りました、ここからは関東地方の皆様にニュースをお伝えします」
「今日午後3時10分ごろ、東京都立大山高校で、男子生徒が屋上から飛び降りたと消防に通報がありました。男子生徒はすぐに病院に運ばれましたが、間もなく死亡が確認されたとのことです」
「亡くなったのはこの高校に通う2年生で、彼の友人はこう述べています」
画面が切り替わり、アナウンサーの代わりにどこにでもありそうな高校が映った。
「いいやつだった。成績はそんなにいい方じゃなかったですけど、聞けば分かりやすく教えてくれるので試験前にはよく助けてもらってました。将来は教員になりたいって言ってたのになんかすごく変な感じです」
その彼はちょっと頭を下げるとフレームから出て行った。
「いつも無口で本ばっか読んでて、何考えてるか分からなかった。あんまり話したことはないけど悪い噂とかは全然なかった。自殺しそうなタイプには見えなかった」
その彼は肩にかけていた鞄の位置を直したところでVTRが切れた。
「いいやつだったのに残念だ。最近元気がなさそうだったけど、ここまで思い詰めてるとは思わなかった。自殺なんてする前に相談してくれればよかったのに」
その彼はさほどずれていない眼鏡を直すと足早に去って行った。
「教室で難しそーな本読んでるのがかっこよくて、いつも女子の中でも彼氏にしたい同クラランキングのう上のほうにいた。こんなことになるならもっと近づいておけばよかった」
その彼女は眼尻に浮いた涙を手で拭い、少し化粧が崩れた。
「あんなバカ、友達なんかじゃねえよ。1年の時から同じクラスで一緒に飯食ったり学校から帰ったり遊び行ったりしたけど、なんも相談しないで勝手に死んじまうようなやつなんて俺の友達とは言わねえ。誰かが死んだら金も面倒もかかるんだよ、死んでいいのはそいつのために金を出してもいいと思える人間だけなんだよ、そんなことも知らねえバっカじゃねえの。バーカ、バーカ。悔しかったら俺を殴りに来いってんだケンカなら買ってやるってんだよ」
その彼は泣きながら他の友人に引きずられていった。
「次のニュースです」
「中心気圧992hPa、最大風速約20km/hの台風10号は、急速に発達しながら沖縄に近づいていま