうひとつは、試作の反物質機雷だ。  だが、どちらも運用には制限がある。  要塞砲はガミラス艦が相手でもアウトレンジ砲撃が可能だが、射角に制限があり、また、冷却やエネルギーの注入に時間がかかるため、連射ができない。  反物質機雷は、威力は十分だが大型なのでステルス化は困難。敵が接近すれば、搭載したブースターで加速しての攻撃が可能だが、通常の方法では接近する前に迎撃されて破壊されてしまう。  沖田提督は、このふたつを組み合わせて運用する作戦を立てた。  まず、火星のフォボス軌道に囮の艦隊と戦闘衛星を配置して、ここが火星の絶対防衛線であるように見せかけた。使われたのは、内惑星戦争時の旧式艦と、同じく内惑星戦争で火星独立同盟から終戦時に接収した戦闘衛星である。  どちらも、追加の核融合エンジンを搭載させ、エネルギー(赤外線)反応を実際よりも高く見せかけてある。接近すれば、張り子の虎であることは明らかだが、この作戦は敵に接近されてしまえば、どちらにせよ負けである。  続いて、ダイモス軌道にありったけのレーダー衛星を設置した。レーダー衛星群は要塞砲とデータリンクされており、接近するガミラス艦隊をアウトレンジ攻 撃するための照準データを送り届ける役目である。数が多いのはデータの精度と、戦闘開始直後から敵の攻撃でその多くが失われることが想定されていたからで ある。  最後に、地球艦隊の主力艦は、主砲の1/3~2/3を降ろして身軽になり、代わりに反物質機雷を曳航・敷設する機能を備え付けた。そして、ダイモスのクレバス内部で、息を潜めて作戦開始を待ち続けたのである。  戦闘は、沖田提督の想定通りに始まった。  ゲシュタムアウトしたガミラス艦隊は、フォボス軌道に浮かぶ囮艦隊と戦闘衛星をテロンの主力と考え、接近を開始した。これまでの戦いからテロンの艦艇の 砲撃力を甘く見ていたのだろう。ダイモス軌道のレーダー衛星群からのレーダー照射も、さほど気にする様子がなく、艦隊を前進させた。  十分な照準データを蓄えた後、ダイモスの要塞砲が砲撃を開始した。最初の一発は狙い違わずガミラスの大型艦に命中。これを撃破する。  こしゃくな要塞砲の反撃に、ガミラス艦隊はしばし混乱したが、要塞砲が連射できないことを察知するや、すぐさま駆逐艦隊を分遣し、要塞砲の死角に回り込んだ。その間に、要塞砲は七回砲撃をするが、命中は三発。撃沈できたのは最初の一隻を含めても二隻だけである。  ここで沖田提督の罠が発動する。  ダイモスのクレバスから、偽装地表を突き破って、地球艦隊が躍り出たのだ。地球艦隊はいずれも大型の反物質機雷を一個、ないし二個曳航していた。そして、接近するガミラス艦隊の軌道前方、宇宙的な距離感覚ではすぐ鼻先で切り離したのである。  ガミラス艦隊に与えた被害は甚大なものがあった。七割の駆逐艦が撃破され、残りも大量にばらまかれた高出力ガンマ線によってむき出しのアンテナ類に損傷を被ったのである。  そしてそこに、反物質機雷を切り離して身軽になった地球艦隊が転進して迫ってきた。  艦砲の撃ち合いとなれば、ガミラス艦隊はさすがのタフさを見せたが、地球艦隊は損害にかまわず肉薄して主砲とミサイルをたたき込む。戦いはこのまま、地球艦隊が優勢で終わるかと思われた。  だが、ここで新たなガミラス艦隊がゲシュタムアウトする。  ガミラス艦隊を率いるシュルツもまた、艦隊をふたつに分け、ゲシュタム航法を使った時間差攻撃で地球艦隊の側背を衝く作戦を立てていたのである。反物質機雷を使い尽くし、激しい機動戦で推進剤の多くを消耗した地球艦隊に、この新たな艦隊と戦う力はなかった。  それでも、地球艦隊は死力を振り絞って最初のガミラス艦隊(α)を壊滅に追いやり、新たなガミラス艦隊(β)の追撃を振り切って地球へと撤退に成 功する。だが、その時には艦隊の九割が失われ、ダイモスもフォボスも陥落し、囮艦隊や戦闘衛星のすべてが破壊され尽くしていた。  地球艦隊は、この時点で宇宙戦力をほぼ喪失したが、ガミラス側もまた、ゲシュタム航法も持たない辺境の蛮族相手としては前代未聞の手痛い損失を被ってい た。慎重なシュルツ司令は――二等ガミラス人である自分たちの空間機甲旅団に増援があるはずもないという現実も踏まえて――地球への直接侵攻を断念。以後 の作戦を、冥王星からのロングレンジ攻撃に切り替えることとなる。  

By |2017-01-14T18:16:54+09:004月 12th, 2013|Categories: 『宇宙戦艦ヤマト2199』のSFネタ解説|Tags: , , , , , , , |『宇宙戦艦ヤマト2199』のSFネタ解説その1:第二次火星会戦 はコメントを受け付けていません

無題 Type1 第5章 第1稿

<無題> Type1 第5章原稿リスト※このページはIRCの過去ログからのリンク切れを防ぐためのアーカイブページです。 この作品はすでに改稿され、最新版が公開されています。 断章原稿リストへ戻る 第6章原稿リストに進む<無題>トップへ戻る 第5章1 僕の疎開計画は着実にできていった。 まずは産業情報庁の|顔なじみ《・・・・》の職員にメールを送った。電子戦要員として腕のいい傭兵を雇わないかと持ち掛ける。 政府が発行する特別徴兵免除証(また“特別”だ)をもらえれば、戦地に赴く必要はなくなる。それさえ発行してもらえるのなら、いけ好かないやつらと職場を共にしてあいつがへそを曲げるのをなだめるのだって構わない。 赤葉書をもらってから、4日目。 メールに返信はなかった。その代わり、地下室に引き込んでいた仮設インターホンが来客を告げた。 本を読んでいた母さんはビクッと肩を震わせ、飽きずに花札をやっていた葉村たちは訝しげに顔を上げ、僕はキーボードを休みなく打ち続けていた手を止めた。 四半秒に満たない沈黙と硬直。座っていたローラー付きのイスを転がして梯子の降り口に置いた受話器を取り上げる。「はい」『山本さんのお宅ですか?』「そうですけど」『ヤマモトユウキさんにお届けものです』「……はあ」 郵便はともかく、宅配便なんてとっくに機能していないと思っていた。「今行きます」 そう言い残して受話器を置いた。 動作を止めたまま聞き耳を立てていた3人にうなずきかけ、ハンコを持って梯子を登った。 空襲があった後、毎回閉めている気密扉を警戒しながら押し開けた。宅配便というのは嘘で、押し込み強盗やその類の可能性も残っている。今は平和な日常ではない。 地下室の入り口には誰もいなかった。 光差し込む地上へ梯子を登る。頭を出す時にも、地下から持ってきた手鏡で辺りを見回した。 大人2人が箱を抱えて立っていた。少し離れたところにミニバンが止まっている。 危なくなさそうだ、と判断を下す。穴から出た。「お待たせしました」「いえいえ、それにしても、きちんと警戒していらっしゃるんですね」 そんな会話をしながら、伝票にハンコを押し、差し出された荷物を受け取った。受け取ろうとした。伸ばした手、手首をつかまれた。「詰めが甘いな」 声に引きずられるように宅配業者2人の顔を正面から見る。「……お前ら……っ」 驚きのあまり、あいつに体の制御権を、一言分とはいえ奪われてしまった。 自覚しているよりも驚いて、落ち着きを失っているようだ。意識して深呼吸を2回する。 改めて宅配業者――いや、業者に偽装した産業情報庁構成員、といった方が正確だろう――と目を合わせる。知り合い、というほどでもない、名前の知らない顔見知り程度の2人だ。 相手がそうと分かれば、特に態度を取り繕う必要はない。「何の用ですか」「何の用、とはご挨拶だと思うが。本題から行こう。君、あのメールの本意はどこにある?」「読めば分かるように書いたつもりだったのですが」「要件はな、確かに分かった。俺らがこんな真昼間に派遣されてきた理由は、何故お前があのメールをわざわざ出したのかを聞くため、だ」「それを本人に聞かせていいのですか」「知らん。全権を任せる、と言いつけられたから、俺は俺のやり方でやるまでだ」「話を戻しますが。メールの本意、とはどういうことを聞きたいのですか」「何のきっかけもなくあんなメール送らないだろ、お前は」「そうですね。……でも、特にいう事はないんですが」「何を焦っている? 別に、君ほどの実力があれば、ただ普通に徴兵されても、どうせうちに来ることになるだろう?」「そうとも限らないから、焦っているんです」「……どういう意味だ?」「そのくらい、そちらで考えてください。得た情報から発言者が何を考えているかを推測するのも、仕事のうちでしょう?」「……」「もう、いいですか? そろそろ、下で待っている家族に心配かけるので」「……今のが君の答えなんだな?」「そうです」「そう報告しよう」 つかまれていた手首を放される。離れて分かった、少し汗ばんでいた。 |産業情報庁構成員《スパイ》から宅配業者に戻った2人組が、ありがとうございましたー、と言いながら車に引き返していく背を見送った。 周りが道だらけに何もなくなった東京を、砂埃で汚れた、どこにでもありそうなミニバンが走っていく。 僕はしばらくそのまま突っ立っていたが、のろのろと地面にぽっかり空いた穴へ降りて行った。2 次の日。計画が完成した。 他の3人を説得するための資料も抜かりなく用意した。 4人、昼食が終わったタイミングで床のちゃぶ台を囲むように座る。 少し身構えていたようだったが、5日間かけて準備した甲斐もあり、特に反対意見もなく計画を説明し終え、納得してもらった。「これから、東京はより酷く破壊されるだろう。この地下室自体はシェルターとして申し分ない強度を持っている。でも、いつまでも人口がこれからも減り続ける東京にいたって、発電用の石油が足りなくなってしまうから、生活することはできない。中でこれ以上、人が生活することを想定して設計されていないからだ。それに、いつ出入口の穴がふさがるか分からない。次の攻撃でふさがるかもしれない。だから東京から出て行くべきだ。行き先としては、|埼玉県西部《秩父山系》やそれより、もうちょっと北がいいと思うんだ」「秩父なら、うちの実家があるわ」「葉村の実家?」「そう。電話貸してくれれば、疎開先になってくれるか聞くけど」「そんな、ご迷惑になるんじゃないかしら」「うぅん、困った時はお互い様だよ。うち、古い家だから、無駄に広いんだ。3人住む人が増えたくらい、どうってことないよ」「あ、いや。2人だ。僕は行かない」「「「……え?」」」 立ち上がりパソコン机に置いてあった葉書を見せる。母さんが受け取り、2人が覗き込んだ。「徴兵……」 呆然とした様子の葉村。なぜすぐに伝えなかった、と視線が怒っている妹。あきれて溜息をもらす母さん。 葉村の呆然が、がっかりに変わった。「……そうなんだ、君は来ないのね」「そうだ」 しばし沈黙が横たわる。そんな場をとりなしたのは母さんだった。「これはこれで仕方ないか。あんたも、こういう大事なことはすぐに言いなさい。分かったわね」「……はい」「よろしい。改めて、残される私たちがどうすればいいか考えましょう。食べ物とか、足りるのかしら?」 不満は顔に出ているが、気持ちを無理やり切り替えようとしている女の子2人も母さんと調子をあわせた。「うち、農家だから大丈夫。足りなければ使ってない畑、起こせばいいんだし。お母さん、そんなカチカチになることないよ?」「ななみちゃんのうちかー、あたし行ってみたいなぁ」 ついに“ななみちゃん”と呼び合うまでの仲になっていたらしい。「山本、電話貸して」 抜かりはない。既に用意してある。 またパソコンとインカムを手渡すと、この場で発信ボタンをクリックした。「もしもし……あ、お姉ちゃん? ……うん、そう、私。……大丈夫、超元気。……うん、代わって代わってー」 そこまで会話して、葉村はおもむろにインカムがつながっていたイヤホン端子を引っこ抜いて言った。「みんなで聞いたほうがいいよね」『もしもし? ななみ?』「うん、そう。久しぶり」『元気……そうね。今日はどうしたの?』「あのね――」 かくかくしかじか。葉村が的確にまとめて、先ほど僕が説明したことを繰り返す。「――ってことなの。うち、泊まれるよね?」『ええ、2人くらいどうってことないわよ。……そこに山本君の母上もいらっしゃるの?』「うん、聞いてるよ」『あらま、私の声まる聞こえなの? そういう事は先に言ってちょうだい』 電話の声が遠くなり、咳払いをしている音が聞こえる。『失礼いたしました、いつも娘がお世話になっております。葉村ななみの母でございます』「はじめまして、山本祐樹の母です。こちらこそ娘さんにはよくしていただいて」『いえいえ、そんなことは』「「お母さん、電話なんだから手短にしようよ」」 2人の娘が声を合わせる。 電話のこちらと向こうで2人の母親が笑う。「それもそうですね。本当に私たちが押しかけてもお邪魔じゃありませんか?」『お気になさらず。お客様をおもてなしするのは好きなんですの』「何か不足しているものはありませんか? 一緒に持っていきます」『そうねぇ、植物の種、もし余っていらしたらお願いしようかしら。今あるのが尽きたら大変ですから。発電装置とかはうちにもありますから結構ですわ』「分かりました。では、何時そちらに伺えばよろしいですか?」『いつでも結構ですよ、それこそ今日これからでも。といいますか、車はお持ちですか?』「え? いえ、持ってないですけど」『でしたら、私、そちらに伺います』「そんな、よろしいのですか」『お気になさらず、構いません」「ではお言葉に甘えさせていただきます」『明日の午後、14時ごろではいかがですか』「はい、明日の午後2時ですね。よろしくお願いします」『失礼いたします』 電話は切れた。 しばらく僕ら4人は黙っていた。「種……どこに売っているのかしら」3 それから僕らは忙しくなった。 母さんと妹は葉村の実家に疎開するために空襲が収まったタイミングで外に出て、必要そうな物資を買い集めに出て行った。池袋の地下街はまだマシと言える被害だそうで、そこで闇市が開かれていたからだ。 母さんたちよりも土地勘のない葉村は、持っていく着替えなどをまとめていた。 僕はといえば、昨日の小包を開けて徴兵に応じる準備をしていた。格好だけでも行くふりをしておかないと、実は応じるつもりなんてないという事がばれてしまう。 小包の中には圧縮衣服が8つ入っていた。 大きさ的に考えて灰緑色の上着とズボンが2組、黒い下着が4枚だろう。ビニールをはがした圧縮衣類を、水を張った洗濯機の中にまとめて放り込む。「さすが国からの届け物だね。今時、圧縮衣類なんて加工が面倒で作られていないと思う」「いや、製造年を見たら、5年ほど前だったから。まだ余っていたものを箱詰めしたんだろ」「お母さんたちが子供のころにはあんまり一般的じゃなかったそうだから、なんか気持ち悪く見えるらしいんだけど。私、これを水につけて、膨らんでいくの見てるとドキドキするんだよね」「分からなくはないな」 だいたい缶ジュースほどの円柱形だった黒い塊が、みるみるうちに水を吸ってTシャツの形をほぼ取り戻した。茶筒くらいの大きさだった上着はまだもう少しかかりそうだが、既に形が分かるほどにはほどけている。「……ふえるわかめちゃんみたいだね」 確かに、色と言い水を吸って元に戻るところと言い、乾燥わかめそっくりだ。 完全に圧縮衣類が元に戻るまで、2人で洗濯機をのぞいていた。「そろそろいいか」 コンセントにプラグを差し、溜まっていたほかの洗濯物も放り込んで洗濯機のスイッチを入れた。 外に干すことはできないが、乾燥機を使えば明日には乾いているだろう。 母さんは散乱している僕の本を読み、妹は菓子を食べながら古いアニメのビデオを見、葉村はその日一日の日記をつけ、僕はコンピュータに向かって作業をする。 みんないつもとやっていることは同じなのに、今日はみんな口数が少なかった。母さんと妹があまりしゃべらなくなると、自然に葉村もあまり口を開かなくなった。 僕ら家族にとっては、暮らしていた土地にいられる最後の夜だ。 それは分かる。でもいくら考えても、何故、今日に限ってこんなにも静かなのかが分からない。 僕は数年間にわたってこの地下室全体をコンピュータに守らせるためのプログラムを途切れることなく書きながら、そんなことを考えていた。今日中には完成するだろう――。 軽く朝食を摂ってから、自分の食器や最後まで使っていた炊事道具などを荷造りする。 僕は3台のWSにつながったディスプレイを取り外した。いざというとき、精密機器のパソコン周辺機器はきっと高値で売れるはずだからだ。少し考えて、WSも1台譲ることにした。 ……することがなくなってしまった。「まだ、11時前じゃない。どうするの、まだ2時間以上あるわよ」「トランプでもして遊ばない?」「あまりに暇だものね……」「僕はパス。本の整理してくる」 この前応急で片づけた本がそのままになっている。「あ、そう。つまらないわね」「いいもん、兄さんがうらやましくなるくらい楽しんじゃうもん」「……頑張れ」 そう言って僕はパソコンを持って地下準備室から出た。 4人で暮らしたこの1ヶ月で雑多にものが散らかっていた地下準備室は、ここから出て疎開するにあたってきれいに片づけられていた。もともとここにあった、私たちが生活するためのスペースを埋めるほど多かった本も、本棚ごと下水処理装置操作室に運び込まれている。 がらんとした地下室は実際の気温以上に冷えているような気分がした。「……何しよっか」 トランプを切りまぜながら声をかけると、山本が出て行った鉄扉を放心したように見ていた山本の苗字を持つ親子は、同じしぐさで私を振り返る。「ななみさん、トランプはやめにしない?」「……え?」「遊ぶのをやめよう、ってことじゃなくて。私、母親なのに、最近のあの子のこと何にも知らないなあ、と思ってね」「学校での祐樹くんの様子、ですか」「そう。情報交換、しない? 過去のことも知ってるあなたなら、私たちも気兼ねなく、何でも話せるし」「あたしも、学校での兄さん、知りたいなぁ」「分かりました、情報交換、しましょう」 13時をまわった。そろそろ作業を切り上げて、昼食の準備をするべきか。 適当に積み上げられた文庫本の隙間に入り込んで操作室に設置されたコンソールをいじっていたため、腰が鈍い痛みを伝える。苦労して操作室から出て気密扉の鍵を閉めた。 キーボックスに鍵束をかけ、そのまま処理装置室を通り抜けて準備室の鉄扉に手をかける。 何かが、僕の中で動いた気がして思わず後ろを振り返る。暗闇に沈む下水処理装置のパイロットランプが光っていた。「……」 今のは……。 掴めそうで捕まらないモノがするりと逃げて行った。 4人で地下室の備蓄食料だった魚の缶詰を食べた。 賞味期限が4年過ぎていたことに葉村が怒っていたが、別に腹を壊すこともないだろうし食べても問題はないだろう。 そうこうするうちに約束の時間になった。時間ピッタリにインターホンが鳴る。「……はい」「はじめまして、葉村ななみの母でございます。山本さんのお宅ですか」「そうです。これからお世話になります」 念のため慎重に地上への気密扉を開いて、気持ちのいい快晴、青空の下へ出る。 4人そろって地上に出たのは何日ぶりだろうか。 葉村母は、軽トラックを背に立っていた。 僕ら5人は葉村の紹介を受けて、順に自己紹介を済ませる。「よかった、ずっと地下室にこもっていらっしゃると聞いていたので、もっと顔色が良くないものだと思っておりました。皆様お元気そうで安心です」「確かに、地下にこもっている、と聞くと不健康そうですね」「……挨拶はそこそこにして、早く荷物積んで出発しようよ」「それもそうね。祐樹、この前の荷物を上げ下げするモーター、持ってきてくれる」「分かった」 担いでいたロープの束をそこに置き、僕はひとり地下に戻る。「おーい、ザイルの末端、どっちでもいいから降ろしてくれ」「はぁい」 モーターをロープで上げやすいようにカラビナを取り付ける。するする降りてきたロープの先端を簡単な輪に結んでカラビナをかける。「持ち上げてくれ、結構重いけど1度だけだから」 地上から了解の声が届く。完全にモーターが宙に浮くまで、壁にぶつからないように上手く支えてやる。 モーターが地上に届けばあとは楽な作業で、葉村の実家に持っていく荷物を垂れてきたロープに括り付け、地上にあげる繰り返し。「これが最後の荷物だ」 段ボールが地下から見えなくなると、地下準備室はがらんとしてしまった。 僕は長く息をはきだし、発電機の出力を落としに操作室へ向かうことにした。「地下室、封印してくる」 地上に声をかけて準備室から出た。 ここに下水道経由で細々と供給されてくる非常電源が失われたときに、自動的に発電機が稼働するようにセットして、貴重な石油燃料を消費し続ける発電機を一時停止させる。 途切れない電気が必要なのは、地下室の封印をする電磁ロックと、それを監視・操作するためのWSだけ。僕らが地下室で生活するときほど電気は必要ではない。下水道線が停電したさい、発電機が稼働するまでのつなぎとなる2次電池の電解液を補充してから僕は地下室を出た。 気密扉脇の外部端子箱に汎用ケーブルでノートパソコンをつなぎ、開錠コードを設定してから完全に地下室を封印する。 放射線を通過させないだけの厚さと、空爆にも耐えられるだけの強度を持つコンクリート造りの地下室は、壁に穴をあけるのも容易ではない。正規の手段でこの気密扉の鍵を開けるしか、この地下室に入ることはできなくなった。「……閉まった?」「ああ、問題なく施錠した。開錠コードの予備は誰に渡せばいい?」「お母さんに一つ、頂戴。やり方を教えて」 僕はいまどき骨董品のカートリッジディスクに開錠コードを書き込んで母さんに手渡した。「ずいぶんと懐かしいメディアねぇ、お母さんの会社でも保管庫でしか見たことないわよ」「保存には一番いいんだ、壊れにくいから」「あらそうなの」「ここの箱を開けて、このスロットに差し込むだけで開錠できるから。もう一回ロックするときにはパソコンが必要だから開錠コード作らないで鍵を閉めないように」 それだけ言ってから僕は母さんをうながして、地上へ登る。この井戸のような入り口への通路も印だけつけておいて簡単に見つからないように埋めておく。 結局、葉村の実家に出発できたのは15時をまわっていた。 都内は道なんてあってないようなものだった。郊外に近づくにつれ瓦礫の山・平らな土地の割合が減り、家や街路樹が増えてくる。山が少しずつ近づいてくるころにはほとんど被害を見受けられなかった。 荷台に椅子を置いて座っていたせいでいい加減、尻が痛くなってきたころ。2時間ほどで着いた葉村の実家は、古くからそこにあるような貫禄を持つ2階建ての広い日本家屋だった。家の前には家と同じくらいの大きさを持つ車庫があり、軽自動車とトラクターがとめられていた。 玄関前の広いスペースで車を降り、荷物を下ろす。そうこうしていると家の中から40代くらいの男性と、妹と同じくらいの男子が出てきた。葉村の父親と、僕の妹と同じ年だと聞いていた弟だろう。「おお、ななみ」「お帰り、お姉ちゃん」「ただいまー」「お姉ちゃんの彼氏、っていうのがその人?」「え、な、彼は彼氏なんかじゃないわよ!?」 裏返った声で変な日本語を叫ぶ葉村。「そんなこと言ってなくていいから、その、荷物、うちの中に運び込むの手伝ってよ」「へーい」 これ、持ってきます。 葉村弟が地面に下ろしてあった段ボール箱の一つをかかえた。「あ、ごめんね。この荷物、どこに運べばいいの?」 同学年だからだろう、気安く葉村弟に話しかける山本妹。僕と違い社交性の高い彼女のことだ、きっと無事にやっていけるだろうと心配はしていない。 この夜は、貴重だろう油を使うのにもかかわらず天ぷらをごちそうになった。油をつかう料理はそれなりに食べていたが、出来立てで温かい揚げ物は久しく食べていなかった。それが当たり前だと思うくらいに。「そういえば」「はい、なんでしょう?」 葉村母はうふふと含み笑いを漏らした。「祐樹くん、今夜はななみと同じ部屋でいいわよね」「僕はどこでもいいですよ、それこそ廊下でも」「こいつ、私が遊びに行ったら、布団足りないから、って寝袋で使わせようとしたのよ」「あらー、いいじゃない。そのまま襲われちゃえばよかったのに」「お母さん!」「なによ、祐樹くんとならお母さん、許しちゃうけど」「なんで今日車に一緒に乗ったくらいの単なる同級生をそんなに信頼してるのよ! 普通、女子高生の親ならもっと、娘と親しい男子に対して注意を払うものじゃないの!?」「だって、結構男前だし。なかなか素敵な人だと思うけど」 本人の前でそういう会話を繰り広げるのはどうかと思うのだが。今は僕が出ているからいいものの、内側ではあいつが恥ずかしい恥ずかしいとのたうち回っている。 気まずいとは思うが、そんなに赤面してばたばた暴れるほど恥ずかしいものなのだろうか。「じゃ、そういうわけで、祐樹くんの布団はななみの部屋に運んでおくからね。先にお風呂は行ってらっしゃいな」「はい、ありがとうございます」 本来なら布団を運ぶくらい自分でやるべきなのだろうが。あいつがあまりにこの場から離れたがっているので、葉村母の提案に甘えることにした。 なかなかいい加減の湯だった。俺は明日の朝、ここを出発しなければならないということになっているので、早めに寝させてもらうことにする。柔らかいふかふかの布団も懐かしいようなにおいがした。 そして隣に葉村がいる。「さっきはゴメン、お母さんが変なこと言って。恥ずかしかったんじゃない?」「かなり、な。よくもまああいつはあのやり取りを生で聞いておきながら平然としてられるもんだぜ」「あはは、そうだと思った。……山本」「ん、どうした?」「ちゃんと、帰ってきてね」「当たり前じゃねぇか、何を不吉なことを言ってんだ」「ご、ゴメン。そうだよね、当たり前、だよね」 本気で心配してくれているらしい葉村に対して、少し罪悪感を感じる。本当は徴兵なんて、最初から応じるつもりは最初からなかったんだぜ。そうぶちまけたくなって、あいつにたしなめられる。「……」 不自然な間が空いたまま、開きかけた口をそのまま閉じた。 あたりが明るく、お互いが見えるような時間帯だったら何を言おうとしたのか重ねて質問されていただろう。「じゃ、寝るわ。おやすみ」 自制が利かなくなってしまう前に、俺は睡眠に逃げることにした。「……え。そう、寝ちゃうんだ」「……? 何かしたかったのか?」「うぅん、別に、特に。なら私も寝るよ」「そうか」 なんとなく拍子抜けしたような葉村の応答が釈然としなかったが、俺は無視して目を閉じた。4 翌朝は快晴で、少し暑かった。 僕は先日送られてきた服を袖まくりして着ていた。「では、いってきます」 必要な装備を入れたリュックサックを持って、葉村が運転席に座る軽トラックに乗り込んだ。 荷台には昨日下ろし忘れていた、太陽光発電機一式や僕の野宿道具が積まれたままにされていた。「行ってらっしゃい。気を付けてね」 母さんが心配そうに声をかける。妹はそっぽを向きながら横目で僕のことを見ていたし、葉村父は先ほど町内会の会合に突然呼ばれてしまい、手伝いに弟を連れて出て行ったきりだ。 僕は自分の家族へ、最後に笑いかけて葉村に合図する。「出すね」 葉村は一言、そう呟いてアクセルを静かに踏み込んだ。 彼女達に手を振って、僕は視線を外した。「――あのね。アドバイスが欲しいんだけど」「僕が答えられるものなら」「行動を起こしてから『ああやっちゃった』って後悔するのと、行動を起こさずに『なんでやらなかったんだろう』って後悔するのだったら、どっちがいいと思う?」「……僕らなら、前者を選ぶかな」「そっか……」 車内の空気が沈む。 葉村は僕の答えを聞いて、2回、落ち着けるように深呼吸をした。「じゃあ、私もやって後悔することにするわ」「そうか」「単刀直入に聞きます。山本くん。君はどこへ行こうとしているの?」「――え?」 同時に葉村は、車を一台も見かけない田んぼに囲まれた道、そのわきに車を寄せて停車した。「ずっと不安だった。なんか、君の“徴兵用意”が、なんとなくどこかが不自然に見えて。だから、ふっと思ったの。もしかしたら、軍に行くつもりなんてないんじゃないか、って」「……」 ここで何も言わないのは不自然だと思ったのだが、とっさに言葉が継げなかった。「ウソはつかないでね、お願い。別に、私はまったく怒っていないから。どんな答えが返ってこようと、引き止めたりなんかしないから」 君を信頼しているのは、何も私のお母さんだけじゃないんだよ?「君がいろんなことを考えて出した結論だもん、きっと間違ってることなんてないよね」「間違ってるかもしれない。僕だって人間だからな」「そうかもね、でも君は間違っていると自覚している選択肢を取ることなんてしないじゃない。それに、私が答えて欲しい質問はそれじゃないことくらいわかってるよね」 仕方がない、意外と強情な所のある葉村には、本当のことを言ってしまうほかないか。押し問答をして無駄な時間を使う事は避けなければならない。「確かに、ご想像の通りだ。僕は徴兵に応じるつもりなんて全くない」「やっぱりね。じゃあ、どこへ行こうとしているの?」「どこか山の中で野宿しようと思ってる。電気と回線とコンピューターさえあれば僕は戦える」 だろうと思った。 ハンドルにもたれかかって、葉村が囁いた。 しばらく、どちらも動かず、どちらも喋らなかった。 ばれてしまった以上、彼女を巻き込みたくはない。知らなければいくら聞かれたって答えられないが、知ってしまった以上尋問されたら嫌でもいつかは答えてしまうだろう。僕は車から降りようとした。 その動作を止めるように、葉村が起き上がるり、もう一度さっきより深く息を吸い込んだ。僕の目を正面から覗き込んで言った。「私もそこへ連れて行って」 不覚にも、短時間に2度も驚かされてしまった。普段ならこの程度の切り返しは簡単に想定できたのに。「嫌だ」「嫌? 今表面に出ている山本祐樹は感情を持ってないほうだよね。何でそんな感情的な言葉が出てくるのかな。ちゃんと真剣に考えて言ったんじゃないんでしょう?」「……」「私だって、きっちり考えたんだ。今のは、いつもと同じような君を困らせるための物じゃない」「ダメだ。連れていくことはできない」「いつも君が言っているみたいに理由を3つ挙げて、レポート書くように私を説得して」「まず、危ないから。政府を敵に回してまで君が僕についてくる理由を感情的になっているから、意外に考えられない。次に、君が僕についてきたときのメリットがないから。実家の農業を手伝って日本全体の食べ物を少しでも作ったほうがいい。最後に、君の分の生活を支える道具を持っていないから。僕の野宿セットは1人ようだ、もう一人、それも女の子が生活するための物は持ち合わせていない」「まず、私は君くらい、うぅん。君よりもいろいろ考えた末に君についていく結論を出した。私がついていく、って言い出すことを想定に入れていなかったじゃない。視野が狭くなっている証拠だわ。次に、私がついていくことで、君はより健康的な生活を送れるようになる。君、農業なんてやったことないでしょ。毎日インスタントやレトルト、保存食料で生活するつもり? 最後に、私は自分で使うためのキャンプ道具なら持ってきてあるわ。そこまでおんぶにだっこでいるわけないじゃない」 なんとなく嫌な予感が、葉村に押し切られてしまいそうな予感がした。「……いや、だからと言って人様の娘さんを勝手に個人のわがままにつきあわせる訳にはいかない」「わがままを言っているのは私よ?」 彼女と、似たようなやり取りを、ほんの1ヶ月くらい前にしたような覚えがある。「そのとおり、だが」「私を連れて行きなさい」「拒否する」 僕の過去を聞き出した時だ。つまり、そろそろ彼女はキレて――。「なんで? 私にはそんなに信用がないっていうの!? 君は、勝手に途中まで人を助けておいて中断するつもりなの? あんまりにも無責任だと思うんだけど!! ……なんか言いなさいよ卑怯者!」 彼女に卑怯者呼ばわりされる筋合いはないように思うのだが……。「連れていけるものならとっくに相談していたさ。危ない状況にある人間を助けるのはよくあることじゃないのか? せっかく助けた人を、わざわざ危険に近づけるほうが無責任だと思うのだが」「もう半ば巻き込まれちゃったもん。だったら最後まで付き合わせなさい、って言ってるの」「勝手に巻き込まれに来たんだろうが」「だったら私に感づかれないように、もっとうまく立ち回ればよかったんじゃないの?」「…………ただの言いがかりだ」「言いがかり上等、いいから私を連れて行け」「人が変わってるぞ」「君はたった3ヶ月くらい同じクラスになった女子の性格をばっちり把握できるんだ、凄いね」「そんなことは」「まあそんな些細なことはどうでもいいの、話を逸らさないで。私を一緒に連れていくの、行かないの?」「連れていくわけが……」「ならこのまま連れ帰る。向こうから人が来るまでうちに縛り付けてやる」 無茶ばっかりだ。「僕にどうしろと言うんだ。招集に応じればいいのか?」「あんた馬鹿!? 簡単なことじゃない。『分かった、君も一緒に連れて行ってやるよ』って言って、私にどこへ行けばいいかを教えればいいのよ」「そんなことを承諾できる訳が――」「しなさい」「……」「……」「…………」「…………」 にらみ合う。 車載時計を見ると、そろそろタイムアップだった。 ――僕らはどうすればいい。 ――彼女は、決して無能なお荷物にはならねぇだろうな。 ――ばれてしまった以上、連れていくしかないか。 ――どだい知られた以上、俺らを何が何でも消そうとしている連中に彼女がひどい目に遭わされないとも言い切れないしな。 ――僕のミスだ。これ以上、彼女に負担をかけるべきではない。 ――過ぎたことをいつまでもグダグダ言っても仕方ねぇよ。それよりこれからのことだ。 ――それもそうだ、な。気付かれる前にできるだけ遠くに、見つからないような場所に逃げ込んだほうがいい。「分かった」「……何が?」「僕の相方となる人間がとんでもない強情だという事が、だよ」「……それは、連れて行ってくれる、という事かしら」「その通――」 僕の言葉は遮られる。 彼女に抱き着かれたからだ。「……おい、どうした」 器用なことに、シートベルトをつけたまま、隣に座る僕の胸に顔をうずめている。 ……彼女は泣いていた。「突然なんなんだ」 鼻をすすりながら、涙を僕の服に染み込ませながら、切れ切れな曇った声が返ってくる。「ごめん、何でだろ、私にもわからないよ」 たぶん、ね?「安心したんだよ。嬉しいんだよ。でもきっと、君に涙を見せたくないんだ、私」「……」 おそるおそる手を彼女の背中に回す。 彼女がこらえきれなかった感情の圧。感情のない僕は、どのような感情があふれたのか、こういう時どう対処すればいいのかを知らない。 どのくらいの時間だろうか、ぽんぽん、と背中をさすってやると、彼女は泣き止んだ。「ありがと、もう大丈夫。……今日から、絶対、君と離れてなんかやらないんだから」 体を起こし運転席にまっすぐ座りなおして、彼女はまだ赤い目で素敵な、綺麗な笑顔を僕に見せた。「タイムロスしちゃったね。どこへ行こうか」「……ああ、そうだな。行く場所。道路マップはないのか?」「ダッシュボードにある、――はい、これ」「どうも。そうだな、このあたりなんかどうかと思っていたんだが」「隠れるなら、こっちの鉱山跡のほうがいいと思うな」「そこはどういう場所なんだ?」「廃坑への脇道が、草に埋もれながらかろうじて見えたかな、確か」「ならここにしよう」「うん、わかった。じゃあ、ガソリン積んで、足りないもの、ホームセンターで買っていこう。種とか、農具とか」「そうだな。僕は君が言うとおり、農業については全くの素人なんだ。よろしく頼む」「まっかせなさい!」 そういうと、彼女はギアをDに入れた。 県道から林道に入り、状態の悪い山道に入っていく。ホームセンターで買い込んだ様々なものが後ろの荷台でやかましく跳ねる。「そういえば、葉村、お前まだ16歳だったよな」「うん、そうよ?」「なんで車運転できるんだ」「……お父さんに教えてもらったから」「免許はどうした」「当然、持ってるよ」「18歳にならないと自動車免許は取れないはずなんだが。その免許、原付じゃないのか」 横顔を見ると、どうやら必死に言い訳を探しているようだ。「別に怒らないから、正直に言え。お前、自動車免許は持ってないんだろう」「…………おっしゃる通りでございます……」「別におどけなくてもいい」「ごめんなさい」「要は事故らなければいいんだ、気をつけろよ」「もちろん、私だって捕まりたくはないわ」 無免許にしては上手い。おそらく、農業を手伝っているからだろうなと予想する。 目的地はいい具合に木が生えていて陰になっていた。これなら衛星からでも気を付けてみなければ気付かれることはないだろう。50メートルほど坂を下りれば透明な水が勢いよく流れる沢に下りられる。あれだけ勢いがあれば水が直接飲めない、なんてことはないだろう。 反対に少し登ると、さっきまで走ってきた林道が見下ろせた。 平たい草っ原がすぐ近くにあったから、ここを耕して畑にできそうだ。2人分の野菜なら十分育てられるだけの広さがある。 僕らは手分けしてここを住処にする工夫を始めた。 <無題> Type1 第5章原稿リスト※このページはIRCの過去ログからのリンク切れを防ぐためのアーカイブページです。 この作品はすでに改稿され、最新版が公開されています。 断章原稿リストへ戻る 第6章原稿リストに進む<無題>トップへ戻る

By |2017-01-14T18:17:24+09:003月 31st, 2013|Categories: 書いてみた, 無題|Tags: , , |無題 Type1 第5章 第1稿 はコメントを受け付けていません

メタリックガーディアンRPG スパロボ風加護表

※メタリックガーディアンRPGは有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチの著作物です。 土曜日にメタリックガーディアンRPGを遊びました。 絶妙のデータと盛り上がる戦闘システムで楽しく遊ぶことができ、充実したプレイになりました。 でも何か足りないような気がする……何か、もっと熱くなれる物を! という気持ちが高ぶってきたので、こうすればもっと熱くなれるんじゃない!? と思ったモノを作りました。 メタリックガーディアンRPGスパロボ風加護表 「メタリックガーディアン」の加護を「スーパーロボット大戦シリーズ」風の精神コマンドに入れ替えて遊ぶための表です。 加護の名前を入れ替えるだけでそれっぽく遊べる便利グッズ!(?) 著作権を侵害する目的ではありませんので、著作権者から訴えがあった場合は公開を差し止めさせていただきますのであしからず。

By |2013-04-09T21:15:24+09:003月 26th, 2013|Categories: TRPG, メタリックガーディアン|メタリックガーディアンRPG スパロボ風加護表 はコメントを受け付けていません

短編:ごりらさんと当たり屋さんー第三稿ー暫定

この記事(作品)は、電撃大賞に投稿したため規定により削除しました。 なお落選した場合、別に記事を作って公開いたします。 なにとぞよろしくお願いします。 あいざわゆう。  

By |2013-04-04T16:02:24+09:003月 26th, 2013|Categories: 創作|短編:ごりらさんと当たり屋さんー第三稿ー暫定 はコメントを受け付けていません

無題 Type1 断章 第1稿

<無題> Type1 断章原稿リスト第4章原稿リストに戻る 第5章原稿リストへ進む<無題>トップへ戻る 断章 この時点で、私が知らなかったことがある。それは「なぜ彼は徴兵逃れに躍起になっているのか」である。 後に聞いたところによると、彼は「政府内に僕を邪魔だと思っている人間が少なくない」、「戦地に配属されたら、確実に死にやすい部署に回されるから」だと答えた。 万事慎重な彼は、捕まった時のリスクの大きい逃走計画の決行前に様々な可能性を考え、裏付けを取っていたという。 彼は言った。 国民の一人を特別扱いして危険な隊に配属するためには一人の権限ではできないはずだ。という事は、既に根回しがされているとみていいだろう、と。 事実、彼が政府内あちこちのメールサーバーに残されたメッセージを盗み読んだところ、それらしきメールが多数残されていたらしい。 そう、あの時だって、彼は私を逃がすためだけに、自分自身の状態を無視して計画を立て、最後の部分、大事な所を私に告げぬまま実行したのだ。 彼の逃走計画は成功したのだろう。が、結果みんなが幸せになったかというと答えは否だ。少なくても、私は傷ついたし、後悔した。 彼は普通の思考回路なんて、私と出会った時には既に持ち合わせていなかった。それを失念していたのは、他でもない私だ。 <無題> Type1 断章原稿リスト第4章原稿リストに戻る 第5章原稿リストへ進む<無題>トップへ戻る

By |2017-01-14T18:17:35+09:003月 24th, 2013|Categories: 書いてみた, 無題|Tags: , , |無題 Type1 断章 第1稿 はコメントを受け付けていません

無題 Type1 序章 第1稿

<無題> Type1 序章原稿リスト第1章原稿リストへ進む<無題>トップへ戻る 序章 私の青春時代、それは。   気持ち悪かった。   苦しかった。   温かかった。   楽しかった。   忙しかった。   不安だった。   傷ついた。   悔しかった。 でも、ずっと一人じゃないと思ってたのに――。 <無題> Type1 序章原稿リスト第1章原稿リストへ進む<無題>トップへ戻る

By |2017-01-14T18:17:35+09:003月 24th, 2013|Categories: 書いてみた, 無題|Tags: , , |無題 Type1 序章 第1稿 はコメントを受け付けていません

短編:ごりらさんと当たり屋さん-第二稿

この記事(作品)は、電撃大賞に投稿したため規定により削除しました。 なお落選した場合、別に記事を作って公開いたします。 なにとぞよろしくお願いします。 あいざわゆう。

By |2013-04-04T15:56:42+09:003月 21st, 2013|Categories: 創作|短編:ごりらさんと当たり屋さん-第二稿 はコメントを受け付けていません