「高速魔導士戦術」の効果はすぐに現れた。「朝練」でキャンプを撃墜する数が格段に多くなったのである。
これまでの常識的なキャンプの攻防では、魔導士部隊の一度の攻撃でとどめを刺しきれないと、魔導士部隊の再出撃まで何時間も待たなければならない。よって、ひとつのキャンプに狙いを定め、複数の攻撃隊と複数の魔導士隊を投入して確実にとどめを刺すことになる。それでも、キャンプの耐久力が高い「育った」キャンプは落としにくいというのが一般的な認識であったろうと思う。
しかし、高速魔導士戦術の登場で、僕らの認識は変わった。攻撃隊の移動速度と魔導士隊の移動速度がほぼ等しくなり、例えば「攻撃隊2つ+高速魔導士隊1つ」の組み合わせでひとつのキャンプを落とせるようになったのである。魔導士隊を運用する上でも、用意しなければならない魔導士の数が少なくて済むし、戦闘で消耗したとしても補給が楽になる。
地味な効果としては、作戦行動の前後で魔導士を移動する手間が減るのもありがたかった。魔導士は防御の役に立たないので、前線のキャンプに置いておくのは危険なのである。実際、僕も魔導士を置いていたキャンプを攻撃されて涙目になったことがある。
有効そうな戦術には敏感なのが“対人屋”というもの。僕の他にも高速魔導士隊を組織するプレーヤーが現れ、ACCAはちょっとした「移動ブースト戦術」祭りになった。攻撃隊ですらブースト役のキャラクターを揃えるようになったくらいである。
実際の運用としては、「攻撃隊+高速魔導士隊」のペアを2つ、強行偵察を兼ねた予備の攻撃隊ひとり、塗り役ひとりの6人構成で、1時間にキャンプ1個の速度で陥落させることが可能になった。ACCAは毎週6~8個のペースで共和国のキャンプを落とし続けていったのである。
ただその副作用として、攻撃隊との連携はより緻密になり、難しくなっていった。秒単位で着弾時間を揃える必要があり、僕は自分の部隊の移動時間を計算するためにEXCELを使って管理するようになった。
また、この頃からGoogle Docsを使った情報共有が始まった。
主な共和国・王国の対人層のキャンプがリストアップされ、キャンプの人口の変化が記録されるようになった。キャンプの人口は施設を建設すると増えるが、兵士が多すぎて食糧生産がマイナスになっているキャンプは建設ができなくなり、人口が増えない。
つまり、「人口が増えないキャンプは防衛隊が詰まっている」可能性が高く、「人口が増えたばかりのキャンプはそれほど詰まっていない」可能性が高いのである。
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